2016/02/12

北村薫『六の宮の姫君』、芥川龍之介「六の宮の姫君」「文放古」「往生絵巻」、菊池寛「身投げ救助業」「頸縊り上人」

六の宮の姫君 (創元推理文庫)
北村 薫
東京創元社
売り上げランキング: 20,441
■北村薫
というわけでディネセンの短篇集はいったん中断し気になってしまうのでやはりこちらを先に読んでしまったというかちょっと読みはじめたら面白すぎてやめられなくなったというか。再々読なんだけど何回読んでも、良いなあ。

以下、この感想では北村薫『六の宮の姫君』の内容に触れています。
謎解き、ミステリーのネタバレをしています。

未読の方はお読みにならないようご注意ください。



感想は前回とかにも書いたけど、今回の眼目は北村薫の「私と円紫師匠」というよりはひたすら「六の宮の姫君」の解釈について。で、さっそくエピグラフでつかまる。え…っと、この芥川の「文放古」ってどんなんだっけ?
こういうときに便利なのがkindleなのである テッテレー♪
さっそく検索&購入で即読み。ふーん、こういう内容か。なんか、昨日ふれた山岸涼子の解釈ってこれに近い感じだよなあ。

この調子で読み進み、文中に出てきた芥川「往生絵巻」、菊池寛「身投げ救助業」はkindleでダウンロードして読みつつ。菊池寛「頸縊り上人」は何故かkindleに無く、青空文庫で無いのはもちろん有料版にも無いっぽい。と思って『六の宮の姫君』を読了してからネットで検索してたら何故か「四国の山なみ」様のページの中にありました。感謝。

今回『六の宮の姫君』を読んですっごく強く思ったのは、
「芥川~~~!!!!!」
という熱烈な愛情というか、なんというか、求めたくなるもの。生きていてほしかったというのとも少し違う。でも、読んでいると芥川が愛おしくて大好きでかわいそうで気の毒で、たまらなかった、ああ芥川、こんちくしょー!
これだけの気持ちにさせる小説をものした北村薫はどんだけ芥川好きか、言うまでもなかろう。
近著『太宰治の辞書』を読んだときの違和感の正体はこれだったんだ。この、芥川への溢れんばかりの愛情と熱情が、太宰へのそれとは桁が違い過ぎたんだろう。

北村薫『六の宮の姫君』は、芥川龍之介と菊池寛の実際の友情を、そして文学上の交流(キャッチボール)を順を追って解き明かしていった、文学ミステリの超・傑作だ。あーもー素晴らしいっっっ!!!

北村先生の解釈によれば、芥川は菊池寛の「頸括り上人」を受けて「六の宮の姫君」を書いたということになる。それは、己の信念、ここだけは譲れないというところを書かねばならなかったから。
なのに「六の宮の姫君」を読んで女性の自立が云々、という芥川にしてみれば筋違いの評価がなされて、芥川は「文放古」(大正13年4月)でこう書いている。
この手紙を書いたどこかの女は一知半解のセンティメンタリストである。
うーむ。
しかし「六の宮の姫君」とは別に、単独でこの短編だけを読むと、この大正13年にして既に精神的に自立して、経済的にも自立したいけど、社会的環境がそれを許さず、とにもかくにも結婚して夫の庇護のもと生きて行くのが女の道、みたいに周囲に言われて悩んで、でも救いを求めて著名な作家の本をいくら読んでも自分の助けになるようなことは書いてくれていないじゃないの! という若い女性を描いているのは興味深い。これ、平成になってもけっこう同じような悩み抱えてる女性いっぱいいるんじゃないかなー。ただ、芥川としては、その問題と、俺の「六の宮の姫君」を一緒にしないでくれたまえ! って感じだったのでしょうか?

まあでも、北村薫『六の宮の姫君』は素晴らしいんだけど、別に、それだけが正解ってわけじゃないから、芥川「六の宮の姫君」を読んでどう思うかは自由なんだけどね。だいたい北村薫の結論にたどり着こうと思ったらまず菊池寛「頸縊り上人」を読んでいないとだし、でも実際そういう頭で読んでみたけど菊池寛と芥川の関係とかをかなり突っ込んで考えていないとこのふたつをリンクさせて考えたりしないかもだし、うーん。

とりあえず、『今昔物語集』のおんなじ話を基にして書かれたけれど芥川の「六の宮の姫君」と堀辰雄「曠野」はぜんっぜん違うテーマだっていうのは確証取れました。やっぱり最後の部分が有るのと無いのとで、ふつうに作品だけ読んだだけでも違うなーって思ったけど、「女のあはれ」が書きたかった堀に対して芥川にとっては「お姫様(女)」そのものがもうフェイクだっていうところからしてやっぱり全然違うよね……。

文学と、信念と、友情と。芥川の繊細さと。そこへ押し寄せる過酷な運命と。あああ。芥川に共感しながら読んでいくと、泣きはしなかったけどかなり感情を揺さぶられて、まいった。つらかったろうなあ……。

文放古
文放古
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(2012-09-27)

往生絵巻
往生絵巻
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(2012-09-27)

身投げ救助業
身投げ救助業
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(2012-09-27)

「頸縊り上人」は青空文庫に無かったですが、こちらのサイト(四国の山なみ様)で読むことができました。