2016/10/29

バーナード嬢曰く。3巻 【漫画】

バーナード嬢曰く。 3 (IDコミックス REXコミックス)
施川ユウキ
一迅社 (2016-10-27)
売り上げランキング: 175
■施川ユウキ
第3巻が発売されています。
絶好調に面白いです。
なんと深夜枠でアニメにもなっているのですね。

第3巻はSF以外の本がけっこうあって、わたしが既読作品も多くて、共感しやすかった。
エドワード・ゴーリーも出てきたよ!

町田さわこ(ド嬢)が初期に比べてちゃんと本読んでることが多くなったなあ。
神林さんの台詞にはいつも爆笑させられますwww

しっかし……相変わらず絵は本当に下手だなー(内容がこれだけ面白いから良いんだけど)。

アニメ観てみたけどみんな恐ろしく早口だった!

デラックスじゃない

デラックスじゃない (双葉文庫)
マツコ・デラックス
双葉社 (2016-06-16)
売り上げランキング: 15,913
kindle版
■マツコ・デラックス
2014年6月双葉社刊の単行本の電子書籍版を「買おうかしら~(興味あるわ~)でも単行本価格出して買うほどではないというか…」と迷っていたのがいつのまにか文庫化&文庫価格電子書籍化していた(手持ちの発行日は2016.8.31になっているけどAmazonだと2016.6.16なのは文庫の発売日ってことかしら)のに気付いて購入したわ。

読んでの感想としては、まんま、テレビで観る印象・イメージどおりのマツコさん、って感じだったわ。気軽に読めるし、面白かったわよ。
「文章で読むとイメージ違ったわ~」とか全然なかった。
でも正直、
「あれ? マツコさん雑誌の編集のバイトとかされてた過去があったり、いろんなポリシーがおありのような生き方されているわりに文章は全然こだわっていないというか正直全然……なのね」
と少しガッカリしてしまったのも事実よ。
タレントさんの書かれた本を読むのははじめてじゃないけど、あのマツコさんだから、もう少し何か、深い知性を覗かせる文才を期待してしまっていたのね。
「でもまあ、マツコさんがふだん言ってるスタンスのままだし、マツコさん好きだし、内容は気軽に読めるし悪くないし」
と自分に言い聞かせながら最後まで読んで、びっくりしたわ。
「2016年の世迷いごと。」は小社月刊誌『EX大衆』2014年8月号~2016年6月号に掲載された連載「マツコ・デラックスの売られてないけど買い言葉」に加筆・修正をしたものです。また本書は語り起こしです。
なんて書いてあるじゃないの。
「2016年の世迷いごと。」っていうのは「文庫化によせて」として「おわりに」の後に収録されている一章分で、まあ、よくある文庫化に際してのボーナス・トラックみたいなものね。これは月刊誌に連載されたものである、と。まあそれはわかるわよ。問題はその後よ。
本書は語り起こしです。
語り起こしなんて言葉、寡聞にして初めて聞いたので思わずググってしまったわ。どうやらまだ新しい言葉のようね。
「書き下ろし」は作家が雑誌連載をせずにいきなり単行本として発表すること。
ひとが話したことを文字にするのを「活字に起こす」と言うわね。
このふたつをあわせたような意味らしいわ。
つまりマツコさんが書いたわけじゃない、ってことなの。

どぉーりで魂の抜けた文章だったわけよ!!!(超納得したわ。)

誤解しないで欲しいのだけど、マツコさんを責める気は一ミリも無いわ。
責めるとしたら本書担当の編集者ね。あと「起こし」た人物にも「もうちょっと、神経つかってもよかったんじゃないの」と言いたくはあるわね。
ところどころ雑なのよ。具体的にいえば、実際にあった出来事について触れるときにウィキペディアから引用したような説明くさい文章がものすごくくだけた話し言葉の中にいきなり放り込まれているのが何回かあって、そこだけ明らかに浮いているのね。
まあ、こちらが細かいこと言っているのは百も承知よ。
気にしなければ気にならないレベルなのかもしれないわ。でも、
「素人くさいわね~。まあ、マツコさんはプロの文筆家じゃないから仕方ないのかしら」
って読んでる最中思っちゃったのよ。
あたしはマツコさんが好きだから「仕方ないのかしら」なんて彼女に対して思いたくなかったわ!
それなのに最後の最後のページを読むまで誤解してしまっていたのよ!
あなたたちがマツコさんのこと愛してこの仕事を大事にしていたらこの程度の直し入れることは簡単に出来たはずよ。
だっていままで口述筆記(語り起こしなんて言わなくても昔からちゃんとある言葉よ)の作品や、対談・鼎談の記事を読んだことが何度もあるけれど、みんなきちんとしていたもの。
マツコさんの名前を使うんだったら、彼女の価値を貶めないようにちゃんと仕事してよね!
と言いたいわ。

内容は、ふだんテレビで全部観ているわけじゃなくて、ほんの一部しか知らないけれども「マツコさんって『毒舌』とか言われているけどすごく常識家でマナーもきちんとされている方ね」って思っていたそのとおりのことが書かれていたって感じよ。
あんまり年齢も変わらないので、世代的に共感しやすいっていうのもあるのかしら。例えば、ネット社会、SNSについての感覚とか。でも彼女はネットで批評される対象にあるから、より感性が鋭くなっているなとは思ったわね。
印象に残ったことは、なんとなく彼女は自分の体形を変えたいとか思っていないと勝手に思ってしまっていたので、たびたびダイエットに挑戦されている、というのは少し意外だったわ。でも確かに、スタイル云々じゃなくて、体調や健康上、生活していくうえでの不便さとかがあるわけね。マツコさんには長生きしてほしいから、そこはご自愛いただきたいと思ったわ。
それと、趣味がない、というのも意外というか……逆に何故そこまで「趣味に至らない」で終わってしまうのかがわからなかったわ。
仕事がきちんとあるし、生活に困っていないし、でも【ここんとこ、ずっとテレビ局と自宅マンションを往復するだけの日々ね】というつぶやきが何度か出てくるんだけど、その気持ちはわたしも覚えがある、と思った。というか、たぶん多くの人がそれで趣味や恋愛に時間をかけるんだと思う。でもマツコさんの場合、いままでの人生で満足感を得たことがあまりなくて、あるとき脳科学の先生から「もともとあるはずだったDNAが1つない」から説(そういうひとは「食」に走るから肥満になりやすい)を聞いて納得していて、マツコさんが趣味やペットにハマれないのはそういう影響があるのかもしれないわね。まぁ、どこまで本当か、よくわからないけれど…。

