2016/07/30

漱石とはずがたり 【コミック・全2巻】 他、関連書

漱石とはずがたり 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
香日ゆら
KADOKAWA/メディアファクトリー (2014-02-22)
売り上げランキング: 29,801
kindle版
■香日ゆら
先生と僕』(全4巻)で夏目漱石とその門下生たちのことやなんかを楽しく4コマ漫画に描いた香日ゆらの、エッセイ漫画(全2巻)を読んだらいろいろ派生して漱石先生や寺田寅彦の随筆を読みたくなってkindleで検索して読みました。青空文庫って便利。もちろんそれ以外にも踏み込めば文献はたくさんあるのですが深くて広そうなので今のところは浅く…。
思えば学生時代も先生の作品は読んだけど、「作家、人として」の漱石にはほとんど手をつけなかった。そっち方面にはあんまり関心が向かなかったというか。難しいひとかな、とか思ってたかな。『先生と僕』などに出てくる漱石先生は香日ゆらの「萌え」のバイアスがかかっているのもあって、すごく可愛らしいというか、人間味にあふれていて、漫画としてとても面白いです。
漱石とはずがたり』は『先生と僕』では描ききれなかったり、4コマにしにくかったエピソードなどをかなり自由に描いてあってこれはこれで面白い。

似顔絵として似てるかどうかはおいておいて、絵柄が好きなので読みやすいです。香日さんはプロフィールが不明ですがネット検索したところどうやら理系の研究職出身なのかなあ。社会人になってから「夏目金之助」にハマってあれこれ読んで調べて詳しくなっていった感じ。「夏目漱石」から入ったんじゃないってところが面白いですね。
寺田寅彦は漱石の『吾輩は猫である』の寒月君や『三四郎』の野々宮さんのモデルとして有名ですから秀才でイケメンだったのでしょうが現在ネットで検索して出てくる寅彦の写真を見ると(個人的には)そのイメージとは違うなあと思うのですが、香日さんの描く寅彦像はかなり好きです。

先生と僕 1‐夏目漱石を囲む人々‐ (MFコミックス フラッパーシリーズ)
香日 ゆら
KADOKAWA/メディアファクトリー (2010-11-18)
売り上げランキング: 28,116


寅彦。昭和3年5月「漱石全集」第13巻月報第3号。漱石の俳句について鑑賞の手引き的な短い文章。

寅彦。漱石先生との熊本第五高等学校在学中の出会いからいろいろ思い出話。初出は昭和7年12月「俳句講座」

永日小品
永日小品
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(2012-09-27)
漱石。これは紙の本(新潮文庫)で既読だけど。
先生の日常雑記。何回読んでも良いなあ。いろんな変なひとがいたのだなあ大変だなあ先生。

漱石と自分
漱石と自分
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(2012-10-03)
狩野亨吉の漱石との思い出話。漱石より2歳年上の友人でかなり優秀なひとだったみたい。それまでにも接触はあったが特に熊本時代から親しくなったとか。初出は昭和10年12月8日の東京朝日。

2016/07/27

村上春樹とイラストレーター

村上春樹とイラストレーター -佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸-
村上春樹 佐々木マキ 大橋歩 和田誠 安西水丸
ナナロク社 (2016-07-03)
売り上げランキング: 844
■村上春樹 佐々木マキ 大橋歩 和田誠 安西水丸
監修:ちひろ美術館

文庫本サイズのハードカバー。カバーはかかっていなくて、帯だけ。
ブックデザイン :大島依提亜
帯、大扉タイトル文字 :和田誠
判型 : A6上製 240ページカラー

村上春樹の著作の表紙や挿し絵を担当された4人のイラストレーターと村上春樹の作品の紹介。
ぱらぱら中身を見て、他の著作からの引用が多いので「いったいこれはなんなんだろう…」と首を傾げていたが、ネットで検索したらそもそもこれ、ちひろ美術館・東京【東京・練馬区】で2016年8月7日まで開催の同名の展覧会をベースにした企画本なのですね。あー展覧会の図録! 展覧会で絵と、それにまつわる文章が並べて展示されている、それが本になってる、あーそれならわかる!とスッキリ。
ざっと見た感じ、村上春樹の書き下ろし文章は無いんじゃないかな。全部既出からの引用。
画家さんに関しては、大橋歩と和田誠に関してはインタビューに行ってその記事などが書き起こされている。佐々木マキの書き下ろしは無いなあ。安西水丸は不可能ですしね…。
というわけで、「村上春樹の文章」にしか興味がないひとにはこの本は向かないかもしれないが、でもこの本を見ていると村上春樹ファンじゃなかったら出来ない企画だなというのがひしひしと感じられるので、素敵な本だと思います。しかも「物」としてもかなり「可愛い!」って感じなので、プレゼントにもイイのかも。

企画展についてはこちらのホームページでどうぞ。<企画展>村上春樹とイラストレーター
- 佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸 -


検索して「ちひろ美術館?いわさきちひろ美術館じゃないの?」と思って初めて知ったのですが、東京と安曇野それぞれにあるんですね。

この本、サイズといい、しっかりしたカバーの紙の質感といい、中身のフルカラーといい素晴らしいのですが、実際読むとなるとちょっと読みづらいかも。かばっと広げるのをためらう作りなんですよね。たぶんかばっと広げたらそこで割れちゃうタイプの本かと。いや気にしないひとは気にしないんでしょうけど。
「読む用と保存用の2冊欲しいくらいだ…」と思ってしまった。
これ、せめて倍のサイズあったらもう少し読みやすいんでしょーがー。でも、そうなったらこのお値段(¥1,944)では出せないでしょうからねえ…3千円越えるよなあ余裕で…うーむ。というわけで、実はまだざっくり目を通した程度で全然読み込んでいません。
気持ちに余裕があるときに少しずつひっそりと拾い読みしたい。そんな感じ。

わたし大橋歩と和田誠が絡んだ村上春樹作品はほぼ読んでいないんだなあ。わたしにとっては村上春樹の小説担当が佐々木マキでエッセイ担当が安西水丸。佐々木マキの絵本は好きだけどガロ時代の漫画は以前に『うみべのまち』を買って読んでみたけどシュールすぎて難しかった。

うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81
佐々木 マキ
太田出版
売り上げランキング: 37,858


『村上春樹とイラストレーター』の版元はナナロク社
ホームページで中に収録されている絵の一部を見ることができるのでこれもリンク貼っておこう。

目次はAmazonにあったのでコピペ(非常に助かりました)。
佐々木マキ――羊男の肖像
『うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81』帯文 村上春樹/表紙の仕事 佐々木マキ/『風の歌を聴け』/『1973年のピンボール』/『羊をめぐる冒険』/『羊男のクリスマス』/解説

大橋歩――シンプルな線、豊かな余白
『村上ラヂオ』/『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』/『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』/〈Q&A〉大橋歩さんへの9つの質問とその答え/解説

