2017/05/27

本屋さんに憩う 第17回

某月某日
堂島のジュンク堂。

気になったけど買わなかった本。

劇場
劇場
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又吉 直樹
新潮社 (2017-05-11)
売り上げランキング: 114
恋愛小説なんですってね。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。
川上 和人
新潮社
売り上げランキング: 216
え、そうなんスか。

バウドリーノ(上) (岩波文庫)
ウンベルト・エーコ
岩波書店
売り上げランキング: 20,614
バウドリーノ(下) (岩波文庫)
ウンベルト・エーコ
岩波書店
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赤が鮮やか!

百年の散歩
百年の散歩
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多和田 葉子
新潮社
売り上げランキング: 8,612
タイトルが良いので前から気になっている。

とるにたらないちいさないきちがい
アントニオ タブッキ
河出書房新社
売り上げランキング: 76,718
とるにたらないちいさなきちがい、と一瞬誤読。

胞子文学名作選
胞子文学名作選
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田中 美穂
港の人
売り上げランキング: 257,006
これは装丁がめっちゃ凝っている! 中の紙も凄い! でもかなり読み難そう。


購入したのは以下2冊。発行日は奥付から。だいぶ先の日付になってるなあ…。

大竹昭子『間取りと妄想』亜紀書房/2017年6月26日発行

間取りと妄想
間取りと妄想
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大竹 昭子
亜紀書房
売り上げランキング: 5,746

アラタ・クールハンド『FLAT HOUSE LIFE 1+2』トゥーヴァージンズ/2017年4月1日発行

FLAT HOUSE LIFE 1+2
FLAT HOUSE LIFE 1+2
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アラタ・クールハンド
トゥーヴァージンズ (2017-03-25)
売り上げランキング: 80,039

道草 【再々読】

道草 (新潮文庫)
道草 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
売り上げランキング: 92,304
道草
道草
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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
発表順は『こころ』の後。
この小説は漱石の自伝的要素が強い小説とされている。
描かれているのは若い時で、本文でそれが示されるのは冒頭の【健三が遠い所から帰って来て駒込の奥に世帯を持ったのは東京を出てから何年目になるだろう。】【彼と細君と結婚したのは今から七、八年前】などである。
漱石が鏡子と結婚したのは明治29年。そこから8年として、明治37年(つまり漱石37歳)頃の話として読める。
ちなみに鏡子は漱石の10歳下。
【遠い所】は英国留学を指しているのだろう。
『吾輩は猫である』を執筆する少し前くらいから、終盤ではなにか原稿らしきものを書いたのかな? という部分もあるけどこれが『猫』なのかなあ。

漱石が子どもの頃養子にやられてそこの家がゴタゴタして9歳のとき生家に戻されたけど実家と養家でお金の問題などでモメて復籍できたのは21歳とか、その後も養父からお金の無心が続いたとかいうのは有名な話だが、これを略歴などで読んで知識として知っているのと、長い小説としてそのときの様子とか相手の表情とかこちらの感情とかいろんなものを織り交ぜて読むのとでは全然しんどさが違う。
小説では主人公の側に立ってその心情に同化したり想像したりしながら読むから、本当に養父が鬱陶しいし重たい。
しかも家のなかもどうにも辛気臭いというか、全然心休まらない……なんで奥さんとそんなに仲悪いの、っていうかお互い思いやりなさすぎ意地の張り過ぎ、「あっちが冷たいからこっちだって」をお互いずーーーっとやってる。なんのかんので3人目がお腹の中にいたりして没交渉ってわけじゃないみたいなんだけど、逆にそんだけ仲悪い癖にそっちだけある、っていうのも奥さん側の心中を慮るとどうなんだろうなあ、現代の感覚とは違うのかなあ、とか。
どうも奥さんの生家側といろいろあって、仲がこじれてしまっている。奥さんはそれをずっと根に持っている。夫より自分の父親の側に立った思考をしている。

実際には他の小説や随筆などから漱石が我が子たちに優しい目を向けてたりするんだけど、この小説においては我が子についての描写もかなり異常なまでに醜くわずらわしいもののように描かれていて、なんなんだろうなあ。
主人公健三が笑ったり楽しんだりくつろいだりしている場面が出てこない。

小説では健三がどこに勤めているかの明記はないのだけれど日々「講義」をしに出掛けていくので、大学の先生をしているのだなとわかる程度。大学の先生なら裕福なんじゃないのと思うし、文中に出てくる親戚とか周囲とかもそう思っていて、だから養父も養母も妻の父(義父)とかもお金をどうにか得ようとたかってくるわけだが、内情は苦しいらしくて、奥さんは自分が嫁入りに持ってきた着物や帯を質にいれてやりくりしたりしている。

お金をせびられるのは不愉快だし、養父も養母も大嫌いだけど、幼い頃に自分が彼らに甘やかされ育ててもらったことは事実であり、いまも場面場面を覚えている。兄や兄嫁、姉もその夫も、自分の妻も、そしてもう無くなった父親も、みんな養父母とは縁切りしたのであり証拠の文書も保管してある、だからうっちゃっておけばいいという。だけど彼らにはなくて、主人公にだけあるのが「養父母を実の父母と信じて生活していた数年間の記憶」なのである。

実の親であれ、育ての親であれ、それが好きであれ嫌いであれ、そういう「事実」というのは大人になっても、ずっとずっと後になっても、切りたいから簡単に切れるというものではなくて、それはこちら側だけの意志だけでも難しいし、まして相手がそれをタテにずっと縋ってくるならなおさらややこしい、というのは容易に想像できる。ひとの情のなかでもとりわけ微妙な「家族の情」につけこんで金銭問題をどうにかしようとする者ばかり出てくるから本当に鬱々となる。

読んでいて愉快な小説でないことは確かだが、そして面白いかどうかはどういう面を評価して読むかなどによっても異なってくると思うが、いろんな人間が出てくることは確かである。夫(漱石)の側に立って読むか、妻(鏡子)の側に立って読むかでも随分違うと思う。

2017/05/24

彼岸過迄【再々読】

彼岸過迄 (新潮文庫)
彼岸過迄 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
売り上げランキング: 28,144
彼岸過迄
彼岸過迄
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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
この小説には最初に「彼岸過迄に就て」と著者自身の「まえがき」「はじめに」に類するコメントがあって、ちょっと珍しいなと思う。こういう一文は非常に興味深く、例えば『坑夫』なんかにもあって良かったんじゃないかなと思う。
いわゆる後期三部作(『彼岸過迄』『行人』『こころ』)の第一作にあたるが、前期三部作と違ってスジのつながりは無い。

7つの章に大きく分かれていて、語り手が異なるが、人間関係は全部繋がっている。
ちょっと整理してみると、【目次】はこうなっている。
彼岸過迄に就て
風呂の後
停留所
報告
雨の降る日
須永の話
松本の話
結末

「風呂の後」/「停留所」/「報告」/「雨の降る日」/「須永の話」の二までは三人称単視点で「単視点」は田川敬太郎。「須永の話」三の須永の話は一人称単視点で須永=「僕」。
「松本の話」はタイトルの通り松本の視点でしかも「僕」が用いられ、一人称単視点になっている。
「結末」は三人称だが誰の視点でもなく著者というか、いわゆる神視点。かなりざっくりした「まとめとその後」みたいな。結局須永と千代子がどうなったかはわからないまま。

登場人物を整理してみると、つまり主人公と森本と高木以外は全部親戚ということになる。いっそのこと須永と田口の話だけで良かったような気もするが、最初の敬太郎と森本のくだりがすごく単純にわくわくする若者らしさが面白かったし、その「探偵」ぶりも変わっていて面白かったのでやっぱ「あってこそ」だなあ。

