2016/11/26

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル
浮遊霊ブラジル
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津村 記久子
文藝春秋
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■津村記久子
先日発売された単行本。
題名からして「なに、なんのお話なんだろう」と興味を引かれるいかにも面白そうなオーラを放っていて、気になって仕方なく、短篇集と知って一回保留にしたのだがやっぱり、ということで買ってあった。最近は通勤に単行本を持って行く気力がないのでしばらく本棚に寝かせてあって、このあいだの週末に4篇読み、本日後半の3篇を読んだ。
何故か装丁に使われているイラスト(@北澤平祐)をシールにしたものがオマケとして挟んであった。サイン本を買ったつもりがサインは無かった。あら、間違えちゃったなあ(がっくり)。 
シールは数量限定らしかったが、「本を買ってもらうために、いろいろ工夫されているのだな」と微笑ましく思ったが、シールをもらったところで貼るところがない。「それでこれをどうしろと?」と少し困惑した。本より大きいサイズなので本に挟んで収納しようとするとあまり具合は良くない。小さい子どもにあげて喜ばれるようなデザインでもないし。ははははは。

短篇集で、連作ではなくて、全部独立している。7本どれも変わっていて、それぞれ面白かった。津村さん確実にメキメキ上手くなられてるなあ。凄い。頼もしい。進化しているって感じだ。
特に、最初の話を読みはじめてすぐに主人公が女性でもなく、著者よりずっと年上の世代ということが書かれている箇所を読んだときに「おやっ」と思った。わたしは津村記久子の著作を全部読んでいるわけではないが、それなりにチェックはしているので、珍しいなと感じたのだ。本書の短篇の語り手は世代も性別も全部ばらばらだけど、あまり同世代のひとはいない。下の世代ではなく、まだ経験していない上の世代を書いてある。ほほう、と思った。

以下、各話について思ったこと、連想したこと、感想など。

給水塔と亀
数十年ぶりに故郷に帰ってきた男性の目線で描かれる淡々とした話。懐かしさと目新しさの混じった好奇心のある目で静かな町を見つめているのが良い。こういう何事にも焦らない、ビールと思ったらビールだけを買って一日の買い物としてしまえる境地って良いよなあ。
給水塔といえば連想されるのは「給水塔占い」@フジモトマサル『二週間の休暇』。

二週間の休暇〈新装版〉
二週間の休暇〈新装版〉
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フジモト マサル
講談社
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うどん屋のジェンダー、またはコルネさん
うどん屋で繋げてきたね、と思ったが初出はこちらが2年ばかり先なのだ。
これは『現代小説クロニクル2010~2014』というアンソロジーに収録されていて(数篇読んだだけで長らく放置してあるのでこのブログ上に感想は載せていない)既読だったがもう一回改めて読んだ。まあ、タイトルどおり、ジェンダーの話だ。田舎のそのへんのこういうメンタルのおっさんというのはいくらでもいそうなリアリティがある。
まあ、疲れてる時に、こういう店と知ってるなら、何故行ったんだ、という気がしないでもない。誰かに当たり散らしたかったんかねコンタクトレンズ屋のお嬢さん。気持ちはわからないでもないけど、あなたが受けた傷や、いま感じている後悔(ほかの罪のないお客さんに迷惑をかけたなとか)に比してうどん屋のオッサンが感じているそれははるかに、はるかーーーーーに低いと思うよ。やつらはそんな繊細さも反省も持ち合わせちゃいないのさ。
現代小説クロニクル 2010~2014 (講談社文芸文庫)

講談社
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アイトール・ベラスコの新しい妻
こんな考え方の人間がいるのか…それはもう、どうしようもないよね、矯正できそうもない、同じクラスにいたらかなり終わってる。
読み終わった後に、インターネットでアイトール・ベラスコの新しい妻について検索してみたくなっているのに気付いて、思わず我に返って苦笑。凄いな。津村さんがよく外国のスポーツ記事サイトを見るのを趣味にしているとエッセイに書かれているから、現実とごっちゃになっちゃったわ。リアリティ有り過ぎた。あと、娘さんはもう性格的にかなりひん曲がってるだろうから今からどうこう出来ないんじゃないかな、よっぽどのことがなくちゃ、だって困ってないからね本人は。

地獄
凄い、冒頭からのけぞっちゃったわ、地獄の話なんだー、比喩とかじゃなくて。
落語みたいだね。米朝師匠の「地獄八景亡者戯」を瞬間的に思いうかべたけど、また全然違う切り口で。生前やってしまった「業」に合った内容の苦行をノルマとしてこなしていかないといけないとか、担当の鬼がいるだとか。その鬼も悩んでたりデモデモダッテ星人だったり不倫してたりなんだか非常に人間臭い。でもちっともドロドロさせずユーモラスな感じで淡々と描いてある。面白いなあ。

運命
これも津村さんが何故だかしらないけどひとから道を訊かれる、とどこかで書いてらしたことを思い出してにやりとさせられる話。外国はまあ、そんな馬鹿なと思いつつもあるのかなという感じだがその先の展開には「ままままさかのSFかよ!」とびっくりするやら笑えるやら。最後の展開はちょっとその後にしちゃ、使い古された感あり過ぎな気がしないでもなくもない。初めてこういうの読んだとしたら斬新だと思うんだろうけど、もう昔から書かれまくってるから陳腐で。えーなんでって思っちゃった。なんであの斬新の後にこれ持ってきたんでしょう。

個性
こういうことって、本当にあるんでしょうか。こういう認識をされる方って実際にいらっしゃる?
これもひとつの「就活」小説、なんスかね。現代の「就活」のあの独特の感じがなかったら、この小説は成立しないもんなあ。はあー。
読みはじめたときはいったいなんの話かと思って、なかなか舞台とか彼らの立ち位置とかが掴めなかった。恋愛、とは違うのかな? 