和田誠――ジャズのごとく

『ポートレイト・イン・ジャズ2』『ポートレイト・イン・ジャズ』(文庫版)/『愛蔵版 グレート・ギャツビー』/『村上ソングズ』/『冬の夢』/『村上春樹全作品1979~1989』全8巻/『村上春樹全作品1990~2000』全7巻/〈インタビュー〉春樹さんとの仕事/解説

安西水丸――村上朝日堂の盟友
『象工場のハッピーエンド』/〈コラム〉安西水丸のイラストレーション技法/『村上旭道超短篇小説 夜のくもざる』/『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』/『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』/『ふわふわ』/〈コラム〉『ふわふわ』ダミーブック(ラフ)について/「ふわふわ」を描いた時のこと 安西水丸/『村上かるた うさぎおいしーフランス人』/解説

和田誠と安西水丸と村上春樹――同じ空気を吸っているんだな、ということ
『NO IDEA』/〈コラム〉『青豆とうふ』と『1Q84』/『村上春樹 雑文集』/『セロニアス・モンクのいた風景』/解説

資料
本書に収録した書籍一覧/村上春樹とイラストレーター略年譜/作品目録

ナナロク社のホームページを見たら、「あっ、この本も、この本もここだったのかあ~」って感じでした。でも買ったのは初めてかも。

未来ちゃん
未来ちゃん
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川島小鳥
ナナロク社
売り上げランキング: 11,509

あたしとあなた
あたしとあなた
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谷川 俊太郎
ナナロク社 (2015-06-24)
売り上げランキング: 72,585

2016/07/24

くいしんぼう

くいしんぼう (ちくま文庫)
高橋 みどり
筑摩書房
売り上げランキング: 794,605
■高橋みどり
紙の本。本書は2006年8月に筑摩書房から出版された単行本の2013年11月ちくま文庫版。
著者自身によるカラー写真が数点挿入されている。

筑摩書房のホームページから著者のプロフィールを引く。
1957年、東京生まれ。スタイリスト。女子美術大学短期大学部卒業。大橋歩さんの下で働いた後、当時、自由が丘の「ぽんぽん船」のおかみだった船田さんとともにケータリングの仕事を始める。1987年、スタイリストとして独立。おもに料理のスタイリングを手がける。『くいしんぼう』、『伝言レシピ』、『ヨーガンレールの社員食堂』、『私の好きな料理の本』などの著書がある。

わたしがこのかたの名前を初めて認識したのは平松洋子の著書のどこかだったと思うんだけど記憶があやふや。

フードスタイリストとして、本を何冊か出されているのは知っていたが、書店をぶらぶらしているときに文庫の鮮やかな野菜の表紙が目に飛び込んできたのでこれはこれは、と入門編としてはいいかなと読んでみた。
食べものにまつわるあれこれ。
普段の料理はあまりなくて、お客さんを呼んだときとか、およばれする話とか、美味しい店の話とか。
具体的なレシピは載っていないのだが、野菜中心で、楽しそうな食卓だ。
職業絡みの話はほぼ出てこない。もっとそういう、器とか撮影の工夫とかについて書いてあってもおかしくないんだけど、まあコンセプトが違うか、本の。そういう本を読めば書いてあるのかな。

目次。
好物/かをるさんと土鍋/おいしい便り/パリの松村さんち/ヨーガンレールの食堂/日置さんとフランス/豚好き/青木さんの思い出カレー/初梅干し漬け/昌太郎くんと北温泉/省三さんとカフェ/実はパン好き/BAR入門/なぜか沖縄/銭湯好き/お酒始め/アンチヘブリンガン/青葉横丁/おいしい手/福岡への旅/食いしん坊隊長/辻さんとギョウザ/ひとり晩酌/料理上手の台所/料理下手
文庫あとがき
解説「おいしい長屋」の大家さん 高山なおみ

文章を書くのを専門としていない方が書く文章のせいか、どこが悪いってわけじゃないんだけどなんだかちょっと読みにくいというか、主語述語の関係が「わかってるひとが書いてるけど読んでるほうはわからない」というありがちな書き方が目立つかな、まあ多少ぎくしゃくするけど慣れれば大丈夫。これを直すとなると結構根本的なところから手を入れないと無理だろうからそうすると文章の持ってる味が消えちゃうんだろうしねー。
素朴な感じの、雰囲気が伝わる。それでいいんだと思う。
写真も素敵。もっと枚数が多いと良いのにな。今度はそういう本を買ってみよう。

2016/07/23

彼女の家出

彼女の家出
彼女の家出
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平松 洋子
文化出版局
売り上げランキング: 20,448
■平松洋子
7月8日に出た新刊。日常エッセイ集。
雑誌「ミセス」に掲載された「今さらながらのひとり立ち」(2013年4月号~2014年12月号)と、NHK出版WEBマガジンに掲載された「おさまらない時間」(2009年2月~2012年8月)を再編集し、加筆したもの。
イラストレーションは朝光ワカコ、ブックデザインは鈴木成一デザイン室。

いつもの平松さん。料理ネタは塩豆腐とホットケーキくらいか。両方シンプルですぐに真似できるところが嬉しい。
平松さんの文章は「すこし、くどいかな、装飾過剰かな」と思う時が無いでもないのだが、そう感じたときは読むほうが少し間を空けてやるのがいいのかもしれない。自分の中に余裕が無くなっているんじゃないかなと。
このひとの書くものは、ほんの少しのきっかけを、広げて、「少うし、特別なこと」に見せる、それは、食べればただ「美味しい」だけの感想を、それだとなんでもかんでもその一言で終わってしまうから、違う言葉で、いろんな言葉で表現していく、原稿の桝目を編集者の指定するぶんに合うように埋めていく、そういう習慣が作っていったんじゃないかなとかたまに考えたりするのだけどまあこれはこちらの勝手な妄想であり。
ブログで読書感想を書くときに、「面白かった」で終わってしまわないように、あれやこれやと書いてみる、素人作業と重ねてみるのは失礼千万なことではあるのですが。

本書は、映画と、喫茶店と、洋服のことが多かったかなあ。映画といっても名画座。喫茶店は決してドトールやスタバではないのです。洋服は、もうすでに情報が古くなっている…チュニックは微妙だけどレギンスはこれは去年でも既に見掛けなくなってしまった、一時のあの流行はなんだったのかと思う。
あと、「老眼」と言う言葉ではなく「目が悪くなった」と書いてあるんだけど拡大鏡ってそうか、そのときになるとすっごく重宝するものになるんだな、昔、ふつうの鏡の裏をひっくり返すと拡大鏡になっていた鏡、あれはそのためだったんだと妙に納得した。