田川敬太郎。主人公。大学は出たが就職口が決まらず、活動中。
森本(敬太郎と同じ下宿の30歳以上の男。独身で停車場に通勤している。離婚歴がある? いろいろ変わったことをしている。蛇頭のついたステッキを自作。)
須永市蔵(敬太郎の友人。母親と二人暮らし。軍人だった父親は故人。裕福な親戚がいるが、暮らしに困っていないので働いていない。)
市蔵の母(恒三の姉)
田口要作(市蔵の叔父。実業家。ユーモラスな悪戯をすることもある。敬太郎にある謎めいた「探偵」仕事を依頼する。)
田口の妻(恒三の姉)
田口千代子(要作の長女。市蔵の従妹。)
田口百代子(要作の次女。市蔵の従妹。)
田口吾一(要作の長男。姉妹の弟。)
高木(千代子の友人秋子の兄。イギリス育ち。)
松本恒三(高等遊民。田口の義弟、千代子たちの叔父。)
松本の妻(御仙。千代子たちの叔母)、子(男児2、女児3。末っ子が宵子)

前回読んだときは江戸川乱歩がこの小説を「探偵小説」的な面があると紹介していて、「あれ? そういう話だっけ?」と思って読み返して、後半の須永と千代子の話に意識を持っていかれったっぽい(記憶が曖昧)。

今回は『こころ』がしんどかったなーという気分で読みはじめたら敬太郎が明るくて純粋な感じでココロが洗われる感じで非常に楽しく読み進んだ。「探偵」の部分もふふふ、がんばってるのねーって感じでわくわくした。
最初に読んだときも二度目に読んだときも宵子ちゃんのくだりに非常に衝撃を受けて印象に残っていたのだが、三度目読んでもやっぱり可愛くって可哀想で気の毒だ。実際漱石も幼い娘を亡くしているせいか、お通夜からその後のいろんな細かいところまで非常にリアルに描かれている。

そして市蔵と千代子の話になる、というかそこに市蔵の母の思惑とか、田口の両親の気持ちに対する忖度とかが絡むからややこしくなるんであってね。このへんの、二人の男女と大人の思惑と、…恋愛だけじゃなくて、「家」とか違う要素が絡んでいく感じが『こころ』の先生とお嬢さん(静)と奥さんのあのへんとちょっと被るかなあ。
ハンケチのエピソードをもってきて、千代子と市蔵の素直になれない感情を描くところとか、わかるわかるわー、「好き」な気持ちがあると逆に好意を迂闊に出せないっていうかねー。

漱石自身が最初にそう断っているとおり、最初のはじまりのところと、途中からの展開と、全然違う話が集まったような感じだが、今回は特に前半の呑気な感じに救われた感じで楽しく読んだ。占いに行ったりするのとか、ステッキのくだりとか、こんなの漱石が書いたんだなあ、というか。

途中から、須永の語りがはじまって、漱石っぽい世界になる。彼が自覚しているとおりちょっと卑屈というかいじけているというか理屈っぽ過ぎるというか、それが延々続くのはちょっと「どっちかはっきりしろ! 千代子さんも気の毒でしょうが」と思ったり「市蔵の母の気持ちもわからないではないが、本人にその気がないのに同じことをずーっっっと言い続けるのはちょっとイラッとくるなあ」と思ったり、それがために「市蔵断っちゃえ」「千代ちゃんもっといいところにさっさと嫁いじゃえ」とか思わないでも無かった。あと、高木はイギリス育ちの上品で如才ないイケメンってことで間違いないでしょうか。市蔵が「その容貌をうらやましく思った」とか書いているけどはっきり「美男子」とかは出てこないんだけど。この高木にして千代子の婿として父親の田口が思っていないというのはなんでかなあ、とか。

市蔵と千代子は結局どうなったのか! 現代だったら両方独身のままとかもあるんだけど昔のことだからなあ…。

2017/05/21

こころ 【かつての愛読書、再読】

こころ (新潮文庫)
こころ (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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こころ
こころ
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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
一番最初に読んだのは中学2年のときで、そのときは最後まで活字を追うことが出来たらそれが「読めた」ということだと思っていたので、そういう基準においては最後のページまで「読ん」で、そして当然のことながら全然理解できなかったのだが、それを「理解できなかった」と思わないで「なにがすごいのか、なにがおもしろいのか、どこが名作なのか全然わからない」という感想としていたところが中学生のわたしであった。

次にこの作品に向き合ったのは高校生の時で、国語の教科書にその一部が掲載されていた。それを読んで「なにこの面白さ」と驚愕し、駅前の書店にすっとんでいって新潮文庫『こころ』を買い求めて没頭した。すごく面白く読んで共感して(中学生のときには難し過ぎたんだなー)としみじみ考えたが、このとき感じたこと、思ったことが具体的にどういったものであったかはなんにも書き残っていないので細かいことはわからない。

それからたぶん学生時代や二十代のあいだに何回か読み返したと思うが近年はいっこうにその気にならなかった。
12年前の日記に既にこんなことを書いている。

2005年2月17日(木)
◆夏目漱石『こころ』ひさーしぶりに再読するが、この話は少なくとも私にとって同じ漱石でも全然違う、小説を越えた作品であることを確認してしまった。読んでいるとストーリーとかじゃなくて、もう、びしびし精神に訴えかけてくるモノがあるとゆーか。別に同体験や似た経験を持つわけじゃないのに、何故だ。あまりに深く傾倒した若い時代の思いがばばーっと蘇るからだろうか。よくわからない。が、つくづく凄い作品だ。


今回、『漱石漫談』を読んだことをきっかけに久しぶりに読み返してみたが、半分(上 先生と私/中 両親と私)までは真面目に読んだ。この時点で「若い時に繰り返し読み込んだだあけあって、ものすごくよく覚えているなあ」と感じた。(下 先生と遺書)に至っては話のスジはくっきり覚えていてとにかくしんどくて苦しい展開だということはわかっているのでかなり飛ばした読み方となってしまった。

読み返しながら「昔感じたこと」を思い出していったが、田舎の両親へのもどかしいような思いであるとか、騙した叔父への腹立たしさ、そして何より先生と遺書に出てくる恋愛と友情と嫉妬と自尊心への葛藤、罪の意識を負い続ける人生への絶望感などについて、考えたものである。学生になって、漱石自身の履歴を知って、とくに「親」「親戚」と「お金の問題」は自身の苦い思いとも絡んでいるのだろうな、などとも考えた。
とりあえず当時読んでいた時は「お嬢さん」は清くあってほしい、と理想化していた(そういう意味の発言をしたことでよく覚えている)。

今回久しぶりに読んで、感想と云えるほどまとまったものが書ける気がせず、よって上記のように昔の感想などから書きだしてみたわけであるが、いま思うことを書きとどめておきたい。

①昔は確かにこの作品が好きだったし愛読したが、いま読んでも「好きだ」とは思わない。

②お嬢さんは最初はともかく、若い娘なりの「恋のかけひき」みたいなのは自覚していただろう。よって、「私」との結婚が決まった直後に「K」が自殺したことについて本当に何にも自分の心に照らして思うところが無かったわけがない。

③失恋の苦しみ、恋愛絡み、友情絡みで苦しむことは明治だけの話ではなく、現代でも充分多くのひとが共感できることである。だからこの話がそれを中心とした人間の「こころ」のことを描いた小説だと云われたらそのまま理解できるのだが、そこに「明治の精神への殉死」とかいう崇高な次元の違うテーマが絡んでくるから途端にわからなくなる。

