2016/05/29

橋本治のかけこみ人生相談

橋本治のかけこみ人生相談 (幻冬舎plus+)
幻冬舎 (2016-05-27)
売り上げランキング: 5,033
kindle版
■橋本治
5月29日くらいからはじまった「幻冬舎plus+」刊行記念セールで¥162で購入してざっと目を通した。
すごく短い。
幻冬舎plus(http://www.gentosha.jp)で、2013年11月〜2016年3月にかけて連載していた「かけこみ人生相談」の橋本治さんの回をまとめたもの。
別に人生相談がしたかったわけじゃなくてネット掲示板読むような娯楽で読んだけど、当たり前だけどこういう本とかのは「質問→回答」一方通行だけなので、ちょっと物足りなく感じた。また、質問も回答も極端すぎてあまり一般化出来ないような気もした。
こういう斜めからズバッと切り捨てるような回答に質問者がどう反応したか知りたい気がする。あくまで野次馬根性で、ですけどね。

検索したらインターネットで無料で見ることができるのだった。早まったな…orz

2016/05/28

カテリーナの旅支度  イタリア 二十の追想

カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想 (集英社文庫)
内田 洋子
集英社 (2016-05-20)
売り上げランキング: 26,989
■内田洋子
これは紙の本。先日文庫化したのを機会に読んだ。単行本は2013年10月刊。
文庫版には「文庫版あとがき」が収録されている。解説はなし。
単行本の装丁に使われている黒い鳥の絵が印象的だったので文庫も同じ絵を使うのかと思っていたら全然違う路線できたので「へえ」と思った。内容を読んでみての感想だが、単行本の鳥の絵は中のひとつ「赤い鳥の絵」を連想させる。それに対して文庫版の写真はタイトルともなっている最後に収録されている「カテリーナの旅支度」をはじめとする、本書にたくさん登場する様々なイタリアの女性を連想させて、結果として全篇に共通するイメージに近いのはこちらのほうかな。

内田洋子さんの著作を読むと、ご本人の知人・友人の実話・実体験が書かれている、ジャンルとしては「エッセイ」なのにその内容のあまりのドラマチックさに「まるで、小説みたい」といつも驚かされたり唸らされたり感動することしばし、なのだが今回もその期待を裏切らなかった。全部で20の話が収録されているのだが、1篇1篇にそれぞれの人間の人生や半生やある時期のことが書かれていて、「内田洋子のエッセイのネタになる」くらいだからみなそれぞれ波乱万丈で、1篇読むだけでけっこう濃厚。それが、掛けること20篇、いや、20人の凝縮人生である。正直、1日2日で読むと勿体無い。紙媒体であることもあり、会社に置き本して昼休みだけ読んだりして、ゆっくり4日ほどかけて読了したが、1回読んだだけでは消化できた気が一向にしないのでまた時間をおいて再読するつもりである。

この本の全体的な印象としては「女性」が多かったかな? それも、バリバリ働いていたり、恋に生きていたり、セレブ妻として女磨きに余念がなかったりとそれぞれかなりエネルギッシュな、パワーの強い女性が多かったような。そして、幸福か不幸か、その判断は難しいところだがあくまで読んだ印象としてはちょっと不幸というか、しんどかったり疲れたり弱っているひとの話が多かったような。それもあって、1篇読み終わるとなんだか「はあ~」という感じでいろいろ考えさせられることもしばしばあった。

以前から内田さんの本を読むたびに「この方の人間づきあスキルの高さ半端無いなあ」と驚愕と尊敬の念を強めていたのだが、本書の中の「ハイヒールでも、届かない」の中で「あ、こういうシチュエーションでそれでも彼女に声をかけてお茶にさそうところが、わたしとは違うんだ」とすごくハッキリわかったシーンがあった。わたしならこういう状況を目にしたら「声を掛けない方がいいような、見て見ぬふりがいいような」と思う。それは、精一杯強がって孔雀の羽根を広げまくっていた彼女が(派手な羽がある孔雀は雄だけど)弱っているというか醜態をさらしているシーンだと解釈してしまうから。でも、そこで声をかけてお茶に誘い話を聞こうとする内田さんは決して野次馬なのではなく、弱っている、困っている彼女の話を聞いて共感したり同情したり何か助けになることがあれば、という精神なのだろうと思う。ジャーナリストだから「知りたい好奇心」が強いというのももちろんあるだろうが、それだけだったらこんなに内田洋子の周りに友人がいつもたくさんいる、という状況には繋がらないだろう。内田洋子はひとを惹きつけるのだ。信頼されるのだ。それは彼女の著作を数冊読んだだけのわたしでもひしひしと感じる。あたたかくて大きな心・お人柄を知るにつけ、ファンになってしまうんだね。

2章構成、目次を写す。短い感想を記す。
Ⅰその土地に暮らして
サルデーニャ島のフェラーリ :内田さんの他の本にも出てきたけどフェラーリってやっぱりなにかただの車ってだけじゃないいろんなものを背負ってる気がする…。
犬を飼って、飼われて :動物に助けられているというかすがっているというか。イタリアの有閑マダムはスケールが違うなあ。
大地と冬空と赤ワイン :美味しそうな料理の描写!から、こういう展開になるとは。
黒いビキニと純白の水着 :日本は昔から色白が良いとされているし美白ブームがずっと続いている。文化が違うなあという感じ。
ハイヒールでも、届かない :こういうひとは苦手だなあ。彼女の父親の考え方、イタリアでも昔の田舎のひとはこんな男尊女卑なんだね。
聖なるハーブティー :結局どうして治ったのかは不明か。アレルギーとか蕁麻疹ってよくわからない部分が多いんだなあ。
掃除機と暮らす :この掃除機売りのひとはどう考えても詐欺だと思うんだけど…。掃除しすぎて夫を思いやらないとか本末転倒。
塔と聖書が守る町 :すごい家だ!頭の中で映像で想像したけどどうなってるんだろうなあ。一段が高過ぎるという階段のイメージが強すぎる。
ヴェネツィアで失くした帽子 :ヴェネツィアといえば水の都でロマンチックなイメージだったのに、住むとなるとここまで陰鬱だとは。
赤い小鳥の絵 :優秀なのにつまらない権力者のエゴで潰されるとか、でもそこでへこたれないのが素晴らしい。

Ⅱ町が連れて来たもの
めくるページを探して :本好きで仕事が出来てそれだけのひとかと思ったら恋愛もするし4人の子どものお母さん! 凄い。
四十年後の卒業証書 :うーん…この母とこの娘…灰色解決だけどまあいいの、かなー。
思い出を噛み締めて :倫ならぬ恋、からの「ひとりの人間」としての人生。良いね。
硬くて冷たい椅子 :人種差別者ってどこにでもいるんだな。本人が不幸なんだろうな。
小箱の中に込める気持ち :やっぱりこの警戒感がいつも必要なんだ。他ではあんまり描かれていない心境だったので珍しかった。
老優と哺乳瓶 :別れるの前提なんだ(苦笑)。
花のため息 :そんなに菜食主義なのに何故パーティに来たのだろう。でも日の光いっぱいのベランダは素敵。花でもひとの心が溶かせない場合もある、と。
ヨットの帰る港 :結局この男は何もわかっていなかったということか。
バッグに導かれて :鞄の中で財布だけ戻ってきたっていうのが意外だったけど盗難した犯人にとって他は使い道があったってことかなあ。
カテリーナの旅支度 :正直、わたしはカテリーナと旅はあんまりしたくない。計画はしっかり立てるけど遊びの余地が欲しい。

文庫版あとがき :内田さんてば…なんて粋なことを!「あとがき」までドラマチックなのね。

▼単行本はこんな装画。
カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想
内田 洋子
集英社
売り上げランキング: 284,074

2016/05/22

星を賣る店

星を賣る店
星を賣る店
posted with amazlet at 16.05.22
クラフト・エヴィング商會
平凡社
売り上げランキング: 152,751
■クラフト・エヴィング商會
今頃になって買っていてお恥ずかしい…。