目次は文化出版局のホームページに載せてくれていたのでありがたくコピペ。その後ろにちょっと自分のメモを書き足す。

Ⅰ 彼女の家出 
おとなの約束 「ひどいじゃないかあ」なんか残るフレーズ。小さい子どもが云うかなあ。「いややああ」「つれてってえええ」とか泣いてる子どもはすぐに浮かぶんだけど。やっぱ「芝居の台詞」めいているからこそエッセイのネタになったわけだなあ。
知らんふりの練習 別のエッセイにあるそうなのだけど(わたしは未読『なつかしいひと』)平松さんの御主人は20歳くらい年上なんだとか。それを知って読むのと同世代と思って読むのとはちょっと感想が違うような。
拡大鏡は見た アイラインちゃんと小まめに引くとか、えらいな。
ときどき荒治療 骨折したら。
人生いろいろ 新聞の人生相談欄。
彼女の家出 そうか、これは「家出」なんだ。
居心地のいい喫茶店 喫茶店で何もせずくつろぐことが出来るひとと出来ないひとがいると思う。わたしは後者なのです。
違いがわかるひと 「『違いがわかる男』はインスタントコーヒーなど飲まないぞ」言われてみればそうだな!子どもだったからそういう発想が無かったわ!
サンドウィッチ礼賛 やっぱちゃんと作ったのが断然美味しいと思う。
ひと舐めの塩 非常袋に入れておくべきものかも。
実家の空き部屋 お母様きちんとされてるなあ。
再会タクシー こんなタクシーの運転手さんなら乗りたい、まるで洗練された高級ホテルマンか執事みたい。

Ⅱ 夜中の腕まくり 
みなうつくし 四月って。雛人形をそんなに長く出してていいのかなあ、地方差かなあ。
春の断食 断食。毎年施設に行かれてるのか。
本と映画とうまいもん 名画座。
植物園にいこう 梅雨の日の東京都立神代植物園。
夏ひとりごと 夏の拭き掃除の清々しさ。シンプルな木綿のワンピース。いいな。
木霊を聞く 夏の庭の木。
また逢えたら 塩豆腐。鶏肉と玉ねぎの重ね煮。パンケーキ。
夜中の腕まくり 夜中に牛すじを煮る。
背中にねこ 冬のあたたまる方法いろいろ。あんかけうどん。
都電一日乗車券 早稲田から。荒川線ぶらり旅。

Ⅲ 下着の捨てどき 
女の眉について 自眉が濃いとこういう悩みは無いのである。
無駄の効用 服の衝動買いから。
五秒ルール 棄てるとき。
下着の捨てどき 棄てるとき2。
似合うってこと 年齢と似合う服、服いろいろ。
ほんとうにすきなものって? 文化服装学院の先生に聞くファッションの現在。
初めてのスポーツウエア いろいろ進化している素材。
お湯のない風呂 無いなら無いなりに。
やわらかなアイロン アイロンがけ。
風呂敷の衝撃 工夫してファッションに。

あとがき 「中年というお年頃」

2016/07/18

枕元の本棚

枕元の本棚
枕元の本棚
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津村 記久子
実業之日本社
売り上げランキング: 23,927
■津村記久子
先日発売された新刊単行本。
書評集が好きで、ましてや好きな作家さんのそれとなれば絶対「買い」である。

最近出た本の書評なのかと思ったらけっこう昔に出た本ばっかりで、コンセプトが違うんだな、と中身をパラパラ見て気付いた。これは「津村さんを作った本たちのごく一部」だ。こういう本を読んできたよ、っていう感じの。
だから本書で紹介される本はいくつかのグループ分けがなされているんだけど、最初は児童書から入る。
おお、またもマガーク探偵団が!(こないだ読んだ『図書館のキリギリス』でも出てきたなあ。子ども向けで少年3人組といえばメジャーなのは「ズッコケ3人組シリーズ」だと思うけど直球すぎるからあえて変化球、なのかなあ。まあどっちも面白かったけどね)。

津村さんはわたしより数年お若いけど同世代、でもふだん読んでて考え方とかがあんまりシンクロしないなとは思っていたけど読んでいる本もやはりというかあんまりかぶらなかった。『平行植物』は吉野(朔美)さんが紹介されてて興味を持って買ってみたものの、ほとんど読めずに挫折したんだよなー、津村さんちゃんと読み込んだんだ、おー。えらいなあ…。いま検索したら単行本の新装版はまだあるけどちくま文庫版は既に絶版なのかな。
あと吉野さん紹介とかぶってるのは『ワーズ・ワード』。これは個人持ちするタイプの本じゃなかろうと検索したこともなかったけど津村さんのこの本で初めて知ったけどコンパクト版が出てたんだ。まあ今はもう絶版みたいだけど…。

この書評に載ってて自分が手持ちで持ってた本って『ギリシア神話小事典』くらいのような気が…しかも十代の頃の愛読書でもはや手元に無いし…。調べたらこれも絶版だな(もしやこの書評集絶版が多い!?)

でもこの書評集によって読みたいなと思った本がいくつかあったので、嬉しい(新刊書店になさそうだけど)。それに、津村さんの文章を読むのはやっぱり好きだ。違うなー、へーそうなんだーと思って読む。たとえば「刺繍か…自分からやろうと思ったことは無いなあ、これが暇つぶしにやることに入るんだ津村さんは」とか。面白いなあと。何気なくぼんやり刺繍とかしたらわたしは指にぶすぶす挿して血だらけになりそう、でも手先使うのって確かに良さそうだよなあ、やってみようかなーとか。
ツムラ本は、自分にとってちょっと違う方面から刺激を与えられるのが良いのかもしれない。

目次
第一章 絵本と児童書
デブの国ノッポの国/マガーク少年探偵団!6あやしい手紙/カモ少年と謎のペンフレンド/ことわざ絵本(ほか)
第二章 ごはんと生活
セイシュンの食卓/まいにちトースト/紅茶で遊ぶ観る考える/生活図鑑(ほか)
第三章 開いたページを読んでみる
ワーズ・ワード コンパクト版/妖精Who's Who/チェスタトンの現代用語辞典/ギリシア神話小事典(ほか)
第四章 眺めるための本
僕の夜/広重ベスト百景/100+1ERIKAS(ほか)
第五章 このぐらい頭がよかったらなあ
マイナス思考法講座/余命18日をどう生きるか/ユーモアの鎖国/働くオンナの処世術(ほか)
第六章 スポーツの本
グアルディオラのサッカー哲学/オレンジの呪縛/サッカーの敵(ほか)

マガーク少年探偵団!〈6〉あやしい手紙
E.W. ヒルディック
あかね書房
売り上げランキング: 458,822

平行植物 新装版
平行植物 新装版
posted with amazlet at 16.07.18
レオ・レオーニ
工作舎
売り上げランキング: 44,187

絵でひく英和大図鑑 - ワーズ・ワード コンパクト版
ジャン・クロード コルベイユ アリアン アーシャンボウ 長崎 玄弥
同朋舎
売り上げランキング: 298,213

2016/07/17

村上春樹のハードカバー(最新刊と昔出たやつなど) 中身をいつ読むか予定は未定

村上春樹とイラストレーター -佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸-
村上春樹 佐々木マキ 大橋歩 和田誠 安西水丸
ナナロク社 (2016-07-03)
売り上げランキング: 911

「本」として文庫サイズでハードカバーは大好物。
しかも中身がカラーで村上春樹関係の挿し絵画家さんの特集とか…どんだけ…!