今回の感想は本書の文体にあわせてオネエ言葉で通してみたわ。読みにくかったり不愉快だったらごめんなさいね。

【目次】
はじめに ~ずっと迷って生きてきました。いまもまだ迷っているんです~
第一章 生来 ~いまのアタシを作った出来事~
流されて四十年~マツコの半生略歴 A面~/モラリストのDNA~エアコンと二槽式洗濯機と両親と~/女装のはじまり~初めての口紅、思春期のポスター~/マツコが思うマツコ~差別されてるから笑われてんのよ!~
第二章 懺悔 ~編集者・文筆家・タレントとして爆走後~
編集者マツコの全力疾走~ゲイの闘いIN高知~/破天荒コンプレックス~文筆家時代のウソ~/一生の不覚~思い込みという視野狭窄~
第三章 怠惰 ~変わらない私生活~
超自堕落にて四十年~マツコの半生略歴 B面~/無欲な食欲~デブはビールを飲んでも酔いません~/夜更けの縄跳び~リバウンド尽くしのダイエット~
第四章 趣味 ~地味すぎる息抜き~
体重のせいでベッド破壊~大塚家具探検に行く~/ジオラマ&MAPに釘づけ~森タワーで働きたい~/伝統芸ハロプロ鑑賞~日本を歌うアイドルにくびったけ~
第五章 覚悟 ~電波芸者の意地~
アタシがテレビを選んだ理由~いい加減さにぴったりハマった~/安っぽい正義感なんてクソ喰らえ~振り向けばネット住民~/生涯ケンカ宣言~制約とギリギリのせめぎ合い中~/テレビへの恩返し~午後11時台こそ新ゴールデン・タイム~
おわりに ~アタシの人生は旧時代のメディアと一緒に没落していく~
文庫化によせて 2016年の世迷いごと。

2016/10/27

辺境中毒!

【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)
集英社 (2014-05-01)
売り上げランキング: 4,603
kindle版
■高野秀行
2008年に本の雑誌社から出た単行本『辺境の旅はゾウにかぎる』を改題し、親本の冒頭にあったエッセイをカットし最後に角幡氏との対談記事を入れた、2011年10月20日集英社文庫の電子書籍版。
それと、わざわざ「カラー版」とあるけど(kindle版では関係無いけど)本書には表紙以外の写真は無くて、しかも表紙も文字だけのカラーだし、いったいなにをそんなに「カラー」強調しているのかなあ?
Amazonの9月26日の日替わりセールで購入だけしてあったのを先日からようやく手をつけた。

本書には『アヘン王国潜入記』のその直後談とでもいうべき「アヘン王国脱出記」が載っていて相変わらず大変そうなところに足を突っ込んでいるなあ。『潜入記』は未読。だってアヘン作ってる集落とかそんなヤヤコシソーなところに関心が向かないんだよなあ。

余談になるが、感想を書くためにウィキペディアを開いたら奥さんの情報が載っていて、片野ゆかさんというやはりノンフィクション作家さんらしい。高野さんと同じ年の生まれ。奥さんと一緒に探検行った著作ってあるのかな? 高野さんの本は結構多いんだけどたまに興味がわいたら読んでるだけなので全然読めてないんだよなあ。
高野さんの著作を読むと「ひゃー、よーやるわー わたしには到底無理やわー」と何回も思う、というか、氏の本に臨むときはハナからそういう「構え」になっているのでハードルは上がっているはずなのであるが、それでも今回も何ヶ所かで「ギャー」と心中顔を顰めたり「無理無理無理無理」と具体的に想像することを意図的に排しながら読んだりした。

本書にはそういう冒険実話のほかに、探究心・探検絡みで数名との対談や書評がたくさん収録されていて、とても面白い。
内澤旬子との対談が白眉かな。高野さんも変だと思うけど内澤さんも想像の斜め上を行く変人だとわかった。前から興味はあって、でも書籍できちんと読んだことがなかったんだけど。気持ちのほんの端っこはわかるけど(良いなと思うものは欲しくなる、というのはよくわかるがその対象と入手困難度と実地で行くっていうのが…)。大槻ケンヂのエッセイには二十代のときハマったけどとかたしかに波長合いそうだな~。なんと角田の光ちゃんともやっている、そういえば昔はバックパッカーだったもんね。マラリアの話、書いてた書いてた。
書評は自分がふだん読まないジャンルだけに書評だけでも「ふーん、そんな世界があるのか」と。こういうふうにわかりやすく概要を説明してくれるのはありがたい。中島京子の著作がとりあげられていたのも意外だったが肝心のタイトルになっている作品についてまったく触れられていないのはどうかと思う。紙幅の都合だろうが、だったら書籍化するときに加筆してほしかったなあ。でも中島京子をこういう視点で評しているのは初めて読んだ。読みたくなるな~。

旅に持って行く7つ道具の話で「コンタクトレンズ」が含まれていて、普段はメガネなのだけれどメガネをかけていると一発で「外国人」とわかってしまうからコンタクトが良い、というのが「へえ~」と思った。文明度はコンタクトのほうが最先端なんだけどまあ、見た目にはわからないし、高野さんが行くような辺境では「メガネ」はまだまだ「文明国」の象徴なんだなあとびっくり。
あと辺境で何でも食べる、っていうのはなんとなく知っていたけど、猿の子どものくだりは……想像を絶するにも程がある!みんなすぐに順応したとか本当か!飢えたらわたしも順応してしまうんだろうか。想像上では到底無理なのだが…。

あと本書を読んで『三国志』は読んだけど『水滸伝』は未読なので読んどくべきか…。高野さん、『南総里見八犬伝』とかも既読のようで、そういうイメージ無いけど、読書家だよなあ。
旅先に持って行く本でいつもものすごく悩むそうだが、近年の電子書籍は導入なさってるのかな。メガネもダメなんだからタブレットとかはお話にならないのかな。ちょっと気になる。

以下に目次を写したが……謎なのが、「対談 辺境+越境」の章の編集方法で、エッセイと対談が交互に組まれているのだが、関係があるわけではなく、本書巻末の初出を見ても掲載誌も時期も全然別なのだ。よくわからんなー。