出た時に「あ」とは思ったのは覚えてるんだけどいつもの路線の本だと思っちゃってたんだよ~。まさか、これまでのクラフト・エヴィング商會のお仕事総括的な、実際にあった展覧会の図録だったとは…! 不覚だ。

梅田紀伊國屋で待ち合わせとして「お客さんが空いてるエリア」だからという理由で「デザイン本のコーナー」を指定し、そこで待っているときに棚を見ていて発見して中身を見て「なんでいままで買っていなかったんだろう!」初版第1刷好きなので悔しかった。でも手元に置いて愛でたい素晴らしい本なので購入。2014年1月に初版第1刷で、わたしが購入したのは2014年3月の初版第3刷。

「前口上」によれば本書は2014年1月25日から3月30日まで世田谷文学館で開催された展覧会「クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会・星を賣る店」の公式図録であると共に「商品目録でもあり、はたまたベストアルバム」のようなもの、らしい。

内容は、
商品目録 これはいつものクラフト・エヴィング商會の「作品紹介」。
著作 クラフト・エヴィング商會、吉田篤弘、吉田浩美/吉田音の著作紹介。
装丁 クラフト・エヴィング商會が手掛けた装丁本の書影リスト。持っている本もたくさんあるけどクラフト・エヴィング商會だとか意識していなかったのもいくつもあって「ああ、そういえば、〝ぽい"よ~」とか思った。
お客さまの声 いままでクラフト・エヴィング商會に装丁してもらったりしたことのあるひとのコメント集。
クラフト・エヴィング商會全装幀リスト これは文字だけでリストアップしてある。

すべてカラー写真。見ているだけで「ほ~」「は~」「素敵…」とうっとりため息を何度もついてしまう素晴らしい本。
「図録」っていうけどむしろふつうの四六版よりも小さいくらいのサイズが可愛い。
大きさの割に持った感じが「軽い!」のも使われている紙のせいなんだろうな。まあ軽い単行本といえば『一人の男が飛行機から飛び降りる』(新潮社・1996年)の衝撃を越えるものはないけど…(そういえば吉野朔実さんもこれを「軽い!」というテーマで書評マンガで紹介されていたなあ)。新潮文庫化もしてるけど、この単行本は「本」という「物」として見ても面白いんだよね。

一人の男が飛行機から飛び降りる
バリー ユアグロー
新潮社
売り上げランキング: 84,847

買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて

買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて (文春文庫)
山内 マリコ
文藝春秋 (2016-03-10)
売り上げランキング: 3,263
■山内マリコ
これはkindle版も出ているけれどあえて紙の本(文庫)で購入した。何故なら、本書はお買い物実録エッセイで、山内さんが買われたもののイラストがカラーで!毎回!描かれているからだ。kindleはモノクロ表示なので…こういうのはちゃんとカラーイラストで見たいというわけで。
イラストは川原瑞丸という方。

初出は「週刊文春」で「お伊勢丹より愛をこめて」2014年4月10日号~2015年8月6日号を加筆訂正。
サブタイトルにもなってるくらいだけど、実際に伊勢丹で買い物をするというのはそんなに出てこない。ネットで購入という記述が一番多い。

最初の項が32歳の著者が「人様の前に出しても恥ずかしくない財布が欲しいと思い始め」→「ブランド財布が欲しい!」とかのたまって、プラダの財布を約9万円で購入した話だったので、自分とは価値観が違うなあと思い、本書は合わないんじゃないかなーとは思ったが、Amazonの読者レビューでみなさん絶賛してるし、高い買い物ばかりじゃなくて庶民派みたいなことが書いてあるので読んでみた。

確かに山内さんはハイブランドの物ばかり買っていなくて、むしろ「必要なものを必要なぶんだけ買う」という考え方で、そのときに「多少高くても長持ちするものを」という基本姿勢で、さらにかなり何度も書かれているのは「30代という年齢に見合ったものを(高くても)買うべき」ということだった。20代は安物でもそれなりに様になるけど30代以上はちょっとね~、というやつである。
山内さんは1980年生まれで、本書連載時は32~34歳くらい。

まあ、なんていうか、いろんな考え方があるし、こういうスタンスがきっと女性では主流派なんだろうなというか、出てくる服のブランドとかがまるっきりアラサーOLさん御用達ラインで雑誌なんかで見る感じと一緒なので「そうか~作家さんだけどあんまり芸術派で個性派ってタイプじゃないんだな~」とか思った。あと名前と顔を表に出す商売ということで「周りの目」がすごく気になるらしい。財布もそうだったけど、ふつうのカードだと「恥ずかしい」からわざわざゴールドカードを申し込むくだりとか……どんだけ…。
でもまあ思えばわたしも30代の頃はもっと洋服や靴や鞄や化粧品に(自分史上的には)お金をつかっていたし、それが楽しかった。
30代というのは20代よりはそこそこお金も稼げるようになってくるし、見目も40代よりはまだまだ「若さ」が残ってるからいろんなものが似合うし、思えば一番買い物が楽しくて実用になる時期、かもしれない。
40歳を越えてしまったいまは楽な方向にどんどん進んでしまっていて……オシャレよりも「身体に楽」「洋服はもうラフな方向で行こう」という思考になってしまっているので本書を読むとなんだかいろいろ「自分はこれでいいのだろうか」と考えさせられなくもなかった。ていうか、35歳とその5年後ではもっと如実に「今まで似合っていたものが着ちゃだめになる」んだよね。今更ハイブランドにお金つぎ込むとかは無いけど、自分のライフスタイルに合って、似合う服で、かつ値段が自分の甲斐性で買える範囲、というものを見つけるのが年齢を重ねるほどに難しくなっていくような気がする。

山内さんの持ち物はわりと回転が早いっぽくて、しかも棄てないで古着屋さんに売ったりなんだりしてるっぽい。例えば、アンティークに凝って「いま部屋にある新品で買ったものはベッドだけ」とかさらっと書いてあるんだけどじゃあそれまで使っていたものはどうしたのかは書いていないんだけど、たぶんひとに譲ったり売ったりしたんだろうなと他の項目からの総合判断で補う。引越がお好きみたいだし。服はともかく家具はな~処分が大変だよなあ、新しいの入れたいけど古いのどうすんの、って絶対なるから。

本書を読んで「これわたしも欲しい」と思ったものは驚くほど少なかったけど、何故かクローゼットの中を掃除(というか手持ち品の見直し)したくなった。安かったものは手放しやすいけど、「これ高かったのに~!」っていうのが難しいんだよね…。売るのもなんだし…。

目次。
行き着く先はプラダの財布/グレーのパーカーは第二の皮膚/椿オイルと馬油クリーム/沖縄のシャイで優しいやちむん/蚤の市で馬、犬、そして猫の皿/ロンシャンのナイロントート/33歳が着るうさぎ柄パジャマ/下着イノベーション/クレールフォンテーヌ原理主義/「冷え知らず」さんの悲劇/トラディショナル ウェザーウェアの傘/スーベニアフロムトーキョー!/すべての靴は不完全である/哀愁の水着デビュー/ちょっとだけ高い本/シャチハタっぽい口紅/CASIOのデジタル腕時計/GUCCIのスウィングレザートート/アントン・ヒュニスのピアスとネックレス/イヤァオ!!!/LITTLE SUNSHINEのタオル/捨ててるようで、捨ててない/白シャツという課題/人生初、アートを買うの巻/ちっちゃい動物コーナー/現代人とユニクロ/「来年の手帳」問題/4Kテレビという暴走/ファッション自分探し/サイズ選び失敗譚/懺悔~試される買い方~/これがほんとの大人買い/マイ・ファースト・アウトレット/猫>アンチエイジング/クリスチャン・ルブタン!/要予約クッキー/きものとわたし/趣味としてのお手入れ/高級バター&バターケース/マイ・ヴィンテージ/完璧な加湿器/ネットで出会いました!/ボタンに魅せられて…/ついに指輪を/お花作戦~雑貨病の克服~/クレジットカード論/ます寿司の…ピアス!/本のバカ買い/オーガニックじゃないとダメなの!/映画の見方/ジーパンの更新/自分だけの部屋/ネイルしない派/モードオフで服を売ること/「ご自由にお持ちください」/ルンバかドラム式か…/温素and more!/馬位草スリッパ/風が吹けば桶屋が儲かる/レインファブスブスの長靴/ハウスオブローゼとは何か/ルンバ愛してる/コーヒーと昭和とわたし/ホテルオークラ礼賛/リトルブラックドレス