中身についてはまだ読んでいないのでレビューは読んだら(早く読めよって話ですが実は積読本が数冊溜まっているのです)。

最近電子書籍に傾倒している反動で「ハードカバー」、単行本でも「ソフトカバー」じゃなくて「ハードな」本に「モノ」としての「萌え」を感じるのは前からでしたがそれに拍車がかかっておりまして。
レイモンド・カーヴァーを村上春樹が訳した叢書は新書サイズが(手直しされた最新版が)出ているのはわかっているんですけど、っていうか梅田の紀伊国屋に置いてあって「あーこれ読もうかな」と思ったときに昔、函入り単行本バージョンで出ていたよなあとそっちの思い出が出てきてAmazonで今もあるかなと探したら新刊で入手可能だったのでわざわざそちらで2冊購入してしまった。これは5月7日にポチっている。でもまだ読んでいない。完全に装丁買いです。でも中身も読みたいのを吟味して買ったのでいずれ読む、絶対読む、けどいつになるかは不明…。

大聖堂 THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈3〉
レイモンド カーヴァー
中央公論社
売り上げランキング: 187,761

頼むから静かにしてくれ (THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER)
レイモンド カーヴァー
中央公論社
売り上げランキング: 181,865

↑上の2冊は函入り。サイズは単行本サイズ。月報も入ってて全集みたいな感じ。美しい…うふふ。
こっちが新書版シリーズ(新しいほう)↓ 中身(収録作品)が違ってたりもするみたいなので購入の際はいろいろチェックしてからのほうがいいかもです。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)
レイモンド カーヴァー
中央公論新社
売り上げランキング: 32,926


2016/07/15

鶴は病みき

鶴は病みき
鶴は病みき
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(2012-09-27)
kindle版
■岡本かの子
『鶴は病みき』初出:「文学界」1936(昭和11)年6月号
芥川 龍之介のことを書いたモデル小説として有名だそうだが恥ずかしながら初読み。
芥川は1892年(明治25年)3月1日生まれで1927年(昭和2年)7月24日鬼籍に入った。
この小説では芥川が「自殺する五年前のひと夏」の話と書いてあるので、芥川30歳前後。かの子33歳前後のときの話と考えられる。

夏目漱石以外は仮名で書いてあるのだが後半に出てくる作品名が芥川の作品名そのままだったりしてモデルが誰かは容易に特定できる。谷崎潤一郎の妻の妹で『痴人の愛』のモデルであるせい子も「赫子」として登場する。芥川が妻子は家に置いて避暑にきている先に谷崎の妻の妹にして愛人がしょちゅう入り浸っていたとはなあ。うーん。やっぱナオミ嫌いだわあ。

鎌倉のこの部屋貸しではお隣さんだったので芥川の部屋への女出入りが盛んだった様子が逐一描かれている。
わたしは芥川が好きだが、この話に出てくる芥川像はあまり意外ではなく、あそこまで神経質な作品を書くひとであればこれくらい付き合いにくい難しいひとだったというのは納得できる。
ただ、岡本かの子の考え方もちょっと意固地だったり嫉妬まじりだったりで意地悪な見方が全然入っていないとは思わない。ただ、かの子が積極的に嘘を書いたり悪く書こうと思って書いたわけではないとは思う。
晩年の芥川が痩せて頬に皺が出来て頭髪も額が深く禿げ上がり、子どもに「お化け」と間違えられるような容貌になっていたというくだりは凄まじいものを感じた。

何という変り方! 葉子の記憶にあるかぎりの鎌倉時代の麻川氏は、何処か齲んだ黝さはあってもまだまだ秀麗だった麻川氏が、今は額が細長く丸く禿げ上り、老婆のように皺んだ頬を硬ばらせた、奇貌を浮かして、それでも服装だけは昔のままの身だしなみで、竹骨の張った凧紙のようにしゃんと上衣を肩に張りつけた様子は、車内の人々の注目をさえひいて居る。葉子は、麻川氏の病弱を絶えず噂には聞いて居たが、斯うまで氏をさいなみ果した病魔の所業に今更ふかく驚ろかされた。病気はやはり支那旅行以来のものが執拗に氏から離れないものらしい。

読みながら気持ちが暗くなり、読み終えたあともいつまでもあれやこれやと思い沈んで鬱々としてしまうような描写、内容だった。読んでなんとなく感じたのが「これは岡本かの子の<復讐>なのではないか」というなんの根拠もない直観だった。復讐の相手は芥川というのも無くはなく、でも同時に「我こそが芥川と親しかった」と思っているであろう自分以外の「美しい」女性たちへの。
私と芥川さんは男女の仲では無かったけれど、魂では通じ合っていたのよ、近い考え方を持っていたのよ、だからこそあんな意地悪を受けもしたのだわ、と…。
変に解釈しすぎだろうか。
でもなんか攻撃的なものを感じたんだよね…単純に「懐かしがってる」とかそういうんじゃ絶対ない。もっと複雑な。愛憎入り混じった芥川。
いままで読んだいろんなひとの「芥川像」の中で一番美しくなく、意地悪で、でもやっぱりどうしようもなく惹かれる魅力があったんだろうな…とリアルに感じられる芥川がそう、まさに「生きて」いた。

鶴は病みき (ITmedia 名作文庫)
アイティメディア株式会社 (2016-07-01)
売り上げランキング: 111,945

河明かり【再読】

河明かり
河明かり
posted with amazlet at 16.07.15
(2012-09-27)
kindle版
■岡本かの子
岡本 かの子1889年3月1日 - 1939年2月18日)のものした単行本発行年はウィキペディアによると以下の通り。享年49歳という若さ、作家としては遅咲きだったのね。

鶴は病みき(1936年、信正社)
真夏の夜の夢(1937年、版画荘)
母子叙情(1937年、創元社)
金魚撩乱(1937年、中央公論社)
老妓抄(1938年、中央公論社)
河明り(1938年、創元社)
丸の内草話(1939年、青年書房)
生々流転(1940年、改造社)
女体開顕(1943年、中央公論社)

『河明り』初出:「中央公論」1939(昭和14)年4月号
初読みのときからこの話が何か好きで、折に触れて読み返したりしていたが、久しぶりに読んでもやはり透き通った美しいものを見るような、でも中身に触れると案外人情深くて血肉が通っていてどろどろもあるんだなというか、しかし美しい話だと思った。

わたしはこれを筑摩書房が1991年から順次刊行した『ちくま日本文学全集』(全60巻)の1冊で購入して読んだ。現在流通している同名の全集はソフトカバーだが、わたしが手持ちのは文庫サイズなのにハードカバー。これが良かったんだけど、当時まだ学生だったからあまり買えなかったんだよね…数冊、吟味して買った。岡本かの子と、寺田寅彦と内田百閒。もっと買っておくんだった。これについてはウィキペディアに記載があったので引いておく。

