2016/12/31

Amazonで変なもの売ってる

Amazonで変なもの売ってる
谷山浩子
イースト・プレス
売り上げランキング: 63,654
■谷山浩子
イースト・プレス2014年8月20日刊。
初出「マトグロッソ」2012年4月~2014年4月。
装画 大山美鈴
装丁 川名潤(prigraphics)

マトグロッソ」って以前、高野文子が『ドミトリーともきんす』連載してたAmazonのコンテンツという認識だったのだが「あとがき」によればこの本の連載中にAmazonを離れたらしい。
http://matogrosso.jp/

本書は帯によれば【待望の20年ぶり新作小説!】だそう。
出版された当時Amazonで見掛けて「面白いタイトルだなー」って思ったけど購入に至らず、そのまま忘れていた、のを先日地元書店で見つけてまだ初版が残っていたのでこれは御縁だなあ――と思ったのでお買い上げ。

ファンタジーはあまり読まないのだが、なんだか読みはじめてすぐに子どもの頃、面白そうな本を開いたときの気持ちを思い出した。
ネットショッピングが大好きな花見山ミカルとその妹のハルルの不思議なちょっとした体験。
別に大冒険はしないし、お話によくある「悪いもの(を倒す・から助ける)」というのもない。
「どんなアラスジ?」と訊かれたら「うーん…うまく説明するのが難しいけどなんだかふわっふわっした、へんちくりんなお話」とでも答えるかな?
最後のほうはあまりにも混沌が進んで正直ちょっとよくわからなかくなってきて、いったいどう着地するのかなあ、なにが言いたいのかなあって気持ちにもなったけど。
でもなかなか面白かった。悪くない。
主人公の姉妹が全然「良い子」じゃないところがイイんだよね。
それどころか、勝手だし自己チューだし、自分の世界にひたってる。
お父さんもぐらぐらだし、お母さんは人(我が子)の話を聞かないし。
まあでもいるよねーこういうひとたちって感じ。

これ、質の良いアニメーションで観たいなあ…。

2016/12/30

本屋さんに憩う 第2回

某月某日
近所の本屋さん。
購入はしないけど「へえ」と思ったもの。
まだこのシリーズって続いてたのか。
原題は"Brush Back"V.I. Warshawski 17。2015年。
女探偵 V・I・ウォーショースキーの長篇第17作。
第1作だけ昔読んだなあ、いまは表紙が変わってるんだー(日記を調べたら2005年の2月24日、25日に読んでるけど特に感想は書いていなかった)。
第1作"Indemnity Only"の原著が出版されたのは1982年だから、長いことやってるなあ。
昔のは江口寿史さんによるイラスト。
新しいのは「まきお」さんというイラストレーターによるものらしい。

カウンター・ポイント (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サラ・パレツキー
早川書房
売り上げランキング: 2,371
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サラ・パレツキー
早川書房
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サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))
サラ・パレツキー
早川書房
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購入したのはこれ↓
『Amazonで変なもの売ってる』谷山浩子/イースト・プレス
2014年8月に出た本を今頃買う。
当時Amazonでタイトル見て「面白そうなタイトルだな」と思ったけど買わなかったやつ。小さな書店で単行本既刊コーナーは両手広げた程度でたぶんずっと置いてあっただろうに目に入ってなかったのかな、奥付みたらまだ初版のまま、よくぞ返品されなかったねと。装幀がむちゃくちゃ可愛い。完全なタイトル&表紙買いです。谷山浩子さんって歌手だけど調べたら結構お話も書かれているんですね(周知の事実らしいけど知らなかった…)。
こういうのをあえてAmazonで買わずにリアル書店で買うのがイイよね!?

Amazonで変なもの売ってる
イースト・プレス (2015-01-23)
売り上げランキング: 54,389

2016/12/28

本屋さんに憩う 第1回

無精なわたしがリアル本屋さんに行く機会を増やすための企画です

某月某日
勤め先近くの本屋さん。
気になった本は以下4点だが、この日はいずれも購入せず。

三島屋変調百物語シリーズの三を読んだ覚えが無い…。
松田青子は気になるが「アンデル」で2回分読んで合わなかったんだけど書籍でまとめて読んだらまた違うだろうか…。
星野源さんも気になるけどちらっと中を見たらタイトルから想像したのと違ったので保留。
みうらじゅんのムックは…もうちょっと写真が多かったらなあ。

三鬼 三島屋変調百物語四之続
宮部 みゆき
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 229
おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are
松田 青子
中央公論新社
売り上げランキング: 11,562
働く男 (文春文庫)
働く男 (文春文庫)
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星野 源
文藝春秋 (2015-09-02)
売り上げランキング: 19
ユリイカ 2017年1月臨時増刊号 総特集◎みうらじゅん SINCE1958
みうらじゅん 安斎 肇 田口トモロヲ 井上揚水 いとうせいこう 泉麻人 峯田和伸 前野健太
青土社 (2016-12-12)
売り上げランキング: 583

