2016/12/31

Amazonで変なもの売ってる

Amazonで変なもの売ってる
谷山浩子
イースト・プレス
売り上げランキング: 63,654
■谷山浩子
イースト・プレス2014年8月20日刊。
初出「マトグロッソ」2012年4月~2014年4月。
装画 大山美鈴
装丁 川名潤(prigraphics)

マトグロッソ」って以前、高野文子が『ドミトリーともきんす』連載してたAmazonのコンテンツという認識だったのだが「あとがき」によればこの本の連載中にAmazonを離れたらしい。
http://matogrosso.jp/

本書は帯によれば【待望の20年ぶり新作小説!】だそう。
出版された当時Amazonで見掛けて「面白いタイトルだなー」って思ったけど購入に至らず、そのまま忘れていた、のを先日地元書店で見つけてまだ初版が残っていたのでこれは御縁だなあ――と思ったのでお買い上げ。

ファンタジーはあまり読まないのだが、なんだか読みはじめてすぐに子どもの頃、面白そうな本を開いたときの気持ちを思い出した。
ネットショッピングが大好きな花見山ミカルとその妹のハルルの不思議なちょっとした体験。
別に大冒険はしないし、お話によくある「悪いもの(を倒す・から助ける)」というのもない。
「どんなアラスジ?」と訊かれたら「うーん…うまく説明するのが難しいけどなんだかふわっふわっした、へんちくりんなお話」とでも答えるかな?
最後のほうはあまりにも混沌が進んで正直ちょっとよくわからなかくなってきて、いったいどう着地するのかなあ、なにが言いたいのかなあって気持ちにもなったけど。
でもなかなか面白かった。悪くない。
主人公の姉妹が全然「良い子」じゃないところがイイんだよね。
それどころか、勝手だし自己チューだし、自分の世界にひたってる。
お父さんもぐらぐらだし、お母さんは人(我が子)の話を聞かないし。
まあでもいるよねーこういうひとたちって感じ。

これ、質の良いアニメーションで観たいなあ…。

2016/12/30

本屋さんに憩う 第2回

某月某日
近所の本屋さん。
購入はしないけど「へえ」と思ったもの。
まだこのシリーズって続いてたのか。
原題は"Brush Back"V.I. Warshawski 17。2015年。
女探偵 V・I・ウォーショースキーの長篇第17作。
第1作だけ昔読んだなあ、いまは表紙が変わってるんだー(日記を調べたら2005年の2月24日、25日に読んでるけど特に感想は書いていなかった)。
第1作"Indemnity Only"の原著が出版されたのは1982年だから、長いことやってるなあ。
昔のは江口寿史さんによるイラスト。
新しいのは「まきお」さんというイラストレーターによるものらしい。

カウンター・ポイント (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サラ・パレツキー
早川書房
売り上げランキング: 2,371
サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サラ・パレツキー
早川書房
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サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))
サラ・パレツキー
早川書房
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購入したのはこれ↓
『Amazonで変なもの売ってる』谷山浩子/イースト・プレス
2014年8月に出た本を今頃買う。
当時Amazonでタイトル見て「面白そうなタイトルだな」と思ったけど買わなかったやつ。小さな書店で単行本既刊コーナーは両手広げた程度でたぶんずっと置いてあっただろうに目に入ってなかったのかな、奥付みたらまだ初版のまま、よくぞ返品されなかったねと。装幀がむちゃくちゃ可愛い。完全なタイトル&表紙買いです。谷山浩子さんって歌手だけど調べたら結構お話も書かれているんですね(周知の事実らしいけど知らなかった…)。
こういうのをあえてAmazonで買わずにリアル書店で買うのがイイよね!?