④「明治の精神」ってなんだろう? いまとは違う、それどころか「大正」で既に違ったというのだろう、でもこの話は「明治の精神」を絡めなくても充分共感できる。

⑤共感できないところ、たとえば「先生」が妻には最後まで打ち明けないところなんかに、何かあるのだろうか。

⑥Kに自殺され、長年連れ添った夫にも自殺され、静さん(奥さん)の余生が平穏であったとはとても考えられない、主人公は奥さんに先生の遺書の内容を打ち明けたんだろうか、どうしたんだろうか。

同じ漱石の男女の三角関係でも『それから』『門』では妻と夫の問題となっている。漱石の作品については数多くの学者の論文があるから、そういうのを読めばいろいろ勉強できることがあるんだろうけれども、とりあえず「単なる趣味としての読書」レベルで現時点ではこんなところである。
難しい話だ。

2017/05/19

門 【再読】

門 (新潮文庫)
門 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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門

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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
三四郎』『それから』に続く三部作の三作目にあたる本作品。
登場人物の名前や細かい設定は異なるものの、この三作の主人公と親友とヒロインの物語は「地続き」なので、初読みの方は順番取りに読まないと面白くないが、再読なので気の向くままでよかろう、と『三四郎』の気分ではないのでまず『それから』を途中まで読んだところで『門』が読みたくなってちらっと読みかけたらすごく面白くてやめられなくなった。

前に読んだとき(2006年9月)はどんな感想を書いていたのかと自分のブログを見直してビックリ。わあ、なんでこんなに違うの。逆、までいかないけど。強く感じたポイントが全然違う。
確かに過去の影をずっと引き摺っているから暗い側面はあるけど……。確かにこの主人公は弟に対して面倒見が悪すぎるけど……。

今回の再読で感じたのは、まず妻の気配り、人柄が素晴らしい。
家の中で夫に対していつも笑顔でいるというのが「良い奥さんだなあ」と読んでいて気持ち良い。手本としたい。妻だ夫だと区別するのは現代にそぐわないか、つまり「家の中で配偶者どうしがお互いに対して穏やかな表情、笑顔でいられる」ことは双方大変しあわせなことだと思う。
そう思って気を付けて読んでいくと、妻である御米さんも夫である宗助さんもお互いを非常に大事にしていることがそこここに散見できるのである。

しかし一見幸福そうに見えるこの夫婦はまずその夫婦になったいきさつからして決して平穏なものではなかった(過去のいきさつは本書の3分の2くらいまで出て来ず、それまではあくまでほのめかされる。読者はいろんな状況から『それから』の最後がああだったから、その続きね、と了解して読むわけだが)。
そして妻側が夫にも長い間打ち明けられなかった苦しみ。
夫側の悪意の無い、だけどあまりにも無神経な発言に2回ほどヒヤッとさせられた。

今回読んでいて宗助の弟の小六(そういう名前。小学校6年生ではない)がすごく自己中心的で我が儘に感じてイライラしてしまった。
そりゃあ、兄さんも親身にならなさ過ぎで、もっとサクサク働きかけたりすればいいのになあって歯痒いけど…。こういう、万事にとりかかるのが遅いひとっているよなあ、全部先送りにしていくんだよなあ、迷惑だよなあ(それが仕事でこっちにシワ寄せがきたりする場合すごく思う)。

あと、年齢のこと。
明記されていないが弟が旧制高等学校3年で19歳~20歳で、「十ばかり離れている」という描写があったから主人公宗助は30歳前後。妻の御米について年下とも同年ともなんにも書いていないけどまあ25~28歳くらいだろうか。
それにしては随分老成しているというか、落ち着いているなあ。まあ、明治と平成では人間の習熟度が随分違う、七掛けくらいでちょうどいいという説もあるくらいだから。

終盤にある問題が起こって精神的に追い詰められた宗助は救いを求めて禅寺を訪なうのだが、10日の予定。仕事があるからってのもあるんだろうけど10日でどうにかなると思ったんだろうか。そして10日も休める職場っていうのもすごいなあ(これも明治だからか)。あと、御米に問題なんにも打ち明けずに自分だけ逃げる、ってもしバッタリ遭遇してたらどうするつもりだったんだ! と小一時間説教したい。卑怯な男だ。
禅寺の描写はなかなか興味深かった。ここを主にした小説を漱石が書いていたらと妄想してしまう。

最後、いちおう流れでとりあえずは問題が回避され、めでたしめでたし的になるけど、「春」を喜ぶ妻に対して「しかしまたじき冬になるよ」と答える夫の台詞で終わっているのが象徴的である。

2017/05/17

神に頼って走れ! 自転車爆走日本南下旅日記

kindle版
■高野秀行
日替わりセールで上がってきたので購入。
Amazonのレビューがいまいちな感じだったのでどうかと思ったが、しっかり面白かった。

本書は『怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道』のスピンオフ的な作品という感じ。そのへんを詳しく書くと『怪魚…』のネタバレになってしまうで濁すが。『怪魚…』の中の「その後のウモッカ格闘記」の後半に出てくる旅の詳細を書いたのが本書ということになる。

2007年1月~3月、集英社のホームページで毎週連載され、2008年3月文庫化したものの電子書籍版。

要はある個人的な願い事(ウモッカ関連)の願掛けとして、道中の寺社仏閣(道祖神なども含む)にお願いしながら沖縄まで自転車で一人旅をした、その日々の記録である。日記形式のエッセイというか。いつもの高野本のような幻の生物を求めて、みたいなのは無いし、国内に終始するし、外国や異文化もほぼ無いし、軽いといえば軽いので、落胆する向きもあるということかなあ。
何故沖縄なのかはニライカナイと絡めて冒頭に説明(?)があるけれども、正直ほぼ意味不明である。願い事が「インドのウモッカ」なのに何故ニライカナイが出てくるのか、こじつけではないのか、まあ暇すぎていろんな状況に耐え切れずに何とか外に出て活動を、と捏ねくり出した企画だったんでは、と苦笑しつつ楽しく読む。

自転車はマウンテンバイク。詳しくないが、ママチャリとは桁が違うのだろう。
重い荷物を抱えて、1月の寒空の中、1966年生まれのおじさんがひぃはあ言いながら自転車を漕いでいる姿を想像するだに意味不明である。しかも誰に頼まれたでもなく。こんなことを大真面目に仕事としてやってしまう人間が地球広しといえどもそう何人もいるとは思えない。バックパッカーや自転車でどこそこ縦断とか自らやっている方はまた感じ方が違うのかもしれない。わたしとしては、その個人的経験をエンタメとして面白い文章にまとめて提供してくれる高野さんは優れたエンターティナーだと思う。
また本書の終盤で、著者自身、こんなことをやれている自分は有難い身分なのだ、隣の芝生ではなく自分の芝生が青く思えるのは素晴らしいことだというようなことを述べておられ、まったくな、こういう視点を持てるひとだからこそだよな、と深く頷いた。

一人旅ではあるが、旅先に大学探検部時代の友人・先輩などがいて、その家に世話になったりしている。向こうが東京に出てきたときは高野さんがそうしているらしい。なかなか個性的なキャラのひとばかりだったが中でも現在屋久島に住む怪人・野々山さんの逸話は群を飛びぬけて抜いており、強烈過ぎて信じ難いくらいだった。やー…高野さんもかなりだと思っていたけど上には上がいるもんだ…野々山さんに比べたら高野さんなんてふつうのひとだわー。

四万十あたりからより面白くなり、鹿児島から沖縄にかけてさらに面白くなり、沖縄篇が一番面白かった気がする。

目次
まえがき
第1週 1月15日~1月20日(東京~浜松)
第2週 1月21日~1月26日(浜松~奈良)
第3週 1月27日~2月1日(奈良~甲浦)
第4週 2月2日~2月8日(甲浦~四万十)
第5週 2月9日~2月15日(四万十~高千穂)
第6週 2月16日~2月22日(高千穂~鹿児島)
第7週 2月23日~3月1日(鹿児島~奄美大島)
第8週 3月2日~3月6日(奄美大島~那覇)
第9週 3月7日~3月10日(那覇~波照間島)
あとがき

