2016/08/31

東京すみっこごはん 雷親父とオムライス

東京すみっこごはん 雷親父とオムライス (光文社文庫)
光文社 (2016-08-26)
売り上げランキング: 1,631
kindle版
■成田名璃子
東京すみっこごはんシリーズ第2弾!
第1弾がすごく綺麗に完結していたのでまさか続きが出るとは予想していなかったので嬉しい。

昭和の時代から続いているような商店街の、さらに小さな通りにある一見ふつうの民家に見える格子戸のある家。そこにはこんな看板がかかっている。
共同台所 すみっこごはん ※素人がつくるので、まずい時もあります。
「すみっこごはんのルール」の最初には、
ここは、みんなで集まり、当番に選ばれた誰かの手作りごはんを食べる場所です。
と書かれている。
そして以下、10の約束事がある。詳しくは、本書あるいはシリーズ第1作を読まれたし。

第1弾も出てくる料理・おかずが美味しそうで、ほっこり温かいきもちになれて、面白かったが、第2弾もやっぱり美味しそうな料理ばかりで、話も次々と読んでしまう面白さだった。作る手順や使う調味料が結構細かく書いてくれてあるので、超初心者でなければこの本をレシピ本として活用することも充分可能だと思う。

目次
本物の唐揚げみたいに
失われた筑前煮を求めて
雷親父とオムライス
ミートローフへの招待状

一話一話短篇として読めるし、四篇通しての大きな問題が描かれて解決に至るから、長篇としても読める。連作短篇集。そういえば、第1弾もそういう作り方をしてあったなあ。今回の通し問題は「土地開発」というか「地上げ」というか。バブルの頃はよく聞いた話だけどいまもあるのかしらね。

唐揚げはわたしが普段作るのとはちょっとレシピが違った、それぞれありそうだね。揚げ方がわかりやすかったので真似したい。
筑前煮は下ごしらえをここまで丁寧にしていないので(だんだん慣れてしなくなったとも云う)、ここはひとつ初心に帰ってやってみて味の違いをみてみるか。
オムライスは卵をこううまく包むことが出来るかどうか、たぶん無理なような気がする。バターライスを使うというのがさっそく取り入れたいポイントだ。
ミートローフはなんだか作るのが楽しそうなので休日などに良いかも!
話としては「失われた筑前煮を求めて」が一番好きだった。
「雷親父とオムライス」は半ば覚悟していたが残念、救いはちびっこのお母さんがいろいろ変ってくれたこと。
「ミートローフへの招待状」はなんだかミステリ風味が強くて、本文中で引かれていたアメリカドラマ「シルバー探偵ミスター&ミセスボルト」は知らないけどこういうコージー調で夫婦探偵と云えばクリスティのトミー&タペンスとかもあって、なんだか楽しい。問題が解決するまではあんまり楽しい気持ちにはなれなかったけど。再読するときはもっと楽しめるかな。犯人は、シリーズ第1作から読んでいる身にはすぐに目星がつき、実際その通りだった。反省してんのかなあ、してなさそうだよなああのひと…。

この調子だと第3弾はありそう。楽しみだ~!

2016/08/30

気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている

気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている (講談社文庫)
講談社 (2016-07-08)
売り上げランキング: 1,506
kindle版
■村瀬秀信
文庫版あとがきによれば本書は【2007年、32歳の春から月刊『散歩の達人』誌上で連載していた「絶頂チェーン店」「絶頂チェーン店MAX」「絶頂チェーン店Full throttle」】という連載をベースに加筆・改訂・焼き直しをしたものだそう。途中4年の休載期間があったとのこと。後半の連載は37~40歳くらいにあたるらしい。
2014年6月交通新聞社から単行本刊。2016年6月講談社文庫版刊、の電子書籍版。

Amazonのおすすめで上がってきて、2,3回スルーした後やっぱり気になるので読んでみた。
著者は1975年神奈川生まれということで、本書に出てくるチェーン店も神奈川メインのところがあったり、関東、東京中心で展開されているものが多かったりする。

わたしもチェーン店には特に十代、二十代を中心にお世話になって育った。勿論いま現在よく行くチェーン店もある。しかし本書には出てこない。著者と年齢が変わらないわりに本書のお店に馴染みがないのは住んでいる地域の違いが大きいだろう。あと性別も多少あるかな。

初めて聞いた店は×、名前は知っているけど行ったことがない店を◆、数回行ったことがある店を△、昔良く利用したのは○、ここ数年も利用を◎としてみた。わー打率低いなー。
各チェーン店のホームページにリンク貼ってあります。