浮遊霊ブラジル
表題作。すんごく不思議な変わったタイトルだったので、読む前に寝かせている間にいろいろ想像したりもしたのだが、こういう話だったかー。面白いねー。予想していたのより数段落ち着いているというか、老成している淡々とした話だった。しかもブラジルは真の目的じゃなかったとか…。何故「浮遊霊アラン諸島」「浮遊霊アイルランド」ではなく「浮遊霊ブラジル」なのだろうか。単語のすわりが良いからか。
浮遊霊アイルランド」。……なにがなんだかわからんな。まあ、「浮遊霊ブラジル」もわからんけど、陽気な感じでオバケさんがサンバでも踊り出しそうで、楽しそうだ。全然そういう話ではなかったけど。ユーモラスではあったけど。「浮遊霊アラン」だとアランって名前と勘違いされそうだしね。
ひとにとりついたときの語り手の視線とか、いろいろ現世のどろどろとかにあえてタッチしていかないところとかが、まあそこは深入りしたら話の雰囲気がおじゃんなので正解だが、取りついてるのにそんなに見ないでいられるのか、設定的に無理があるのでは、と勝手に気をもんだ。
どうでもいいけど市岡さんは男を見る目がないな。仲井さんの息子はちょっとどうしようもないな。これだけで全然別のはなしが1本出来そうだけど、書かないところが気持ちいい。

2016/11/18

ミステリーの書き方

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)
幻冬舎 (2015-10-08)
売り上げランキング: 30
■日本推理作家協会 編・著
初出は幻冬舎のPR誌「ポンツーン」に掲載されたもの。初出を見ていたら2003年・2004年・2007年・2008年という感じなんだけど、2年ごとに集中連載したってことかな?
2010年11月幻冬舎単行本刊、2015年10月幻冬舎文庫化、の電子書籍版。
日替わりセールで上がってきたので本書の存在を知り、ミステリーを書こうなんておこがましいことは一度も考えたこともないが、内容説明に【ミステリーの最前線で活躍する作家が、独自の執筆ノウハウや舞台裏を余すところなく開陳した豪華な一冊。】とあったので完全にミステリーファン目線で購入した。

想像していたよりずっと真面目に真剣に、各テーマに沿って43人の一流の作家さんが書かれていて豪華だなあと思った。自筆の場合と、インタビューを行ってそれを構成したものと2種類ある。また、本文のほかに推理小説協会所属の作家対象のアンケート結果も載っているがこれはkindleでは画像になっていてかなり字が小さい(拡大できることはできるけれどもだいぶ粗い)のでほとんど見ていない。

kindleの総ページ数で7924もあり、結構読みでがあった。Amazonの単行本のレビューの中に「1ページ2段構えで、461ページ」という記述があった。

最初に「おこがましい」と書いた理由はわたしは逆立ちしたってミステリーを書けない人間であると自覚しているからで、本書を読んでますますその意を強くしたが、作家が自作の種明かしをしてくれるタイプの本はそうそう無いので、これは貴重。ひとによるけど、かなり細かいことまで喋ってくれているひとが何人もいる。適当なところで納めているひともいるけど。

インタビュー記事の場合、聞き手も実力ある書評家の方だったりするからかなり読みこんで準備していって理論的に「これはこうじゃないですか」と予測して臨んでいるわけだけど、作家さんってある種天才だから、理論とか理屈とか超越したところでお話を作っておられたりするわけで、その食い違いが面白い。特に北上次郎さんが聞き手のパターンが面白くて、これは記事の最後にいくまで聞き手が誰かは書いていないんだけど、読んでいて途中で気付くというか。大沢(在昌)さんのインタビュー記事は途中で笑えてくるくらい面白い。「――身を乗り出して、」とか書いてある。聞き手が北上次郎で構成が大森望とか最後にあって、にやり。あの爆笑書評集のコンビだもんなあ。宮部(みゆき)さんの場合は途中で名前が出てきたけどね。これは結構真面目に聞いてる。

ちなみに大沢さんの記事で話題になっているのは『新宿鮫』シリーズなんだけど……わたしこれ昔、「有名だから読んどかなくちゃかなー」と読んでみてあまりにも男性の夢物語というか主人公の鮫島とヒロイン晶の関係が気持ち悪くて一応最後まで読んだけど第1作しか読めなかった。調べたら2003年5月に読んでる。感想記事はこちら