2016/12/27

督促OL 修行日記

督促OL 修行日記 (文春文庫)
文藝春秋 (2015-03-13)
売り上げランキング: 623
kindle版
■榎本まみ
12/18の日替わりセールで¥199で購入してあったもの。今朝の通勤で読みはじめたら「督促」という重そうなテーマにもかかわらず徹底してライトな書きっぷりでするすると気軽に読むことが出来、面白かったので昼休み→帰りの電車→お風呂読書で読了。
一番ぐっときて、後からぐわーっといろんな思いが押し寄せたのは、「おわりに」で、
【私はこの本を三人の人に届けたくて書きました。】
その、三人目、というのが、……これ、ここで書いちゃって、いいのかな?
駄目、な気がする。
というわけで、書きません。

できれば先に「おわりに」を読むんじゃなくて、ふつうに最初から読んで行って、榎本さんの日常の努力を明るくライトに書くその見事さに「あはは」と笑い、「でもちょっと参考になるかも?」「仕事や困った日常に応用できるかも?」と頷きながら楽しんでもらいたい。そして最後の「おわりに」を読んで「あっ」と思ってもらいたい。
そのご苦労を1ミリも出さずに本編を書き上げたN本さん、いや榎本さん、あなたは偉い!!

【目次】
はじめに
01 ここは強制収容所?
1時間に60本の電話!?
耳をつんざき罵声で脳が凍死……
13名のイケニエたち
パンデミック勃発!

02〝ブラック部署″の紅一点!
イケメンパラダイスの夢かぶれ……
海千山千の多重債務者たち
勤務時間は朝7時から終電!?
朝から戦争……
夜9時からは「手紙の時間」
ゴールデンウィーク後、涙の12連勤
督促OLのコミュ・テク!その1  約束日時は相手に言わせる

03 ストーカー疑惑と襲撃予告
会社名を名乗れない苦悩
通報されそうに!?
初の指名電話は〝襲撃予告″
ガソリンが撒かれていたことも……
そしてついに、爆破予告
大長編私小説を読むのも仕事
私、回収の才能なさすぎ!?
お客を信じてはいけない
督促OLのコミュ・テク!その2 「お金返して!」と言わずにお金を回収するテクニック

04 謎の奇病に襲われる……
やっぱり、心・因・性!?
カウンセリングはビジネスライク
そして、彼もいなくなった……
ユニクロパンツから紙パンツ
サークルのOB会で 93
キラ星のような同期たち
督促OLのコミュ・テク!その3  いきなり怒鳴られた時に相手に反撃する方法

05 自分の身は自分で守る
先輩からワザを盗め
電話キョーフ症を脱出
小さな大発見
バディ交渉術!
お客さまトレード
悔しさと意地を捨てる
お客さまタイプ別攻略法
お金があっても払わない「論理タイプ」
督促女子のお客さま研究会
女子力は不可能を可能にする
督促OLのコミュ・テク!その4  厳しいことを言う時のツンデレ・クロージング

06 N本、大抜擢される
生き残っているだけで、エライ
年間2000億の回収部署へ
入社半年で上司!?
コールセンターの青いあくま
また一人ダメに……
「N本さんごめん」去っていくオペレーターさんたち
同期が倒れた日
不幸になる仕事

07 自尊心を埋める
自尊心との闘い
感情労働はツライよ
エース・イケメンM井さんのメントレ
悪口辞典
怒鳴られることが待ち遠しい!
話し方に自信をつける方法
督促OLのコミュ・テク!その5  クレームには付箋モードで反撃

08 濃すぎる人間修行
呪いの水晶玉
カネと泪と男と女
彼氏に湧き上がる怒り
悪いオンナにだまされて
心根の優しい人たち
家出の責任を取らされる!?
回収率100%の奇跡の債権?
一瞬の沈黙の後に……
督促OLのコミュ・テク!その6  「誤ればいいと思ってんだろ!」と言われない謝り方

09 センパイ武勇伝
督促の過去
気の優しいおばあさんが……
真っ黒な街宣車がやってきた
督促今昔物語
信用のない人は救急車も助けてくれない
督促OLのコミュ・テク!その7  「ごめんなさい」と「ありがとうございます」の黄金比

10 合コンサバイバル
督促OLの都市伝説
督促修行で〝だめんず″好きに終止符
肩書き系からも卒業
督促OLのコミュ・テク!その8  声だけ美人になる方法

11仕事からもらった武器と盾
弱者には弱者の戦い方がある
心の通り魔
涙味のお菓子
血の通った熱い悪口、求む

おわりに/参考文献

解説は佐藤優さんなんだー! でも電子書籍版では割愛されてるので読めないー! うわー佐藤さんの解説読みたかったなあ!
ネットでググったら「本の話」に佐藤さんのコメントが掲載されていた。
文庫版あとがきも割愛されてたのはどうしてだー!