筑摩書房が1991年から1993年にかけて、50人の作家の中短編をとりあげ(のち60人)[1]、各作家毎に文庫判の大きさで表紙をハードカバー状に仕立て『ちくま日本文学全集』(全60巻)として出版した。
筑摩書房の文庫判の出版物ではあるが、「ちくま文庫」「ちくま学芸文庫」には属していない[2]。
ページ構成において、ルビ、および、注が淡色印刷[3]であり、本文の黒色より目立たなくしている点が通常の文庫と異なる特徴である。
装本 安野光雅
編集協力 池内紀・井上ひさし・鶴見俊輔・森毅
その後、2007年から2009年にかけ、この中から40人の作家を選定し、装幀を通常の文庫版と同様にした『ちくま日本文学 全40巻』を出版した。(収録作品は同じ)

この小説はわかってみれば平凡なストーリーである。しかしそこに一種のきらめきと爽やかな真っ直ぐさ、純粋さみたいなのが貫かれている。それはこの話に出てくる「娘」の凛とした飾らない美しさが担うところ多いと思う
かの子が初めて娘と出会うシーン。

九曜星の紋のある中仕切りの暖簾を分けて、袂を口角に当てて、出て来た娘を私はあまりの美しさにまじまじと見詰めてしまった。頬の豊かな面長の顔で、それに相応しい目鼻立ちは捌けてついているが、いずれもしたたかに露を帯びていた。身丈も格幅のよい長身だが滞なく撓った。一たい女が美しい女を眼の前に置き、すぐにそうじろじろ見詰められるものではない。けれども、この娘には女と女と出会って、すぐ探り合うあの鉤針のような何ものもない。そして、私を気易くしたのは、この娘が自分で自分の美しさを意識して所作する二重なものを持たないらしい気配いである。

貸し部屋の描写、河とそこを往来する船の描写を読んでいるのも何か旅情を感じて、水辺の清々した空気が伝わってくるようなのも気持ちがいい。
良い小説だ。

岡本かの子 (ちくま日本文学全集)
岡本 かの子
筑摩書房
売り上げランキング: 432,216
岡本かの子 (ちくま日本文学)
岡本 かの子
筑摩書房
売り上げランキング: 407,919

2016/07/14

小説家の四季

小説家の四季
小説家の四季
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佐藤 正午
岩波書店
売り上げランキング: 249,753
■佐藤正午
紙の本。今年の2月に出ていたのを、堂島のジュンク堂書店に別の単行本を探しに行ったついでに本棚を流し見しているときに見つけ、「おおこれは!」と喜んで購入。
単行本は通勤に持って行かないので在宅のときにぼちぼち読んだ。
去年再読していた『ありのすさび』『象を洗う』『豚を盗む』に続く、最新エッセイ集。
2007年秋から2015年夏までの日々。

エッセイなのに続いているのが面白い。続いていなくても内容的に全然アクティブでなく、インドアで、淡々とした日常が、夏が来るたびに「暑い」「昼食はそうめん」と同じ話題が繰り返されるのが、妙に面白い。「同じ話題を毎年している」ということをネタにして少しずつ変えたり、言い訳めいたことを言ってみたりと遊んで(?)らっしゃるのが安心して読めるのだ。
毎日のエッセイじゃなくて季刊なのに悠長に(この言葉は通常非難めいた響きを持つがこの場に限り褒め言葉としたい)、律儀に前回の続きから話が続いているのだ。なにもかもが目まぐるしくどんどこどんどこいろんな情報が更新されていく中でこのペースは凄い。まあ、わたしはネットでは読んでおらず今回単行本で続けて読んだわけであるが。
なお、最新の日記は岩波書店のホームページ「小説家の四季」で2016年「春」「夏」が読める。「春」は完全に本書の内容を受けた「続き」だった。自分で「謙遜であるが」なんて書いちゃってちょっとどうかと思わないでもないがもう大御所だからありなんだろう。

この方の小説は随分昔に2作(1998年『』2000年『ジャンプ』)をどちらも単行本で読んだ限りで内容も忘却の彼方だし、近著の評判やストーリーが風のうわさで流れてきても(ドラマ化されたりして有名だもんね)食指が動かないのだがエッセイは読みたいと思う。
1955年生まれで現在60歳、競輪がお好きな模様。

以前のエッセイでは「いつでも手書きに戻れる」とか書いていらしたが、本書の中でワープロからついにそれが在庫切れとなりパソコン入力となり、いまや手書きには戻れない…という内容が書いてある。まあそうだろうなあ。
編集者に聞いたらまだ何人かの作家さんは手書きらしかったがその面々に自分が入るというのは…というくだりでいったいどういうメンバーなんだろうと好奇心がわいたり。編集者のほうもデータでもらうほうが圧倒的に効率が良いだろうからなあ。
小説を書き上げてもすぐに雑誌に載る前のゲラの手直し、単行本化の際のゲラの手直し、と何度も読み直すことになり、読み返すたびに修正点は出てくるので最後まで書いた時点で仕事が終わった感はあまりないのだとか。句読点をどこに打つか、言葉の順序の入れ替えなど迷うところはたくさんあり、考え出すといくらでもあるらしい。

いまは「さん」をなんにでもつけるのが当たり前になったが20年くらい前はそうではなかった、その時代に「作家さんはどうぞこちらへ」と言われて腹が立った話、これは言葉だけでなくその場に置かれた本人の気持ち、周囲の状況、発言した人間の表情・動作・雰囲気など全部ひっくるめてみないと伝わらないところもあるだろうが、じゃあなんと呼ばれるのが正解だったのかは書いていないんだよね。若い、駆け出しの作家なのに「さん」付けされてバカにされたと感じたそうだから「作家先生」だとますます嫌味に感じただろう。よくある「佐藤先生」でも同じか。「佐藤さん」くらいが良かったのか?主催者が「作家はこちらへ」というのも変だしなあ。

そういえば先の佐藤正午のエッセイにはすごく印象的なスパゲティのレシピが出てきたが今回も出てきた。実在するんだねそのひと、ってなんかしみじみ思っちゃった。

内容的に『小説の読み書き』に触れている箇所がいくつかあり、あちらの再読もしたいと思った。

目次
Ⅰ小説家の四季
2007年秋(冷蔵庫理論)/2008年冬(ほくろ理論)/春(ワープロ)/夏(パソコン)/秋(ボル)/2009年冬(ボル2)/春(未知との遭遇)/夏(ボル3)/秋(ホワイトボード)/2010年冬(透明感のある文章とは?)/春(椅子)/夏(老眼鏡)/秋(幸運について)/2011年冬(二十年後のスパゲティ)/春(黒髪)/夏(黒髪2)/秋(副産物)/2012年冬(節電)/春(ならば)/夏(頭書)/秋(皿の謎)/2013年冬(喪服)/春(貰い水)/夏(手紙)/秋(手紙2)/2014年冬(お休み)/春(文豪病)/夏(さんづけの時代)/秋(作家さん)/2015年冬(背文字の人)/春(サイン会観)/夏(理想型)