まえがき
吉野家 △
山田うどん ◆
CoCo壱番屋 ◆
びっくりドンキー △
餃子の王将 △
シェーキーズ ×
サイゼリヤ △
かっぱ寿司 △
ハングリータイガー ×
ロイヤルホスト △
マクドナルド ○
すき家 ◆
レッドロブスター ×
蒙古タンメン中本 ×
やよい軒 ◆
牛角 △
カラオケパセラ ×
くるまやラーメン ×
とんかつ和幸 ◎
PIZZA-LA ◎
ビッグボーイ ◆
鳥良 ×
築地銀だこ ×
日高屋 ×
バーミヤン △
ケンタッキーフライドチキン ○
てんや ×
どん亭 ×
Sizzler ×
A&W ×
リンガーハット ◆
ビリー・ザ・キッド ×
東京チカラめし ×
野郎ラーメン ×
ファミール ×
文庫版あとがき

吉野家の牛丼を絶賛するのはうちの弟をはじめ男性が多い印象があり、何故だろうと常々思っている。わたしは2回食べたが玉ねぎを入れて卵でとじた他人丼のほうが好きだと2回とも思ってしまった。
築地銀だこはたこ焼き屋さんらしいが、「揚げる」と書いてあってびっくりした。「揚げる」という発想に。大阪とか周辺でもそういう調理法のお店あるのかな? それはそれで美味しそうだけど、別の食べ物になってないのかなー。想像できないのでいっぺん食べてみたい。ホームページによれば大阪や兵庫にもお店あるので比較的手軽そう。
興味をひかれたのはSizzler、野菜をたくさん食べたいときにイイかも。ちょっと高めっぽいけど。ていうか東京のほうにしか無い…。
二郎系ラーメンも食べたことないけど野郎系っていうのもあるんデスね…「豚野郎のお客様」とかすごい台詞だなあ。二郎系は東京に遊びに行ったときに行こうかなと事前にネットで調べてあまりにも「お約束事」が多いのでビビって行くのを止めたという経過があるへたれで…食べたいなあ、ふつーに気軽に食べたいなあ。

ケンタッキーは美味しくて大好きなのだけどここ数年食べる機会を逸している…近所に無いってのも大きいか。マクドナルドは…ニュースとか見てると…きびしい…。
回転寿司はたまに行くけどかっぱ寿司よりもくら寿司がほとんど。これも地理的な理由もあるかも。
やよい軒はなんとなく行きそびれていた、ごはんが美味しいと知り、ちょっと行ってみたい。
とんかつ和幸、いなば和幸は別会社なんですね。いま検索して知った。

この本ははっきり言って企画の面白さのみで読ませるタイプだった。文章そのものに凝ったりするタイプの作家さんでは無さそうである(イキオイはある。シャレ、ジョーク、笑いを狙いに行っているというのもわかる)。著者の人柄などは良さそうだ。この連載のときは独身だったようだが数年前に結婚してお子さんもおられるらしい。
わたしの好きな作家さんの中で文章だけで面白い何人もの方を思いうかべたりして、「面白い文章とはなんだろう。」とかいう根本的なことを思わず考えさせられたりしてしまった。
ふだんは野球関係の文章を書かれるライターさんらしい。
チェーン店はまだまだあるし、「まえがき」などによればチェーン店ではないとっておきのお店もたくさん知っておられるらしいので、そういうのをまた書かれたら読んでみたい。感想を書いてみてわかったが、「自分の好きなチェーン店」について語り出すと結構止まらなくなる(ので、いったん書いたのをかなり削った)。この本をネタに仲間内で話題にしたらかなり盛り上がるだろう。皆、一家言ありそうだ。

イラスト・サカモトトシカズ

2016/08/26

ロベルトからの手紙

ロベルトからの手紙
ロベルトからの手紙
posted with amazlet at 16.08.26
内田 洋子
文藝春秋
売り上げランキング: 35,560
■内田洋子
紙の本。単行本。
最後の奥付の手前に書いてあったけど「本書は書き下ろし作品です」だそうです。

表紙は印象的な、どことなくサモトラケのニケを彷彿とさせるような、小さな翼の生えた足の木彫りの彫刻作品が使われていて、帯に「<イタリアの足元>の話です。」とある。
内容を読んでみると、テーマとして、ひとの、生活感がにじみ出ている「足」を据えてある。比喩とかじゃなくて、すごく直截的に、足についての描写がどの話にも書かれている。