このインタビュー記事でそれは大沢さんが半ばヤケ気味というか、「えげつない」ことを自覚したうえで書かれたことがわかり、かなり興味深く読んだ。っていうか、北上さんは評論家目線でもあるけどもはや途中からファン目線も混じってきてますよね(さすが目黒さん。にやにや。ほんとに小説が好きなんだなあ)。

最初に自分がファンである作家の記事を読んでいって、2巡目はとばしたところを読んだ。内容的に「自作を例にとって具体的に説明」しているから、ネタバレを読みたくない未読作品の場合はそこでジャンプした。
あと関心がない作家・テーマ・読みだしたら面白くなかった記事はちょこちょこ飛ばした。

基本的に「作家になりたいならこんなの読んでるひまがあったら書け」という内容のことは複数の作家の方が書かれていて、まあその通りだろう。習って書くもんじゃないと思う。
あと、「書く」のは「小説」にだけ注いで、メールとかSNSとかブログに書いて「書きたい欲求」を発散させないほうがいい、とどなたかが書かれていたけどこれもその通り。

この本では執筆されていないけど昔、森(博嗣)さんが「話は全部頭の中に出来上がっていて後はそれをアウトプットするだけ」と書かれていた。恩田(陸)さんは別の本でストーリーはあまり決めないで書いていくと書かれていた(本書ではそのことは書かれていない)。宮部さんは恩田さんに近い感じみたい。ごくまれに「その後のストーリー展開予定」を編集者に渡すことがあって、でも結局全然違う展開になったと。書くことで初めて「リアルに実感」するから続きが考えられるということらしい。

【目次】
まえがき 東野圭吾
本書について/巻末「ミステリーを書くためのFAQ」について →これは本書の内容のあんまり便利でないINDEXに過ぎないので、本書を最初から最後まで読んだら同じことである。

第1章 ミステリーとは
はじめに人ありき (福井晴敏)
ミステリーを使う視点 (天童荒太)
ミステリーと純文学のちがい (森村誠一)

第2章 ミステリーを書く前に
オリジナリティがあるアイデアの探し方(東野圭吾)
どうしても書かなければ、と思うとき(法月綸太郎)
アイデア発見のための四つの入り口 (阿刀田高)
実例・アイデアから作品へ (有栖川有栖)
アイデアの源泉を大河にするまで (柄刀一)
ジャンルの選び方 (山田正紀)
クラシックに学ぶ (五十嵐貴久)
冒険小説の取材について (船戸与一)
長期取材における、私の方法 (垣根涼介)

第3章 ミステリーを書く
プロットの作り方(宮部みゆき)
プロットの作り方(乙一)
本格推理小説におけるプロットの構築 (二階堂黎人)
真ん中でブン投げろっ!(朱川湊人)
語り手の設定 (北村薫)
視点の選び方 (真保裕一)
ブスの気持ちと視点から(岩井志麻子)
文体について(北方謙三)
登場人物に生きた個性を与えるには(柴田よしき)
登場人物に厚みを持たせる方法(野沢尚)
背景描写と雰囲気作り(楡周平)
セリフの書き方(黒川博行)
ノワールを書くということ(馳星周)
会話に大切なこと(石田衣良)

第4章 ミステリーをより面白くする
書き出しで読者を掴め!(伊坂幸太郎)
手がかりの埋め方(赤川次郎)
トリックの仕掛け方(綾辻行人)
叙述トリックを成功させる方法(折原一)
手段としての叙述トリック――人物属性論(我孫子武丸)
どんでん返し――いかに読者を誤導するか(逢坂剛)
ストーリーを面白くするコツ(東直己)
比喩は劇薬(小池真理子)
アクションをいかに描くか(今野敏)
悪役の特権(貴志祐介)
性描写の方法(神崎京介)
推敲のしかた(花村萬月)
タイトルの付け方(恩田陸)
作品に緊張感を持たせる方法(横山秀夫)

第5章 ミステリー作家として
シリーズの書き方(大沢在昌)
連作ミステリの私的方法論(北森鴻)
書き続けていくための幾つかの心得(香納諒一)

あとがき 大沢在昌
文庫版あとがき 今野敏

2016/11/12

学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇

kindle版
■池上彰
東京工業大学リベラルアーツセンターでの池上彰さんによる講義「現代世界を知るために」をベースにした書籍の文庫版の電子書籍版。講義の様子のダイジェストは毎週「日本経済新聞」に連載された。それを元に2013年10月文藝春秋社単行本刊、2015年11月文春文庫刊。
文庫化にあたり、加筆・修正がなされ、ISについての記述が「文庫版あとがき」に書かれている。

池上さんといえば、1994年から11年間、NHK「週刊こどもニュース」で「お父さん」役を務め、時事問題や世界の出来事などを実にわかりやすく解説してくれたかた。池上さんがNHKを退職された後は同番組の「お父さん」役は違うひとが引き継がれたがどうもイマイチで、「『NHKのお父さん役』がわかりやすいシナリオに沿って喋ってるんじゃなくて、『池上さんが』わかりやすい解説を心掛けておられたんだな。『池上さんが』凄かったんだな」という感想を強く持った。その後、NHK以外のテレビ局で同様の解説番組を池上さんがされるようになり、やはりそうかと頷いた。