2017/05/16

坑夫

坑夫 (新潮文庫)
坑夫 (新潮文庫)
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夏目 漱石
新潮社
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坑夫
坑夫
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(2012-09-27)
kindle版
■夏目漱石
学生時代に漱石作品を新潮文庫で買って続けて読んでいたとき、有名な作品、自分が興味がある本から手を出していき、本書なんかはタイトルからして泥臭く感じて後回しになっていた。しかも実際読みはじめても全然「わたし個人が夏目漱石の小説に抱いているイメージや、好み、求めているもの」と違うので、非常に恥ずかしい話だが、途中まで読んでほうりなげてしまっていた。

このたび奥泉光・いとうせいこう『漱石漫談』で本作品がとりあげられていたこともあり、kindleで青空文庫版をダウンロードして再挑戦。
数日かけてなんとか最後まで読み通すことができた。

「なんとか」というのはやっぱり読みながら「わたし個人が夏目漱石の小説に抱いているイメージや、好み、求めているもの」とは全然違うなあ、とずっと感じていたからだ。
ただ、もう途中でやめようかなと思いつつも開いて読みはじめたらするする読める。さすがは文豪が新聞連載した小説だけあって、興味がなくともそれなりに面白く読めるようにできているということか。

あと、わたし自身が「これは夏目漱石の小説だ、という固定観念を無視して読もう」という姿勢でいたことか。
青年の苦悩や、プロレタリア文学を読む気持ちで読むと前半の青年のモラトリアムというか自分でどんどん頭の中で思考を沸騰させ行き詰まっていく感じが(このへんの理屈っぽさは、漱石っぽいっちゃー漱石っぽいな)と思えて面白いし、ポン引きや赤毛布、小坊主のキャラクター描写もふだんの漱石の登場人物(だいたい上流階級で知識階層で上品)とは違って市井の労働者たるやかくあらん、とリアルな感じで面白いし、鉱山についてからはその荒くれどもの低レベルな新人イジリは時代関係なくこういうのはありそうだなとリアルに感じるし、布団が不潔で南京虫だらけなこと、食事が非常に貧しいこと(南京米って書いてあるけど主人公は壁紙みたいだと書いてあるから米ですらないのだろうか)などはまさに「時代だなあ」と面白い。

ウィキペディア「抗夫」から引く。【1908年(明治41年)の元日から、東京の『朝日新聞』に91回にわたって、大阪の『朝日新聞』に96回にわたって、掲載された。『虞美人草』についで、漱石が職業作家として書いた2作目の作品。
比較的わかりやすい恋愛がらみのストーリーで華美な文体の『虞美人草』の次がこれって、読者はさぞやギャップに驚いたのではないだろうか。

また、この話が書かれたいきさつはウィキペディアの「解説」の項にもかいつまんで書かれているが、より詳しくは明治四十一年四月十五日の「文章世界」に載った「『坑夫』の作意と自然派伝奇派の交渉」という文章がこれも青空文庫で読める。
要は、漱石自身の体験でも、漱石が頭で作ったアラスジでもなく、ある若い青年の実体験を青年自身が語った内容から、そのうち坑夫関係のところを抜き出して、それも後から若いころの体験を振り返るという形で分析などが可能な形を取って書かれたのがこの小説ということのようだ。

ちょっと印象的な個所を引く。
そして、三時間ばかり話を聞かせた。
それは新聞に書いたのとちがって、おもに坑夫になるまえの話だったが、わたしはパーソナル・アフェア(個人の事情)は書きたくない。向こうの言ったとおりに書けばよいけれども、小説にするにはどうしても話を変化させなきゃならん。すると、その人がきのどくのありさまになるから、なるべくは書きたくない。

おもに坑夫になるまえの話】というのは『坑夫』でほのめかされている主人公と二人の女性の恋愛関係のごたごただと思うのだけれども、そういうのって小説になりやすいような気がするんだけれどもそのへんへの「ネタ元」の青年への配慮とか、漱石の思いが非常に興味深く、いいなあ、と思う。

最後まで読んで、終盤の展開や全体構成バランスには驚いたなあ(鉱山に着くまでと、鉱山についてからの文章の長さと、いざ坑夫になろうとするそこからのある意味「どんでん返し」――と言っていいのかどうか――から5年がわずか数行でまとめられているこのバランスのちぐはぐさというのか、てっきり坑夫になってからの話がメインだと思っていたので…)。

2017/05/15

昔日の客

昔日の客
昔日の客
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関口 良雄
夏葉社
売り上げランキング: 87,908
■関口良雄
この本について知ったのはピースの又吉(直樹)さんの、たぶんエッセイ集が先で、その後テレビやラジオで同じ話をされているのを見聞きしたんだったと思うけど、そのエピソードがあまりにもドラマチックで全ての本好きの夢みたいな話で凄過ぎて、なんだかそれだけで満足してしまっていたというか。
夏葉社「ピースの又吉さんから賞状をいただきました」

セレクトショップ的なちょっと小洒落た本屋さんに行ったらだいたい置いてあって(大きな書店にも置いてあるのだろうけれども意識して探したことがないから不明)、そう、いつも、こっちから求めて探すというよりは、本屋の棚にいつもちょっと特別な扱いで置いてあるのを目にしてはその装丁の美しさに惚れ惚れしつつも、「著者知らんし…。」と。まったく知らないひとの随筆、しかも職業作家ではないひとのそれは躊躇してしまい。
読まないままに来てしまったが、これだけずっと見るたびに気になるのだったら読んでしまったほうがいい、ということで。Amazonで購入。

で、いざ読みはじめたら届いた日(午後着)から読みはじめてその日の夜には読み終わってしまった、226頁しかないし、レイアウトもかなりゆったりしているし、中身が想像以上に面白かったからだ。

職業作家さんの文章ではないが、読みやすく、変な癖もないので、表紙を開けたらするするあっというまに昭和の古き良き時代の古本屋さんの日常に馴染んでいく。日常、といいつつ店主が長年の間に遭遇した出入りの作家さんの面白いエピソードばっかり集めてあるわけだから、にやにやしたり驚いたりしつつですごく面白い。

本書は昭和53年10月に三茶書房より刊行されたものの復刻版(旧仮名づかいだったのは現代仮名づかいになっている)。
初出は、昭和34年から52年くらい(詳しくは巻末の初出一覧がある)。

伊藤整に間違えられた話とか、俳句をメモ代わりに書いて店の壁に吊っておいたら真筆と間違えられる話とか(このご老人、さぞやいままでも贋物をつかまされてきたのだろうなあとその背景を想像しておかしいやら気の毒やら)、ふつうに読んでいたらいきなり三島由紀夫の御尊父が登場して、「ぎゃっ」と驚いていたらすぐそのあとにサラリと三島由紀夫ご本人も馴染みの客(まだブレイクする前)だったとか書いてあって「うおおおお」。

川端康成の目前に恩人のために飛び出て箱書きを依頼するシーンなんか、ひやあああ! もう読んでて大興奮である。しかも快諾とか。凄い~!
川端康成って怖い、厳しいひとのイメージだったから(根拠はあんまりないけど太宰治側からの文章とか読んだせいだろうか)、びっくりした。

なんか「昔、教科書とか文学史とかに載ってたなあ」っていう作家さん、いまも書店に並んでいる作家さんとかの名前がいくつも出てくるのでとても平静には読まれない。ミーハーココロ炸裂☆ って感じである。