Amazonで変なもの売ってる
イースト・プレス (2015-01-23)
売り上げランキング: 54,389

2016/12/28

本屋さんに憩う 第1回

無精なわたしがリアル本屋さんに行く機会を増やすための企画です

某月某日
勤め先近くの本屋さん。
気になった本は以下4点だが、この日はいずれも購入せず。

三島屋変調百物語シリーズの三を読んだ覚えが無い…。
松田青子は気になるが「アンデル」で2回分読んで合わなかったんだけど書籍でまとめて読んだらまた違うだろうか…。
星野源さんも気になるけどちらっと中を見たらタイトルから想像したのと違ったので保留。
みうらじゅんのムックは…もうちょっと写真が多かったらなあ。

三鬼 三島屋変調百物語四之続
宮部 みゆき
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 229
おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are
松田 青子
中央公論新社
売り上げランキング: 11,562
働く男 (文春文庫)
働く男 (文春文庫)
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星野 源
文藝春秋 (2015-09-02)
売り上げランキング: 19
ユリイカ 2017年1月臨時増刊号 総特集◎みうらじゅん SINCE1958
みうらじゅん 安斎 肇 田口トモロヲ 井上揚水 いとうせいこう 泉麻人 峯田和伸 前野健太
青土社 (2016-12-12)
売り上げランキング: 583

2016/12/27

督促OL 修行日記

督促OL 修行日記 (文春文庫)
文藝春秋 (2015-03-13)
売り上げランキング: 623
kindle版
■榎本まみ
12/18の日替わりセールで¥199で購入してあったもの。今朝の通勤で読みはじめたら「督促」という重そうなテーマにもかかわらず徹底してライトな書きっぷりでするすると気軽に読むことが出来、面白かったので昼休み→帰りの電車→お風呂読書で読了。
一番ぐっときて、後からぐわーっといろんな思いが押し寄せたのは、「おわりに」で、
【私はこの本を三人の人に届けたくて書きました。】
その、三人目、というのが、……これ、ここで書いちゃって、いいのかな?
駄目、な気がする。
というわけで、書きません。

できれば先に「おわりに」を読むんじゃなくて、ふつうに最初から読んで行って、榎本さんの日常の努力を明るくライトに書くその見事さに「あはは」と笑い、「でもちょっと参考になるかも?」「仕事や困った日常に応用できるかも?」と頷きながら楽しんでもらいたい。そして最後の「おわりに」を読んで「あっ」と思ってもらいたい。
そのご苦労を1ミリも出さずに本編を書き上げたN本さん、いや榎本さん、あなたは偉い!!

【目次】
はじめに
01 ここは強制収容所?
1時間に60本の電話!?
耳をつんざき罵声で脳が凍死……
13名のイケニエたち
パンデミック勃発!

02〝ブラック部署″の紅一点!
イケメンパラダイスの夢かぶれ……
海千山千の多重債務者たち
勤務時間は朝7時から終電!?
朝から戦争……
夜9時からは「手紙の時間」
ゴールデンウィーク後、涙の12連勤
督促OLのコミュ・テク!その1  約束日時は相手に言わせる

03 ストーカー疑惑と襲撃予告
会社名を名乗れない苦悩
通報されそうに!?
初の指名電話は〝襲撃予告″
ガソリンが撒かれていたことも……
そしてついに、爆破予告
大長編私小説を読むのも仕事
私、回収の才能なさすぎ!?
お客を信じてはいけない
督促OLのコミュ・テク!その2 「お金返して!」と言わずにお金を回収するテクニック

04 謎の奇病に襲われる……
やっぱり、心・因・性!?
カウンセリングはビジネスライク
そして、彼もいなくなった……
ユニクロパンツから紙パンツ
サークルのOB会で 93
キラ星のような同期たち
督促OLのコミュ・テク!その3  いきなり怒鳴られた時に相手に反撃する方法

05 自分の身は自分で守る
先輩からワザを盗め
電話キョーフ症を脱出
小さな大発見
バディ交渉術!
お客さまトレード
悔しさと意地を捨てる
お客さまタイプ別攻略法
お金があっても払わない「論理タイプ」
督促女子のお客さま研究会
女子力は不可能を可能にする
督促OLのコミュ・テク!その4  厳しいことを言う時のツンデレ・クロージング