そんな池上さんは著作も多いが、本書は2012年から東京工業大学リベラルアーツセンターの教授になり、その講義を元にしたシリーズ『この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう』『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」』に続く第3弾が本書である。第1弾と第2弾は未読なのだが。
第3弾は兼ねてから「現代史って学校でもきちんと習っていないし、毎日のニュースの下敷きとして知っておきたいなあ」と思っていたので、先月日替わりセールでピックアップされたのをきっかけに購入。数日かけてぼちぼち読んだ。

あくまで「浅く広く」ではあるのだろうが、わかりやすかった。「こういう事件が起きたのは、そもそも…」という歴史的な流れをざっくり説明してくれるので、納得しやすい。わかりやすい。詳しい人には「今更…」なのかも知れないが。でもちょっと前の出来事についてだから知ってるんだけど、この本を読んで「ああ、あったあった。ノド元過ぎたら忘れてるけど、そーだったよな」と再確認することも結構あったり。「なんとなく知ってるけど」をきちんと補強してもらったり。やっぱり現代史は2016年11月の今日にもつながっているわけで、こういう本を読んで流れで先日のアメリカ大統領選の結果とかを見ると「うーーーーん」という気持ちになったり(ブッシュって本当に最悪だったよな、やっぱり誰がアメリカ大統領かって大事な問題だよな、とか)。
別にアメリカの話だけではなくて、イギリスとか中国とかロシア(ソ連)とか世界の出来事と歴史がわかりやすくピックアップされていて面白い。日本のことは関連で出てくるくらいなんだけど、それは第2弾で多分語られているはず(やっぱり読むべきか)。

もちろんこれは「池上彰」というひとりのジャーナリストの見解に基づいているから、違う意見や別の見方もあるだろう。そのことは常に頭の中に置いておかないといけないことは百も承知だ。でもまあ、全体として、そんなに偏ってはいないと思うけど。
本書を読んで「風吹けば桶屋が儲かる、じゃないけど、歴史は全部つながってるんだな」ということを強く再認識した。池上先生の言葉によれば
歴史は暗記物ではありません。】【因果関係を辿っていく学問なのです。
また、
「自国の利益のために他国に干渉したりなんだりすると結果的に最終的に自国に跳ね返ってくる」という意味の言葉は太字で書かれており、本書で世界のいろんな悲惨な事件を続けざまに読んでくると本当にそうだなと切実な感じで深く納得できる。
引用すると、
自国の都合で他国に手を突っ込むと、結局は自国に難題が降りかかることがある。各国とも、これを繰り返してきたのです。こうした愚かな歴史を知ることで、少しでも失敗を繰り返さないようにする。これが、現代史を学ぶ意味なのです。
(赤字は原文で太字表記されている箇所)

本書の最後に書かれている、
歴史を知らない指導者は、危険極まりない存在であることを示したのです。】という言葉はブッシュ大統領を批判して書かれたものですが、そのまんま、次期大統領に決まったトランプとかいう御仁にも当て嵌まりそうで……。
「歴史は繰り返す」にならないことを、切に、願う。本当に。

【目次】
はじめに 冷戦がわかると「この世界のかたち」が見える
Lecture1 東西冷戦 世界はなぜ2つに分かれたのか
Lecture2 ソ連崩壊 プーチンはスターリンの再来なのか
Lecture3 台湾と中国 対立しても尖閣で一致するわけ
Lecture4 北朝鮮 なぜ核で「一発逆転」を狙うのか
Lecture5 中東 日本にも飛び火? イスラエルやシリアの紛争
Lecture6 キューバ危機 世界が核戦争寸前になった瞬間
Lecture7 ベトナム戦争 アメリカ最大最悪のトラウマ
Lecture8 カンボジア 大虐殺「ポル・ポト」という謎
Lecture9 天安門事件 「反日」の原点を知っておこう
Lecture10 中国 「経済成長」の代償を支払う日
Lecture11 通貨 お金が「商品」になった
Lecture12 エネルギー 石油を「武器」にした人々
Lecture13 EU 「ひとつのヨーロッパ」という夢と挫折
Lecture14 9・11 世界はテロから何を学べる?
あとがきに代えて それでも未来へ進むために
文庫版あとがき

2016/11/09

永楽屋 細辻伊兵衛商店 RAAK 2WAYがま口バッグBOOK

■永楽屋 細辻伊兵衛商店
先月、散歩のために降りた近場だけど初めての駅、そこから歩いて違う電鉄会社の駅まで。ここも初めて。その近くの町の本屋さんで見つけたけどそのときは「もったいないかなー贅沢かなー」と購入を見送った。でもなんとなく忘れ難く、11月9日に難波の大きい書店に行ったときに「もう売り切れてるかもしれないけど、もしあったら買おう」と思った。探したけど女性誌のコーナーには無くて、そしたらますます欲しくなって、もしかしたらと手芸関係のコーナーに行ってみたら1冊だけ、あった。買った。定価¥1,800円+消費税(=¥1,944)。数年前にリバティのバッグが付いたオマケつき雑誌買ったけど、2回目だな。
いまAmazon見たら正規のはもう売り切れてて中古が¥2,677~出品されている。利鞘稼ぐために商売で買ってるってことなんだろうなあ。うーん。
こういうのの記事は早く書かないと意味ないですね、すみません。ネットでググってみたら、オマケ付き雑誌だけを紹介しているサイトさんとかもいくつかあるようです。すごいなー。
雑誌付録ラボさんの該当記事