2016/05/18

さよなら、シリアルキラー

kindle版
■バリー・ライガ 翻訳:満園真木
Amazonの5/13日替わりセールで¥599だったので購入して数日ほっぽってあったのを読んでみたけどうーん、昔はこういうサイコキラー系のミステリー嫌いじゃなかったんだけどな~なんか今だけなのか、以降はもうダメなのか、それかこの話に限ってなのかよくわからないけど要は肌に合わなかった。
半分までは真面目に読んだ(kindle版なので53%とわかる)。それ以降は話のスジだけを追う感じの、流し読みで読了。

なお、本作は三部作の第1作目であり、この本だけですべての謎が解けるわけではない。というか、三部作全体に影響を与えるであろう大きな出来事が発生するがそれについてはまさに「発生する」だけであり、「展開」を知りたければ第2作、第3作を読まないといけない。
一応、第1作のメインとなっている殺人事件の犯人はこの本の中で捕まるけど、どうやら黒幕がいる…というところまでしか書かれないのでそれも知りたければ(以下略)。

本シリーズはアメリカではYA(ヤング・アダルト)扱いで、つまり十代向けの小説らしい。まあ、第1作の主人公は17歳の高校生男子だしね。だけど猟奇殺人起こるし、そもそも主人公の父親が124人殺して刑務所に服役中(なんと死刑廃止の州でもないのになぜか終身刑だそうだ。なんで!?)。
いや、いままで猟奇殺人犯人が出てくる小説はいくつか読んだけど、この小説が胸糞悪いのはこのキチガイ連続殺人鬼の父親がまだ10歳未満だった息子に殺人についてのレクチャーをしていたことで、だから主人公は父親が逮捕された13歳時点で既にいろんな知識や死体や殺人関係のあれやこれやを見たり触ったり手伝わさせられ、彼の中の思考もかなり洗脳されていたということだ。おまけに彼の母親は彼が8歳の時突然姿を消したのだが父親が殺したと主人公は悟っている。それどころか、思い出せないが繰り返し見る悪夢や記憶の断片から母親を殺したのは自分ではなかったのかと苦しんでいる…。

第1作で起こる連続殺人の犯人は早い段階から「ものまね師」として彼視点で書かれる章がときどき出てくる。気持ち悪い。模倣犯ってなんでこんなに気持ち悪いんだろう。オリジナルの犯人も恐ろしいが模倣犯はそれに加えてなんか無性に腹立たしい。オリジナルにのっかっているその根性が卑しさを感じさせるからかなあ。虎の威を借る狐的な。独善的だし。まあそれはオリジナルもなんだけど。

この小説を読んで、まず主人公の思考回路が異常で(常に人をどう殺すかとかばかり教えられて育ったので「この距離に立ったら殺せるな」とかずっと考えているし、周囲の大人だけではなく友達や彼女にまで演技をして自分の思い通りに話をすすめようとひとを騙す)、どうにも共感も同情も出来ず、不愉快だった。どうやら見目は良いらしく、笑顔を浮かべれば大抵の大人は騙されるんだそうだ。うーん。
あとキスシーンが何回も出てくるんだけど、それはまあいいんだけど、その描写が「これが子ども向け?」って眉をひそめたくなるねちっこい描写でまるで色欲のために親父が書いてるみたいな気持ち悪さ。フレンチ・キスなのをどうこう言ってるんじゃないよ。書き方とか、そのときの心理描写とかが。女の子はどうか知らないけど主人公が全然彼女への愛情(好きだなあとかかわいいなあとか放したくないとか切ないとか)を伴わないで頭の中で殺人の事とかを思い出しながら機械的にでもねちっこいのをしてる、それもほぼ毎回、ってのがなんだかなあ。それくらいならもっと「男子高校生の性欲はんぱねえ!」ってそっちの方向で書いてくれたほうがまだしも素直でしょうに。

あとこれは翻訳だけの問題なんだけど17歳の男子高校生である主人公がいつでも、親友との気の置けない会話のなかでも常に一人称「ぼく」なのが違和感ありまくり。連続殺人鬼の息子だけどこの主人公は傷つきやすいナイーブな少年なんですよ、という意図なんだろうけど…友達との会話でも「おれ」じゃなくて「ぼく」を使う高校生男子というキャラと、実際に小説で書かれている内面描写が釣り合っていないような気がするのはわたしだけだろうか。

第1作だけのミステリーとしての出来は「うーん」という感じ。小説としては「連続殺人鬼の十代の息子が主人公」というセンセーショナルな設定が面白い。「青春小説らしく主人公があれこれ葛藤しながらいろんな問題に向かっていく」というベタな話だけど、設定が変わっているから。
他の人の感想を散見するに、三部作通しての主人公はこの話の高校生ではなくその連続殺人鬼である父親なんだそうだ。うーん。それならそうと最初っからそういう方向で書けば良かったのにね、ってそれじゃあ既存の作品と差別化できないかー。
まあわたしに限っては本作だけで終了としておきたい。


2016/05/16

普通のダンナがなぜ見つからない?

普通のダンナがなぜ見つからない?
西口 敦
文藝春秋
売り上げランキング: 6,302
kindle版
■西口敦
kindleの本日の日替わりセールで¥299と安く、タイトルが面白そうだったので読んでみた。
今年は「小説だけにこだわらず、いままで手を出さなかった実用書もkindleで安かったら積極的に読んでいこう!」という私的キャンペーン中ということもある。
わかりやすい内容で、好奇心を適度にあおってくれて、キャッチ―だし、「実際の例」もちょこちょこ挟んであるので週刊誌的な興味で読んじゃう。

ふだん自分が読んでいる小説やエッセイではされないような語彙(なんで日本語で言わないでわざわざカタカナで言うのかな~)が散見されて、そういう意味でも面白かった。こういうのをデキるエグゼクティブ的言葉づかいといふのだらうか。

たとえば「事実」って言わないで「ファクト」って言う。
ネットでググったらこの方の対談記事というか取材を受けた記事が上がっていて、話し言葉なんだけどそこでも「ファクト」って言ってらして、だからこのかたの頭の中ではそういう言語体系になってるんだなーとか思った。そのわりに日本語の変な言い回しとか若者言葉とかも出てきてレベルがよくわからん。

あ、内容ですか。
内容は、大手結婚相談所オーネットのステマです(爆)。
いやいちがいにそうとも言えないけど。でもオーネットの宣伝部長が書いた本で、文中、特に後半何回「オーネット」って出てきたかな~ってくらいよく出てくるし、だいたい本の内容自体が「結婚至上主義」というか「結婚してあたりまえ」というか「結婚するためにはどうしたらいいか」という主旨なので。

結婚しない人生も全然ありだし、結婚でそのひとの幸不幸が決まるわけでもないし、――という視点はこの本にはありません。
まあ「結婚を商売にしている」ひとが書いた本ですから。「結婚」を否定するわけがないという。
「婚活」については、かつて独身時代のある一定期間そういうブログとかを結構読んでいた時期があったんだけど、そういうところで書かれていることと比べて特に真新しいことが書いてあるとは思わなかった。本書は2011年の5月に出版されたもので、中に出てくる統計とかは2005年とかのが使われていて、最新版ではない。