古本好きにはしばしばあるように「内容」もさりながら本という「物」が好きだという面もありそうだったが、「物」「古本としての価値」にばかり意識が行ってしまっている学生さんが客としてやってきて、後日反省の手紙を受けとるエピソードもあり、やはり大切なところはきちんとふまえておられた、本好き、小説好き、そして何よりも作家、その人間を尊敬、敬愛していることが伝わってくるから、だからこそ山王書房、関口さんはこんなにも多くのひとに愛されたのだな、ということをしみじみ感じた。

表題にもなっている最後の「昔日の客」は野呂邦暢のエピソードだが、店主の愛娘の結婚の引っ越しを手伝うシーンなど美しすぎて信じられなくて思わず確かめるようにもう一回読んでしまった。

そして、あとがき。何故、著者本人ではなくご子息による物なのか、読んでいくうちにだんだん胸がつまってくる。
知らなかったのか、薄々悟っていらっしゃったのか。
ご健康であれば、もっと書き足したいことがたくさんおありだったのではないか。
いろんなことを、考えてしまう。

装丁が美しいだけではなく、中身も本当に素晴らしい本だった。

目次
正宗白鳥先生訪問記/コロ柿五貫目/虫のいどころ/古本/偽筆の話/上林暁先生訪問記/恋文/伊藤整氏になりすました話/尾崎さんの臨終/最後の電話/汗/お話二つ/イボ地蔵様/二冊の文学書目/泥棒の歌/好色の戒め/某月某日/父の思い出/可愛い愛読者/川端康成「名月」の軸/スワンの娘/洋服二題/寒椿/遠いところへ/駆込み訴え/二人の尾崎先生/自画像/大山蓮華の花/昔日の客/「日本近代文学館」の地下室にて
あとがき/復刊に際して/初出一覧/関口良雄略歴

2017/05/14

かわうそ堀怪談見習い

かわうそ堀怪談見習い
かわうそ堀怪談見習い
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柴崎 友香
KADOKAWA (2017-02-25)
売り上げランキング: 23,484
■柴崎友香
初出は「Mei(冥)」vol.3~5、「小説野生時代」2015年10月号、12月号、2016年2月号に連載された「かわうそ堀怪談見習」。「二六 写真」は書き下ろし。

イラストはフジモトマサルで、表紙は『終電車ならとっくに行ってしまった』より、中の2点は「小説野生時代」より。
装丁は名久井直子。

怖い話は苦手なので基本的にホラーは読まないんだけど、著者が柴崎さんなので「まあ、そんなガチでめっちゃ怖いとか、怖いだけの話、っていうことはないだろう」と踏んだことと、装丁がすごく素敵だったから(フジモトマサルのイラストが使われているだけでなく、表紙の紙の凸凹とか、お、面白い…!)。

休日の朝に読みはじめて家事の合間に読んで夜読了。
200頁くらいしかない本なので、そんなに長くない。200頁しかないのに章が26もある。26の怖い話があるっていう感じでもあるけど、全然なんでもない章もあったりして、このコマ割りはなんだろう、映画のカットのような? なんか面白い効果を生んでいる。シーン、一場面というか。

主人公は小説家の女性で、名前が谷崎友希(ん? どっかで見たことあるような? 柴崎友香 から来てるのかな、主人公は著者の分身なのかな、とか一瞬思わせる設定)。
年齢ははっきり出てこないけど、まあ30代半ば以上かな。とか思いつつ読み進んで後の方で28歳の男性を「まだ28歳」と書いていることなどで裏書できる。(ちなみに柴崎友香さんは1973年生まれ。同世代をイメージしているとしたらアラフォー、ということになる。)
独身ぽい。いままで東京に住んでいて、3年ぶりに故郷に帰ってきた。それが「かわうそ堀」なのである。
古地図のことが書きたくて、でも編集者から恋愛も絡めるように云われて、それがドラマ化して、恋愛に重点をおいて描かれたからいつのまにか「恋愛小説家」扱いされて――って、いうのも『その街の今は』『きょうのできごと』あたりを連想させる――「恋愛」じゃなくて「怪談小説家」になろう、と周囲に「怪談」的な体験を取材していく。
その中で、主人公自身も不思議な説明のつかない体験をしたり、中学の時の友人から昔のことを忘れたのか、とか真顔で聞かれたりする…。

連載だったこともあり、文中に何回も「かわうそ」は獺ではなくて、いろんな説があると書いてある。
つまり音だけ聞くと特定の生き物を連想しちゃうけど、実際はそうじゃない、という、そういわれれば靱公園(うつぼこうえん)とかああいう感じか、とか思いつつ。
架空の土地だろうけど、だいたいどのへんだろうか、と思いめぐらしながら読んでいるとこれも途中で「大阪」とはっきり出てくる。お茶を飲みに「難波」の喫茶店に入ったりもしている。住んでいるのが「西区」というのも出てくる。
大阪市西区を検索してみると、おお、川が多くて地名に「堀」がつくところが多いようだ。靱公園も西区なんだ! おお~。

最初の方に出てきた「鈴木さん」とはなんだったのかとか、主人公が中学の時に体験したのはなんだったのかとか、なんであのときあのひとはああいう表情で主人公を見ていたのかとか、いろんなことがはっきり解明・説明されないままにお話は終わってしまう。まあ、世の中とは、怪異とは、そういうものであろうか、と頭のなかで疑問符をぐるぐるさせつつ。

ちょっと怖い話、でもあるけれど、不思議な話、ファンタジックな面白さというふうにも読めて、面白かった。

2017/05/10

チーズ・イン・コーベ

チーズ・イン・コーベ
チーズ・イン・コーベ
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最果 タヒ
Sunborn
売り上げランキング: 418,563
■最果タヒ(文)・松本直也(写真)
ちょっと変わった風体の本である。
まずサイズ。
170mmx115mmx8mm。
四六版が188mm×130mmなので、やや小さめ。そして薄い。
表紙とかちょっと厚めの紙程度。
学校時代の副読本が近いかな?

中身は右開きで日本語の短篇小説。
最初と途中にカラー写真数点。
左開きでは上記小説の英語翻訳文になっている。

写真は神戸の、別に観光名所でもなんでもない町角風景写真――と思いきや実際に写真をよく見ると「人間」がかなりくっきり写されているなあ、という感じの。

短篇小説は、これまた特にどうということもない短い話で。
主人公は神戸出身で現在は東京の大学生の女の子。
彼女には入学間もないころにたまたま声をかけてくれた女の子の友人がいる。
その子は見た目は可愛いケド性格に問題アリで、ひとのものを盗る。彼氏とか、ジュースとか。
んで全然悪く思っていない。
だからクラスメイトからハブられていて、主人公も「あんな子と友達続けるんなら覚悟しなよ」とか脅される。
で、主人公はその友人について心の中でいろいろ思うところあるんだけど、別に好きってわけでもなさそうだし、でもそんなメンドーな彼女に時々イラッとしつつも友人をやめたいとかも考えなくて、まあ現状維持? 
みたいな話である。

神戸のことを題材にした、神戸の良さを描いた話なんだろうなと予想していたんだけど、そうじゃなかった。
帰省しようとする主人公に友人が閑だから一緒について行ってもいいかと聞く。帰省についてこられるなんて迷惑だと思った主人公が「神戸なんて別に面白い所じゃないよ」といくつかの例を挙げて友人の気を殺ごうとする、その過程で具体的に「神戸中華街」とか「モザイク」とか出てくるだけだ。しかも「横浜のほうが」とか言ってて全然アゲてない。
神戸が全然特別感をもって描かれないので拍子抜けしてしまう。
でもまあ、十代の子が東京の友達に語る故郷ってこんなテンションかも。
郷土への愛も、郷愁も、何よりそれらへの「美化」も、もっと長く離れたり年齢を重ねていないと出て来ない。