Ⅱ作家の口福
僕の一日/作家の口福/目覚まし/“結婚”と書いて“ゴミ袋まであさる” と読む。

Ⅲ文芸的読書
文藝的読書/いんぎんといんげん/私事―野呂邦暢『愛についてのデッサン 佐古啓介の旅』/現実―盛田隆二『夜の果てまで』/本気―伊坂幸太郎『残り全部バケーション』/きのう読んだ文庫―吉田修一『横道世之介』/二戦二敗/忍者/夢へのいざない/道のり
 

あとがき―いつものように
初出一覧

2016/07/13

吉野朔実は本が大好き 吉野朔実劇場ALL IN ONE

吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)
吉野 朔実
本の雑誌社
売り上げランキング: 104
■吉野朔実
お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き
お母さんは「赤毛のアン」が大好き
弟の家には本棚がない
犬は本よりも電信柱が好き
本を読む兄、読まぬ兄
神様は本を読まない
悪魔が本とやってくる
天使は本棚に住んでいる

ボーナストラック
発掘
穂村弘と陽水
春日先生というひと
コントラバス
おじゃみ様
電子書籍時代
読書する女
図書カード三万円使い放題!/リアルお買い物ゲーム
今月書いた人

掲載図書索引
初出一覧

本の雑誌398号
本の雑誌398号
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本の雑誌社
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追悼・吉野朔実

天使は本棚に住んでいる 吉野朔実劇場⑧

天使は本棚に住んでいる (吉野朔実劇場8)
吉野 朔実
本の雑誌社
売り上げランキング: 542
■吉野朔実

2016年7月20日 初版第1刷発行

初出 「本の雑誌」2013年2月号~2016年6月号
ポール君と迷路「モンキービジネス」2011年vol.13
プライマー「ユリイカ」2002年10月号
友達いますか 「ease」2005年vol.2
発掘「ハヤカワ文庫 夏のブックパーティ'97」1997年

帯コピー 「だから本棚が大好きだ! /急逝した吉野朔実が遺した最後の<吉野朔実劇場>」

◇目次
(巻頭カラー漫画1p)/ポール君と迷路/恥づかしながら/占いはお好きですか?/エロ本魂/祟り/色々な女達/プライマー/犯人は誰だ?/世界も女も俺のもの/文字で描く絵画/私は騎手を許さない/どちらを読むか どちらも読むか/単位/テイスト・オブ・ハニー/バースデイ/朝だか昼だかわからない/パペットなのに本物の馬でした/ホドロフスキーの「DUNE」/友達いますか/可愛い怪物達/娘が親の本棚を/THE SERIALIST 連載小説家/ヤーガン族(ヤマナ族)/戦後七十年/上手な下世話/新しい古本/戻って来た「猿の手」/毒を食らわば/どの物語がお好みですか?/出火吐暴威と宇宙/猿という雑誌/発掘

※「恥づかし」は原文ママ。以前からずっとそう書かれていますので、誤植でも誤字でもなく、吉野さん流のこだわりかなと思われます。

2016/07/11

友がみな我よりえらく見える日は

友がみな我よりえらく見える日は (幻冬舎アウトロー文庫)
上原 隆
幻冬舎
売り上げランキング: 132,299
kindle版
■上原隆
本書は1996年学陽書房から単行本刊行され、1999年幻冬舎アウトロー文庫に入ったものの電子書籍版である。
タイトルが巧い。
本書のタイトルは石川啄木の
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ
という俳句からきており、エピローグにこの句が引かれている。

ためし読みで最初の「友よ」の途中まで読んだらあまりにも衝撃的な話だったので続きを読まずにはいられなくなった。
本書は全部実話のルポタージュである。著者の知人、友人も出てくる。
最後まで読んでの感想だが、最初の話がいちばん強烈な印象だった。「極端な話が多いなあ」とは思うが、すぐにそちら側に行く可能性があるものもあり、「他人事、普通は無いよ」とは切り捨てられない。

著者についてググってみたがよくわからない。1949年生まれ。同姓同名の有名人が他にもいるようだ。ふーん。
本書を読んでみての感想だが、文章は上手いと思う。
衝撃的だったりセンセーショナルだったり、いろいろなひとの実際の半生を扱っているのだけれど、入り過ぎず、作り過ぎず、余計な感情移入が無くて読みやすい。けれど著者の相手への「相手の言うことをきちんと受け止める」という姿勢や優しさ、あたたかみなどがじんわり伝わってくるから不思議である。
たぶん、お人柄があるんだろうな。だから相手も心を開いてくれる。
正直、わたしだったら対面して動揺せずにいられるだろうか、と思う。

目次と、内容についてざくっとレビュー。
友よ:アパートの5階から墜落して、失明した友人(47歳)
容貌:容貌にコンプレックスを持っており異性とつきあったことが無いという46歳の女性
ホームレス:上司を殴って会社をやめ、アルコール依存症になり、不倫の末離婚して、ホームレスになった男(50歳)。このひとは虚言癖があるようなのでどこまで本当かちょっと疑わしい。
登校拒否:中学2年のときから登校拒否になった少年。現在は定時制高校に休まず通っている。
テレクラ:テレクラにハマって家庭をないがしろにする夫(27歳)を持った、妻(34歳)の話。二人とも精神を病み、その後離婚したが…。
芥川賞作家:第66回芥川賞を受賞した東峰夫(57歳)の話。生活のために小説を書こうとせず、「精神世界」を重視する。結婚し子どもももうけたが、家にお金を入れないのでやがて離婚…。
職人気質:ネガ編集を行う職人(53歳女性)。ネガ編集とは映画などで【監督や編集者がつないだラッシュフィルム(ポジ)にもとづいて、ネガフィルムをワンカットワンカット切ってつないでいく作業のこと】。数年前(1995年時点の)からビデオ化が進み、ビデオはネガ編集の作業がないので仕事が来なくなった…。
父子家庭:区役所に勤める父親(42歳)と娘(10歳)の二人暮らし。妻とは結婚11年目に離婚した。
身の上話:タクシー運転手(43歳・女性)の身の上話。学生の時19歳でデキ婚→第2子出産→夫浮気→離婚→生命保険会社勤務→ちり紙交換→スナックホステス→キャバレホステスー→再婚→夫逮捕で離婚→生命保険営業・居酒屋アルバイト→カードローン借金→タクシー運転手(39歳のとき)。
別れた男たち:離婚した男側の話、数名の例。家事をどうしているのか、というのがテーマ。元大学教授68歳。雑誌・本のデザイナー46歳。フリーライター38歳。
女優志願:舞台女優を続けるかどうか。才能が無いのでは。27歳の迷い。
うつ病:28歳、鬱病になった男性の23歳からの日記から。
離婚:45歳、離婚して家事はすべて家事代行サービスに頼んでいる男性。仕事は小学校の事務職員。30歳~5年間結婚しているときは自分が料理をしていた。100%自分のために使いたいから家事は出来るけどしない、というスタンス。
リストラ:入社2年目(二十代の最初の方で)リストラをされた現在二十代後半の男女6人グループの話。
あとがき:1996年8月 「友よ」の後日談。少しほっとした。
文庫版のためのあとがき:1999年10月

オキナワの少年 (文春文庫 ひ 3-1)
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 91,093

2016/07/07

チア男子!!