06 N本、大抜擢される
生き残っているだけで、エライ
年間2000億の回収部署へ
入社半年で上司!?
コールセンターの青いあくま
また一人ダメに……
「N本さんごめん」去っていくオペレーターさんたち
同期が倒れた日
不幸になる仕事

07 自尊心を埋める
自尊心との闘い
感情労働はツライよ
エース・イケメンM井さんのメントレ
悪口辞典
怒鳴られることが待ち遠しい!
話し方に自信をつける方法
督促OLのコミュ・テク!その5  クレームには付箋モードで反撃

08 濃すぎる人間修行
呪いの水晶玉
カネと泪と男と女
彼氏に湧き上がる怒り
悪いオンナにだまされて
心根の優しい人たち
家出の責任を取らされる!?
回収率100%の奇跡の債権?
一瞬の沈黙の後に……
督促OLのコミュ・テク!その6  「誤ればいいと思ってんだろ!」と言われない謝り方

09 センパイ武勇伝
督促の過去
気の優しいおばあさんが……
真っ黒な街宣車がやってきた
督促今昔物語
信用のない人は救急車も助けてくれない
督促OLのコミュ・テク!その7  「ごめんなさい」と「ありがとうございます」の黄金比

10 合コンサバイバル
督促OLの都市伝説
督促修行で〝だめんず″好きに終止符
肩書き系からも卒業
督促OLのコミュ・テク!その8  声だけ美人になる方法

11仕事からもらった武器と盾
弱者には弱者の戦い方がある
心の通り魔
涙味のお菓子
血の通った熱い悪口、求む

おわりに/参考文献

解説は佐藤優さんなんだー! でも電子書籍版では割愛されてるので読めないー! うわー佐藤さんの解説読みたかったなあ!
ネットでググったら「本の話」に佐藤さんのコメントが掲載されていた。
文庫版あとがきも割愛されてたのはどうしてだー!

榎本さんはアメブロもやっておられるようだ「督促OLの回収4コマブログ」。数ページ遡っていったら「旦那」とか出てきてもっと遡ったら今年結婚されたらしく「結婚修行日記」というブログもやっておられるらしい。
ブログは4コマ漫画中心なんですね。あ、この本は活字本です。ネットを先に見られたら誤解があるかも…。

2016/12/25

ACCA13区監察課

ACCA13区監察課(6)(完) (ビッグガンガンコミックススーパー)
オノ・ナツメ
スクウェア・エニックス (2016-12-24)
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ACCA13区監察課 6巻【デジタル限定特装版】 (デジタル版ビッグガンガンコミックスSUPER)
スクウェア・エニックス (2016-12-24)
売り上げランキング: 289

■オノナツメ
完結。全6巻。
でも番外篇の連載がはじまったというからどうなるのかなー。
2015年に読んだ本ベストテンでとりあげさせていただきました。
6巻はなかなかのぐるんぐるん急展開だったです。
ミステリーというかスパイものっぽい、でも王道で。
面白かったー。
ニーノが好きです。あと、モーヴ(本部長)が素敵です。
一番面白かった区はジュモーク区! なんでも大きいのが。果物とかお菓子とか食パンが大きいのが面白い。
住むのはバードンが便利そうな気はします。
絶対住みたくない区はあのコワいところですね…。

通常版と、デジタル限定特装版がありますが値段は同じですね。中身もたぶん同じはず…片っぽしか買ってませんので確認はしていませんが。
特装版はデジタル限定・kindle版なので紙媒体ではありませんので注意!