神戸というと三宮周辺とか異人館あたりがパッと浮かんで、「観光」「遊びに行く場所」なんだけど、実際はもっと広いしふつうの住宅街があるし「住んでいる町」としてとらえたら全然違うんだろう。
本書は「日常」のふんわりした神戸の雰囲気が伝わる本である。

日本のレトロびん 明治初期から平成までのレアコレクション

日本のレトロびん 明治初期から平成までのレアコレクション

グラフィック社
売り上げランキング: 49,631
■平成ボトル倶楽部 (監修)
日本のレトロな瓶のカラー写真がたくさん載っていて、眺めて「おお……イイ味出してるなあ」と楽しめる本である。
最初「うっとりする」と書いて、ちょっと考えて修正した。うっとりする、というと語弊がありそうだ。そんな華美だったり繊細だったりする瓶はほぼ無くて要するに昭和の実用的な瓶の写真だものな。

コカコーラとか、サイダーとか、ラムネとか、そういう瓶です。
あと、昔は目薬とかも瓶だったらしく、そういうのとか。

しかもどうやって集めるか。
なんと地面を掘るのだそうです!
昔は燃えないゴミは地面に埋められていたと。だから土地の所有者の許可をもらって、掘る。
そうかー…わたしがたまに覗くブログサイトさんは海辺に流れてきたきれいな瓶を蒐集してらしたのでそういうのが主流かと思ってたんだけど逆か、山なのか。

平成ボトルクラブさんのブログがありました。

ブログ見てみたらやっぱり山だけじゃなく海でも拾ってらっしゃった。
ていうか本買わなくてもブログでいっぱい見れたじゃん…って思ったっていうのは禁句ですかね!?

2017/05/07

大阪的 [コーヒーと一冊11]

大阪的 (コーヒーと一冊)
大阪的 (コーヒーと一冊)
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江弘毅 津村記久子
ミシマ社
売り上げランキング: 26,385
■江弘毅・津村記久子
本書は、編集者の江弘毅さんと作家の津村記久子の対談に、津村さんの長めの「まえがき」と両氏の短い「おわりに」、江弘毅さんのエッセイ等で出来ている。
江弘毅さんというのがどういう方かは本書巻末に短いプロフィールが載っていて、1958年生まれの岸和田出身の編集者、ネットとかで見たら「本の雑誌」で『ミーツへの道』連載してたあのひとかー、というところくらいしかわからないが、本書を読んでみたら編集さんはふだんは黒子というか、表には出てこないけど、このひとは「結構ガンガン飛ばしてきはるなー」という感じだ。
だから本書の「コーヒーと一冊」という叢書とか、ミシマ社とか、ある種のスタンス、路線がくっきりしているのかも知れないけど、最初そういうのがぐわっと感じられてちょっと読んで「これは…」といったん放置していたのだけど、気を取り直して読み直した。
「わたしは津村記久子ファンやからこれを読むねん!」
「思想とかそういうのはどうでもええねん!」
という姿勢でいたい。

日本人は「西洋人からみた日本人」というスタイルの本を読むのが好きだ、と昔何かで読んだことがある(『日本人とユダヤ人』の著者はイザヤ・ベンダサンとなっていたけど実は山本七平という日本人のペンネームだったとかなんとか。)
同じくくりで血液型の本とか、県民性の本とか、読んでいるのはそれ以外のひとじゃなくてそれに該当するひとが多いんだろうな、と推測している(調べたわけじゃないけど)。

本書は「大阪人」を扱っていて、わたしは大阪生まれでも大阪育ちでもなくて奈良出身なんだけれども、昔大谷先生の『大阪学』なんか楽しく読んで「そうそう」と頷いたりしていて、結構大阪のことを読むのが好きみたいである。それは大阪に勤めて長い、というのと、なんのかんのでお隣さんやから関わりがあるからだろう。奈良も大阪もそんなに違わないんじゃないかな、ざっくり近畿圏だし。まあ違いもあるのは知ってるけど。とか。
だから本書を読んでいって例えば津村さんが会話の例で大阪の子は出来るけど滋賀はどうかな?とか言ってるのを読むと「あちゃー」という気はする。やっぱり大阪のひとから見たら全然違うんかなーとか。

いやでも根本は個人の差のような気もするけどね。
大阪でも北の方と南の方(キタとミナミの違いもあるけど、もっと広い区域で見ても)では違うといわれたら「まあそうかな」と思うけど、ミナミのひとっぽいキタのひとだっているだろうし、逆もしかりではないのかと。

この本、大阪に全然関係のない、東京とか北海道とか九州の方が読んで面白いのかなあ? どうなんだろう。買う時点で大阪に興味のあるひとだから面白く読むのかもしれない。でも本書に書いてあるこのビミョーな大阪ならではのセンス・ニュアンス、正しく伝わるのかなあ。

「コーヒーと一冊」というシリーズは、短くまとめて「本を一冊最後まで読んだ」という感覚を手軽に味わってもらいたいとかそういう思いから生まれたらしい。この装丁とか、良い味出してる。本単体として見ていい感じだ。
読んだ感じは「雑誌みたいな本やなー」。
結構深い所も突いてるんだけど、対談とかで言いっ放し、みたいな空気もあって、重くしない。評論ぽく硬くしない、喫茶店でコーヒー飲みながら駄弁っているみたいな雰囲気があって。

紙が一枚挟まっていて、全部手書きの紹介パンフレットみたいなことが書いてある。手作り感満載だ。面白い。ホームページにもほかにどんなひとが書いているかが紹介されている。
別にコーヒーについて語っているわけではないが、いちおう最後の裏表紙の裏に「コーヒーとワタシ」というコーナーはある。でもまあ津村さんは明らかに紅茶党ですよね……。

目次
舞台裏からご挨拶
1 まえがき「大阪から来ました」 /津村記久子
「化粧の濃いおばちゃん」/「意外と個性がない」/「もう新しくはなれない」/「真似しきれてない」/「大きな地方として」
2 どこで書くか、大阪弁を使うか問題 /江弘毅・津村記久子
働きながら書いていたこと/書いたもの、関西弁で読む?/三代おってから威張ってください/その場にふさわしい言葉を何通りも知っている/身体化された言葉の使い分け/しゃべっているときに水位の調整ができる大阪人/東京に行ったらわからんようになる、と思っている ほか
3 大阪語に「正しさ」なんてない /江弘毅
4 世の中の場所は全部ローカルだ /江弘毅・津村記久子
大阪には「居場所」がある/天満も福島も全然ちがう、けどなんか似てる/すごいローカルなことを守っている都会/やな学校って、みんな同じ顔して誰がいじめてくるかわからない学校/大阪は最後の巨大な「ローカル連合」 ほか
おわりに
コーヒーとワタシ

ミーツへの道 「街的雑誌」の時代
江 弘毅
本の雑誌社
売り上げランキング: 775,218

大阪学 (新潮文庫)
大阪学 (新潮文庫)
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大谷 晃一
新潮社
売り上げランキング: 315,023

まぬけなこよみ

まぬけなこよみ
まぬけなこよみ
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津村 記久子
平凡社
売り上げランキング: 10,861
■まぬけなこよみ
本書は「ウェブ平凡」に2012年9月24日から2015年9月18日まで連載された「まぬけなこよみ」に加筆修正されたもの。「お鍋の幸福」「藤棚に入る」は書き下ろし。

このウェブ連載の存在は知っていた。ネットで「津村記久子」を検索したら出てきたので2,3回ナナメに読んだことはあったが例によってネットでは熟読できない性質なので「エッセイか。本になったら読もう」と思っていた。
いまくだんのページを見に行ったら最終回が「第七十二回 ツバメと縁結び」で終わっていた。
単行本で「ツバメと縁結び」は218頁から始まっている。本書は全部で298頁までページ番号が振られている。
ネットのそのページにある「目次」に並んでいる順序で単行本の「目次」は並んでいない。間に違うのが入っていたりする。
そもそも連載は9月下旬から始まっているが、単行本の最初は「初詣」である。
つまり3年にわたった連載を、正月を起点として暦順に並べ直したのが単行本ということであろう。

