2017/05/17

神に頼って走れ! 自転車爆走日本南下旅日記

kindle版
■高野秀行
日替わりセールで上がってきたので購入。
Amazonのレビューがいまいちな感じだったのでどうかと思ったが、しっかり面白かった。

本書は『怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道』のスピンオフ的な作品という感じ。そのへんを詳しく書くと『怪魚…』のネタバレになってしまうで濁すが。『怪魚…』の中の「その後のウモッカ格闘記」の後半に出てくる旅の詳細を書いたのが本書ということになる。

2007年1月~3月、集英社のホームページで毎週連載され、2008年3月文庫化したものの電子書籍版。

要はある個人的な願い事(ウモッカ関連)の願掛けとして、道中の寺社仏閣(道祖神なども含む)にお願いしながら沖縄まで自転車で一人旅をした、その日々の記録である。日記形式のエッセイというか。いつもの高野本のような幻の生物を求めて、みたいなのは無いし、国内に終始するし、外国や異文化もほぼ無いし、軽いといえば軽いので、落胆する向きもあるということかなあ。
何故沖縄なのかはニライカナイと絡めて冒頭に説明(?)があるけれども、正直ほぼ意味不明である。願い事が「インドのウモッカ」なのに何故ニライカナイが出てくるのか、こじつけではないのか、まあ暇すぎていろんな状況に耐え切れずに何とか外に出て活動を、と捏ねくり出した企画だったんでは、と苦笑しつつ楽しく読む。

自転車はマウンテンバイク。詳しくないが、ママチャリとは桁が違うのだろう。
重い荷物を抱えて、1月の寒空の中、1966年生まれのおじさんがひぃはあ言いながら自転車を漕いでいる姿を想像するだに意味不明である。しかも誰に頼まれたでもなく。こんなことを大真面目に仕事としてやってしまう人間が地球広しといえどもそう何人もいるとは思えない。バックパッカーや自転車でどこそこ縦断とか自らやっている方はまた感じ方が違うのかもしれない。わたしとしては、その個人的経験をエンタメとして面白い文章にまとめて提供してくれる高野さんは優れたエンターティナーだと思う。
また本書の終盤で、著者自身、こんなことをやれている自分は有難い身分なのだ、隣の芝生ではなく自分の芝生が青く思えるのは素晴らしいことだというようなことを述べておられ、まったくな、こういう視点を持てるひとだからこそだよな、と深く頷いた。

一人旅ではあるが、旅先に大学探検部時代の友人・先輩などがいて、その家に世話になったりしている。向こうが東京に出てきたときは高野さんがそうしているらしい。なかなか個性的なキャラのひとばかりだったが中でも現在屋久島に住む怪人・野々山さんの逸話は群を飛びぬけて抜いており、強烈過ぎて信じ難いくらいだった。やー…高野さんもかなりだと思っていたけど上には上がいるもんだ…野々山さんに比べたら高野さんなんてふつうのひとだわー。

四万十あたりからより面白くなり、鹿児島から沖縄にかけてさらに面白くなり、沖縄篇が一番面白かった気がする。

目次
まえがき
第1週 1月15日~1月20日(東京~浜松)
第2週 1月21日~1月26日(浜松~奈良)
第3週 1月27日~2月1日(奈良~甲浦)
第4週 2月2日~2月8日(甲浦~四万十)
第5週 2月9日~2月15日(四万十~高千穂)
第6週 2月16日~2月22日(高千穂~鹿児島)
第7週 2月23日~3月1日(鹿児島~奄美大島)
第8週 3月2日~3月6日(奄美大島~那覇)
第9週 3月7日~3月10日(那覇~波照間島)
あとがき