【目次】
ケシの花ひらくアジアの丘
「辺境」へ。それは、ブラックボックスをのぞく旅
アヘン王国脱出記
テレビの理不尽「ビルマロード」世界初完全踏破の裏側
ミャンマーのゾウに乗って
乗り物――牛とゾウという乗り物
野生動物――ヤマアラシの肉はかたかった
雨季――道が川になるミャンマーの雨
服――リラックス・タイムはやっぱりロンジー
酒――草葺き屋台で飲むヤシ酒の味
宝石――ルビーとヒスイの宝庫
金――なぜミャンマー人は黄金が好きなのか
六十年の詐欺
対談 辺境+越境
 「ショー」よりも「幕間」を
旅――自由気ままもムズカシイ。【角田光代】
ゾウ語の研究
人生は旅だ! 冒険だ! 【井原美紀】
中島みゆきは外国の夜行によく似合う
現場が一番おもしろい! エンタメ・ノンフィクション宣言【内澤旬子】
暦――辺境地の新年を考える
ノンフィクションから小説へ【船戸与一】
田舎の駄菓子屋で出会った不思議な切手
『ムー』はプロレスである【大槻ケンヂ】
辺境読書―エンタメ・ノンフ・ブックガイド
「謎モノ」との出会い―エンタメ・ノンフとは何であるのか
旅に持って行きたい文庫
歴史的事実に沿った現代中国の「水滸伝」(『ゴールデン・トライアングル秘史』鄧賢)
ケモノとニンゲンの鮮やかな反転(『サバイバル登山家』服部文祥)
五感ギリギリの状態で生きるおもしろさ(『アマゾン源流生活』高野潤)
支隊を消した「真犯人」は誰か(『シャクルトンに消された男たち』ケリー・テイラー=ルイス)
時も場所にもこだわらない(『海の漂泊民族パジャウ』ミルダ・ドリューケ)
「伊藤」は辺境地によくいる男(『日本奥地紀行』イザベラ・バード)
言実一致のナカキョー、最高!(『均ちゃんの失踪』中島京子)
イラン人の生の声を聞こう!(『例えばイランという国――8人のイランの人々との出会い』奥圭三)
四万十川で再会(『忘れられた日本人』宮本常一)
腸の中から屠畜と土地を描く傑作ルポ(『世界屠畜紀行』内澤旬子)
男の本能がかきたてられるドタバタ探検・冒険記(『アフリカにょろり旅』青山潤)
エンタメ・ノンフの雄、宮田珠己を見よ!(『ふしぎ盆栽ホンノンボ』宮田珠己)
エンタメ・ノンフの横綱はこの人だ!(『素晴らしきラジオ体操』高橋秀実)
愉快、痛快のアジアお宝探索記(『魔境アジアお宝探索記』島津法樹)
南極探検もびっくりの秘境駅巡り(『秘境駅へ行こう!』牛山隆信)
究極のエンタメ・ノンフは純文学か(『KAMIKAZE神風』石丸元章)
ビルマ商人が見た七十年前の日本(『ビルマ商人の日本訪問記』ウ・フラ)
世間はいかにマンセームー脳人間が多いか(『X51.ORG THE ODYSSEY』佐藤健寿)
織田信長は日本初のUMA探索者か?(『信長公記』太田牛一)
いかがわしき奴らの「天国の島」(『金門島流離譚』船戸与一)
探検部のカリスマは最上のペテン師だった(『流木』西木正明)
特別対談 よく燃えるのが実用探検本の条件だ!(角幡唯介)

辺境の旅はゾウにかぎる
高野 秀行
本の雑誌社
売り上げランキング: 555,200

2016/10/21

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方
「ない仕事」の作り方
posted with amazlet at 16.10.21
みうら じゅん
文藝春秋
売り上げランキング: 2,556
kindle版
■みうらじゅん
文藝春秋社2015年11月24日刊(単行本)の電子書籍版。日替わりセールであがってきたので購入。

みうらじゅんの単独著書を買うのは初めてかも。いとうせいこうとの共著『見仏記』は既刊全部読んだけど。
そもそもみうらじゅんというのが職業なんなのかとか謎の存在すぎたので、本書を買う動機のひとつとなったわけだけど、読んでみてビックリ、思ったよりもずっと計画的長期的に努力のひと……だった。なんか、天才肌の変わり者と思ってたし、実際読んでみてそうだと思ったけど、天才がコツコツ努力もしていたという。
天才が努力するとかもう最強じゃね!? って感じ。
努力をひとに見せないんだよね。好きなことやってますーって雰囲気なんだよね。

驚いたのは「マイブーム」と「ゆるキャラ」という言葉を考え出し、世間に広めるためにいろんな媒体使って活動したのってみうらじゅんだったんデスねー!(有名なことらしいのでコイツ今頃何言ってんだって思われるでしょうが)。
そのへんの経緯というか、具体的にどういうふうに着想→実行→実現していったのか、ノウハウが全部本書には書いてある。凄いなあ!
でも書いてあるからってそれを誰でも出来るかっていうと……。要するに「一人電通」とか言っちゃって広告代理店(しかもかなり大手の)がやるようなことを企画から実行までしちゃうんだから……
あたりまえの話だけど、大学生時代くらいから少しずつ積み上げてきた人脈とか仕事の実績とかがあって、出来ることなんだよね。で、それも全部本人の努力だから。
たまにみうらじゅんのところに「あなたみたいな仕事がしたいから雇ってくれ」と言ってくる若いのがいるらしいが……「みうらじゅんみたいな仕事」をするにはどれだけ才能があって、おまけにその上に努力と年月が積み重なっているのか、ちゃんと考えたことがあるのか、想像してみたことはないのか、あったらそんなこととてもじゃないけど言えないはずだよね。

みうらじゅんといえばややくせ毛の長髪にサングラスの怪しい風体、でインプットされていたが、ほんの駆け出しだった頃に糸井重里さんのアドバイスに従って当時の流行の最先端だったテクノカットにボストンメガネというスタイルだった時期があったらしく、その写真が本書には載っているのだがこれが……幼さが残ってて、可愛い! みうらさんてば若いころはこんなに可愛いかったのぉ!? っていうかコレがアレになんのぉ!? ヒャー!加齢って残酷!!!
男性に可愛いっていうのもナンだけど、少なくともこの写真で見る限り、二十代前半のみうらじゅんはカッコいいとかハンサムとかじゃなくて「可愛い」んだよなあ。童顔だし。
あと、氏がしばしば描かれるカエルっぽいキャラクターのイメージイラストがあるのだけれど、みうらじゅんって涙袋がくっきりあるんだね、「あーここの特徴をとらえてあの絵になるわけね、似てるわー」と初めて納得できた。