榎本さんはアメブロもやっておられるようだ「督促OLの回収4コマブログ」。数ページ遡っていったら「旦那」とか出てきてもっと遡ったら今年結婚されたらしく「結婚修行日記」というブログもやっておられるらしい。
ブログは4コマ漫画中心なんですね。あ、この本は活字本です。ネットを先に見られたら誤解があるかも…。

2016/12/25

ACCA13区監察課

ACCA13区監察課(6)(完) (ビッグガンガンコミックススーパー)
オノ・ナツメ
スクウェア・エニックス (2016-12-24)
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ACCA13区監察課 6巻【デジタル限定特装版】 (デジタル版ビッグガンガンコミックスSUPER)
スクウェア・エニックス (2016-12-24)
売り上げランキング: 289

■オノナツメ
完結。全6巻。
でも番外篇の連載がはじまったというからどうなるのかなー。
2015年に読んだ本ベストテンでとりあげさせていただきました。
6巻はなかなかのぐるんぐるん急展開だったです。
ミステリーというかスパイものっぽい、でも王道で。
面白かったー。
ニーノが好きです。あと、モーヴ(本部長)が素敵です。
一番面白かった区はジュモーク区! なんでも大きいのが。果物とかお菓子とか食パンが大きいのが面白い。
住むのはバードンが便利そうな気はします。
絶対住みたくない区はあのコワいところですね…。

通常版と、デジタル限定特装版がありますが値段は同じですね。中身もたぶん同じはず…片っぽしか買ってませんので確認はしていませんが。
特装版はデジタル限定・kindle版なので紙媒体ではありませんので注意!

2017年1月テレビアニメ化するそうです。深夜枠ですねー。
http://acca-anime.com/

オノナツメさんのコミックスは「GENTE」(全3巻)も大好きです。「リストランテ・パラディーゾ」を先に読むほうがいいかもです。

GENTE  1 (Fx COMICS)
GENTE 1 (Fx COMICS)
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オノ・ナツメ
太田出版
売り上げランキング: 48,676

2016/12/24

目黒考二の何もない日々 2007-2016

目黒考二の何もない日々
目黒考二の何もない日々
posted with amazlet at 16.12.24
目黒考二
百年書房
売り上げランキング: 615,464
■目黒考二
先日久しぶりにweb「本の雑誌」を覗いたら「目黒考二の何もない日々」12月2日「私家版」という記事があって、要するに『笹塚日記』シリーズ4巻の続きにあたる「町田日記」ならぬ「目黒考二の何もない日々」を古希の記念にまとめた私家版を作ったが、それ(サイン入り)を「本の雑誌WEBストア」でも扱っているということだった。
おお、それは是非読みたいと購入(わたしが見たときはAmazonで古書店さんの扱いも上がっていたけどやっぱり正規ルートの本の雑誌WEBストアから。使えるクレジットカード会社が限られていた。便利に慣れ過ぎているとこの程度でも「あれっ」って思っちゃいますネ、反省)。

12月9日夜に発注して、12日に商品の発送が完了しましたメールが来て、ゆうメールで15日に届いた。14日に届かなかったのでおかしいなーと思っていたのでほっとした。便利に慣れ過ぎてるって恐い(2回目)。
宛名シールが若い女の子の手書き! かわいい字だなあ。助っ人制度ってまだ残ってるのかしら。中の領収証の書名、金額も手書き。共信サンライトのKP封筒B6を使っている。
ふーん、本の雑誌らしいなあ。
WEBでずっと読んでいる、というひとは既読のものばかりだろうが、わたしはネットで娯楽のための流し読みは出来ても「読書」としては熟読出来ないタイプなので書籍化はありがたい。

ということで15日から手元にあったのだけどなんのかのでようやく今日、中身に手をつけた。
「はじめに」によれば、全部載せると本が分厚くなってしまうので結構最初のほうは削ったそうだ。

まだ拾い読みでとりあえず最後までざっくり目を通した程度だが、「家に帰らない」のではなくて「動かない」だけ説、「大森望スペシャル」の話とか、やっぱり面白いなあ。空気はひたすらまったり。
思ったより書評とか本の具体的なタイトルが少なくて、そういえば『笹塚日記』でも何を読んだか書いてあるだけで書評はほぼ無かったなあと思い出す。

目黒さんがこれまで書いた文庫本の解説リストを作った個人ファンのひとが最初の方に出てきて、その後も何度か目黒さんがお礼を書いているけど、どうやってそんなこと出来たんだろうと思ったら後の方で地道に古本屋で探して…というやりかただったと書いてあり、すごいなあ。絶版になっている本も多いから新刊じゃ無理なんだね。でも図書館じゃなく、古本屋で購入しているのがすごい。目黒さんがまた、ご本人の仕事なのに覚えていないことが多いっていう御仁だもんね…(それがイイんだけど)。

百年書房っていうのはググったら自分史とかを扱う出版社らしいのだけど、本には書籍表紙デザインを使った専用のしおりも挟まれていて、ちゃんとしてるなあ。本そのものはシンプルな作り。2段組。289ページ。
目黒さんのサインってそういえば初めて。
「目黒考二」って書いてあるんだろうけど、ぱっと見たら「目里斤二」に近い。かなり丸っこい字。
本の雑誌WEBストアの商品紹介のページに載っているサインよりだいぶ崩れている。たくさん書いてだんだん疲れて面倒になってこうなったんだろうなあ。