どこがどう、と具体的には言えないが、いつもの内田洋子エッセイに比べると「暗い」話が多いような気がする。わたしのなかで内田洋子といえば「まるで映画のようなドラマチックさ」のあるエッセイなのだが、数篇読んだ時点で「あれ、なんか今回違うな…」と思った。
とりあげたひとの人生を短い文章で鮮やかに活写する、というのはそのままなんだけど、なんでだろう、というと、それは平たく言って性格悪い人間が出てくる話が多い、というと短慮すぎる物言いになってしまうが、なんというか、そのひとの持つ嫌な面がクローズアップされたエピソードが目立つから、かなあ。で、みんな苦労してる。しんどい話やなあ…大変やなあ…ってなる。
人間関係の話なので、一方的なものではなく、対象人物そのものにも問題があるんじゃないのと思える話も少なくない。どっちに味方、とかそういう次元ではなくて、双方の立ち位置とか考え方とか環境とか、引いて見るから「見える」けど実際問題としては何十年単位の話だったりするから簡単に「こうすれば良かったのにね」とか云えるレベルではなくて。
家族の話が多いかな。妻と夫だったり、親と子だったり。
「家族の距離感」ということを考えさせられることが多かったような。
続けて読むとけっこうどーんと気分が沈むので一呼吸置きながらぼちぼちとつきあった。
個人的に「初めて読む内田洋子作品」としては推さない、かなー。

目次
赤い靴下
曲がった指
紐と踵
私たちの弟
二十分の人生
流れ着いた破片
寝台特急
シーズンオフ
いつもと違うクリスマス
忘れられない夏
強い母
ロベルトからの手紙
あとがきにかえて

装丁 中川真吾
彫刻 田島享央己
撮影 平松市聖

彫刻家・田島享央己さんのシド工日記 (しどこうにっき)というブログがあって、本書(の表紙に使われた彫刻)についての記事がありましたのでリンク貼ります。
「あとがきにかえて」が田島享央己さんへ「表紙のカバーのために作品をお創りいただきたい」という依頼の手紙だったので、「これは、本物? それともそういう想定で書かれた架空の手紙?(つまり装丁に田島氏の作品を使う依頼はしたにしても、実際はもっとビジネスライクな文書のやりとりだったのでは?)」という疑問があったのだがこのブログのおかげで「本物だったんだ!」と氷解しました。
該当部分コピペ↓
内田洋子さんが、表紙作品を私に依頼した時の手紙が、あとがきにかえて掲載されています。
その手紙と内田洋子さんの他の著作、
そして、ロベルトからの手紙の「ゲラ刷り」を読んでから彫りました。
内田洋子さんの書かれる手紙って、手紙そのものが「作品」みたいになってるんだなあ。
田島さんの彫刻とっても素敵なので、これから彼の作品をいろんな本の装丁で見掛けることになるんじゃない! ととても楽しみ。内田さん、日本にちょくちょく帰って来てらっしゃるのかなー。

2016/08/20

頼むから静かにしてくれ THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 1

頼むから静かにしてくれ (THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER)
レイモンド カーヴァー
中央公論社
売り上げランキング: 150,706
■レイモンド・カーヴァー 翻訳:村上春樹
以前に積読記事で触れた本に先日ようやくとりかかった。翻訳修正も入った読みやすい安価な新書版が出ているのは百も承知のあえての「全集」である。
全集名は"THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER"。
1991年2月に中央公論社(現在は中央公論新社)から出ていて、短篇22篇収録で、¥3,780円である。
ちなみに新書版は分冊になっていて、[1]が2006年1月刊:13篇収録 [2]が2006年3月刊:9篇収録、各¥1,080、2冊で¥2,160である。こちらは中央公論新社刊。社名が違うのは以前にも触れたけどウィキペディアから引いておく。【中央公論社は1990年代に経営危機に陥ったため、読売新聞社(現 読売新聞東京本社)が救済に乗り出し、1999年に読売の全額出資によって中央公論新社が設立され、営業を譲り受けた。
装丁・和田誠。


なお、『Carver’s Dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選』というのが単行本は中央公論社から1994年12月に、その中公文庫版が1997年10月に刊行されており、『頼むから~』からは4篇(※)収録されている。わたしは文庫本で既読。
『傑作選』を読んだときにも「ファンにはならないなあ」と思ったけどつまり好みの問題で。小説としては悪くないと思う。なにが云いたいのかなあとか思う作品も無くは無いけど、まあこれがカーヴァーの世界なんだろう。
巻末に「解題」というのがあって1つ1つに解説がついている。有難い。収録順じゃなくて書かれた順になっているので1篇読むごとに後ろをぱらぱら探して改題を読む。なるほどね、と思うこともあれば、やっぱりよくわからないなと感じることも。