【目次】
まえがき すべては「マイブーム」から始まる

第1章 ゼロから始まる仕事 ~ゆるキャラ
「ゆるキャラ」との出会い/「ゆるキャラ」と命名/自分洗脳と収集/雑誌に売り込む/イベントを仕掛ける/ブームとは「誤解」/みうらじゅんが作った「ゆるキャラ」たち/

第2章 「ない仕事」の仕事術
1 発見と「自分洗脳」
伝わっていないものを伝える~吉本新喜劇ギャグ100連発/ないものから探す~勝手に観光協会/自分を洗脳する~テングーとゴムヘビ/逆境を面白がる~地獄表/趣味は突き詰める~ブロンソンズ/人からの影響も受ける~大島渚/好きなものが連鎖する~崖っぷち
2 ネーミングの重要性
ネーミングでマイナスをプラスにする~いやげ物/本質を突く~とんまつり/怒られることを逆転する~らくがお/重い言葉をポップにする~親孝行プレイ/流行るものは略される~シベ超/意図しないものが流行る~DT
3 広めることと伝わること
母親に向けて仕事をする~人生エロエロ/雑誌という広報誌~奥村チヨブーム/接待の重要性~VOW!/チームを組む~ザ・スライドショー/言い続けること~AMA/好きでい続けること~ディランがロック/暗黙の了解を破る~アイデン&ティティ

第3章 仕事を作るセンスの育み方
1 少年時代の「素養」が形になるまで
一人編集長~怪獣スクラップ/自分塾の大切さ~DTF/デビューと初期作品~オレに言わせりゃTV/糸井重里さんとの出会い~見ぐるしいほど愛されたい/まだないことを描く~カリフォルニアの青いバカ
2 たどり着いた仕事の流儀
見合った方法で発表する~色即ぜねれいしょん/「私が」で考えない~自分なくしの旅/不自然に生きる~グラビアン魂/安定していないふりをする~ロングヘアーという生き方/「空」に気づく~アウトドア般若心経/ぐっとくるものに出会う~シンス

第4章 子供の趣味と大人の仕事 ~仏像
仏像スクラップ/「見仏記」の開始/「大日本仏像連合」結成/「仏画ブーム」到来/「阿修羅展」という事件/仏像大使に任命

あとがき 本当の「ない仕事」 ~エロスクラップ

2016/10/20

夫婦で行くイスラムの国々

夫婦で行くイスラムの国々 (集英社文庫)
清水 義範
集英社
売り上げランキング: 80,649
kindle版
■清水義範
初出「すばる」2005年7月号~2008年4月号に加筆修正、新たにコラムを付け加えたオリジナル文庫2009/8/20刊の電子書籍版。
パスティーシュ、『おもしろくても理科』シリーズほか多作の作家、清水さんが奥さんとイスラム国家を1年に1回のペースで旅した旅行エッセイ。

作家が書いた旅行エッセイというと編集者やカメラマンと企画ありきで独自旅行をして、というのが多いが本書は清水家の家族旅行(インド)からはじまってほぼ毎回旅行会社のパックツアー。旅も終盤になってからようやく連載の話が来て「仕事」になった。まあ、最初のトルコ旅行は旅雑誌の写真企画で行ったものだけど、その時はまだ単なる単発の旅行だったわけで。

清水氏は1947年(昭和22年)生まれで、旅行はほぼ50歳代のこと。途中で2001年9月のニューヨーク同時多発テロが起こる。

地図が無い(アマゾンの文庫購入者さんのレビューにもあった)のはちょっと不親切かなあ。kindle版なので写真はモノクロ。
清水夫妻が行こうとした以下の国々は希望者が少なく、ゴールデンウィークや夏休みくらいでないと旅行会社のツアーの規定人数が集まらないため、その時期の旅行ばかりになったとのこと。2016年現在では危険度が高いが当時でも紛争やテロがあったので周囲のひとに「そんなところに行って大丈夫ですか」と心配されたとのこと。
パックツア―を利用している理由は手軽で便利だからで、本書に出てくる場所はメジャーなところばかりである。しかも、脱線が無い。50代夫婦での旅行なので落ち着いているし羽目も外さない。トラブルもプチトラブルも無い。
正直、旅行エッセイとしてはあんまり面白くない部類かもしれない。
本書のいいところは、清水さんがほぼ予習なしで旅行に行き、現地でナマで自分で見聞きして感じ取った直観や感覚、だんだん馴染んでいく過程などが書いてあるところだ。奥さんと旅先で感じたことなどを話し合っている。良いご夫婦だなあ。本書の写真は奥様によるもの。

文中でしばしば「イスラム教徒が多くを占める国」くらいの意味で「イスラム国」という単語が出てくる。いまとなっては全然意味合いが違ってしまっていますね。
本書を読んだのはamazonの日替わりセールで上がってきて、昨今のイスラム関係の事件とかを見ていて「イスラムのこと、全然知らないなあ…」と思っていたので。
でも本書を読んでイスラムのことが理解できたかと云うとうーん。
むしろ本書で書かれているイスラムの国々の様子と、一部の集団がやってるテロとかの乖離に戸惑いが増すばかりというかなんというか。

いろんな意味で「このころはパックツアーで行けたんだなあ。早く平和になると良いなあ」と何回も思ってしまう本だった。

目次に、著者が訪れた年月などを追記。
序の章 インド―イスラムの幻影
インドに3回行った件。
①1988年3月末から4月頭(著者40歳にして初めての旅行。著者の妻の母親が企画したツアー)
②1989年11月(旅行会社のツアー、以下「ツアー」。)
③1995年末~1996年正月(南インド。ツアー。)
オアシス・コラム(1) 水のこと
第一章 トルコ―文明の十字路
トルコに2回行った件。
①1996年11月(日本航空の機内誌の仕事。イスタンブール。アヤ・ソフィアを見て感動する。)
②1998年夏休み頃。ツアー。
とにかくトルコは食べ物が美味しくて親日で良い、という内容。
オアシス・コラム(2) お茶、コーヒーのこと  
第二章 ウズベキスタン ― 内陸シルクロードの旅
1999年ゴールデン・ウィーク(以下GW)。ツアー。  サマルカンド、タシケントなど。
オアシス・コラム(3) 料理のこと  
第三章 イラン ― ペルシアの残像
2000年GW。お酒の飲めない国。女性はスカーフ必須の国。  
オアシス・コラム(4) 酒のこと  
第四章 レバノン、シリア、ヨルダン ― 三つの宗教のふるさと
2001年5月。シリア、ヨルダン、レバノンのアラブの3か国を巡るツアー。  
オアシス・コラム(5) ベールのこと  
第五章 チュニジア ― カルタゴとサハラ砂漠
2002年8月。ツアー。  
オアシス・コラム(6) モスクのこと  
第六章 東トルコ ― 聖書と民族問題
2003年8月。 ツアー。 
オアシス・コラム(7) バザール、スークのこと  
第七章 モロッコ ― 迷路の国
2004年8月。ツアー。カサブランカなど。
オアシス・コラム(8) 道のこと  
第八章 エジプト ― ナイル川にアザーン
2005年1月。 ツアー。イスラムの味わいを求めて。 
オアシス・コラム(9) 土産物のこと  
第九章 スペイン ― 太陽の国のレコンキスタ
2005年9月。ツアー。 メスキータを見に。旅の最終地として。 
オアシス・コラム(10) トイレのこと  
追補の章 イエメン ― 摩天楼都市の国
2007年9月。ツアー。初めてのラマダン中の旅行。