2016/12/23

2016年に読んだ本ベストテン 発表


翌の読書手帖


2016年に読んだ本ベストテンの記事を公開いたしました。

このページの上のところにある「年間ベストテン」から該当ページでご覧下さいm(_ _)m

↑のサンタさんの写真からもリンクはってあります。


いきあたりばったりでノートPCの上で撮影しました。
ピンクがくどいですねー 別にピンク好きじゃないんですよ(説得力皆無)。
キーボードが光る 無駄な(?)機能が初めて役に立ちました(爆)。

2016/12/22

この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇

kindle版
■池上彰
12/17の日替わりセールで¥199で購入。
池上彰の東工大講義シリーズ第2弾。
(第3弾学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇』の感想はこちら
2013年3月文藝春秋社単行本刊、2015年7月文春文庫刊の電子書籍版。

やっぱり池上さんわかりやすいなー。というか、面白いんだよね。なんでこんなに面白いのかなあ。
テレビのニュースやなんかで見聞きして漠然と知っていること、でも学校の授業では習ったことがないこと。
時系列順に、系統だてて説明してくれるから、頭の中で整理整頓されてすっとおさまる。

たとえば学校紛争のこと。
そういうことが「あった」っていうのは先生とかがたまに発言するので知ってるけど、いまは政治家とかがアホなことしてもみんな何も行動を起こさない。なんで昔の学生はそんなに団結して行動できたのかなあ、と、わたしが大学生だった頃(もう随分前だ)ですら不思議に思っていた。いまの学生は無気力で、昔の学生は活気があったのかなーと。
Lecture12 全共闘 1968年、なぜ学生は怒り狂ったのか」の章で池上さんの言葉を拾ってみると、
いまでは考えられない意識ですが、これが当時の空気というものでした。
当時は、ごくささいなことでも学生たちが怒っていたんだね。なぜあんなに皆が怒っていたのか。いまとなっては追体験できないけれど、それが、あの時代の空気だったんだ。
【(当時は)大学生は、まだまだエリート。世の中の矛盾に目が向き、なんとか現状を改革したいという正義感を抱くようになります。しかし、その多くは、ひとりよがりの行動でした。これが、さまざまな反乱を引き起こしたのです。
そして最後に
いまになってみると、なぜあんなことが起きたのか、理由がつかめません。1968年(昭和43年)前後に世界で同時的に発生した学生の反乱。その分析は、現代史のひとつの課題でもあるのです。
と締めている。
つまり答えはわからん、と。えー。
また、「文庫版あとがき」で
現代史を若者に教えるのは、むずかしいものです。教える側にとっては、1960年代の高度経済成長や学生の反乱、バブルの発生と消滅は、まさに私が体験してきた「現代の出来事」でした。
ところが、私の話を聞く学生にとっては、「遠い過去の歴史」でしかありません。
(中略)
でも、そうした冷めた分析は、いまだからこそできること。当時は、学生も大学側も真剣だったのです。これが歴史評価のむずかしさでしょう。
歴史的な出来事を、現代の視点から斬って捨てることは容易ですが、それでは歴史から学ぶことはできません。
とも書いている。
渦中にいたからわかる「空気」を体験していない者に論理的に伝えるのは難しい。
もっと後になったら、「答え」が出てくるのでしょうか。
まあある種の「流行」だったんだとは思う。「正義感」で「高揚」してたんでしょう。でもそんな「空気」で人が死ぬまで行っているのがものすごく恐ろしい。
やっぱり歴史は知らないと、学ばないといけませんね。

【目次】
はじめに なぜ「現代史の学び方」なのか
Lecture1 原子力 事故からわかる「想定外」のなくし方
Lecture2 復興 どうやって敗戦の焼け跡から再生したのか?
Lecture3 自衛隊と憲法 「軍隊ではない」で通用するのか
Lecture4 政治 55年体制から連立政権ばかりになったわけ
Lecture5 日米安保 米軍は尖閣諸島を守ってくれるのか?
Lecture6 エネルギー エネルギーが変わるとき労働者は翻弄される
Lecture7 韓国 “普通の関係”になれない日韓の言い分
Lecture8 教育 学校では教えない「日教組」と「ゆとり教育」
Lecture9 高度成長 日本はなぜ不死鳥のように甦ったのか
Lecture10 公害 経済発展と人の命、どちらが大事ですか?
Lecture11 沖縄 米軍基地はどうして沖縄に多いのか
Lecture12 全共闘 1968年、なぜ学生は怒り狂ったのか
Lecture13 国土計画 日本列島改造は国民を幸せにしたか
Lecture14 バブル アベノミクスはバブルの歴史から学べるか
Lecture15 政権交代 なぜ日本の首相は次々と替わるのか
あとがきに代えて 失敗の歴史から学ぶこと
文庫版あとがき