この本は結婚したいけど出来ないという女性に向けて書かれていて、すんごくざっくりまとめると「あなたが結婚できないのはいろいろ現実的でない条件を並べているからですよ。あと決断力なさすぎじゃないですか?」という感じ。いろいろ具体的に数字やグラフを駆使してあるので一見説得力があるようで、冷静に考え直すとちょっと「?」と思う点がないこともない…。
この本を読んでいると結婚てそんなに難しいのか、そんなに自分の希望が通らないものなのか、と絶望してしまうかもしれないけど、逆に言うとこれほど「ケース・バイ・ケース」なジャンルも無いわけであって。

プロフィールを見ると1968年生まれ。東京大学法学部卒業。金融業界(長銀、AMEX、UBS)、外資系コンサルティング(A.T.カーニー、BCG)を経て、楽天グループの結婚情報サービス大手であるオーネットにて、マーケ・広報の責任部長をつとめた、という経歴。
あとがきなどで妻と子があり円満家庭であることもしっかりアピールしている。

2016/05/15

女王陛下の阿房船

女王陛下の阿房船 (講談社文庫)
講談社 (2013-05-31)
売り上げランキング: 46,785
kindle版
■阿川弘之
1990年2月に刊行された作品に単行本未収録の「ガダルカナルさよなら航海記」を所収し、1995年7月講談社文庫版として刊行されたものの電子書籍版。
船マニアの阿川さんが豪華客船に乗ってその様子を書いた随筆集。旅の同行者がどくとるマンボウこと北杜夫、狐狸庵先生こと遠藤周作、平岩弓枝、獅子文六未亡人の幸子さん…というミーハー心をくすぐるラインナップ。遠藤周作が北杜夫のエッセイに登場するときよりも随分下品で我儘放題の自由ぶりでちょっと意外だった。これは、北先生が皆に口をそろえていわれる「育ちの良さ」でもって描いていたからというのが大きいのかな。あと、年齢を調べたら遠藤周作は阿川弘之の3つ下なだけだからほぼ同等の友人という感じというのもあったのかも。会話を読んでいるとともに55を越えたいい歳のオヤジなんだけど旧制高校のバンカラ学生の悪ガキの会話みたいなくだらなさで絶えず口げんか?軽口のたたきあい?をしている。この本に登場するときの北杜夫は鬱のときだったので常にテンションが低くつらそうなのが残念。

初出とざっくり感想。
南蛮阿房航路「小説現代」1976年4月号
1920年12月生まれの阿川氏55歳くらいのときのエッセイということになる。
冒頭、柳原良平氏が大阪商船三井船舶から表彰されるのに祝辞をするところからはじまるのだがこれがおかしくって笑わずにはいられないとってもユーモアにあふれたスピーチで面白い。
柳原良平って誰だっけ、とググったらアンクルトリスの絵を描いたひとだった。わお。
獅子文六未亡人の幸子夫人はお嬢様育ちのおっとりしたかたで、クイーンエリザベス2に乗りたいとおっしゃる。それとは別に、阿川夫婦はホランド・アメリカ・ライン「ロッテルダム」でハワイまで行く予定を立てていた。
どうも阿川氏はQE2はあまりお好きでないらしい。乗り物での食事に大変関心があり、イギリスの船の食事の不味さもその理由のひとつということだ。
なんのかんの経緯があって、平岩弓枝夫妻と同行することになる。
こういう船では食事の際に「正装」をしなくてはいけないからタキシードとかそれに合わせた靴とかお衣裳代だけで馬鹿にならない模様。
船上で行われたマスカラード・ナイトに出し物をやったエピソードなど、大変愉快。

女王陛下の阿房船「小説現代」1978年11月号
鬱のまんぼう北杜夫がご母堂(つまりあの斎藤茂吉夫人ということだ)とクイーンエリザベス2に乗るから阿川さんご一緒しませんかと話を持ってきて、獅子文六未亡人の幸子さんと平岩弓枝夫妻とを誘い合わせて「平均年齢58歳の6人組」で横浜~ハワイまで豪華客船の旅をした話。漫才かコントかという会話続出で大変面白い。

なつかしの大連航路「小説現代」1979年8月号
QE2は気に入らないけれど「そこに幾つか事情があって、香港から再度の乗船を」することになった。「今回の連れは旧知の狐狸庵遠藤周作、一つ問題なのは、経費節約上九日間にわたって船室が一緒になることであった。」ということで、上記したように関西弁の遠藤周作と阿川弘之のいささかガラの良くない会話がこれでもかと出てくる。まあ、一緒の船室で旅をしようというんだから結局かなりの仲良しさんということなんだけどね。
何故一緒の船旅をすることになったかというと、今回QE2が大連に行くというので、小学5年まで大連で育った遠藤と戦前夏休みの度に大連に過ごした阿川は是非行きたい、となったと。香港で乗船し、40年来の大連を訪れて鹿児島経由横浜へ帰る、という旅程。

・皇家之星(ロイヤル・ヴァイキング・スター)号チャイナ・クルーズ「旅」1987年5月号
神戸から乗船、北京、大連、香港めぐりのチャイナ・オリエント・クルーズ。
乗客750余人のうち日本人はたったの7人で残りは全部アメリカ人。阿川先生は身内をつれての旅行(中婆さん二人、大婆さん一人と書いてあるがこれは先生ならではの悪ぶった表現)。日本、韓国、中国についての当時の感想などが書き込まれている。一部の白人の視線から感じる人種、民族、国家、国々の歴史と戦争にまつわる偏見憎悪についても。

鯨の処女航海「小説現代」1989年7,8月号
シドニーから香港まで「ロイヤリ・ヴァイキング・サン」に乗船。アメリカ人の乗船予約でいっぱいになっていたところへ一応キャンセル待ちで申し込んでいたらその1つだけが空いたので日本から飛行機でオーストラリアに急遽飛んで、そこから乗船するというまさに「船に乗るために」な旅。21日間かけて香港まで乗るのは周りの日本人からは「結構な御身分」と言われるが、乗船している外国人からは「何故香港までたったの二十一日間で下船するのですか」。皆、出発地のサンフランシスコから乗船しオーストラリア、香港と経てフォート・ローダーディルまで百日間の世界一周航海だからだそうだ。優雅だなあ。年配の、寡婦が多い模様。
タイトルの「鯨」というのは本物の鯨のことではなくて、「八月の鯨」という映画から取っていて、79歳と91歳の「頑迷、孤独、物忘れ、ぼけと猜疑心の老年物語」を描いてあるらしい。つまり乗客が鯨ならぬ老人ばかりだと云いたいらしい。「自分ら自身、鯨の一族であることは、つい失念していた」とは、食事のテーブル番号を読み間違えていたことをなかなか認められなかったあとに書いてある。
船中で永井荷風の『摘録断腸亭日乗』(岩波文庫)を読んでその内容についてあれこれ思いめぐらしたりするところが珍しく書いてあって興味深い。
グレート・バリア・リーフのところ、面白そうだなあ。
この回の途中で昭和天皇崩御について触れる箇所も心情が書きこまれている。

・ガダルカナルさよなら航海記「小説現代」1993年10月号
北杜夫夫妻との旅。「フロンティア・スピリット」号。ニューギニアのポート・モレスビーに始まって、ガダルカナル島のホニアラで終わるクルーズ。
北さんの著作でもおなじみの夫人・喜美子さんだけど、夫が妻を書くのはある程度制限がある。今回の様に阿川さんの視点で書かれている喜美子夫人像が興味深かった。どうもよく喋り、健啖家で、社交的なお方のようだ。

というわけで、掲載年に17年も開きがある。よく1冊にまとめたなあ。
面白さは、最初の2つがダントツで文句なしに笑えた。「鯨」もいろいろ書き込みがあって面白かった。