2016/10/18

読めよ、さらば憂いなし

読めよ、さらば憂いなし
読めよ、さらば憂いなし
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松田 青子
河出書房新社
売り上げランキング: 228,701
■松田青子
単行本。紙の本。2015年10月刊。
装丁が可愛いな~と思って確認したら名久井(直子)さん。ははっ、やっぱりね。もうね。
装画は佐藤香苗さん。
書評集。
巻末の初出一覧を見て驚いたのだけれど、まあいろんな媒体に載っているのだけれど、本書所収の中で一番掲載が多い、最初に上がっているのが「女性自身」なんデスね。「女性自身」って週刊誌ですよね。あれに書評とか載ってるんだー。正確にいうと、光文社「女性自身」書評「女自身の週間書評」「読めよ、さらば憂いなし」2013年4月23日号~2014年4月29日号、「続・読めよ、さらば憂いなし」2014年6月3日~2015年10月6日号。
そのほかはざっくり拾うと「図書新聞」「群像」「波」「早稲田文学」「ユリイカ」「母の友」「すばる」「エル・ジャポン」「飛ぶ教室」「GREAT CINEMA」「BIRD」「CREA」「Coyote」等。

とにかくセレクトが良い。そしてなおかつ、とりあげた作品数が多い。

選んである本を見ていくだけで、おーなんだかセンスが良いなあ~という感じ。未読のものが多いんだけど、書評誌で見掛けたりして気になっていた本とかが何冊もあり、松田さんの書評を読んでその本の存在を思い出し、ものすごく面白そうに書いてあるので読みたい欲求が高まる。あと、スタンスがくっきり立ち上がってる。このひとが書評を通して何を言いたいのか、セレクトを見ているだけですごくよくわかる。
書評といっても硬い調子ではなく普段着のトークといった雰囲気であり、エッセイのようにも読める。ひととなりというか、松田さんがどういう十代を過ごしてきたのかとかの情報も得られる。英語が好きで、親戚がアメリカにいたりして、英語に親しむ環境があったんだなあとか、あ、やっぱ留学も高校生とかでけっこう長い期間行ってらしたんだとか。
もちろん、気軽なようで、実は隅々まできちんと練り上げられた文章。例えばそれぞれの文章の冒頭部分だけを見て行ってもその洗練がわかる。「あー出だしから上手いなー」と唸らされる。

1つ1つの書評に本のタイトルだけでなく、書評のタイトルが付いていて、それがばばん! と書評の主題を示していたりして、タイトルを眺めているだけでも結構面白い。
「雑」と書かれた箱に入りたい(『かよちゃんの荷物』)
さよなら、なんて言わないで(『さよなら、韓流』)
現実を直視できない女たち(『春にして君を離れ』)
かかりたくない魔法(『ラーメンと愛国』)
現代のハッピーエンド(『にこたま』)
わたしは覚えている(『ぼくは覚えている』)
後戻りできない物語(『厭な物語』)
一生ブレなかった人(『家と庭と犬とねこ』)
女子の調整力(『王妃の帰還』)
ダメをみがく幸福(『ダメをみがく』)
……などなど。

1つの作品に見開き2ページの書評。
漫画もあるし童話もある。
後半には映画やテレビドラマ評も結構ある。
ほんとにたくさんあるなあ。全部でいくつかしら。
ざっくり数えたら目次の項目で99ある。そのなかには「2010年12月の読書日記」「2011年1月の読書日記」「2011年2月の読書日記」「2014年1月の読書日記」も含まれていてこれは数冊ずつ紹介されている。
項目ごとの佐藤さんの挿し絵がテレビ見ているひとの絵なのはその回はドラマとか映画とかの感想がメイン。
でも目次見ているだけでは区分されていないんだよね……タイトル見ただけでは1回読んだきりだと覚えていない。
まーざっくり映画は10くらいかな。テレビドラマ「すいか」とかね。松田さんが「すいか」にハマったひとりだというのは物凄く納得出来るなあ。

本書巻末には2つの対談記事も収録されていてこれがまた豪華というかツボをついているというか。
柴田元幸×松田青子 ヘンな本の話をしましょう。
→翻訳を絡めて。それぞれ5冊ずつ翻訳書を紹介しつつおすすめしつつ。楽しい。
山崎まどか×松田青子 百合子は百合子であり百合子であり……――唯一無二ということ……
→武田百合子について語る。武田百合子読んどいてよかった。

2016/10/13

長嶋有 作家生活15周年記念電書

長嶋有 作家生活15周年記念電書
(2016-10-09)
売り上げランキング: 118
kindle版
■長嶋有
2016年7月に書店で無料配布された「長嶋有 作家生活15周年記念冊子」がパワーアップしたものだそう(そんな冊子があったのかー。著者のHPもツイッターも書店も全然チェックしてない情弱だからなあ)。
kindle版で総ページ2339もあるのに300円!安!

