2017/05/14

かわうそ堀怪談見習い

かわうそ堀怪談見習い
かわうそ堀怪談見習い
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柴崎 友香
KADOKAWA (2017-02-25)
売り上げランキング: 23,484
■柴崎友香
初出は「Mei(冥)」vol.3~5、「小説野生時代」2015年10月号、12月号、2016年2月号に連載された「かわうそ堀怪談見習」。「二六 写真」は書き下ろし。

イラストはフジモトマサルで、表紙は『終電車ならとっくに行ってしまった』より、中の2点は「小説野生時代」より。
装丁は名久井直子。

怖い話は苦手なので基本的にホラーは読まないんだけど、著者が柴崎さんなので「まあ、そんなガチでめっちゃ怖いとか、怖いだけの話、っていうことはないだろう」と踏んだことと、装丁がすごく素敵だったから(フジモトマサルのイラストが使われているだけでなく、表紙の紙の凸凹とか、お、面白い…!)。

休日の朝に読みはじめて家事の合間に読んで夜読了。
200頁くらいしかない本なので、そんなに長くない。200頁しかないのに章が26もある。26の怖い話があるっていう感じでもあるけど、全然なんでもない章もあったりして、このコマ割りはなんだろう、映画のカットのような? なんか面白い効果を生んでいる。シーン、一場面というか。

主人公は小説家の女性で、名前が谷崎友希(ん? どっかで見たことあるような? 柴崎友香 から来てるのかな、主人公は著者の分身なのかな、とか一瞬思わせる設定)。
年齢ははっきり出てこないけど、まあ30代半ば以上かな。とか思いつつ読み進んで後の方で28歳の男性を「まだ28歳」と書いていることなどで裏書できる。(ちなみに柴崎友香さんは1973年生まれ。同世代をイメージしているとしたらアラフォー、ということになる。)
独身ぽい。いままで東京に住んでいて、3年ぶりに故郷に帰ってきた。それが「かわうそ堀」なのである。
古地図のことが書きたくて、でも編集者から恋愛も絡めるように云われて、それがドラマ化して、恋愛に重点をおいて描かれたからいつのまにか「恋愛小説家」扱いされて――って、いうのも『その街の今は』『きょうのできごと』あたりを連想させる――「恋愛」じゃなくて「怪談小説家」になろう、と周囲に「怪談」的な体験を取材していく。
その中で、主人公自身も不思議な説明のつかない体験をしたり、中学の時の友人から昔のことを忘れたのか、とか真顔で聞かれたりする…。

連載だったこともあり、文中に何回も「かわうそ」は獺ではなくて、いろんな説があると書いてある。
つまり音だけ聞くと特定の生き物を連想しちゃうけど、実際はそうじゃない、という、そういわれれば靱公園(うつぼこうえん)とかああいう感じか、とか思いつつ。
架空の土地だろうけど、だいたいどのへんだろうか、と思いめぐらしながら読んでいるとこれも途中で「大阪」とはっきり出てくる。お茶を飲みに「難波」の喫茶店に入ったりもしている。住んでいるのが「西区」というのも出てくる。
大阪市西区を検索してみると、おお、川が多くて地名に「堀」がつくところが多いようだ。靱公園も西区なんだ! おお~。

最初の方に出てきた「鈴木さん」とはなんだったのかとか、主人公が中学の時に体験したのはなんだったのかとか、なんであのときあのひとはああいう表情で主人公を見ていたのかとか、いろんなことがはっきり解明・説明されないままにお話は終わってしまう。まあ、世の中とは、怪異とは、そういうものであろうか、と頭のなかで疑問符をぐるぐるさせつつ。

ちょっと怖い話、でもあるけれど、不思議な話、ファンタジックな面白さというふうにも読めて、面白かった。