開けてみたら申し訳ばかりに薄っすいぺらぺらのカラー冊子(8ページ)が同封されている、けど、これは……「BOOK? 本? 苦しいなあ」。ほとんどオマケしか入っていない。ビックリマンチョコよりも苦しい。「かばん」だと書店では売れないからだろうけど。リバティのやつはちゃんと雑誌としても成立してたけどこれは「パンフレット」だと思う。

がま口バッグは表紙の写真で見るよりもパンダの白がくすんでいるかな。全体的にくすんでいるかな。ちゃちい、かもしれない。まあ、値段が安いから。でもパンダ可愛い! 形も可愛い! だから重いものは入れられないというか、入れたくない。ハンカチとお財布くらいかな。ほぼファッションというか、「服装上の飾り」として愛用したい。大事にする。
永楽屋のホームページに行ってみたら、ガマ口バッグは取り扱いが無かった。
RAAKというのは何かと思ったら、【現当主十四世細辻伊兵衛が立ち上げた 手ぬぐいブランド】らしい。

ふつう、かばんを買うときは実物を手に取ってみて、色とかチャックの具合だとか内ポケットの有る無しや、縫製の丈夫さなどすべて細かくチェックして納得して購入することが可能であるが、こういう「オマケ」はそれが一切、出来ない。お店の側がどういうスタンスでこういう売り方をしているのかはわからないけど、「チェックできない」っていうことをどういうふうに捉えているか、っていう条件についての解釈がこういう商品を売る側・買う側双方であんまり乖離してなければまあいいんだな、というようなことを考えた。
「安い」のはそういう面もあるのかな、とかね。「アンテナ」の意味もあるとは思うんだけどね。

永楽屋 細辻伊兵衛商店ホームページ

2016/11/08

木曜組曲 【約17年ぶりの再読】

木曜組曲 (徳間文庫)
木曜組曲 (徳間文庫)
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徳間書店 (2014-05-14)
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kindle版
■恩田陸
初めて読んだ恩田陸は『木曜組曲』だった。
1999年11月徳間書店刊。
書評誌「本の雑誌」で取り上げられていて興味を持ったのがきっかけ。
数年後ホームページで恩田陸についてのコメントを書くときに、【そのしっとりした、女たちの静かな戦いに「こういうミステリーもあるのか」と衝撃を受けたことを今でも覚えている。】と記したのがパソコン内に残っている。
単行本は何年か前に処分してしまっている。
内容については「女の人4人くらいだけしか出てこない」「面白かった。良かった。」という感覚をぼんやり覚えているだけで、ほぼ忘却の彼方。題名キレイですよね~。恩田陸はタイトル付けが昔から上手いんだよな~。

今年の7月のkindle月替わりセール対象品になっていて、ぎりぎりまで迷って購入だけしてあった、のをようやく今朝から読みだした。うーん、見事に忘れているなあ! 読んでいてもほぼ既読感無し(17年前の既読なんて初読みと同義語か。)
いざ読みだしたらやっぱり面白くて読みやすいしミステリーなので先が気になる。というわけで、昼休みと帰宅後読書であっというまに読了。うーん、エンタメだなあ。久々に恩田陸読んだけど、このひとお話考えたり書いたりするの大好きなひとなんだなあ、ということをしみじみ感じた。あの最終部のこれでもかの畳み掛け。こういうのを読むとわたしはパン作りの最初の工程を連想する。丁寧にこねればこねるほど、美味しいパンが出来る。ひっくり返し、こね、生地を引き伸ばし、たたきつけ、伸びた生地をまたたたんで、こねる。こねる。こねる。
…ちょっとしつこいかな? って思わないでもなかったけど。

この話は舞台が「うぐいす館」という1軒の家の中で完結し、登場人物は女性ばかり5人だけという、非常に伝統的な「本格ミステリ」的な作りをしている。それがまず素晴らしい。4年前に亡くなった、多くの熱心なファンを持つ小説家、重松時子をめぐる5人の女たち――。
4年前の時子の突然の服毒死は、遺書が見つかったこともあり、自殺として処理された。
だが、それは果たして真実だったのか――?
というミステリーだ。
こういう、「過去の事件の真相を探る」というのも黄金期にもよく見られる王道ミステリーですね。
4人のお客はみんな健啖家で、よく食べる。食事シーン、メニューなども読んでいて楽しい。