面白かったです。長嶋有ファンだから。
長嶋有作品を読んだことがあるひと向け。内容についてかなり踏み込んだ解説(=ネタバレは当然ありまくり)が繰り広げられているので。
自作についてここまであけっぴろげに軽いノリで気さくに自画自賛してしかもそれを公に公開しちゃうひとも珍しいと思う。まあ自分の作品を愛するのは当然だし、良いことだ。長嶋さんらしいなー。

基本的に常に「褒め」のスタンス。ファンブックみたいなものかな。ファンじゃないひとが読んだらどういう感想になるのかな。別にケナしたり批評したりしてほしいとかいうんじゃないけど、うーん、ロングインタビューとか特に。聞き手のモンダイのような気がしないでもない(失礼)。
楽屋ノリ、内輪ノリがどうこう、っていうのは『問いのない答え』についてのインタビューかなんかで長嶋さんがツイッターでファンときゃっきゃやってる、と云われた的なことを書いてらしたが。

本編もまあ悪くなかったけど「付録」である米光さんとのやりとりのほうが面白かった。量もたっぷりあって嬉しい。
付き合いが長くて気の置けない関係だからこそ踏み込めたり、聞き込めたりするところがあるのかなーと。文学畑のひとでそういう立場のかたがやったらまた違う切り口も出てくるんだろうなあとか。
なんか長嶋さんって、見た感じや作品からするとほんわかした優しい人のイメージだけど、意外と頑固ですよね。
というのはやっぱりそうなんだなと。
作品についてもそうだけど、本書では長嶋さんの私生活(?)というほどでもないけど、この本で初めて知ったこととかいくつもあって、例えば有名な『夕子ちゃんの近道』がらみの編集者とのケンカの話とかも初めて詳しい内容を知ることが出来た。お歳暮のことみたいなことかな?って想像してたけど違って、もっと根本的な、小説や作品に対するスタンスが「あかんやろその編集者」って感じでそりゃ怒るわと。いるんだねえ、一流出版社にそんな三流のが。

こういうお祭り企画を無料冊子で配って(たぶんほとんど出回らなかっただろうから)後に電子書籍で破格のお値段で出してくださるところとか、本当にありがたい。でもファンとしては普通に紙の書籍、単行本でも文庫サイズでも良いから出版してもらえたらもっと嬉しいし、絶対買うんだけど。やっぱ電子書籍は永久性がイマイチ信用出来ないっていうか。不況だから厳しいのかなー。「出回らない」といえば雑誌「アンデル」で、これについて長嶋さんが言及してバッサリいってたのとか、そもそも「アンデル」が出てきて長嶋さんがそこに書くことになった経緯とかも知れて、そんな以前からのずっと続いていた人脈とかが生きてるんだなあって興味深く熟読。文藝って人気ないんですかネ、やっぱり。売れないと厳しいんだろうなあ。

ふだん感想をブログで書いてるけど、ここまで踏み込んだ読みこみは全然出来ていないので、凄いなあと思った。『三の隣は五号室』について、6号室までしかない建物で、2階に3号室の隣に5号室がある状態というのが実際には「どうよ」というのが読んでいるときは全然違和感無かったので「あー! そういえば」って思った。雑誌連載時には1階に3部屋、とか書いててじゃああ0号室もあるのか、みたいな指摘があって単行本では直したけどそもそも2階建てで5室っていうのは無いかも、と。1階のひと部屋は管理人室とかボイラー室とかそういう作りということになるのかなあ。作者自身も気づかなかった瑕疵らしい。面白いなあ。
あと、短篇集『祝福』ってそういう経緯で出来た本だったんだ……。全然そんな感じしなかった(寄せ集めをむりくり関連付けたとか)。『祝福』については1篇1篇かなり詳しい解説がなされていて、再読したくなった。

長嶋有作品に対する言及だけじゃなく、たまにチラッと出てくる編集者との関係とか、出版業界事情みたいなのも、あんまり書いてくれるひといないから貴重だわー、面白いわー。

【目次】(・・・以降は補足説明)
長嶋有全作品クロニクル・・・歴代担当編集者と本人による全冊レビュー
長嶋有ロングインタビュー・・・聞き手:与儀明子
特別付録1「10年10冊10連鎖!?」・・・電書「10年10作10連鎖!?」(2010年11月14日発行)の中から、表紙(イラスト:衿沢世衣子)と『祝福』刊行記念ロングインタビュー(聞き手:米光一成)を再録。
特別付録2「オール長嶋総進撃」・・・2012年11月23日に行われたトークイベント「オール長嶋総進撃・長嶋有トークライブ 聞き手/米光一成」を電書化した「オール長嶋総進撃」

2016/10/07

神も仏もありませぬ

神も仏もありませぬ (ちくま文庫)
佐野 洋子
筑摩書房
売り上げランキング: 4,619
kindle版
■佐野洋子
2003年11月筑摩書房より単行本刊、2008年11月ちくま文庫、の電子書籍版。

佐野さんのエッセイを読むのはたぶん2冊目なのだが、以前読んだのは前すぎるのか感想を書いた文章は残っていない。だが感触だけは覚えていて、それは「みんな大絶賛なのにわたしはこのひととあんまり合わないなー」ということだった。
先日kindleの日替わりセールで上がってきたので、久しぶりなので違う感想になるかな? と思って見たけど読んだら驚くほどおんなじような結果となった。でも読んでられない、とかそういうのは無いんだよね。
「えーこのひと何言ってんの」「えーそんなこと書いちゃうのって信じられん」と何度か驚愕しつつも一方で「ああ、なんて正直なひとなんだ」とずっと感じているからかもしれない。
自分の感情のままに生きている動物みたいな、って思うけどまあ社会的な人間なので決してそれだけな筈はないことくらいわかっているんだけど。佐野さんの書くエッセイを読んでいるとそういう気持ちになってくるってだけ。

それに読んでいるとやっぱり単純に、エッセイとして面白いんだよね。かなり。
やっぱりこれだけ正直というか自分の考えていることを素直に書いて、合うことも、合わないこともあるけれど、基本的にはこのひとは他人を馬鹿にしたりはしていないというか、まあ嫌いなひとには嫌い! って言うひとのような気がするが、そのぶん好きなひとや大事にしたいひとを本当に大事にするひとだと思う。

リアルに会ったらどうだったんだろう。もしこのひとが自分の母親だったなら、と仮定したら裸足で逃げ出したくなるが。
Amazonのみなさんのレビューをざっくり見ただけなんだけど、可能性として、このエッセイの佐野さん(60代半ば)くらいになったら共感度が違ってくるのかな。……。どうでしょう。わからんな。