本書は【脱力系歳時記エッセイ】であり各エッセイの冒頭に「季節のことば」としてテーマとなっている事象を掲載し、各文末に該当時期の二十四節気七十二侯が記されている。
「歳時記」と「津村記久子」といえば、別のエッセイでそういう小説を書いたらどうだろうみたいな言及があって「面白そう~」って思ってこのブログで書いた覚えがあったな、でもこれはエッセイだから思ってたやつと違うな、と調べてみたら
やりたいことは二度寝だけ』の「Ⅳ 作家で会社員」の章(雑誌「本」「文學界」「本の旅人」「yom yom」「群像」、東京新聞夕刊、未来研会報、産経新聞夕刊(大阪版)に2008年~2010年に掲載されたもの)にある「個人的な歳時記」で「すべての行動を歳時記にのっとって生きている人」の話、が書いてあったようだ。
つまり時系列的にこのエッセイを受けて平凡社の編集さんが依頼して、という平仄が合うなあ、ふーん、そうかそうか…。

目次
新年
初詣はめでたくつめたい/かるたの宇宙/一月のエビスマス ほか
冬から春へ
厄除け後のゆるゆる/高校は筆談の彼方に/チョコレートの独特/咳と体 ほか
春から夏へ
自転車の頃/寿司とカーネーション/花咲く通学路/薔薇との距離感 ほか
夏から秋へ
ガラス戸越しの稲妻/土日ダイヤお盆クラブ/手のひらの中の蚊/いつのまにかお菓子 ほか
秋から冬へ
膝掛けを持った渡り鳥/ライフワーク千歳飴/ボタンと夢想/イトガワさんのみかん ほか

目次のごく一部を写してみたが、これを見ていただければわかるようにタイトルだけ見ても別に「なるほど歳時記、二十四節気を意識したエッセイだ」という感じはしない。ごくごく普通の日常エッセイ集のようである。
で、実際頭から終わりまで通して読み終わった感想としても、実はおんなじような感じなのである。
もしそういうのを強く出すのであれば各話ごとに季語をつかった俳句でも詠んであれば最高だったのだが、まあ津村さんは俳句はされないのであろう。
そもそも日本人の日常に季節感はあまりにも浸透しすぎており、我々一般人の日常会話のもっともあたりさわりのないテーマとしてあるくらいだから、季節にちなんだ随筆・エッセイというのは殊更それに特化せずともふつうに書かれてきた。だから逆にそれを「テーマですよ」とするならばかなり意識して作り込んでいかなければ目立ちはしない、――そういうことだろう。

上に挙げた目次の例えば「高校は筆談の彼方に」ってどんな季節のことば? と思ったら「試験」。2月10日くらいの二十四節気は「立春」で七十二侯は「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」、この時期のために書かれたエッセイとのこと。
「試験」って立春の頃の季節の言葉なのか、そうか、試験って年何回かあるけど…高校入試とかは3月の頭くらいのイメージが強いけど…そうなのかなあ。
ちなみに『歳時記』を持っていないのでネットでちょっとググってみたけど「大試験」っていう言葉が出てくるんだけど「大試験」って日常生活ではつかわない言葉のような…やっぱ俳句の世界のルールってことなんだろうか。

純粋に本書の感想を全然書いていないので書いておくと、まあ、いつもの津村さん、だけどあんまり会社ネタは無いかな? 長年二足のわらじをされていたが2012年に退職されて専業作家となった、その後に書かれたエッセイだからというのも大きいか。
ごく幼い頃のことが多い印象。
津村さんのご両親は津村さんが幼い頃に離婚されたというのは他の書でも書いてあったけどその父方のおばあ様についての記述があったりするのが珍しい。他のエッセイではよく出てくるネットで検索するスポーツの事や洋画のことはあんまり出てこない。実際に津村さんが動いて、その時期に戸外でされたことが書いてあるのが多いというのはある意味やや珍しいような気がしないでもない。

血液型がO型ということ、蚊によく刺される、という記述があり、わたしも同様なので大いに共感!
津村さんは昔ぜんそくもちで、風邪をひくということにあんまり拒否感がないみたいなんだけど、これには共感できなかった。風邪はひかないに越したことは無い。咳は本当にしんどいし、周囲にも気をつかうし、会社は休めないし……。
津村さんがじゃがいもがかなり好き(95頁など)で、魚介は駄目(183頁など)、というのは他でも書いてあったのかもしれないが、わたし的には本書で「へえーそうだったのかー」という認識だった。じゃがいもは確かに美味しいですが野菜の中で一番好きとして上げるかというと……わたしは野菜で何が一番好きだろう、そういうくくりで考えたことがまずなかったな! という新鮮な気持ちになる。えーとえーと、ズッキーニとセロリかな? 
千歳飴への熱い思いなどは異邦人を見つめるような気持ちで読んだが、そういえばあれ、最後まで食べきった記憶は無いな、確かに。
コンビニおでんを自分から食べたことは一回もないので津村さんが会社員時代の昼食にかなり入れあげていたというのは(家で食べるおでんとはかなり異なるらしい)なかなか興味深かった(でもこれからも自分で買い求めることはないだろう)。

ほんとにいつも思うが、年齢も住んでいる県も性別もまあまあ近いのに、津村さんの日常とわたしの日常はこんなにも違う、でも、あ、たまに重なる、…というのが津村記久子を読む楽しみであり、面白さである。

2017/05/04

漱石漫談

漱石漫談
漱石漫談
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いとうせいこう 奥泉光
河出書房新社
売り上げランキング: 21,829
■いとうせいこう・奥泉光
文芸漫談 笑うブンガク入門』(文庫では『小説の聖典』に改題)、『世界文学は面白い。文芸漫談で世界一周』に続くいとうせいこうと奥泉光の文芸漫談シリーズ第3弾はなんと一冊まるごと夏目漱石! 生誕150年企画、だそうである。
表紙に施川ユウキのド嬢(『バーナード嬢曰く。』(既刊1~3巻)が描かれているが、中身の8章それぞれの中表紙でもド嬢の2コマ漫画が楽しめるお得な一冊だ。

目次】を見ていただければこのシリーズを未読の方にもその自由で気軽に「楽しんじゃおうよ!」という姿勢が伝わるのではないかと思う。

はじめに 「文芸漫談」とは?

鮮血飛び散る過剰スプラッター小説 『こころ
「青春小説」に見せかけた超「実験小説」 『三四郎
猫温泉にゆっくりお入りください 『吾輩は猫である
ちょっと淋しい童貞小説 『坊っちゃん
反物語かつ非人情 『草枕
人生の苦さをぐっとかみしめる 『
ディスコミュニケーションを正面から捉えた 『行人
プロレタリア文学の先駆け 『坑夫

おわりに 「漱石ランド」から愛をこめて


急いで言い添えておきたいのだが、おふたりとも漱石は激ラブ! 超尊敬! という下地があって、しっかりテキスト読み込んで、そのうえであくまで「トークショー」「エンタメ」するために遊んで楽しんでいらっしゃる。それは読めばわかる。だから「目次」だけ見て「おのれ漱石先生を愚弄する気か…!」とか短気を起こさないでいただきたい。

わたしは『草枕』が大好きで、いままで何十回と読み返してきて、それは本書で奥泉先生もおっしゃっているように「通し」だけではなく「部分」を折に触れてぱっと開いて読んでそれだけでもう面白い、という感じを堪能しているのだが、本書の漫談を読んで耐え切れず吹き出すことが何度かあった。あはははは。そこツッコンじゃっていいんだー、ってゆーか確かにそーだよねーwww みたいな。
もー、おふたりとも面白いんだから~!