チア男子! ! (集英社文庫)
チア男子! ! (集英社文庫)
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朝井 リョウ
集英社 (2013-02-20)
売り上げランキング: 2,095
kindle版
■朝井リョウ
スポーツものには基本的にあまり興味が無いのであんまり読まないのだが、同じ作者の後に書かれた『何者』はそう悪くなかったし、昨日7/6の日替わりセールで¥299と安かったので読んでみることにした。
結論から云うと、悪くなかった。面白かった。スポーツものの少年漫画を活字で読んでいるような感覚がしばしばあった。何故ならみんな大学の男子学生ばかりにしては素直すぎるというか品が良すぎるというか仲が良すぎるというか、あまりにもキレイすぎたからだ。「まあ、リアルよりは、そういうことは書かないことにしたんだろうな」と脳内補完したりした。これ、男性作家が書いてるからまだしも、女性作家が書いたら「妄想?」「こんな男いないよ」と言われちゃうレベルだと思うんだけど? それとも最近の男子大学生ってみんなこんな感じなの?

一般的にチアというと女の子がやってるイメージがある。「チア男子」で小説のタイトルになる、っていうことは「珍しい」「このタイトルで目を引ける」ということだろう。
男子が、チアをやって、感動するスポーツもの、ということでだいたいどんなストーリか漠然と読む前に想定した、その範囲を驚くほど越えない定型通りの小説ではあったが、登場人物の会話がなかなか楽しく愉快で、苦になる展開も無く、読んで嫌な気分になるようなことが起こらないので、先の展開を知りたいこともあり、どんどん読んだ。

この作品ではちょくちょく比喩表現や擬人法が使われるが特に最初の方にそれが集中していて、でもその比喩がなんだか独特というか「これは良いのか?」と首を傾げてしまうのもあったりして気になったが、物語が本格的にチアの世界に入っていくのと並行して比喩表現が用いられる機会も減っていった。なんか、比喩や擬人法をつかうと文章が凝った感じになるから頑張っていっぱい考えた、って感じがしないでもない。もしナチュラルなら全体的に分散しているもんじゃないか? というか作品的にこういう装飾が合っているかどうか…純文学なら合うけどこれはほとんど少年漫画みたいなエンタメだもんなあ。 
わたしがマーカーを引いた部分を引いておこう。→はわたしの感想。

六月の終わりの夜は、巨大な親鳥にあたためられている卵の中みたいにしっとりしている。
→巨大な親鳥にあたためられている卵の中を知っているひとはいない。六月末の夜の湿気と温度の高さは誰でも知っている。

二つ目の信号の向こう側から、ゆっくりと夜が歩いてくるのが見えた。
→いきなりブラッドベリみたいな詩的ファンタジー表現が出て来たなあ。

キャラメル味のアイスが太陽に食べられていく。
→こういうSF的比喩が好きなのかな。

半熟卵を真っ二つに割ったような太陽が光の液体をこぼしているのが両目いっぱいに飛び込んできた。
→これもブラッドベリっぽいなあ。

溝口の実家は、その街が飛んでいかないようにするための重しかと思うほど、でんとしていた。
→この表現は漫画そのものだね。そのままコミカルな絵が浮かぶもん。

一月末には、DREAMSと同じ舞台で戦う。しん、と眠ったように誰も話さなくなる。
→ライバル心と挑戦心を高めるこのシーンで「眠ったように」は無いだろ!

基本的に標準語の小説だけど関西人2人が関西弁でボケとツッコミの会話をやったりと全体として会話がテンポよく良かったなあ。
「少年漫画みたい」と思ったらこれは版元が集英社だった。そして少女漫画と少年漫画両方になっていて、少年漫画の方でテレビアニメ化するらしい。あ~これ映像で観たらわかりやすいだろうな! チアの技とかが文章だけだと100%脳内再生できたという自信がないので。とりあえずこの感想を書き上げたら、モデルになったという早稲田大学の男子チア「SHOCKERS」のチアを検索して観てみたいと思う。

2016/07/05

「昭和」という国家

「昭和」という国家
「昭和」という国家
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NHK出版 (2016-03-01)
売り上げランキング: 975
kindle版
■司馬遼太郎
先日『「明治」という国家』を面白く読んで、本書の存在にも気付いて続篇なら読んでおくべきかと思ったが「昭和かあ…第二次世界大戦とかだよなあ…重いなあ、暗いなあ」と手が伸びなかった。6/20のkindle日替わりセールで¥599だったので「良い機会だ」と購入。
先に巻末の田中彰というひとの【感想「雑談『昭和』への道」のことなど】によれば本書は活字媒体の企画ではなくNHK教育テレビで1986(昭和61)年に5月から翌年2月にわたって12回放送されたもの、を活字に起こしたものらしい。【氏が生前には活字化することをためらい、出版することにOKを出さなかった講演や映像のなかでの語りすらも、いまはつぎつぎに活字化されているのである。本書もそのひとつ】とある。『「明治」という国家』の元になったやはりNHKで放映された「太郎の国の物語」は1989年だから、「昭和」のほうが先だったんだなあ。この解説(?)は「2」以降は司馬先生の文章を切り張りして主張を進めていくスタイルの文章になったので(それは本文を読めばいいや」とそこでやめて栗田博行というひとの【司馬遼太郎・「雑談『昭和』への道」制作余話 あとがきにかえて】を読んでみたらかなり興味深かったので熟読した。NHK大阪放送局の企画で教育テレビに年間を通して何らかの出演を、という話があって、テーマがなかなか決まらなくて、そんななかで「昭和」というテーマをひとり語りでというアイデアを打診したところ、OKが出たということだった。収録は【主題が連続する三回分をワンセット】とし、年4回。司馬先生は収録のときメモも文献も何も持たず、手ぶらだったらしい。これは後で本編を読んで驚愕というかほとんど畏怖の念を禁じ得ないというか……全部頭の中にあって、ずっと考え続けていらっしゃるからこそ、だろうなあと。

重くて暗いテーマなんで読んでみてもすぐ挫折するかもと思っていたのだがあにはからんや、これが面白くて面白くて。心にすーっと入ってくる。小学校の時から学校で習ったり、いろんな児童書や小説で読んできて、「なぜだろう」「なんで日本はなんであんな悲惨な戦争をしたんやろう」ってたぶん心の中にずっとあった疑問に、快刀乱麻、ではなくて、もっとじわじわと、ゆっくりと、水が浸みていく感じで、読んでいく。【感想】によればこの番組収録においては、司馬先生が【しぼり出すようにして発言】したり【苦渋にみち、言葉を発するのにためらうシーンがいくつも】あったという。【話の運び方は、必ずしもすんなりしたものではなかった。その意味で本書は、放送記録を構成したものであるが、読者の方がたには、司馬さんの紡ぎだす言葉をかみしめつつ読んでいただきたいと思う。】とある。