目次、感想メモ。はイイネ! *は『傑作選』にも収録。
でぶ Fat * 
言い訳をしつつも大量に食べる太った客の話。お店にとっては良いお客さんだと思うんだけどなー、別にマナーも悪くないし。でも店員とかも冷笑しててイヤ~な雰囲気になっている、蔑んでいるっていうか。明るく、陽気に「いやあ、美味いなあ、わたしは胃が丈夫でねえ、いくらでも食べられるよ!」っていうキャラだったらこうはならないよね。別に食べるのは悪じゃないのに「いやそんなに食べないんだけどね…」って恰好付けたがる客。こういう空気って知ってるなあ…っていうのを描いてある。

隣人 Neighbors
自分の家より生活レベルが高めの隣人の留守を預かった主人公側夫婦がどんどんエスカレートしていく話。破廉恥というか恥を知れというか、最後これは…猫どうなるの?エサあげられなくなったってことでしょ?最悪だな…。

人の考えつくこと The Idea
これは一読して意味がわからなくて「解題」を読んではあー。つまり、夫婦で変態なのです。でもそれを見ている側の夫婦もどうかっていうお話。放っておいてやれよ。

ダイエット騒動 They're Not Your Husband
この夫最悪!これに尽きる! っていうか笑い者になるほど太ってたんなら数キロ落としたって体型変わらなくないか。新書版では「そいつらはお前の亭主じゃない」という原題に忠実な邦題に変更になっているらしい。

あなたお医者さま? Are You a Doctor? * 
変な女からの電話の話。相手が気が違っている?お色気が絡んでいるのかなあ…よくわからん系。

父親 The Father 
赤ちゃんを囲んで家族が「誰に似てる?」と話している和気藹々とした話だったのが最後のところでひょえーなんかとんでもない地雷を踏んだってことですか?怖ー。

サマー・スティールヘッド―夏にじます Nobody Said Anything * 
可愛げの無い子どもではあるが、小学生の利己的男子なんてこんなものか。外で高揚して帰って親の機嫌が悪くてどん底に落とされるっていう経験は身に覚えがあるなあ…。最後、きらきらしていたニジマスが母親の目に映った蛇のように気味悪い存在に成り果てるところが凄い。

60エーカー Sixty Acres 
広い土地を所有する男が密猟している者がいると密告を受けて揉め事とか面倒くさくてたまらないという感じで出かけて行って、つかまえてみたら少年で、あーもう後味悪いしなんだかな、って話。この主人公の心の動き、気持ちはすごくよくわかる。

アラスカに何があるというのか? What's in Alaska?
ある夫婦がもう一組の夫婦に誘われて水煙草でドラッグを吸ってぐだぐだ話をする。よくわからない。

ナイト・スクール Night School
優柔不断男の話。酒場で知り合ったおばさんたちに強引に誘われて車を出すことになったけどそれは自分の車ではなくて父親の車で、案の定父親に叱られたら見事にばっくれるという…十代なの?って感じ。なんかカーヴァーの小説に出てくる男って責任感とか誠実さとかをハナから放棄してるって感じのが多いなあ。

収集 Collectors *   
ダメ男の話。そこで返してもらうとか一度確認するとかしないところが万事がその調子なんだろうなという感じ。なんだかでも謎めいているし、お話としては面白い。どういうことだろう? と、真相をあれこれ推理したくなるという余韻がある。

サン・フランシスコで何をするの? What Do You Do in San Francisco?
郵便配達夫の視点から都会からやってきたワケありっぽい若い夫婦を見た話。こういう、妻に裏切られた系の話が多いなあ。

学生の妻 The Student's Wife
この奥さん、なんだか可愛らしいけど、でもまあ我が儘というか危うい感じはするなあ。不眠まではいかなくとも、眠れない夜っていうのはまさにこういう感じ、夫の立てる音とかにもじたじたしちゃうんだよね。

他人の身になってみること Put Yourself in My Shoes 
どういうこと?と頭に疑問符を付けながら読み進み、事情がわかるくだりで今までの違和感が氷解する。最悪な夫婦だなこの主人公側。さっさと帰れよ。っていうかよくのこのこ顔が出せたわねえ。お詫びもしないのか。