2017年1月テレビアニメ化するそうです。深夜枠ですねー。
http://acca-anime.com/

オノナツメさんのコミックスは「GENTE」(全3巻)も大好きです。「リストランテ・パラディーゾ」を先に読むほうがいいかもです。

GENTE  1 (Fx COMICS)
GENTE 1 (Fx COMICS)
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オノ・ナツメ
太田出版
売り上げランキング: 48,676

2016/12/24

目黒考二の何もない日々 2007-2016

目黒考二の何もない日々
目黒考二の何もない日々
posted with amazlet at 16.12.24
目黒考二
百年書房
売り上げランキング: 615,464
■目黒考二
先日久しぶりにweb「本の雑誌」を覗いたら「目黒考二の何もない日々」12月2日「私家版」という記事があって、要するに『笹塚日記』シリーズ4巻の続きにあたる「町田日記」ならぬ「目黒考二の何もない日々」を古希の記念にまとめた私家版を作ったが、それ(サイン入り)を「本の雑誌WEBストア」でも扱っているということだった。
おお、それは是非読みたいと購入(わたしが見たときはAmazonで古書店さんの扱いも上がっていたけどやっぱり正規ルートの本の雑誌WEBストアから。使えるクレジットカード会社が限られていた。便利に慣れ過ぎているとこの程度でも「あれっ」って思っちゃいますネ、反省)。

12月9日夜に発注して、12日に商品の発送が完了しましたメールが来て、ゆうメールで15日に届いた。14日に届かなかったのでおかしいなーと思っていたのでほっとした。便利に慣れ過ぎてるって恐い(2回目)。
宛名シールが若い女の子の手書き! かわいい字だなあ。助っ人制度ってまだ残ってるのかしら。中の領収証の書名、金額も手書き。共信サンライトのKP封筒B6を使っている。
ふーん、本の雑誌らしいなあ。
WEBでずっと読んでいる、というひとは既読のものばかりだろうが、わたしはネットで娯楽のための流し読みは出来ても「読書」としては熟読出来ないタイプなので書籍化はありがたい。

ということで15日から手元にあったのだけどなんのかのでようやく今日、中身に手をつけた。
「はじめに」によれば、全部載せると本が分厚くなってしまうので結構最初のほうは削ったそうだ。

まだ拾い読みでとりあえず最後までざっくり目を通した程度だが、「家に帰らない」のではなくて「動かない」だけ説、「大森望スペシャル」の話とか、やっぱり面白いなあ。空気はひたすらまったり。
思ったより書評とか本の具体的なタイトルが少なくて、そういえば『笹塚日記』でも何を読んだか書いてあるだけで書評はほぼ無かったなあと思い出す。

目黒さんがこれまで書いた文庫本の解説リストを作った個人ファンのひとが最初の方に出てきて、その後も何度か目黒さんがお礼を書いているけど、どうやってそんなこと出来たんだろうと思ったら後の方で地道に古本屋で探して…というやりかただったと書いてあり、すごいなあ。絶版になっている本も多いから新刊じゃ無理なんだね。でも図書館じゃなく、古本屋で購入しているのがすごい。目黒さんがまた、ご本人の仕事なのに覚えていないことが多いっていう御仁だもんね…(それがイイんだけど)。

百年書房っていうのはググったら自分史とかを扱う出版社らしいのだけど、本には書籍表紙デザインを使った専用のしおりも挟まれていて、ちゃんとしてるなあ。本そのものはシンプルな作り。2段組。289ページ。
目黒さんのサインってそういえば初めて。
「目黒考二」って書いてあるんだろうけど、ぱっと見たら「目里斤二」に近い。かなり丸っこい字。
本の雑誌WEBストアの商品紹介のページに載っているサインよりだいぶ崩れている。たくさん書いてだんだん疲れて面倒になってこうなったんだろうなあ。

2016/12/23

2016年に読んだ本ベストテン 発表


翌の読書手帖


2016年に読んだ本ベストテンの記事を公開いたしました。

このページの上のところにある「年間ベストテン」から該当ページでご覧下さいm(_ _)m

↑のサンタさんの写真からもリンクはってあります。


いきあたりばったりでノートPCの上で撮影しました。
ピンクがくどいですねー 別にピンク好きじゃないんですよ(説得力皆無)。
キーボードが光る 無駄な(?)機能が初めて役に立ちました(爆)。