この本は夏目漱石を未読の方は「えっ、そーゆー話なの?」、既読の方は「おお、そーゆー読み方もアリか!」ってな感じでどういう立場でも楽しく面白く読むことが出来ると思う。
あるいは「昔読んだけど細かいところは忘れたなあ…」なんて方にもさらりとあらすじを紹介しつつ細かいポイントについて触れてくるので「そうだったなあ」「久しぶりに読み返してみるか」なんて気になるかも。

もちろんネタバレは絶対にイヤだ! って方はどうぞ夏目漱石原典をお読みになってから本書にお進みください。
まあでも『こころ』の章でおふたりがおっしゃってるけど『こころ』の先生が最終的にどうなるか、なんてのは奥泉先生いわく「国民的にネタバレしてますからね」。
……確かにそうかも。

こころ』をBL的(同性愛的)に解釈するとかはわりとメジャーなアプローチの方法らしいんだけど(?)、あらためて細かく指摘されるとそうか……というか。ここで注意しておきたいのは漱石の時代の「同性愛」は江戸の空気を引き摺っているから、現代の感覚とは異なる、ということである。
それにしても『こころ』ってプロの小説家から見たら失敗作(?)なのか。まあ「手紙」が長すぎるっていうのはそうだけど、なんとなく漱石先生に間違いがある筈がナイ、とか思っちゃってるところがなきにしもあらずで。
そういう指摘も決してけなす意味で書いていないところが、安心して読めるゆえんなんだけどね。

本書で何度も出てくるのが漱石の「孤独」。

漱石の孤独はすごく独特で、どういう孤独かというと、つまりひとりでいるという孤独じゃない。ひとりになっちゃう孤独なんかたいしたことない。そうではなくて、人とコミュニケーションして、失敗しちゃう孤独なんですよ。】(60頁)

うおおおお、そうだ、本当にそうだなあ~…。
さすが奥泉先生、卓見!

行人』なんてわたしは長男の性格がやってられねーなー的な鬱陶しい小説だという印象しかないのだが(オイ)、この漫談読んで「あれっ、そんなふうな話だったっけ」って思わず青空文庫でダウンロードしてナナメに読み直しちゃいましたからね……で、「やっぱこの長男あかんわー、好かんわー」って感じですケドも。

とりあえずやっぱ漱石先生は凄い! っていうことなんだと。
奥泉先生は漱石先生が凄すぎて本を取り落したりしてます。
凄いですよね。

小説の聖典 (河出文庫)
小説の聖典 (河出文庫)
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河出書房新社 (2016-08-05)
売り上げランキング: 28,960
↑注意:単行本版『文芸漫談 笑うブンガク入門』を改題した文庫版。

バーナード嬢曰く。: 1 (REXコミックス)
一迅社 (2014-04-18)
売り上げランキング: 1,944

2017/05/03

本屋さんに憩う 第16回

某月某日
京都観光のついでに左京区浄土寺のホホホ座に行ってきました。
ネットで見てると三条とかにもあるみたいですね。
浄土寺バス停から降りて道沿いに歩いて左に折れてすぐ。ちょっと引っ込んでいる感じ。

1階が新刊本(雑誌と単行本と文庫とCD)、2階が古本と雑貨(わたしが行ったときは焼き物系の食器のみ)。

ガケ書房のときよりスッキリした店内になったかなあという印象。本の総量とかも減ったような。
置いてある本はふつうの書店に売っているような単行本・文庫もあるけど、ここならでは、の自家製本?っぽいのも。
ごちゃごちゃしていなくて、おしゃれな雑貨屋さんで本を見るような感覚。

なんか変わった文句が書かれたキャップ(帽子)とかあれも売り物だったのかなー。
2階の古本屋さんは外階段から上がるとまず安い本が外に置かれていて、中は絵本とか、芸術系が目立ったかな?

気になったけど買わなかった本
これはそのなかでも比較的メジャーな感じの。
他にもいろいろ気になった変わった本がありましたが記憶頼みなので覚えていない…あとAmazonで見つけられない。
漫画もあったけど変わったの置いてましたねえ…。
棚を見ているだけで面白い本屋さんですが哲学の道とか銀閣寺とか近いのでそのついでくらいがいいかもです。

昔日の客
昔日の客
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関口 良雄
夏葉社
売り上げランキング: 78,964
この手のお店に行くとまずありますね。奥付をみたら9刷。
脚本版 ほしいものはなんですか? (コーヒーと一冊)
益田ミリ
ミシマ社
売り上げランキング: 290,471
この前津村記久子さんのを買ったシリーズだ。
リバティプリント 100枚レターブック

パイインターナショナル (2017-04-11)
売り上げランキング: 2,903
可愛い。全部便箋になっている。


購入したのはこの1冊
神原博之『チャイの旅』ギャンビット/2017.3.17

チャイの旅  チャイと、チャイ目線で見る紅茶・日本茶・中国茶 ([テキスト])
神原博之
ギャンビット
売り上げランキング: 13,842

2017/05/02

本屋さんに憩う 第15回

某月某日
梨木香歩の新刊(と、云っていいのか?)が出ているのはわかっているのに先週末行きそびれた。ので近所の本屋を覗くが、やはり置いていなかった。そもそもこの本屋で梨木香歩の本見たことないもんなー。

某月某日
デカい本屋に行くとたくさん欲しい本が出てしまいそうなので(未読本が溜まってるんであんまり積んどきたくないので)、ピンポイントで欲しい本だけ買うつもりで会社最寄りの駅前書店に。
無いかな? と思ってよく見たら棚差しで1冊だけあった…!
そしてその後「いちおう」と他の棚も見て回ったらお、面白そうな本がいっぱい…! 目に毒だ…!
なっきーの新刊だけ買うはずだったのになんで「漱石」「いとうせいこう」「ド嬢表紙」とか揃っちゃうの…っ!
嬉しい悲鳴とはこのことざんす!!!
このチェーン店あんま好きじゃないんだけど認めるよ…… 
イイ仕事してんなこの本屋!

..。.:*・゜(n´∀`)η゚・*:.。.

買わなかった本。でも今日のは見送ったけどいずれ買いそうな予感満載だなあ…。

最愛の子ども
最愛の子ども
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松浦 理英子
文藝春秋
売り上げランキング: 24,425
綺麗な青! って、あらっ、松浦さんだー。ってことはエキセントリックだったりするのかなー。帯の文句から推してなんか重そうだなあ…ってんで保留。

団地のはなし 彼女と団地の8つの物語
山内マリコ 最果タヒ 茂木綾子 ジェーン・スー 佐々木俊尚 菊池亜希子 松田青子 黑田菜月 カシワイ
青幻舎
売り上げランキング: 51,162
サイズとか、カバーの質感とか、装丁が変わってるなーと手にとったら何この執筆陣の面白そうなの! だがしかし知らない人も多いしアンソロジーはある種バクチだからどーしましょー。保留。

観なかった映画
観なかった映画
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長嶋 有
文藝春秋
売り上げランキング: 47,825
長嶋有の著作は買うに決まってるんだけど、映画…映画ほっとんど観ない人間が読んで果たして面白いんだろうかという一抹の不安があってとりあえず保留。

購入したのは以下2冊。

梨木香歩『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』新潮社/2017年4月25日発行

西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 14,616

いとうせいこう・奥泉光『漱石漫談』河出書房新社/2017年4月30日発行

漱石漫談
漱石漫談
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いとうせいこう 奥泉光
河出書房新社
売り上げランキング: 31,086