「あとがき」は文庫版に寄せて後日談的な内容。この時点も「洋上にて」なのが流石だ。

2016/05/12

お早く御乗車ねがいます

お早く御乗車ねがいます (2011-09-22T00:00:00.000)
阿川 弘之
中央公論新社 (2011-09-22)
売り上げランキング: 223,572
kindle版
■阿川弘之
阿川弘之という名前を知ったのはハイティーン時代に特に親しんだ北杜夫や遠藤周作のエッセイでだったと思うが、その作風が北杜夫や遠藤周作に比べてとっつきにくいようなイメージがあり、ほとんどきちんと読んだことはないままここまで来てしまっている。いまや世間では「阿川佐和子さんの御尊父」といったほうが通りがいいのかな。そんなこと云ったら叱られそうだけど。阿川佐和子のエッセイなんかで出てくる阿川弘之という像はユーモアを解すけどとりあえず「昔ながらの頑固な雷親父」って感じだし。

さて本書は中央公論社から1958(昭和34)年に上梓された単行本が2011年にして初の文庫化だったらしいのだが(中公文庫)、その電子書籍版である(当時はまだ中央公論新社ではない)。
阿川弘之といえば戦争中は海軍だったし、船好き、鉄道好きで有名だ。そのエッセイということで面白そうだなと(わたしは鉄道マニアではないが、珍しい電車をみたら写真を撮りたくなる程度には好きである。また、マニアのひとが書いた作品を読むのも好きだからである)。
目次は時系列順にはなっていないが、だいたい昭和28年~昭和33年くらいに雑誌「旅」はじめ、あちこちの媒体に書かれたものをまとめたものらしい。「あとがき」に【この本は、中央公論社出版部の宮脇俊三さんという、奇特な汽車気違いのお蔭で陽の目を見ることになったので、】と書いてある。宮脇俊三といえばやはり鉄道マニアとして有名だ。北杜夫さんの編集者で確か北さんの隣の家に住んでいて、しょっちゅうエッセイに登場していたっけ。

また作家で鉄ちゃんといえば内田百閒だが、本書では内田百閒先生のことに触れたり、百閒先生とニアミス(とは違うが上りと下りで…)したりしたというエッセイもあり、ニヤリとしてしまう。ちなみに阿川弘之は1920(大正9)年生まれ、内田百閒は1889(明治22)年生まれなのでざっくり30歳ほどの年齢差。本書の文章が書かれた1955(昭和30)年前後は阿川弘之35歳くらい。
頑固親父のイメージだが、この文章書いているときはまだ30代だったのだ。若いお父さんだ。文中には奥さんと幼いお子さんを抱えてあわてて船や電車に飛び乗るシーンが出てきたりするがそのお子さんが佐和子さんなわけだなあ。

目次
特急「かもめ」/ 時刻表を読む楽しみ/ 僕は特急の機関士/ 僕は鈍行の機関士/ にせ車掌の記/ 駅弁と食堂車/ ビジネス特急の走る日―架空車内アナウンス/ 日米汽車くらべ/ アメリカとヨーロッパの列車/ 汽車のアルバム/船旅のおすすめ/瀬戸内海縦断の旅/可部線の思い出/温泉の楽しみ方/鳴子から秋田へ―みちのくの風物詩/東京都内の峠ドライブ/鉄道研修会/観光バスに望むもの/埃の日本・騒音の日本/あとがき

本書は日本の鉄道だけではなく、アメリカやヨーロッパの鉄道、また船やバスの事も出てくるが、割合としては機関車、汽車のことが多い。

「こだま」というと新幹線の名前と思っていたので昭和32年10月発表の「ビジネス特急の走る日」に東京駅発大阪行きの「特別急行こだま」が出てきたのはどういうことかと思ってウィキペディアで「こだま(列車)の項目を見たらこういうことだった。
「こだま」の名称は、1958年(昭和33年)、東京 - 大阪間の日帰り可能な電車による「ビジネス特急」新設にあたって、最終的には国鉄末期まで広く使われたJNRマークやアルファベットの「T」をモチーフとした特急エンブレムが採用されたシンボルマークとともに、一般公募によって決められたものである。東海道新幹線開業に伴う東京駅 - 大阪駅間在来線特急の廃止により、在来線特急としての「こだま」は1964年9月30日に廃止され、翌日10月1日から新幹線の列車名として使用されている。
なるほどねえ~、面白いなあ。

阿川先生は駅のアナウンスが何度もおなじことを延々いうのとかがうるさくてしょうがなかったらしく、何回もそのことを書いておられる。そういえば昔『うるさい日本の私』という本(中島義道)でおんなじようなことを書いていたひとがいたが阿川先生昭和30年からおっしゃってたのか。ていうか、そのときから言ってるのに全然改善されないどころか悪化しているような気が。

ちなみに『うるさい日本の私』初読みはいつか不明だが2004年3月22日のホームページ掲載用の日記に再読時の感想が残っていたのでここに引っ張り上げて置く。関係ない記述もあるけどまあ日記なのでまるごと。

2004年3月22日(月)
◆昨日朝テレビの報道で知ってかなり衝撃を受けたのだが、いかりや長介さんが亡くなられた。ドラマを観ない人間なので最近のご活躍は風の噂でしか存じ上げなかったが、小学校の頃はドリフに愉しませてもらった世代である。ジャンケンをするとき、「♪最初はグー、またまたグー、」と歌わずにはおれなかった世代である。残念だ。非常に残念だ。謹んで、御冥福をお祈りしたい。
◆お風呂が沸くのを待ちつつ中島義道『うるさい日本の私』(新潮文庫)を本棚から引っ張り出して久々に再読。しかし読んでいて心が和やかになるのと全く反対の本なので(だって著者が日本の煩わしいスピーカー反乱に抗議しまくった実「戦」録だもん。以前読んだときはどう思ったのか忘れたけど、まあ確かに面白いんだけど、それにしても改めて読むとこの著者ってかなり迷惑な存在である。騒音云々はその通りかもしれんが「和をもって尊しと為す」の精神知ってるか?と言いたくなる。大学教授なんて職業だから成立するんだ。サラリーマンだったら3日でクビだー)、風呂読書には不向きと判断し、南伸坊『シンボーの常識』(朝日文庫)を本棚から引っ張り出してきて風呂場へ(これも久々)。両者の生き様のあまりのギャップに「ああ、私はミナミシンボーのようでありたい」としみじみ思う。共にそぞろ読み程度。



うるさい日本の私 (新潮文庫)
中島 義道
新潮社
売り上げランキング: 183,118

シンボーの常識 (朝日文庫)
南 伸坊
朝日新聞社
売り上げランキング: 900,010

2016/05/10

猫が死体を連れてきた

猫が死体を連れてきた ピーター・シャンディ教授シリーズ (創元推理文庫)
東京創元社 (2016-04-28)
売り上げランキング: 6,116
kindle版
■シャーロット・マクラウド 翻訳:高田惠子
ピーター・シャンディ教授シリーズ第4弾。
家政婦ローマックス夫人は飼い猫がカツラをくわえているのを見つけて取り上げ、持ち主に返そうと部屋に行ってみたがどうやら昨晩から帰ってきていないらしかった。不審に思った夫人が探しに行くと…。

架空の町、バラクラヴァでまたも殺人事件が起こってしまった。無難に済ませようとする無能な警察じゃ頼りにならないとあてにされたシャンディ教授。すっかり「探偵」としてみんなに認められているようだ。

今回読んでいて楽しかったのは今までステレオタイプに無能な「地元の警察」の代表であるような書かれ方をされていたオッターモールが序盤はともかく、途中からだんだん覚醒して有能ぶりを発揮していき、終盤ではすっかり素晴らしい警察署長となってシャンディに見直されていくという意外な展開。良い奥さんと家庭みたいだし、人柄も思っていたよりずっと良いし、あれ? 第3弾までってどんな書かれ方されてたっけかな? 
第4弾も最初の方はややこしい事件が起こって欲しくないからとわざと事件じゃなくて事故として処理しようとしたり、金メッキのボールペンを自慢したがったり(よくわからないけどそれってかなり高級なのかな?)、探偵小説にありがちな「ウザくてうすのろな署長」だっただけに、途中から「あれ?」「お?」ということになっていくのにびっくりした。