ジェリーとモリーとサム Jerry and Molly and Sam
「解題」にもあったけどなんでこの題名なの? これもダメ男だね。犬を捨てて来なくちゃいけないと考えた理由があるのかと思ったら無いのか。想像力無さすぎ。子どもも犬も気の毒だ。

嘘つき Why Honey?
手紙形式、読みやすかった。これはカーヴァーぽくなくて、ちょっと気の利いたショート・ショート集なんかに入ってそうな雰囲気の短い話。

鴨 The Ducks
なんていうか、カーヴァーっていうひとはこれに限らず題名をつけるのが致命的に下手なんではないの? と思わざるを得ない。夫婦がいて、夫が猟をしたりするシーンもあるんだけど、でもそういう話じゃなくて。勤務先の製材所のボスが心臓発作で突然亡くなって、その日はさすがに仕事場が休みになったとかそういう話を夫婦でしている。しんみり。最後の、正体不明の音についての台詞も、音そのものがどうこうというより、夫と妻の関係をさりげなく表していて上手い。

こういうのはどう? How About This? 
田舎に住んでやり直そうぜと都会育ちの夫が言って、妻は田舎出身で都会に来た身だし、夫の性格なども把握しているから「まあ無理だな」ってわかってるんだけどとりあえず夫の意志に従ってみて、夫は実際田舎の家を目にして「無理」って悟るんだけど言い出した手前自分から帰れない的な話。ほんと碌な男が出てこんな。ありそうだけど。でも最後のシーンで奥さんが側転をしたりしてるのがなんだかカーヴァーの小説にしては珍しく明るい雰囲気で、ほっとした。

自転車と筋肉と煙草 Bicycles, Muscles, Cigarets
少年であるの息子同士のトラブル。友達の自転車を乱暴に扱って壊したとかなんだとか、まあありそうな話である。壊した側の父親のひとりが全然反省してなくて自分ところの息子は巻き込まれただけみたいな露骨な態度を取っているのが腹立たしいというか、でもこういう親もいないとはいえなさそうな。で、親同士で殴り合いまで発展する。あーメンドクサイ。馬鹿な親どもが。

何か用かい? What Is It?
お金が無くなり、借金のカタとかでいろいろ持って行かれて2台所有している車のうちコンヴァーティブルを売らないといけなくなった夫婦。冴えない夫が売りに行くより、女としての魅力がまだ十分の肉感的な妻が売りに行くのだけど…。
またしても「ダメ男」「金欠」「妻の不貞」がテーマ。なんだかなあ。この妻が良いとは云わないけど、うじうじしてる夫だなあ。

合図をしたら Signals
夫婦で仲良くちょっと良いお店でディナー、なのにまたも不穏な空気に。これも夫側が苛々したりぐずぐずと卑下したりするせいだ。そりゃあこの店のサービスが行き届いていない点も無いとはいえないけど。なんでそんななの? って云いたくなる。

頼むから静かにしてくれ Will You Please Be Quiet, Please?
読んでいて鬱々としたり、鬱陶しさを感じたり、貧乏とか暴力とか嫌だなあとげんなりしたり、女々しい男だなあとうんざりしたり。スカッとする話ではない。なんで奥さんに訊くかな? 奥さんもなんで正直に言っちゃうかな? まあ不貞がすべての原因であり、夫や妻を裏切る行為はしてはいけない、そんなことするからこんなことになるんだということだが、この話はそういうことを言いたいのではなさそうだ。子どもさんがかわいい盛りなんだからなんとかならんのかねえ。

解題 村上春樹
初出一覧

不死身なるもの ウィリアム・キトリッジ
カーヴァーと親交があった作家の、思い出話風のエッセイ。カーヴァーファンにはたまらないのだろうが、あまり興味がないので斜め読み。