本格ミステリ好きのツボをよく心得ていらっしゃるなあ、面白いなあ、と心ゆくまで愉しめた。
ちょっと気になったのは、複数がいっぺんに会話するシーンで誰が喋っているのか意味がある場合はもちろんきちんと書き分けているのだけど、本当に雑談の場面では全員が女性言葉で同じように喋るので誰が喋っているのかわからないこと。まあ、区別する意味がないから区別していないのかなと思うけど。無駄にモノローグが長いなー冗長だなーというのも時たま気になったかな? 全体としてそんなに長い小説ではないけど。

登場人物は
重松時子(故人。作家。)
綾部えい子(時子の元同居人。料理が上手い。経験豊かな敏腕編集者だが、物語のほとんどでは家政婦とか料理人の印象が強い)。
重松静子(時子の異母妹。父親の会社を手伝いつつ、小さな出版プロダクションを経営している。)
塩谷絵里子(静子の母の妹の娘。ノンフィクション系のライター。)
林田尚美(時子の弟の娘。主婦かつ、ミステリーなどエンタメ系の売れっ子作家。)
杉本つかさ(尚美の異母姉妹。歯科技工士兼純文学作家。)
…モノを書く人たちだからこその筋立てになっているのです。

2016/11/07

白いおうむの森

童話集 白いおうむの森 (ちくま文庫)
筑摩書房 (2013-09-27)
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kindle版
■安房直子
昨日のkindle日替わりセールで上がってきて「おお、懐かしいな」と購入。
以前に読んだのは高校生くらいだっけかなあ、地元の小さな書店で、ピンクの講談社文庫で。タイトルに「花束」とついていたように思うのだが、さっきからネットで随分検索したけれどそのような本の画像は見つけられなくて、もしかしたら立原えりかの童話集と記憶違いの可能性があるんじゃ……と思えてきた。
てことは、初?
このひとのお名前を初めてみたとき以来ずっと「安部公房を連想させるなあ」と思っていたのだけれど、このたびあらためて検索してみて当たり前だけど関係はないのであった。
さっきからどうでもいい独り言みたいなことばっかり書いていて、すみません。

【目次】順に感想を。
内容・ストーリーに触れていますので、白紙で読みたい方はスルーしてください。

雪窓
タイトルがきれい。屋台のおでん屋さんの名前なのです。お客さんとしてやってきたたぬきさんがあまりにもおでんに関心を示すのでお手伝いとして雇って毎日仕事終わりにいっぱいやるのとかほのぼの~。と思っていたら幼い頃死んだ娘が成長したらかくや、と思われる16歳の娘さんがやってきて……店主がものすごい思い込みの強さを示すのがなんだか読んでいて意味不明で痛々しくて苦々しかったんだけど、この後の話とか読んでいくうちにだんだん思い出してきたんだけどそう、童話ってこういう「理屈では説明できないけど、でも絶対そうなの!」という思考回路が頻出する世界だったなあ。

白いおうむの森
おそらく十歳になるかならないかの少女みずえが主人公。宝石店の中の大きなゴムの記に白いおうむがとまっていて、「こんにちはー」しか言わないんだけど、みずえは幼いころに亡くなったという自分のお姉さんの名前を憶えさせようと毎日通っておうむに話しかけている。この設定時点で「えー?」と思ったけど、この店の店主がインド人で、そしてあるときおうむがいなくなって、店主からみずえが飼っているミーという猫が食べたんだろうとか決めつけてくるのとかもう「えええええー?」って感じだった。いやいやいやいや、仮に猫が食べたとしてもですよ? 町の中に猫なんか何匹でもいるでしょう。意味がわかんない。でもそういわれて「そういえば最近ミーは元気がなかった」とか結構あっさり信じるみずえとかもう童話世界ルールすごいですね。さらにミーまでいなくなって、みずえはすぐにインド人が復讐のためにさらったのだと悟る(=根拠のない思い込みですとも、ええ)のです。そして店に行ったらゴムの木の陰に地下に降りていく階段とか出来てて、そこを降りていくとさらにすごい世界に通じているのです。もうここまでくるとツッコむのは忘れて「童話すげー!」とひたるしかありません。最後の展開はちょっとびっくりしました。子どもたちはこのやり場のない思いをどう消化させるのでしょう。

鶴の家
この話の展開はまったく予想外でした。
てっきり復讐だと思ってずっと読んでいったので、最後まで疑いながら読んでいったので、最後「おおおおお」と思った。
青いお皿。最初小さいお皿みたいに受け取れる書き方をされていたので、途中で「大皿」って出てきたのでびっくりした。ああでもいま読み返したら長吉さんはちゃんと【両手で受け取って】いるなあ。そっかそっかー。大きい青い皿に丹頂鶴。想像するだに、美しい。丹頂さんは、怒ってなかったのかな。どうだったのかな。どういう気持ちで、お皿をくれたのかなあ。

野ばらの帽子
ちょっと怖いお話。でも最後に救いがあって良かった。いまどきは、知らない十代前半の女の子に大学生が道で声をかけたら「声掛け事例」で通報されたりするんだぜ。道もきけないんだぜ。世知辛い世の中だけど、実際怖い事件がいっぱいあるから仕方ないんだぜ。
でもこの鹿のおかあさん、それこそ牧歌的な時代とはいえ、よく知らない大学生の男に自分の娘の家庭教師をやれとか言えますね。とか思って読んでいたら、鹿のほうがよっぽどウワテで怖い存在なのだった。復讐て。そんなざっくりした理由で手当たり次第に。まあ同じ「人間」というくくりですからやむを得ないのかね。