シャンディ教授は第2弾以降すっかり常識人だけど、50歳を越えているのにあいかわらず奥さんとラブラブで(まあまだ新婚さんだからか)、文化の違いもあるんだろうけど大学の食堂で熱烈なキスをしたりしている。わー日本じゃ考えられない。

このシリーズで一番ユニークなのはなんといっても学長のトールシェルド・スヴェンソンなんだけど、今回はちょっと彼に災難が降りかかる。よくこの学長をはめようなんて恐ろしいことを考えるなあ。まあ、全然負ける気しないから心配しなかったけど。
終盤にはトールシェルドと犯人のものすごいバトルシーンも展開されて、凄かった。ヘラジカの雄同士の闘いもかくや、って感じだ。

和訳タイトルに「猫」が入っているけれど話そのものに猫はそんなに出てこない、最初と最後に少しだけ。猫目当てで読んだら全然物足りないだろう。
そういえばエドモンドはなんでアングレー教授の部屋のミルクを飲まなかったのかな? 「犯人が家探しに来ちゃったから」ってことでいいのかな。最初のほうでやたら強調してるから「毒入りだから野生の勘で飲まなかったとか?」とか深読みしてしまった。
今回の事件の犯人はちょっとクリスティのあの名作の犯人トリックを思い出させた。大枠は同じだわね。いろいろ変えてあるけど。
「どうしてクラブに入るのがそんなに難しいか?」の理由を考えたらだいたい想像がつく謎解きだったけど、いろいろ枝葉があって頭のなかが結構混乱したのでまた落ち着いたらシリーズ第1作からゆったり再読したいものだ。ミステリーだけじゃない面白さを含んだシリーズだから再読の価値絶対あるはず。

解説の澤木喬というかた(調べたらいろいろ面白いひとだった。興味あるかたはウィキペディアをどうぞ。)がこのシリーズは動物のことは詳しく書いてあるのに植物のことは描写が足りない・少ないという意味のことを書いていらして「本当だ!」と目を見開かされた。シャンディ教授は植物とか専門っぽいのに(農業大学の応用土壌学教授だぞ。よくわからんが新種の蕪とか作った実績で有名らしい)。まあ、前回とか花の新種とか作って名前考えたりはしてたけど、たしかに日常目につく周囲の植物とかについてのモノローグとかほぼ無いもんな~。植物好きだったら空気吸う感じで植物のことに目が行くもんだけど、うーん。著者自身はあんまり植物に関心が無いのかなー。良い視点の解説だった。珍しくkindle版で省略されていなかったのが僥倖だ!!

旧版表紙はこんなのだったらしい↓猫がユーモラスたっぷりな表情してて面白い。でも何度もいうけど猫登場シーンが少なすぎるんだよ~! 

猫が死体を連れてきた (創元推理文庫)
高田 恵子 シャーロット・マクラウド
東京創元社
売り上げランキング: 223,921

2016/05/08

向田理髪店

向田理髪店
向田理髪店
posted with amazlet at 16.05.08
奥田 英朗
光文社
売り上げランキング: 632
■奥田英朗
これはkindle版も出ているけれど紙の本で持っていたかったので単行本で購入して読んだ。
奥田英朗の小説には犯罪を描いたものもあるけれど、家族や人間同士のつながりやあたたかい感情の交流を描いた作品群もあって、こちらはそれに該当する。
過疎化が進む田舎の村の理髪店が主な舞台の小説という設定を聞いただけで「好きな設定だ。ごはん5杯はいける」と頷いた。でも何故だろう。
田舎の理髪店の店主が主人公の小説でなにか具体的に良いのがあったっけか、と自分の記憶をたどるがぱっとは出てこない。じゃあなんでかな。そういえば山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』も読む前に設定だけで萌えて、実際に読んだらちょっと思ってたのとは違った、という記憶がある。
小説に出てくる理髪店店主で好き、となると――そうか、漱石だ。『草枕』だ。主人公が那古井の床屋で髭をあたってもらう床屋の亭主がイナセでちゃきちゃきの江戸っ子でユーモラスでしみじみとしたおかしみを感じて大好きなシーンのひとつなのである。だからかな?

この物語の舞台「苫沢町」は夕張市をモデルにしているようだ。北海道の中央部にあって、かつては炭鉱の町として栄えたが、いまは財政難により事実上破綻してしまっている。そのまんまだ。ただしこの小説にはメロンなどの特産物の話は出てこない。

短篇としても読めるだろうが、すべて苫沢町の話で、町で起こったこと、町民のことが書かれていて、主人公である向田理髪店の店主・向田康彦(53歳)の視点で書かれている長篇小説として味わいたい。というか、最初の1篇を読んだらすごく良くて、次も次もと続けて読んでしまって、あっというまだった。「奥田英朗で、こういう道具立てて、きっとハートフルなんだろう。泣かされるかもしれないけど、絶対巧いだろう。面白いに違いない」と期待を持って読んで、それを決して裏切らない、素晴らしさ。これは作家なら誰でも出来るってなもんじゃない。奥田英朗って天才だよなあ、凄いよなあ、エッセイではあんな「おっちゃん」やってるくせに本当になあ、どうなってんだよなあ、と感嘆のためいきをつくほかない。

財政破綻している町が舞台で、過疎化が進んでて、主人公の息子はいったん町から出て行ったのに就職して1年で戻ってくるし、町ではいろんな問題が出てくるし、自分たち夫婦だってこの先老いていったらどうなるか何もわからない――別に苫沢町に限らず、ひとはどんどん年を取るし、日本中が若者が減っていく一方だというのは同じだから他人事ではない。景気だってどこが良くなっているのか全然実感がわかない。

いったい奥田さんはこの小説の最後でこの町に対してどうするのかな、ハッピー・エンドになるのかな? と考えながら読んでいった。夕張市ってそういえば今どうなってんのかな?とかも考えたりした。

結論から云えば苫沢町も向田理髪店も別にどうという答えも出さないままに小説は終わるのであり、少し物足りないような気もしたが、まあそりゃそうだ、とすぐに思い直した。これは、そんな簡単に性急に状況が激変するような問題ではない。悪化もゆっくりだろうし、「解決」なんて本格ミステリー小説の事件じゃないんだから出てくるわけもない。何が正解かわからない、ひょっとしたら正解なんてないかもしれないから、ずっと問題で有り続けるのだ。

でも最後まで読み終わった時、「そうか、『小説』としてはこういうふうに締めるのか」と思って余白の白を眺めつつ、じんわりとあたたかい気持ちになれた。こういう気持ちを作ってくれたんだな、と奥田さんに謝意を感じた。
ちょっと良い風に書き過ぎだ、とか主人公が冷静で公平な性格過ぎて出来すぎだと思わないでもないが、つまり「そういうことなんだな」と。これはフィクションであり、ある種の夢と希望をくれるタイプの小説なんだから。暗い結末を書いて誰が喜ぶんだ。現状がせっぱつまっていることはみんなわかっている。そんな中でもとりあえず前を向いて、みんな助け合って、こんなに「誰かのためを思って」生きている町があるとしたらそれだけで宝だと思う。

わたしが育った町も田舎だったので町内の噂話などは子ども世代は無関心だが親世代は実によく知っている、という環境だったのでこの小説で書かれている「町中皆がお互いの生活状態を熟知している、なにかあったら数日で全員に知れ渡る」というような状況は容易に想像できる。正直良いことばかりとは思えない。むしろ息苦しさや疎ましさのほうを強く感じてしまう。この小説を読んで、そういう環境でずっと生活していって、年齢を重ねて行って、こういうふうにご近所のひとを何の迷いも無く助けられるひとというのは凄いなと尊敬の念しか湧いてこない。わたしには無理だ。どこまで踏み込んで良いのか、とかお節介じゃないかとか、プライバシーが、とかいろいろ考えすぎて身動きできない。というか、ある程度の規模の町や市になればふだん近所づきあいがまったく無いとかわりと日本中どこでもあるだろう。世代の問題なのかもしれないが。 どちらが「良い」ということでもないのだろう。どっちも良い面、悪い面併せ持っているのだろう。
何処に住むか、というのは「どういう生き方をするか」ということをある程度決められてしまうということなのかも知れない。