付録(全集の月報みたいな挟み込みの別紙)
詩人レイモンド・カーヴァー 安西水丸
安西さんの感想。 
スカイハウスにて 黒田絵美子 
カーヴァーの奥さんテス・ギャラガーも作家だそうで(ググったら新潮クレスト・ブックスで見たことある!未読なので読んでみようかな。※追記ググったら既に絶版だった古本は…気が進まないなあ電子書籍化か文庫化しないかなあ)、その作品の翻訳をしている黒田さんがカーヴァー死後に奥さんに会いにワシントン州の家に行って滞在したときの話。予想したよりもずっと明るくて朗らかな雰囲気の家だったみたいで、奥さんがカーヴァーを想い、カーヴァーが奥さんを大事にしていたことが伝わってくるエピソードがいくつもあり、なんだかほっとしたり嬉しくなったりした。これは良いものを読ませてもらった。作品の中の夫婦はいつ破綻してもおかしくない感じなんだけど、現実がモデルってわけじゃないってことか。※追記。テス・ギャラガーと出会ったのは『頼むから静かにしてくれ』出版後、最初の妻と別居後だとウィキペディアに書いてあった。最初の結婚は1957年・19歳のとき~1976年38歳のときの約20年間。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)
レイモンド カーヴァー
中央公論新社
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頼むから静かにしてくれ〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)
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Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)
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ふくろう女の美容室 (新潮クレスト・ブックス)
テス ギャラガー
新潮社
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2016/08/10

コンビニ人間

コンビニ人間
コンビニ人間
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村田 沙耶香
文藝春秋
売り上げランキング: 7
■村田沙耶香
先日発表された第155回芥川龍之介賞受賞作
受賞のコメントなどで知ったが、著者は現役のコンビニエンスストアのアルバイトさんでもあり、そのことを活かして書いた小説と知って興味を持って読んでみた。
すごく面白かった。
電子書籍版も出ているけれど、これは紙の本を持つことを選んだ。

初読みだがどこかで聞いたお名前、と思ったらいささかショッキングな設定ということで話題になった2014年7月刊『殺人出産』の著者だった。第14回センス・オブ・ジェンダー賞の少子化対策特別賞受賞らしい(そんな賞があったと初めて知った。ググったら、2005年に我らがなっきー・梨木香歩が 『沼地のある森を抜けて』で受賞されていた!)。
芥川賞受賞だけど、受賞までに既に何作も著作を出されている作家さんなのだなあ。
1979年生まれ。

冒頭からリアルで細かいコンビニ店内の「音」の描写があって、日常馴染んだ場所だけに面白いなーと思っていたら主人公が幼いときの小鳥のエピソードが出てきて「おお、そういう話か」と、ここでいったん呼吸を整えて続きを読んだ。

最後まで読んでの感想なんだけど、著者はふだん感じているマイノリティーへのちくちくちくちく続く、細かな、だけどずっと続く「糾弾」への「怒り」を込めてこの作品を書かれたような、つまり「怒ってるんだな」ということを感じた。間違っているかも知れないが。わたし自身がそういう社会意識みたいなものに対してずっと反発を感じて、やがて諦念もありつつ、でも「しょーもねーなー、なんとかならんのかねー」と考えているからそういうふうに受け取っただけかも知れないが。
とりあえずこのテーマをこんなに面白い小説にしちゃうなんて、なんて凄いんだ、天才だと感動した。

主人公・古倉恵子は36歳未婚女性。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
家族・友人や周囲から「普通でない」「あちら側の人間」とみなされないように、身近なひとの話し方や服装・持ち物を参考にしたり、妹と相談して「体が弱いから」という言い訳を考えたりする。経験から、「静かにさせるために」相手を殴って機能停止させてはいけない、などの判断をしている。

読んでいる限りすごく良いコンビニの店員さんだと思うし、周囲に迷惑をかけるでなし、何も悪いことはないのに、それでも周りから一線引かれていた、というのが終盤に飲み会の件などで判明してうーむ、と思う。

ただ「付き合っているひとが出来た・同棲している」ともらしただけでこんなに周囲が反応をずっとするというのはこれはこれで変だと思うんだけど…まあ主人公の視点で書かれているからどうだかわからないが。いままでの主人公への抑制していた対応からの反動なんですかね。
キャラにもよるか。

妹がいつまで経っても「いつになったらお姉ちゃんは直るの」と言うのが悲しかった。凄まじいというか。ああ、妹は姉を心配しているけれども、ほんとのところで「姉が普通ではない」と認めたくないのか、本当の真実は辛すぎるからわかりたくないのか。
直る直らないの問題じゃないって、全然調べたり勉強したりしていないのかなこの家族は。カウンセリングに連れて行ったのも子どものときに一応、くらいの感じだし。まあ、恵子を大事にしているのはわかるし、決してダメな家族だとは思わないけど。腫れ物に触る感じ…。

話を動かすキーマンとなる白羽という男が出てくるのだがこれがものすっごい腹立たしい性格・モノの考え方・発言をする人間で、こんなのが職場にいたら最悪って感じなんだけど古倉さんは非常に冷静に彼を観察・分析していて尊敬してしまった。古倉さんは基本的に喜怒哀楽の「怒」が無いような書かれ方をしている。その他はよくわからない。そのほかもひょっとしたら無いのかもしれない。