2016/12/16

処刑人

処刑人 (創元推理文庫)
処刑人 (創元推理文庫)
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シャーリイ・ジャクスン
東京創元社
売り上げランキング: 87,422
kindle版
■シャーリイ・ジャクスン 翻訳:市田泉
本書は1951年に発表された"Hangsaman"の全訳である。
今年2016年8月に文遊社から出た『絞首人』(翻訳:佐々田雅子)は原著は同じ
つまり、翻訳が「かぶった」ということ。
これ、ネットでググったら結構話題になってたみたい。知らなかった。
っていうか、先日Amazonでシャーリイ・ジャクスンの作品を検索しているときに『絞首人』も買おうかなーって一瞬迷ってとりあえず保留にして『処刑人』だけをkindle版で購入したんだよね。はー、危なかった。
まあ、両方買って翻訳の違いを楽しむというのも無くはないけど…そういうタイプの作品じゃないしね…。
それにしてもなんで1951年に出た、シャーリイ・ジャクスンの超メジャーではない作品が、同じ2016年にダブったんでしょう。すごい偶然だー。

Amazonの【商品の説明/内容紹介】はこんな感じ。
絞首人
わたしはここよ――
謎めいた少女に導かれて乗る最終バス、彷徨い歩く暗い道。
傑作長篇、本邦初訳。
装幀 黒洲零
処刑人
ある日曜の夜。独善的な父親が開いたホームパーティで、ナタリーは見知らぬ男に話しかけられ、そのまま森の陰へと連れ込まれた。(たいしたことじゃない、何もかも忘れよう)おぞましい記憶を抑圧する彼女はカレッジの寮でもなじめず、同世代の少女に対する劣等感と優越感に苦しむ。やがて、トニーと名乗る少女との出会い、ナタリーは初めて他人に安らぎを見出すが……病んだ幻想世界と救いのない現実が交叉する、ジャクスンの真骨頂とも言うべき傑作。

――全然同じ作品の紹介とは思えん! 『絞首人』の紹介文を書いたひとは最後のほうしか読んでないんじゃ?

†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*

さて、感想である。
シャーリイ・ジャクスン・ファンは楽しめると思う。
「らしい」世界だった。あと、思春期、ハイティーンの少女特有の「特別な自分」観みたいなテーマが好きだったらどんぴしゃ。

深緑野分さんによる解説がまた興味深くて、これは最初の方をある程度読んだ段階で「この話ってどういう種類? ホラー…じゃないよね」と思って先に「解説」を読んだんだけど(もちろん、解説途中からの【結末に触れるため、必ず本篇読了後にお読み下さい】以降は読了後まで読まなかったけど)、そこに書いてある「モデル」というのか「素材」を知らずに読むのと知って読むのとではまた感想が違うような気もする。解説を読んで「えっ、あれの」と思い、本篇を読んでいき、最後のほうになってやっと「ああそういうこと」という感じだったが、まあでも、だいぶ変化球だし、終盤以外は全然関係ないしねえ。

主人公のナタリー・ウェイトは17歳で、もうすぐ実家を離れ、大学の寮に入るというところから物語は幕を開ける。
読んでる最中何度か思ったんだけど、ナタリーほんとに17歳? 14,5歳の感じしない? 大学生ってこんな感じだっけか。特に入ったばっかだし、そうだったかも知れない。
あと、大学生なのに授業シーンとか大学生らしい日常風景がほぼ無くて。あるのは寮での生活の描写と、ナタリーの凄まじい量の思考描写。
特にナタリーは誰かと会話しながら頭の中で「刑事に問い詰められる自分」という妄想を繰り広げることがしばしばあるので、それがごっちゃに書いてあるので、ナタリー気は確かなのか、『ずっとお城で暮らしてる』路線のひとじゃないだろうな、と何度か思った。
この妄想世界の「刑事」は最初の方は何回も出てくるのに途中から全然出てこなくなる。kindleなので「刑事」でキーワード検索したら本書では33回使われているのだが、最後に使われるのが位置№1131で、本書の総数は4685なので、一目瞭然。

何故「刑事」が出てこなくなったかというと、まあ、大学生活で他の関心事でいっぱいになったからでしょうね。例えばアーサー・ラングトンとか。で、「アーサー」で検索したら158回もあるんだけど、忘れてたけど最初のほうに出てくる「アーサー」は実家の近所の住人で、6回分はそっちのひと。残り152回が「アーサー・ラングトン」。なんで同じ名前にしたんでしょう。
ラングトンの妻エリザベス――学生の時にラングトンと結婚した美しいけど不幸でいまやアル中のようになっている――は244回。
トニーは222回。でも登場するのが№2910くらい以降だから、後半集中濃度が高いかも。