目次
第一章 何が魔法をかけたのか
第二章 “脱亜論”私の読みかた
第三章 帝国主義とソロバン勘定
第四章 近代国家と“圧搾空気”…教育勅語
第五章 明治政府のつらさ …軍人勅諭
第六章 ひとり歩きすることば …軍隊用語
第七章 技術崇拝社会を曲げたもの
第八章 秀才信仰と骨董兵器
第九章 買い続けた西欧近代
第十章 青写真に落ちた影
第十一章 江戸日本の多様さ
第十二章 自己解剖の勇気
付録一 日本語について
付録二 兵器のリアリズム

「昭和」というと64年1月7日まであったわけだが、まあだいたいの予想通り本書で書かれている「昭和」というのはノモンハン事件くらいから太平洋戦争が終わるくらいまでのことである。比較とか、歴史の流れとか、そういうので江戸・明治についても結構語られる。大正は忘れられたのかというくらい出てこない。
夏目漱石のことに言及する部分がけっこうあって、予想外だったので嬉しく、興味深く読んだ。

よく「学校の日本史や歴史の授業では縄文時代とかに時間がかかって昭和まで年度内にたどりつかない」とか言われて久しいけど、自分が学校の「社会」や「日本史」の授業で昭和のこのへんをどのくらい習ったかあまり覚えていないが、小学校時代から夏になれば「戦争」についての道徳やその他の時間での学習は必ずあったし、学級文庫や図書室で戦争の悲惨さを扱った本は何冊も読んだ。そういうのをあわせて、「戦争はいけない」ということはずっと教わってきたと思うが、「何故、日本はあの戦争をしてしまったのか」というのは歴史の出来事やなんかは習っても「狂ってたとしか思えないなあ」という感じで。本書を読んだら司馬先生も中学くらいからずっと考え続けてこられてそれでもついに活字では書かなかった、あるいは書けなかった。

この本1冊読んで「わかった」と言う気はさらさらないが、考える機会をいただけて、いろいろ司馬先生の考えていることを教えてもらえて、ありがたいと思った。この時代のことについてはいろんな意見があるし、迂闊に公の場で云うのも、という空気があるが、そのことも本書を読みながら考えていたんだけども、でも最終的に究極の結論としては「戦争ってやっぱりしたらいけない」ということは同じなんじゃないかなあ。いろんな理屈をつけて「戦争」を肯定する向きも無いではないだろうが、わたしとしてはそれには賛成できない。

本書を読んでいると、司馬先生が戦争を起こした当時の軍人の上層部の人間に対してものすごく怒っている、ということが、あと、本当に心底どうしようもない奴らだったというか、思想も思慮もなんにもあったもんじゃない、みたいな、憤り、やるせなさ、いろんな感情が複雑に渦巻いていることが伝わってきて、胸にせまる。江戸時代から続いて明治で花開いた日本の素晴らしいものが昭和のあの戦争のときはまるで別の国としか思えない、とか、「魔法」なんていうファンタジーの言葉をつかわないとやっていられないという感じがして。

小学生の時、太平洋戦争のことを習うと、自分は日本人で、日本のこと嫌いにはなりたくないけど、この時代の日本はすごく嫌な国だったと思わないではいられないなあ、というようなことを何度か感じたことを思い出す。この事件があったとかなかったとかそういう細かい話ではない。
昔からある論議でその細かい所の正確さをあれやこれやとそれぞれの主張を言い張るのがあるが、本書はそういう次元で書かれていない。もっと大きな枠組みで、日本のことを考え続けたひとりのひとが責任を持って、魂を込めて語った映像、の活字化されたものだ。
さすが小説家だけあって、話が面白いので、どんどん引き込まれた。

2016/07/02

これから出る本 7月12日発売予定 吉野朔実劇場最新刊ほか

天使は本棚に住んでいる (吉野朔実劇場8)
吉野 朔実
本の雑誌社
売り上げランキング: 2,408
1991年から「本の雑誌」に連載していた著者のライフワークともなる〔吉野朔実劇場〕シリーズ最終巻。

吉野朔実は本が大好き (吉野朔実劇場 ALL IN ONE)
吉野 朔実
本の雑誌社
売り上げランキング: 1,407
長年「本の雑誌」に連載していた読書エッセイマンガ〔吉野朔実劇場〕を1冊にまとめた作品集。
単行本で出版された『お父さんは時代小説が大好き』『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』『弟の家には本棚がない』『本を読む兄、読まぬ兄』『犬は電信柱が大好き』『神様は本を読まない』『悪魔が本とやってくる』『天使は本棚に住んでいる』(2016年7月同時刊行)を、ALL IN ONEの一冊に。
またボーナストラックとして単行本未収録作品6作と「本の雑誌」に掲載した「図書カード3万円使い放題」、2009年5月号からスタートした近況欄「今月書いた人」も収録。

「本の雑誌」ホームページでは7月11日搬入予定となっており、Amazonでは12日発売予定となっています。
吉野朔実劇場最終巻、といわれてあらためて「そうか、そうなんだよな…」と事実を突き付けられた気がしました。
「今月書いた人」というのは一口近況コメントみたいなものです。
吉野朔実は本が大好き』というタイトルを見たら泣けてきました。ほんまにそうやったわ…。浜やん、ありがとう。

なお、「本の雑誌」 8月号は吉野朔実追悼特集&上半期ベスト特集の2本立てだそう(これも7月11日くらいの発売かな?)。「本の雑誌」は発売日が動くのでもう少し日が近づかないと不明です。

Amazonに書影等きていたので追記します。7月12日となっています。
本の雑誌398号
本の雑誌398号
posted with amazlet at 16.06.30

本の雑誌社
売り上げランキング: 32,612


2016/07/01

生きる悪知恵

生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)
西原 理恵子
文藝春秋
売り上げランキング: 8,224
kindle版
■西原理恵子
7/1のkindleの日替わりセールで¥399だったので読んでみた。
あんまり役に立たないけど、ちょっと応用して「ああまあそういう視点もありなのか」と思ったのは何カ所かあった。
数名の作家・漫画家さんは完全に「お遊び」で参加しているのでそういうノリの企画なんでしょう。

そもそも相談者もあのサイバラに相談しようとしている時点でだいたいのスタンスはわかってくるような。
ちょっと甘えてるなーと思われた相談者は西原さんにメッタ斬りにされている。
基本、とても下品。下ネタも満載。
「役に立つ」かはまあそれぞれですかね…。
世の中いろんな悩みがあるなあ。

某整形外科の先生がちょこちょこ話に出てくるのでふーんと思った。