最後の展開は、「普通」からしたらどうなのかわからないが、主人公に共感・なかば同化して読んでいた身としては「ハッピー・エンド」だと思った。よかった、とりあえず白羽の良いようにさせられないで。古倉恵子は大丈夫だと思う。ちゃんとやっていけると思う。周りのいうことなんか気にしないでいいのだ!だって周りが最終的に助けてくれるわけじゃないんだから。コンビニで真面目に働いて、何が悪い。体に気を付けて、長生きしてほしい。
心配なのは白羽のほうだ。今後も白羽はあのまま居座り続ける気なんだろうか。これからもずっと社会に(というか自分に)不満を抱いたまま生き続けるんだろうか。犯罪に走ってしまったり変な方向に行かないといいんだけど。とりあえず、なんでもいいから働いて自活できるようになると全然違うんだろうけどなあ…。これも「普通」の強要なんだろうか…うーん難しいなあ!

2016/08/08

侠飯

侠飯 (文春文庫)
侠飯 (文春文庫)
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福澤 徹三
文藝春秋 (2014-12-04)
売り上げランキング: 1,422
kindle版
■福澤徹三
昨日の日替わりセールで¥99だった。ふだんは¥629で125pt。ヤクザはやだけど任侠ものに出てくる兄さんたちはフィクションなので必要以上に義を重んじる良いひとだったりして小説として読む分には面白いことが多いし、料理がテーマっぽいのでダメ元で読んでみた。
さっくり読める、爽やかな読後感の青春小説だった。
これは、主人公が就職活動真っ最中の大学生の青年だからだ。
このタイトルからは想像できないがある意味「就(職)活(動)小説」としても読めるだろう。
大学1年とか2年とかで読んでおくとちょっと気持ちの持ちようとかに参考になる、のかな?
ある意味、ミステリーでもあるけどそれは兄さんたちの正体が謎なのが最後に判明するという「謎」があるからで、いわゆる推理小説とか探偵小説ではない。

料理は、期待していたよりも基礎・基本、当たり前のことが特に前半に多くて、メニューも少なかったが、まあ、この兄さんが食事を大事にしているところはすごく伝わってくるので良いと思う。あんまり凝った料理はしないわりに調味料にこだわってることとか、男の料理って感じだなー。ネットでお取り寄せするんだもん。あと、辛い料理が好きなんだね。ウェイパーはたしかに便利だけど料理の小説でこんなに頻出するとかちょっと意外だな。

っていうか22歳の一人暮らしの大学生がお米もまともに炊けないというのはヒドいなあと思ったけど、男子学生ってこんなものかなあ、最近は男子も中高で家庭科教わるでしょう? いきなり電気釜で研ごうとするとかそれ以前の問題のような気もするが。浸水時間のことも頭にないとは(最近の炊飯器は浸水しなくてもすぐ炊ける機能があるけどそういう問題じゃなく知識として、その必要性も知らなかった)。

たぶん、この小説に書いてある料理を普通の日常で出してもこんなに感動して食べてもらえないような気がする。シチュエーションとか、お腹の空き具合、へろへろになったときに出てくる「ごく普通の美味しさ」が与えてくれるパワーとかが根底にあるような。疲れているときにお味噌汁、炊き立てのご飯、ぐっときますよね。

主婦の作る「ごはん」的なものっていうよりはたまに料理をする男性がちゃちゃっと作った酒の肴、という感じ。毎日こういう感じでは野菜が足りないわーとか味付け濃いわーとかいろいろ問題ありそう。
特に3話に出てくるおもてなし料理は料理の腕っていうよりはお取り寄せの素材が勝負って感じだ。ハレの日にはアリかもだけど。そのへんのスーパーで買えるものじゃないとあんまり参考にならないなあ。
基本的に美味しそうな料理ばかりなんだけど、第4話に出てくる刑務所飯はさすがに真似したくない。美味しいのかなあ…。9話の冷や飯に冷酒もちょっと無理。お酒が好きな男の人にはぐっとくるのかなー。