自意識過剰気味の妄想壁のある17歳の少女が家族の元を離れ(作家である父親が癖のあるキャラクターなんだけど割と好きだった)、同じような自意識過剰の少女の群れの中に入り込み、自分と共感できる「真の友情」「魂のふれあい」を求めるけれどもなかなかそういう友情には恵まれず、カリスマ性や美しさを持った同級生のように華やかな学生生活を送るでもなく、意気消沈してますます自分の殻に閉じこもりがちになる…。
ナタリーと同じような年齢の時に本書を読んだらきっともっと心に響いただろうなあ。

著者が著者だけに、どういう結末になるのか、最後まで気は抜けなかったけどとりあえずハッピーエンドというか、前向きなさわやかな感じでラストを迎えていてほっとした。
なんのかんのでナタリーを応援しつつ読んでいたからだと思う。
きっと彼女もいまのわたしの年齢になったら過去を思い返して「どうしてあの頃は…」と思うのでしょうね。

↓この本と『処刑人』はおんなじおはなしです!
絞首人
絞首人
posted with amazlet at 16.12.16
シャーリイ・ジャクスン
文遊社
売り上げランキング: 369,981

2016/12/12

映画にまつわるXについて

映画にまつわるXについて (実業之日本社文庫)
西川 美和
実業之日本社 (2015-08-01)
売り上げランキング: 21,938
kindle版
■西川美和
わたしは映画をほぼ観ないしチェックもしないのでこの方を初めて認識したのは2015年2月刊の『永い言い訳』で、それも直木賞候補に上がってからだったかも知れない。「すごく興味を引かれる良いタイトルだな」と思ったが、あらすじを見るにイマイチわたしの好みとか守備範囲外のような気がする。うーん……と唸って頭の片隅に置いてあった。そしたら12月10日のkindle日替わりセールで同著者のエッセイが¥199円で上がってきたのでこれ幸いと購入。

「まー本業は映画監督のひとだし」と軽い気持ちで読みはじめたらすぐに「おおっ、これは…」と姿勢を正すことになった。
良い文章を書かれるかただなあ!
もっと柔らかいくだけた文体を想定していたのである意味硬派な、正統派というか、キリッと引き締まったハンサムな文章にびっくり。
映画は観たことないけどすごく評価されているらしいし、文才も以前から認められていたみたい。才能あるひとはいろいろ出来るんだなあ。
内容も悪くなかった。映画をほとんど観ない人間にも興味深く面白く読めた。映画は観ないけど映画を撮っているひとの考えとか思いとか現場の様子とかそういうのが書いてあって、面白い。夢をみてそこから映画になっていくのとか。へー。この本に書いてあるだけのことかと思ったら後でウィキペディアをみたらこの監督さんはいつもそうなんだとか。ほー。安部公房が夢の記録をつけていたエピソードとか思い出すなあ。

そう年齢は変わらないと思うけどいくつくらいかなと思って読んでいたら「長嶋茂雄氏が現役を退いた年に生まれた私は、」という箇所が出てきて、えーとそれって何年だっけ。とりあえず未知の作家さんの本を読むときにこちらのスタンスをつかむためによくやる、本書の最後の「あとがき」と「文庫版あとがき」に最初のほうをある程度読んだ段階で飛んでみて、珍しく割愛されていなかった解説「装丁にまつわるXについて(解説にかえて)寄藤文平(グラフィックデザイナー)」も読んで、そしたらその後に著者の簡単なプロフィールが載っていた。

映画を知らないので映画監督ももちろん知らない。「黒沢明とか?」くらいのレベルであり、本文に数回出てくる「ニッカボッカを穿いている」というイメージにすら(陳腐な古いイメージという例で引かれているのだが)追いついていないのだった。へー、映画監督ってニッカボッカ穿いてるひと多かったの? ニッカボッカって大工さんが穿いてるやつでしょ?
わたしにとって映画監督というとどういうイメージかというと「こだわりのひと」かなー。ポリシーがあって、妥協を許さない。ちょっと変わり者? 西川さんもその例にもれない、かな。

西川美和さんがどういう監督さんなのかはわからないが、この本を1冊読んだ限りでは、とても面白くて繊細で鋭い直観と感性をお持ちの方とお見受けした。読後にググってみて想像していたより美しい方だったので「まあ、これだけ綺麗だったらねえ…」と思った。女優さんも出来そうな感じだが、ご本人いわく、演技は出来ないそうである。そうかなあ。

初出は最初の章のは「ジェイ・ノベル」に2010年4月号~2013年1月頃に掲載されたもの。
次の章からのは2006年くらいに書かれたものが多かったような。初出一覧は無い。
最初の章に比べると他の章の文章は少し柔らかい感じがする。年代の差か、ご本人の意識の差か。
「フィルム」で撮るか「デジタル」で撮るかについて、やっぱり「フィルム」についての愛着とか信頼とか崇拝とかいろいろあるんだというのが何回か出てきて興味深かった。この世代の監督にでもそうなんだ。で、やっぱり実際問題いろいろ違うんだ。へー。
それって読書するときに「紙の本で読むか、電子書籍で読むか」のこだわり問題とちょっと似てる? とか考えた。まあ、デジタルとフィルムでは映画撮るコストが1千万とか違ってくるとか書いてあったのでそれは大きいなーっ。