初出は「小説宝石
「向田理髪店」2013年4月号
「祭りのあと」2013年11月号
「中国からの花嫁」2014年7月号
「小さなスナック」2015年2月号
「赤い雪」2015年10月号
「逃亡者」2016年2月号

2016/05/05

オスカー・ワオの短く凄まじい人生

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)
ジュノ ディアス
新潮社
売り上げランキング: 133,467
■ジュノ・ディアス 翻訳:都甲幸治・久保尚美
紙の本。単行本。新潮クレスト・ブックスの1冊。
Amazonのオススメで本書訳者の方の対談集『読んで、訳して、語り合う。都甲幸治対談集』が上がってきて、対談相手に柴田(元幸)先生や岸本(佐知子)さんが入っていたので「都甲幸治(とこう・こうじ)って誰?」と思ってググったら本書が出てきて西(加奈子)さんが絶賛とか書いてあって、原書は英語とスペイン語(しかも俗語・方言)が混じっていて凄まじく訳しにくく、主人公はオタク青年でとにかく面白い小説だということなので読んでみた。こういうジャンル(近年流行のマジックリアリズム)はともすれば読んでも理解しにくかったり難解だったりすることもあるんだけどまあ久しぶりに流して読んだら読み込めないものを読んどかないと楽ばっかりしてるからなあ最近。

そういう小説だとは紹介されてあったが原注がかなり饒舌な小説で、まあしかしニコルソン・ベイカーに比べたら常識の範囲だ。
主人公はオタクだということだったが日本人が想定する典型的なオタクとはタイプが違っていてちょっと予想外(最後まで読んで「訳者あとがき」に目を通したら【日本のオタクと違うのは、二次元の女性に対する「萌え」感覚が皆無なことだ。】と書いてあり「まさに!」と膝を打った)。

最近通勤に単行本を持って行かないので家で休日にまとめて読んでしまおうと集中して臨んだ。昨日朝から読みはじめて休憩を入れつつ本日昼食後の読書で読了。
最初、この本の流れに乗れるまではどういう小説か、どこに力点を置いて読めばいいのか、見通しの利かなさに戸惑いつつ時間がかかる感じだった。第3章でオスカーとロラの母親であるベリ(イパティア・ベリシア・カブラル)の物語になったあたりからかなり慣れて読みやすくなっていった。全体の半分くらいまで読んだときに「ようやく半分か、長いなあ」と思ったが、その後、後半は加速度的に興味を引かれる展開目白押しでどんどん物語にノメり込んでいき、終盤は息を詰めるようにして「もうページがあまり残っていない、ということは、ということは」とハラハラしながら悲しみをこらえつつ。

単なる一人の青年の話ではなく、その家族の話や周辺の話も巻き込みつつ、根本的なところにあるのはドミニカの独裁政権下における非人間的な身の毛もよだつ恐ろしい環境。迷信的なことをほのめかしたりしてあるが、超常現象でも天災でもなんでもなく、ひとりの狂った権力者が国を牛耳っているときの、狂った世の中がベースにある、けどそこにまともに焦点を当てるんじゃなくて訳注でどんどこ話を盛り込みながらも主筋はあくまで「徹底的にモテない太ったオタク青年の、女性になんとか受け入れてもらおうとあがき続ける人生」というのが。
別に異性にモテなくても人生の楽しみや意義はそれだけじゃないしいろんな価値観や生き方があるよ、という「逃げ」が、少なくとも「逃げの論理」が現代日本にはある、と思うんだけど、ドミニカ系の(主人公のオスカーが住んでいるのはドミニカ共和国ではなくアメリカ)男というのはとにかく「女」がいてなんぼ、1人じゃなくて何人でも、やれるだけやってそれが普通、というような価値観らしい、少なくとも本書を読んだ限りでは。
オスカーはとにかくモテなくて、それどころか異性から嫌悪の目を向けられ同性からも馬鹿にされるような容姿で、だけどドミニカの男同様すごく女好きで惚れっぽくてきれいな女性にどんどんアタックしてフラれまくっている。

オタクと書いてあるが日本のオタクのように美少女アニメとかギャルゲーとかをするわけではないようで、というか「訳者あとがき」にあるように二次元のキャラクターに愛着を示すということはまったく無い。だから出てくる作品も「AKIRA」とかSF映画とかRPGゲームとかそんなのだ。具体的に作品名がいくつか出てくるが訳者注などから推察するにごく健全な感じで、少なくとも性的な面をそちらで誤魔化すとかいう雰囲気ではない(有名どころでは『指輪物語』『ナルニア国物語』なんてのも。SFやファンタジー、ゲームなどサブカルに詳しい方は全部わかってニヤリっとしながら読めるんだろうなあ)。オスカーの恋愛はあくまでも現実の女性に限られるのだ。現実の女性にフラれるから二次元に逃げるとかじゃなくて、SFとかアニメとかが好き、というのと現実の女性に対する欲求が全然別の事として平行してオスカーの中にはある。そうなのかあ、とちょっと意外に思った。でもモテるために趣味を止めるとか、やせるとか、そういう方面の努力はからきしなんだけどね…。自分の好きなSFとかアニメの話を好きな相手に一方的にガンガンやるのってそれってモテるとかモテない以前の問題のような気が…だいぶ変なひとだよなあ。

タイトルが「短く凄まじい人生」だし語り手(おれ)が示唆していたからこの物語の最後にオスカーは何らかの形で死んでしまうんだろうなとは思っていたけれど、こういうふうだとは思っていなかった。途中でオスカーが飛び降り自殺を図るんだけど、まあそういうふうにして「今度は成功しちまったんだよ…」というふうにして死んでしまうんだと思っていた。だからこんなにも文字通り暴力的な死、しかもそうなることは予期できたのに、逃げることは出来たのに、わざわざ自分から舞い戻ってまで、そうまでして。
正直そこまで彼をそうさせるほどの魅力が彼女にあったとは読んでいる限り到底理解出来なかったんだけど。

オスカーの事が読んでいくうちにとても好きになっていたから(人間的に、友情的に)、とても悲しかった。ばかなことを、という思い。でも、そういうひたむきな純粋なまっすぐさを最後まで失わなかったからこそオスカーの事が好きなんだとも思う。
最後の最後でオスカーが得たもの、そのことについて書かれた感想が、とても胸を打った。「素晴らしい!」の連呼で、オスカーの無邪気な喜びが伝わってきて、本当に良かったね、オスカーって思った。

まさかこういう話だったとはなあ。読みはじめた時も、真ん中ぐらい読んでる時も、全然予想していなかったよ。確かに面白かった。最後はかなり感動した。感動できるなんて全然期待していなかったのでびっくりした。
なお、翻訳の都甲幸治さんは柴田先生のゼミ出身。

ちょっとびっくりしたことは本書は第3部まであるんだけど、部ごとに章立てがリセットされないんだね。イントロがあって第一部になって第1章~第4章とあって第二部にまたそのイントロ?みたいなのがあって第5章~第6章が始まる。第三部またイントロがあって第7章、第8章は短い。とても。そして謝辞を読者はなかば呆然としながら読み進むことになるだろう。
あともうひとつちょっとびっくりしたことは、語り手の「おれ」はあくまで引っ込んだ存在なんだけどオスカーの友人でありオスカーの姉と恋愛関係になったりする、んだけど公然と浮気を繰り返したりして典型的なドミニカ男という役回りなんだろうけど「語り手」ってだいたい常識的な良いひと、という固定概念からは考えにくいキャラクターだった。まあかの国では標準型なのかねえ。