長嶋有のエッセイや小説には佐野洋子さんや佐野洋子さんがモデル?と思ってしまうひとが出てくるが、この本に収録されている「山のデパートホソカワ」には最初に長嶋有のお父さんが出てきて、それから長嶋有も出てくる。お父さんが長嶋さんを「ユウくん」と呼んでいるのを初めて読んで、「うわっ、ユウくんだって」とニヤニヤしてしまった。佐野さんから見たらこんな感じだったのね。『猛スピードで母は』の表紙を描いたいきさつってこんな感じだったんだ。へえ~。
長嶋親子が出てくるだけじゃなくて、ここで取り上げられている調剤薬局にして山のなんでも屋さんみたいなお店のことがすんごく面白くて、この章だけ3回も読んじゃった。

あと特に面白かったのは
ありがたい」アライさん夫婦讃歌、奥さんが特に良いなあ。
虹を見ながら死ね」ペンダントライトわたしもそういうの好きだから読んでいるだけで羨望の眼差し…。もったいなすぎるぅ!
納屋、納屋」こぶしの大きな木の移植の話。結局「ついた」のかなあ。気になるわー。
謎の人物「ハヤシさん」」佐野さんの作った参鶏湯は結局どうだったんだろう。ご本人が大満足だからいいか。朝鮮人参を買う電話のくだりとかすごく面白かった。

目次に好きなのに★を付けておく。それにしても「そういう事か」「そうならいいけど」「じゃ、どうする」なんて、ひどいエッセイタイトルだなあ、内容を題名だけ見ても思い出すとっかかりが無い。同じような感じなんだけど「それは、それはね」はこのエッセイを読んでみるとなるほど、そういう状況で出てきた心からの思いか、とすごく納得する良いタイトルだと思うんだけど。

【目次】
これはペテンか?
ありがたい ★★
今日でなくてもいい
虹を見ながら死ね ★★★
声は腹から出せ
フツーに死ぬ
そういう事か
それは、それはね ★
そうならいいけど ★
納屋、納屋 ★★
フツーじゃない ★
じゃ、どうする
何も知らなかった
山のデパートホソカワ ★★★★★
出来ます
他人のウサギ ★
謎の人物「ハヤシさん」★★★
金で買う
あとがきにかえて

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)
佐野 洋子
講談社
売り上げランキング: 586

2016/10/02

ロマンティックあげない

ロマンティックあげない
松田 青子
新潮社
売り上げランキング: 109,091
■松田青子
旅犬さんのオススメを受けて。
2016年4月発行の単行本。
初出は「yomyom pocket」2013年7月15日号~2015年8月30日号。
「雑誌yomyomのポケットサイズ版の姉妹版みたいな新雑誌が出てるってこと?」と思ってググったら
【2013年1月21日、『小説新潮』と『yom yom』の姉妹版として位置付けられる、会員制のデジタル雑誌『yomyom pocket』が創刊された。2014年12月25日に会員サイトは終了したが、連載は「ROLA」のウェブサイト内で継続されている】とのこと。ふーん。

本書の装丁は新潮社装幀室で装画に使われているのはケリー・リームツェンの《ツイスター・シスター》という絵だった。ネット上で表紙を見ていた時は写真のように見えていたのでちょっとびっくり。
見返しに使われている青…青紫?…の色がすごく綺麗。
タイトルはドラゴンボールの初期のエンディングに使われていた「ロマンティックあげるよ」からのもじり。松田さんは1979年生まれなので世代的に近く、なるほどねという感じ。まあこのへんも含めて新潮社の「刊行記念インタビュー」が非常に面白いので是非お読みいただきたい。
そこから一部そうだよなーと思った部分引用。
例えば、ときどきトークイベントの依頼を頂くのですが、企画書に「女性ならではの感性でお話しください」とか、「女性の視点でお話しください」といった一言が書かれていることがあります。それがものすごく不思議で。当たり前ですが、女性もそれぞれ個性がある違う人なので、「女性ならではの感性で」と言われても、何を話せと言われているのかまったくわからないです。私がどう思うかだったら話せますが。男性の編集者さんから「女子のあれこれについてお話しください」と言われたこともあるんですが、「男子のあれこれについてお話しください」と言われたときに、自分は困らないのかなと。

最近の女性が書くものとフェミニズムの問題は結構もう切り離せない感じだと思うんだけど、この方もそうだけど、小説『スタッキング可能』で結構直截的な表現があったからエッセイはもっと、なのかなと思っていたらそうでもなかった。このエッセイはそんな構えた問題意識!とかはあえて書かないスタンスだったらしい(これもさっきのインタビューに書いてある)。
本書でいうと「時代は特に変わっていない」なんかがわかりやすくて、青いシャツとピンクのシャツのエピソードなんかは「まだそんな"若い"男がいるのか!」と一瞬びっくりした後、「……いや、いるな」。世間てまだまだこんなもんかーって感じ。自覚がないのが救いが無いよね……。

映画の話が多くて、ほぼ洋画の話で、映画館とかによく行かれる方のようだ。洋楽の話も多い。あと、英語教室の講師をしたことがあったり、IT系の会社で翻訳の仕事をしたことがあったりと(その後童話や文学の翻訳も手がけられている)英語が得意な方らしい。本書の多くでかなりウキウキしたテンションで映画や洋楽(を歌う歌手)の話が書かれていて、「全然知らないけど、楽しそうだな」とか「ほほう、そんな興味深いユニークな歌詞なんだ」とか思って、試しにユーチューブで検索したらテイラー・スウィフトの楽曲が速攻聴けてしまったりして、げに恐ろしい世の中である。昔だったらCD買わないとどんな曲か知ることも出来なかったのにね。この「昔」というのが「十年前」では効かなくなっているんじゃ、と気付いて更に恐ろしくなった、ははっ。
本書の中でもユーチューブやツイッター、タンブラーなどのSNSに載っていた記事や映像に絡めた言及がたくさんあって、まあ普通に日常生活に浸透している世代の書く文章だなあと思う。その一方でノートとペンを買うのが好きで、使うために「日記」を書くことにしたとかいうアナログが混じっているところなんかが面白い。さらに万年筆にハマったりしている。

特に印象に残っり強く共感したりしたのは、「時代は特に変わっていない」その通り、「「おもてなし」がやってきた!」うさんくさいっスよね、「アイラブ三代目」髭が気になる、「いい壁」"素材"としての壁ってことかな、見てみたいなあ、「各駅停車のパン事件」こういう駅のほのぼのアクシデント系好き、「求む、岩舘真理子のワンピース」シンプルなワンピースって意外に売っていないので激しく同意、「日常の横顔」最後のIBMのビルの点検高速点滅のシーンが圧倒的に素敵、「「クリソ」の思い出」極甘クリームソーダ気になる、「ライアンのタトゥー」あの童話が売れていることの違和感を解明してくれてありがとうございます、「二つのマンション」宅配便のひとの話とか観察鋭いっス、そしてそして「アメリカ二週間の思い出」はそのあまりの豪華さに(柴田元幸さんご夫妻と同行の旅というだけで凄いのだがその後も凄すぎる内容がこれでもかと押し寄せて)眩暈がした。羨ましいとかそういう次元を超越しているのでただ口を開けてぽかーん、という感じ。