【目次】
映画にまつわるXについて
X=ヒーロー/裸/オーディション/バリアフリー/信仰/再生/お仕事探訪/生き物/アプローチ/免許/音
プール一杯分のビール
プール一杯分のビール/快適な入院生活/プリーズ・ストップ/迷い犬/蔵書の掟/私の名医/深夜二時の男/ああ、旅情/同胞の人
夢のあとさき
映画『ゆれる』プロダクション・ノーツ 
1原案 2脚本 3キャスティング 4是枝監督のこと 5香川照之のこと 6オダギリジョーのこと
その気のない転機
わたしが監督/夜の闇/緑色の氷嚢のあたたかさ/カエルとダザイ/足りない女/密陽に射す光/その気のない転機/父のカチンコ/あやふやな東京を撮る
あとがき
文庫版あとがき
装丁にまつわるXについて(解説にかえて)寄藤文平

2016/12/04

現代小説クロニクル 2010~2014

現代小説クロニクル 2010~2014 (講談社文芸文庫)

講談社
売り上げランキング: 564,534
■日本文藝家教会・編
2015年12月11日刊、2015年12月25日にアマゾンで購入して数篇読んで放置してあった(いつのまにかもう1年経ってしまった)のをいい加減読んでしまわないと、と気合を入れて最初から読み直す。
1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ、最終巻。ということだが他の7巻は買っていない。この巻は読みたい作家のが結構収録されているから「効率いいなー」と思ったからこそ購入したんだが、実際読んでみたらものすごく読みづらいというか暗いというかありていにいって面白さがわかりづらいのが多くてついつい放置してしまった。まあものすごく真面目な叢書だとは思うんだけど。つまり「面白さ」で選ばれているわけじゃないから。コンセプトが違うのねー。
でも同時代を生きる作家たちのキレキレの作品をまとめて読むことはそれなりに意味がある、と思う、ていうかそれじゃなきゃ成立しないこのシリーズ。
川村湊の「解説」から少し引用。
こんな時期に、文学だけが明るく、未来志向型で、楽天的なままでいられるはずがない。文学の世界においても閉塞感は強まっており、前向きな積極性など薬にしたくともできない相談かもしれない。
まあ、暗いのは時代を反映してんだから「しょーがないよねー」っていうことらしい。

目次】に感想を付け加える。
考速(円城塔)
ハヤカワ文庫JA『後藤さんのこと』に収録されており、既読。感想はそちらにも書いたが、俳句を連想させる言葉あそびというか。同音異義語を使った作品。両方意味があるように考えられているところが面白い。円城さんが俳句つくったらどんな感じなのか興味があるなあ。

絵画(磯崎憲一郎)
これは描写が「絵画みたいってことかな?」と考えながら読んでいったらやがて「画家」が出てくる。その画家の視点と思考に引き継がれるんだけど、なんかこのひと変だ…橋が揺れたときの描写とか、若い母親への視線とか、中年の夫婦に対する思考とかが不安定というか妙な執着があるというか、うーん気持ち悪いひとだなあ。

街を食べる(村田沙耶香)
この本を買ったときはまだ彼女の作品を読んだことがなかった。
子どもの頃新鮮な野菜なら食べられたのに、大人になって町で売られている安い野菜はまずくて食べられなくなった主人公が、町に生えている野草なら食べられるかもと考え、それを実行に移す話。「町に生えている草なんて汚れているし地面に栄養もないから食べられたものじゃないと思うけどな」と思いながら読んだら案の定だった。というか、それ以前にこの主人公は致命的に料理センスが無くて、うまく料理すればまだしものところを調理方法が下手すぎて完全に駄目にしている。たとえば、葉物をきざんでから、茹で汁が緑色になるまで茹でている。「茹でてから刻むんだよー、っていうかそもそも茹で時間長すぎ!」と苛々してしまったがまあそういう話じゃないのである。それはわかってる。わかってるんだけど、気になって。
住んでいるところで「自給自足」(の真似事だけど)をしてそれで「生きている」実感みたいなのがわく、という発想そのものは好きだし、頷ける。
とりあえず彼女には『山賊ダイアリー』(全7巻・岡本健太郎)を熟読して素材を殺さない料理法というものを勉強してもらいたい(偶然同時期に読んだ。5巻に山菜を食べる話も収録されている。タイムリー!)。

山賊ダイアリー(5) (イブニングコミックス)
講談社 (2014-08-22)
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みのる、一日(小野正嗣)
山下澄人『ギッちょん』をなんとなく連想させるはじまりかただった。英語の習得を目指すみのるのカタカナでの英会話は、言葉が足らないひとのそれを描いているのかと最初思ったが読んでいくうちに違う意図であえて英語で話しているのだということが示されていく。あわせて描かれる「臭気」。徐々にほのめかされていく真実…。グロテスクなのだけれども、恐ろしいのだけれども、同時にどこか哀しい憐れがある。