てまり
この話はよくあるお姫さまのわがままからはじまり、童話によくあるお姫さまと貧しい者の友情かと思って読んでいて、最後のところで「おおおおお」と思わされた。なあんてリアリストなんでしょう。
それにしても「はしか」。ついこの夏、久しぶりに関西では「はしか」が流行しているということでニュースになっていましたので、ちょっと面白く思いました。昔は子どもがあたり前にかかる病気だったんですよね。

長い灰色のスカート
これは怖くてすごく悲しい話。なのにとても美しく幻想的に、妖しく、引き込まれるように描いてある。絵を思いうかべるとぞっとしつつも主人公の少女がどんどん中に入っていくのを止めたい、やめなさいという思いと幼い弟を隠してしまったモノへの怒りが込み上げてくる。灰色の長い長いスカートの襞。怖い。最後のところを読んで、必死に探し回ってやっと姉だけは生きて見つけたお父さんの気持ちとかを忖度して、とても悲しくやりきれない思いがした。

野の音
泰山木の花ってとっても綺麗ですよね。大きくて、豪華で。うっとり。でもこのお話を読んでしまったからには、また全然違う目で泰山木の木を(もしそれが大きい木であればあるほど)見上げてしまうかも、という気がしました。最初のところで女の子が消えてしまうくだりで店主のおばあさんが全然我関せずっていうふりをしていたので「あれ?このおばあさんの仕業じゃないのかな」と思ったけど、どんどんわかっていくとなんであんなふうな静かな書き方だったのかなあと思う。いま、そこのところを読み返してみたけど、うーん、なるほど、うーん。そうか、このひとにとっては別に当たり前のことだから、かな…。作業が滞りなく進んだ、それだけのことということか。怖いねー。
助けに来たお兄さんが最後ああいうことになって、でも読後感は何故だか「ハッピーエンド」なのだった、おかしいかな? そもそもこのお兄さんの望みはなんだったんだろうとか、まあ、これが童話じゃなくて、そしてこういう世界での出来事じゃなかったら絶対絶望的なラストの筈なんだけど。泰山木の魔法にかけられちゃったのかしら。


お話たちは、どれも「昔話」のような懐かしい雰囲気を持っていて、でも実際はどれもそんなに昔の話ではない。
アンゴラの手袋が忘れ物だったり、バスが走っていたり、自動ドアが開いたり、ランプの光に照らしたり、マーケットにお母さんと行ったり、ストーブとカーテンとミシンがあったりする。そういうのが出てこないのは「てまり」だけで、これは他の話より少し時代設定が昔というふうに読める。

本書は1973年11月筑摩書房より刊行され、1986年8月にちくま文庫に収録された。とある。電子化にあたり、解説と画像は割愛したともある。
そうかー、1973年か……40年と少し前。
40年前は「昔話」かも知れないな。作者がどういう時代設定で描いたかわかんないけど……。

2016/11/05

レモン畑の吸血鬼


レモン畑の吸血鬼
レモン畑の吸血鬼
posted with amazlet at 16.11.05
カレン・ラッセル
河出書房新社
売り上げランキング: 175,749
■カレン・ラッセル 翻訳:松田青子
松田さんの小説とエッセイを読み、以前からタイトルと素敵な表紙に興味は持っていたけどどうなのかな~と眺めていた『レモン畑の吸血鬼』がこの松田さんの翻訳だと認識し、俄然読みたくなって購入。カバーしていても素敵だし、カバーを外しても素敵……装丁は、やはりそうでしたかの名久井さん。

現代アメリカ小説で前衛的なのは時に難解というか、読み手が試されているような感じの作品があったりするが、カレン・ラッセルは予想したよりもずっとわかりやすかった。そして設定が変わっていて、「レモン畑の吸血鬼」なんていうから可愛らしい感じなのかと思わせておいてズダーンと急展開を持ってきたりとか、作品によっていろんな違う空気と世界観を創り出していて、わくわくするというかセンスオブワンダーというか、「次の話はどうくるのかな」という楽しみがあった。

カレン・ラッセルは1981年フロリダ州マイアミ生まれ。松田さんは1979年生まれ。原著者と翻訳者が同世代だというのも、良いんだろうな。

注意! 以下、ストーリー展開や内容に触れながら感想などのコメントを書きます。
本書を未読の方はスルー推奨。
別に展開を知ったからといって価値が無くなるとは思わないけれど、知らないで読んだ方が断然面白いしどきどきわくわく出来ると思うので。