【目次】
進め! 復讐のテイラー・スウィフト神 /ダイヤモンドが女の子の一番の友達じゃなくなったあと /その日のハイライト /音姫たちの合唱 /白いワンピースに色を塗れ! /時代は特に変わっていない /「非論理的です」という視点 /おかえりティモテ /「シュールだなあ!」の人 /3人いる! /「おもてなし」がやってきた! /アイラブ三代目 /文房具沼 /フィギュアスケートの季節 /年越しマトリックス /Ponyo is not a lovely name. /それぞれの好きなように /いい壁 /オーサーとプーさん /各駅停車のパン事件 /路線バスとリュック /求む、岩館真理子のワンピース /コスメの刹那 /「写真はイメージです」の不思議 /だって彼女は思春期だから /映画館で見たかった /日常の横顔 /美容院で読むべき本は /大人のガチャガチャデビュー(白鳥狂想曲第一章)/スワンロス続行中(白鳥狂想曲第二章)/フェミ曲ミックスVol.1 /「心のこもった」はたちが悪い /続・「写真はイメージです」の不思議 /隣の席の人 /エクスキューズなしで /「クリソ」の思い出 /ライアンのタトゥー /次の移動に備えよ /セレーナに薔薇を /バゲットに襲われる /もらってあげて!! /丈夫さの証明 /二つのマンション /アメリカ二週間の思い出 /憧れのイカとクジラ /スパッツ! スパッツ! /ネタバレは難しい /マットレスを担いだ女の子 /テイラー・スウィフト再び

ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった

ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった (集英社文庫)
集英社 (2015-11-06)
売り上げランキング: 18,159
kindle版
■太田和彦
8月29日の日替わりセールで購入して、そこからぼちぼち気が向いたときに読んで、ようやく昨晩読了した。
著者が日本各地に気の向くまま訪れてその土地土地のとっておきの居酒屋を紹介する、まるでテレビ番組みたいな本。と思ったら、この方は居酒屋訪問テレビ番組の創始者みたいな方なのだそう。
本文に1回だけ出てきたけど、現役時代は資生堂の広告を作っていらしたグラフィック・デザイナーさんだった。その頃から居酒屋通いは始まっていて、それが高じて本を書いて……みたいなことらしい。椎名(誠)さんと映画撮ったひとかー。ほー。
1946年生まれ。
調べてみたらこのひとの著作タイトルに「居酒屋」って付くのが何冊もある。よくネタがつきないなー。
いちばん最初に書かれたのは『居酒屋大全』という本で講談社から1990年5月刊。のち、角川文庫、のち『完本・居酒屋大全』として小学館文庫。

本書は2012年3月毎日新聞社から単行本刊だから比較的最近の本なんだな。2015年4月集英社文庫版を底本とした電子書籍版。

目次を写す。たくさんあるぞ~。
でもkindleだからわかる、これ長さはkindleの統一フォームで2297しか無いんだよね。いつも比較に使う漱石『草枕』が2747だから。
章がこれだけ分かれているから続けて読まなくても大丈夫というか、中断しても気にならず、気が向くままにそぞろ読みするのにはぴったり。
観光的内容もあるけどメインは美味しいお刺身やお酒の話なので、食欲が充たされない状況で読むとツライかも!
自分も好きな肴とアルコールを味わいつつ、本書も肴のひとつのようにして読むとぴったりかも(1回だけやってみた。お行儀悪いけどkindleって両手空けて読むことが出来るから「ながら」にぴったりなんだよね~)。

基本的にひとり居酒屋。店主のひととお馴染みだったりして、「今日の美味しいもの」「おすすめ」を出してもらったり。美人女将が日本各地にいるんだなあ。
平松さんのエッセイにも居酒屋は出てくるけど、本書は年配のおじさんらしい内容。
本書を読み終わってから「太田和彦 資生堂」で検索したらめっちゃカッコイイ当時の広告写真がいくつも出てきて、こんなハイセンスなのを昔にやっちゃった、こんなカッコイイおじさんだとは思わなかったなとびっくり。著者を知ってて本書を読むのと、知らずに読むのとでは随分印象が異なるのではなかろうか。

【目次】
宇和島01 宇和島の鯛めしは生卵入りだった
宇和島02 薪のかまどの朝うどん
大分01 麦焼酎にカボスをぎゅっ
大分02 鉄輪むし湯に精根はてる
会津01 鶴ケ城の銀鯱にご対面
会津02 大正モダン建築と会津魂
喜多方01 喜多方ラーメンは縮れていた
喜多方02 巨大舞茸とマムシの関係
静岡01 生シラスと桜えびで飲もまいか
静岡02 静岡の名月とロマンス
倉敷01 名画のあとはタコカニ合戦
倉敷02 かなえられた乙女の祈り
盛岡01 中津川に秋立ちぬ
盛岡02 啄木と賢治の町で
盛岡03 守れ、日本一の居酒屋横丁
高知01 鰹のたたきにめくるめく
高知02 高知の盃は派手で丈夫
高知03 高知の屋台は女子も飲む
富山01 駅前酒場でコップ酒ツイー
富山02 高岡の大仏はイケメン
富山03 富山の魚の神髄に脱帽
金沢01 金沢に正月ちかし
金沢02 文化の町で美人画鑑賞
金沢03 蓄音器と地酒学入門
金沢04 古い大衆居酒屋で
京都01 アラビアの真珠と木の葉丼
京都02 初天神の梅と布袋様
京都03 葱と龍馬と司馬遼太郎
尾道01 文学の町、海に降る雪
尾道02 石段の町、女流画家と頼山陽
尾道03 海辺の町、夕暮れの光
尾道04 映画の町、港の酒場の物語
高松01 春の高松、うどん三番勝負
高松02 金毘羅参りをすませ美人亭
高松03 春は別れと出会いの季節
あとがき
本書に登場する店や場所

「ニッポンぶらり旅」シリーズであと数冊出ている模様。


完本・居酒屋大全 (小学館文庫)
太田 和彦
小学館
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