2016/05/03

追悼 吉野朔美さん 続き

月下の一群 (ぶーけコミックス)
吉野 朔実
集英社
売り上げランキング: 53,888


   この人の絵は私の理想である。
   あの丸ペンの、繊細で美しいまつげ、
   透明感のある瞳、 
   美しい横顔、
   たおやかな女、
   知的な男、
   咲き誇る花、
   木の香りのしそうな家屋。
   どれもこれもが、理想的だ。
   すばらしい。
   ストーリーのミステリアスな展開も、
   絶妙のプロットも、
   心のひだに染み込むようなネームも、
    ……ああでもやっぱりこの絵でなければならないのだ。

   初めて読んだのは
   友人に借りた『いたいけな瞳』だった。
   はっきり言ってこのタイトルはいかがなものか。
   なんかとてつもなく女々しい、媚びを売るかのような
   タイトルで、その印象は正直よろしくなかった。
   が、中身を読んでハマる。

   第1話から、そのコピーのうまさに、
   理想的な絵の美しさに、
   私は虜になった。

   しかしこのぶ~けワイドコミックスというのは
   その当時で既にマイナで
   田舎に住んでいた私には
   入手困難だったこともあり、
   このときはまだ
   借りて読むだけのつきあいであった。

   その数年後、
   購読をはじめた「本の雑誌」で
   偶然にも読書エッセイを吉野さんが描いておられ、
   吉野ワールドに再会。

   いてもたってもいられなくなり、
   当時既に入手が難しかった『いたいけな瞳』をはじめ、
   コミックスを揃えるべく本屋を走りまくる。
   どちらかというと初期のは恋愛色が強く、
   主人公の少女がモテる、というパターンが多いのに対し、
   後期になればなるほど
   ひとひねりした独特の世界になっている。
   後になればなるほど良いというわけでは決してない。
   もう最高峰は極めてしまったのか?


2001年6月に書いた文章【吉野朔実を熱くカタル】を再掲載いたしました。
デビュー作などは読んだことがないので、全集などですべての作品を読めるようにしていただけたらなあと熱く希望するものでございます。
漫画だけではなく『こんな映画が、』などの文章も視点が良いから映画を観る習慣が無くても面白く読めた…。

本当に素晴らしい作家さんでした。
どうもありがとうございました。



こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド
吉野 朔実
PARCO出版
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HAPPY AGE 1 (ぶーけコミックス)
吉野 朔実
集英社
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天使の声 (愛蔵版コミックス)
吉野 朔実
集英社
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食べる私

食べる私
食べる私
posted with amazlet at 16.05.01
平松 洋子
文藝春秋
売り上げランキング: 11,442
■平松洋子
これは紙の本。単行本。新刊。
初出「オール讀物」連載の「この人のいまの味」2011年10月号~2015年9月号

本書は「平松洋子の著作」ではあるけれど、いつものエッセイではない。各界のいろんなひとに「食」をテーマに平松さんがインタビューし、それを活字にしたもの、活字に出てくるのは毎回聞き手である平松さんと相手の2人なのだが、「対談」形式ではない。平松さんはあくまでインタビュアー、質問する側というスタンスを貫いておられる。出版社の本書の紹介文には「対話」という言葉がセレクトされている。

最初にデーブ・スペクターさんのを読み、こんなに食べるときに時間効率を気にするひともいるんだなあと驚いた。次に、気になる人・関心のある人のを読んだ。
最後に知らない人や関心の薄い人のを読もうとしたが、最後まで読めるひともいれば、途中でつまらなくて読むのをやめてしまうひとのもあった。
このインタビューは「食」をテーマにその対象者の「人となり」みたいなのに迫っていく、平松さんが選んだ29人のそういう「結晶」を集めて本にすることで何か見えてくるものがあるとかそういう企画なのかな――と思う。

大人になってからの食生活、子どもの頃の食生活。母親の料理。その影響。どういうことを大切にしているか。ふだんどういうことを考えているか――。
「人となり」にこちらが関心がなくて内容的に最初の数ページを読んで興味が引かれないとどうにもならない、というのはあった。平松洋子という聞き手のファンだけど、今回黒子に徹してらっしゃるので。

唯一、他の項とスタンスが違って著者の感情が強く出た書き方をされているのは宇能鴻一郎の回(この回だけ2011年掲載で、初回で、少し離れている。このひとだけ【「官能のモーツアルトと呼ばれたい」宇能鴻一郎と会って】というタイトルになっているし。連載が始まる前の、単発だったのかなあ)。宇能鴻一郎の作品を読んだことはないんだけれど、官能小説を主に書く方で、平松さんのお好きな「濃厚水気色気たっぷり」な作家さんのようだ。ご自宅もびっくりだがご本人登場シーンで燕尾服姿とかもう劇的過ぎるなあ。非日常。

デーブ・スペクターさんはご飯はあくまで栄養を取れればいいというタイプで、出汁とか鍋とかもばっさばっさ切り捨てていってあんまりにも極端なので逆に気持ちいい(でも一緒に生活は出来ないなー)。
ギャル曽根さんの「食べ方をきれいに」というのと「余計なものを摂らせない」という食事管理を尊敬。
松井今朝子さんのキューピー・クッキング中心の食生活に、その徹底ぶりに驚愕。
安藤優子さんの週末常備菜つくりはそのまま真似したい感じ。
ジェーン・スーさんは「らしいなあ」。
堀江貴文さんはさすが常に「時の人」だなあ。
大宮エリーさんについては以前から興味があったのでここでその人となりに少し触れることが出来てやっぱり面白いなあと思った。

登場する29名のリスト章ごとに(目次になっている)。
最後まで読んで面白いとか衝撃を受けたとかプラスマイナス含めてなんらかがあったひとに◎。特に印象に残ったひとに★。
髙橋大輔さんはフィギュア・スケートの方ではなく同姓同名の別人で、冒険家の髙橋大輔さんだった。
それぞれの項に簡単なプロフィールとモノクロ写真が載っている(宇能鴻一郎は写真を載せない方針の方だそうで、なし)。
最後に「食べる私――あとがきに代えて」というまとめ的な一文がある。

「食」について面白いと思った人もいれば、個性的なキャラクター、生き方に興味を引かれたひとなど様々だったが、どうも「平松洋子の著作を読んだ」というよりはワイドショー的な、ミーハー心で読んでしまった感も強くて(だって有名人ばっかりだし)、まあたまにはこういうのもいいけど、という感じだった。

第一章
デーブ・スペクター◎★/林家正蔵◎/ハルノ宵子/黒田征太郎/ヤン・ヨンヒ◎/伊藤比呂美
第二章
ギャル曽根◎/美木良介◎/土井善晴◎/辻芳樹◎/松井今朝子◎★
第三章
安藤優子◎★/ジェーン・スー◎★/渡部建◎/光浦靖子◎/堀江貴文◎★/大宮エリー◎★
第四章
高橋尚子◎/吉田秀彦
第五章
田部井淳子/山崎直子◎/畑正憲◎
第六章
小泉武夫/服部文祥/宇能鴻一郎◎/篠田桃紅◎/金子兜太/樹木希林◎

2016/05/02

追悼 吉野朔実さん…!

いたいけな瞳 1 (ぶーけコミックスワイド版)
吉野 朔実
集英社
売り上げランキング: 23,391

4月20日に病気のために亡くなられた、という記事を本日インターネットで見て愕然。

えーっっっ。

嫌だ、そんなの!

早すぎる!

うそでしょう…。

この方の描かれる作品が好きというところから入りましたが、
この方が紹介される小説などが面白くて…センスがカッコ良くて…。



残念すぎます…



謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます…。


少年は荒野をめざす 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
集英社 (2015-10-01)
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Eccentrics 1 (ぶーけコミックスワイド版)
吉野 朔実
集英社
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お父さんは時代小説が大好き―吉野朔実劇場
吉野 朔実
本の雑誌社
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少女パレアナ (角川文庫クラシックス)
エレナ・ポーター
角川書店
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