【目次】
レモン畑の吸血鬼
イタリアのナポリ、ソレントのレモン畑に小ざっぱりした服装の日焼けしたノンノ(じいさん)が座っている。彼は吸血鬼である。『ポーの一族』は薔薇を育てて生きていたけれど、彼とその妻はいろいろ試した結果、レモンが一番だという結論に達した。
青年期をセオリー通りに暮らしてきたの吸血鬼が妻と出会い、
で、血に何の効果もないことにいつ気がついたの?
と訊かれるところとか、めちゃくちゃ面白い。
明るい陽光の中の、ほのぼのしたシーンから、意外な吸血鬼像ときて、さて、と思って読んでいたら吸血鬼夫婦の熟年破局ときて、そこからなんでかわからないけどいかにも昔ながらのホラーチックな吸血鬼物的展開になっていくのが……。
変な話だなあ。前半の空気が好きだった。

お国のための糸繰り
なんと舞台は明治時代の日本。製糸工場の女工もの。
でもただの女工物じゃなくてなんとここに連れてこられるときに飲まされたものによって彼女たちは……。
主人公が飲むところはぞわぞわっ。なんてものを飲むの!信じられん!
彼女たちの映像をリアルに想像することを脳が拒否する、かなりグロテスクな絵づらだなあ。でも布とかは綺麗なんだよな……最初からそれぞれの色が付いてるとか……すごいこと発想するなあとびっくりしながら読んだ。
映画化絶対しないでね。

一九七九年、カモメ軍団、ストロング・ビーチを襲う
なんかこれは男性がよく書く現代アメリカ小説っぽいな。
少年の、片思いの相手が自分の兄と付き合って悶々とするのとか。
カモメたちがいろんなものを取ってきて集めている巣を見つけてその中身を出してきて取る言動とかが理解しにくいんだけど、でもなんとなくそうしなければいけないような気がするのもわかるというか。指輪のくだりはちょっと意外だったなあ。やられっぱなしじゃないんだー。でも随分なビッチだなあ。

証明
西部開拓時代みたいな。
この地では監査官によって「証明」してもらわないと自分の土地に出来ない。んでそこで重要な役割を持つのが何故か「ガラス製の窓」だというね。「ガラス製の窓」は貴重でどこの家でも持てるものじゃないからこっそりみんなで共有して監査官が来る時だけ嵌め込んでしのぐんだとか。で、主人公の少年は父親に重要な任務を任されるんだけど……。展開はセオリー。お母さんが止めるのとか。少年が早く大人として認められたがるとか。わかりやすい心理描写と、ちょっと次元の歪んだ状況・設定描写のズレが面白い。
悪夢的というのか、ちょっとカフカっぽいかなあ。

任期終わりの廏
この話ではなぜか歴代のアメリカ大統領たちが馬に転生している。でも全員じゃないし、転生の順番もばらばら。それについての説明もいっさい無し。
みんな、ある家の厩に連れてこられて飼われている。厩の中の半数は生粋の馬。敷地から抜け出そうと試みる馬もいた。そして成功したのは1頭だけ。
アメリカ大統領についての関心があんまりないからここにいる大統領たちにどういう意味があるのかとかよくわからないけど、抜け出した後に蹄の跡が無いっていうのが怖い。なんなんだろうなー。

ダグバート・シャックルトンの南極観戦注意事項
南極で毎年開催されている「食物連鎖対戦」(なんじゃそりゃ)。対戦するのはクジラ対オキアミ……って食物連鎖的に勝敗ハナから決まってますケド!? というツッコミがなされる余地は一切ない。
観戦における、オキアミチームメンバー注意事項。
途中から、書き手の関心はむしろ別れた妻なんだなーということがわかってくる話でもある。
それにしても南極にクジラ対オキアミの試合を観に行くとか、凄い設定を思いつくなあ。

帰還兵
昔、小説に書かれる帰還兵といえばベトナム帰りと決まっていたが昨今はイラクなんだね。
主人公はベテランの女性マッサージ師。
軍曹だったまだ若い彼の背中には、戦友を亡くしたときの「記念」としてタトゥーが彫られていた。
刺青が現実にあった「絵」になっていて、その背中をマッサージしていくと起こる奇妙で不思議な現象と青年に起こる変化が面白い。
なんかちょっと心理カウンセラー的な役割をマッサージ師が担っているのとかも。ちょっと魔法の世界というか夢判断というのか、理屈で説明できないけど感情的感覚的には「ありそう」「あるかも」「あったら面白いな」的な。ハッピーエンドの方向に行くのかと思いきや途中から変化していくのも一筋縄じゃなくて良し。危うさは見せかけて、安直な恋愛に落とし込まないのも良し。

エリック・ミューティスの墓なし人形
悪ガキ4人組が自分たちのシマで案山子を見つける。
ほのぼのした話かと思いきやかなり重たいテーマを背負っていて、読んでいてどんどん気が滅入っていった。でもリアルだなあ。すごい説得力がある。主人公のちょっと昔の感情も、現在の奇妙な非科学的な恐怖心も。思いついたことから逃れられなくなっていって、冷静に見たら「なんで?」ってことなんだけど、でも主人公にはそうとしか思えないし、実際にこの話の中の「実際」はそれに沿う展開をする。例によって合理的な説明も解説も何もないままなんだけど。
いろんな意味で救いが無い。最後のほうの展開はせめてもの気休め、くらいにしか思えないしなあ…。
この話はしかしすべての十代に読んでもらいたい気はする。この感情を、自分の中で再確認してもらうために。