さよならクリストファー・ロビン(高橋源一郎)
いかにもこの著者が好みそうな、いろんな物語の登場人物を絡めた純文学作品のひとつ。ここでは主に童話に出てくるキャラクターたちを題材としている。浦島太郎はここまで長生きしたらさぞ苦労したろうね。あと、狼さんの錯乱は同情に値するね。
そして謎の消失…。「虚無」の侵食。
クリストファー・ロビンというのは「くまのプーさん」の著者の息子のこと。

田舎教師の独白(高村薫)
なんで高村薫のこの作品を選集に選んであるのかは不明で、でも考えてみればこの著者の短篇ってほぼ知らないから何とも言えない。
全然学習意欲がない高校生たちを相手に数学を教えている田舎の高校教師の視点からずるずる延々語られる話で、「極限値」と「微分係数」の授業の実況中継みたいなのが混じっていて文系だったわたしには正直よくわからんなあと思いながら読んでいたら、いや、まあ、不穏な空気は書かれていたけどまさかこういうラストとは。えー? ここから何を汲み取れと? もうちょっと生徒側の視点が欲しかったけど、うーん。

塔(松浦寿輝)
ミステリチックな設定で、こういう独特の感性をそのまま生かした建築物件の話とかすごく面白くてわくわくする。綾辻行人みたい。もちろん純文学なので殺人とかは起こらない。起こっても面白いとは思うけど。実際に「塔」が建ってからの延々モノローグとかが純文学っぽいけどちょっと冗長に感じてしまった。

うどん屋のジェンダー、またはコルネさん(津村記久子)
先日読んだ『浮遊霊ブラジル』のほうに先に感想を書くことになったが読んだのはこちらの選集が先だった。こういううどん屋の店主みたいなひと、いそう。実際に具体例は浮かばないけど、ありがたいことに。津村さんの書く登場人物はそういうのが多くて、リアルな感じがする。主人公が著者と同年代の女性ではなく中年の男性だというのが珍しいなと思った。 知らない中年男性にうどん差し出されたらかなり警戒するな、とも思った。

きことわ(朝吹真理子)
この作品で2010年芥川賞を受賞されたので「きことわ」という言葉だけは見聞きしていて、なかなか印象に残る美しい言葉だなと思っていたので本書を読みはじめてすぐに判明するのだがそれがこの話の中心人物二人の名前「貴子(きこ)」「永遠子(とわこ)」からきているのだと知ってちょっと、いやかなり「なんだそれ」とがっくりきたのだが、しかしこの話の主な語り手は永遠子であり、この名前が繰り返し使われることによって字面的には「永遠」が頻出する。「貴重」の「貴」も頻出する。それによる脳への刷り込み効果というのか、ある種の雰囲気、イメージの定着には少なからず意味がある、著者の狙いがある、と思う。永遠子と貴子は同世代ではなく8歳も違うのだが、まるで双子の姉妹のように同化して、何度も髪が絡まり合ったりして、少女特有の異常なまでの密着度が濃密で濃厚である。
物語は少女時代から中年女性になった彼女らの現在に飛んでそこからまた話が続くのであるが、空気をそのまま持ちこして、回想している。大人になってから振り返ったからこそ見えてくるものもある。
もっとドロドロしていくのかと思いきやそこまでは至らない、お互い自立した大人の女性になっていて、そこは安心した。海の潮騒と潮のにおいが感じられるような、浪間のキラメキがまぶしいような、美しい小説だった。ただ、ちょっと飽きるかな。

波打ち際まで(鹿島田真希)
2012年『冥土めぐり』で芥川賞受賞。2009年絲山賞受賞のときからちょっと気になっていたけど未読だったので読めて嬉しい。
依存系の女の話。そこまで狂ったか?と思わせて実は別人の話、みたいな地続きの描写が何度かあって、しかし女の内面はかなり病んでいる。何故男がこれをどうにかしないのかはよくわからない。 ある種、ちょっとしたホラー。

うらぎゅう(小山田浩子)
2014年『』で芥川賞受賞のかたですね。このひとも気になっていた作家のひとり。
離婚を決めて実家の両親に報告しに田舎に帰った推定年齢30代後半の女性。こういう展開でホラーだととんでもない目に遭うので、はらはらしながら読んだがまあ純文学なのでそれは無かった。現代の女性が受けるプレッシャーとかハラスメントとか、都会はうまく隠されているけど田舎は露骨だ。でもこれがまだまだ「社会の本音」なんだろう。やっぱりホラーか(違)。

夫を買った女/恋文の値段(瀬戸内寂聴)
これは2つの全然別の話。瀬戸内寂聴の小説は初めて読んだが、読みやすくはあったが、内容はどこが良いのかちっともわからなかった。「夫を買った女」はそういうひともいるのかもしれないけど現実感が伴わないし、恋文の値段については最後がいきなりすぎて意味がわからない。センセーショナルな内容で「驚いたでしょ」と言いたいんだろうか。純文学っていうよりはエンタメかなあ。

巻末エッセイ(村田沙耶香)
解説(川村湊)
作者紹介