問題の任侠問題にも最後すっきりする解決が待っていて、いささかほっとした。
どうやらシリーズ化してるらしい。

目次
プロローグ 就活と抗争
1 オイルサーディンとカマボコとリンゴとネギでなにを作るか
2 チャーハンはパラパラじゃないほうが旨い
3 クリスマスイブにチキンはいらない
4 ゴミ袋とレンジで作る刑務所の飯
5 ステーキはA5ランクよりスーパーの特売品
6 レトルトカレーがフライパンひとつで絶品になる
7 食べもので性格が変わる
8 殴られた夜のソウルうどん
9 飯は冷やに限る
エピローグ この世でいちばん旨い飯

2016/08/06

おべんと帖 百

おべんと帖 百
おべんと帖 百
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伊藤まさこ
マガジンハウス
売り上げランキング: 8,486
■伊藤まさこ
2016年3月10日刊。単行本。紙の本。
先日、久しぶりに大阪日本橋~難波に遊びに行ったらジュンク堂千日前店が無くなっていた。いまググったら今年の3月21日に閉店していたのですね。長くこのへん来ていなかったもんなあ、とショックを受ける。
その近くの波屋書店さんはまだ健在だったのでよかった。中年の男性とそのお父様らしき男性二人が営んでおられる。ここで本書を購入。カバーが素敵なので、かけてもらう。
※以前書いた波屋書店さんなどに関する記事はこちら。

伊藤まさこ、というお名前は以前からネットや書籍売り場でちらちら目に入ってきていて、「料理関係」「センスがよさそう」というぼんやりとした認識だった。今回初読み。
その直前に道具屋筋で去年あたりから「欲しいけど高いかなあ贅沢かなあ」と迷っていた意中のお弁当箱がネットより随分安く売られていたので思い切って購入していた、というのが本書購入の大きな動機である。

お弁当づくりの参考になれば、というのがあったが、すべてカラー写真で、見ているだけで楽しかった。夜眠る前に読んだので、これはある種の拷問でもあるな、読むタイミングを間違ったなと苦笑しつつも楽しいので最後まで目を通してしまった。
伊藤さんが高校生の娘さんのために作ったお弁当の写真たち。
それだけではなく、コラム的に、他の数名の方のオススメのお弁当(これは、お店で売っているもの)の紹介や、エッセイ・漫画の中のお弁当の紹介もあってひたすら楽しい。できれば、小説の中のお弁当をリアルに再現して写真を載せてくれていたらより楽しかったかな。まあ、想像しているイメージを壊してはいけないというのもあるでしょうが…。実際に、漫画の中の料理をやってみせてくれた本って既にいくつかあって、あれも楽しいもんだから。

伊藤さんについて全絵知らなかったのでネットでググってちょっと調べてみた。1970年生まれか、思ったより自分に近かった。結婚歴3回とは、あら、意外と「恋多き女性」なのね。本では「お母さんと娘」の関係しか書かれていなくて、旦那さんには作らないのかなとかもちょっと思ったりしたんだけど。意識的にそっち方面はイメージやコンセプトと異なってくるから排除して書かない方針なのかな(1冊しか読んでいないのでわからないけどお嬢さんの事は小さい時から書かれていたようだ)。

日々のお弁当の写真撮影は著者自身。それ以外の写真は日置(武晴)さん。
本書は初出・雑誌「日々」36号に加筆・訂正し、あらたな取材を加えて再編集したものとのこと。
 『日々』36号伊藤まさこ責任編集「お弁当」特集(2015年4月10日発売)
1日1ページ。おべんとうの写真の下に、その日その日の娘さんとのやりとりや工夫した点などが書いてある。
たまに、次のページにレシピが書いてあるときもある。

目次
はじめに
日々のお弁当
海老と空豆の揚げもの/赤出し・おにぎり/四色弁当/焼きお揚げ/すりおろしれんこんの揚げもの/海苔弁 ほか、全部で百日分
あの人(私)のお気に入り
崎陽軒のシウマイ弁当(オオヤミノルさん)ほか、ほしよりこさん、岡戸絹枝さん、扇野良人さん、引田かおりさん、湯浅哲也さん、岡本仁さんのおすすめ(1人2軒ずつ)
教わるレシピ
飛田和緒さん、桜井蓉子さん、松本朱希子さん、川那辺行繁さん
本の中のお弁当
向田邦子『夜中の薔薇』/幸田文『台所帖』/武田百合子『ことばの食卓』/佐藤雅子『季節のうた』/高峰秀子『コットンが好き』/内田百閒『御馳走帖』/羽海野チカ『3月のライオン』/よしながふみ『きのう何食べた?』/吉本ばなな『キッチン』/荒木陽子『愛情生活』
お弁当箱をたずねて
木工家・佃眞呉さん
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