2016/12/22

この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇

kindle版
■池上彰
12/17の日替わりセールで¥199で購入。
池上彰の東工大講義シリーズ第2弾。
(第3弾学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇』の感想はこちら
2013年3月文藝春秋社単行本刊、2015年7月文春文庫刊の電子書籍版。

やっぱり池上さんわかりやすいなー。というか、面白いんだよね。なんでこんなに面白いのかなあ。
テレビのニュースやなんかで見聞きして漠然と知っていること、でも学校の授業では習ったことがないこと。
時系列順に、系統だてて説明してくれるから、頭の中で整理整頓されてすっとおさまる。

たとえば学校紛争のこと。
そういうことが「あった」っていうのは先生とかがたまに発言するので知ってるけど、いまは政治家とかがアホなことしてもみんな何も行動を起こさない。なんで昔の学生はそんなに団結して行動できたのかなあ、と、わたしが大学生だった頃(もう随分前だ)ですら不思議に思っていた。いまの学生は無気力で、昔の学生は活気があったのかなーと。
Lecture12 全共闘 1968年、なぜ学生は怒り狂ったのか」の章で池上さんの言葉を拾ってみると、
いまでは考えられない意識ですが、これが当時の空気というものでした。
当時は、ごくささいなことでも学生たちが怒っていたんだね。なぜあんなに皆が怒っていたのか。いまとなっては追体験できないけれど、それが、あの時代の空気だったんだ。
【(当時は)大学生は、まだまだエリート。世の中の矛盾に目が向き、なんとか現状を改革したいという正義感を抱くようになります。しかし、その多くは、ひとりよがりの行動でした。これが、さまざまな反乱を引き起こしたのです。
そして最後に
いまになってみると、なぜあんなことが起きたのか、理由がつかめません。1968年(昭和43年)前後に世界で同時的に発生した学生の反乱。その分析は、現代史のひとつの課題でもあるのです。
と締めている。
つまり答えはわからん、と。えー。
また、「文庫版あとがき」で
現代史を若者に教えるのは、むずかしいものです。教える側にとっては、1960年代の高度経済成長や学生の反乱、バブルの発生と消滅は、まさに私が体験してきた「現代の出来事」でした。
ところが、私の話を聞く学生にとっては、「遠い過去の歴史」でしかありません。
(中略)
でも、そうした冷めた分析は、いまだからこそできること。当時は、学生も大学側も真剣だったのです。これが歴史評価のむずかしさでしょう。
歴史的な出来事を、現代の視点から斬って捨てることは容易ですが、それでは歴史から学ぶことはできません。
とも書いている。
渦中にいたからわかる「空気」を体験していない者に論理的に伝えるのは難しい。
もっと後になったら、「答え」が出てくるのでしょうか。
まあある種の「流行」だったんだとは思う。「正義感」で「高揚」してたんでしょう。でもそんな「空気」で人が死ぬまで行っているのがものすごく恐ろしい。
やっぱり歴史は知らないと、学ばないといけませんね。

【目次】
はじめに なぜ「現代史の学び方」なのか
Lecture1 原子力 事故からわかる「想定外」のなくし方
Lecture2 復興 どうやって敗戦の焼け跡から再生したのか?
Lecture3 自衛隊と憲法 「軍隊ではない」で通用するのか
Lecture4 政治 55年体制から連立政権ばかりになったわけ
Lecture5 日米安保 米軍は尖閣諸島を守ってくれるのか?
Lecture6 エネルギー エネルギーが変わるとき労働者は翻弄される
Lecture7 韓国 “普通の関係”になれない日韓の言い分
Lecture8 教育 学校では教えない「日教組」と「ゆとり教育」
Lecture9 高度成長 日本はなぜ不死鳥のように甦ったのか
Lecture10 公害 経済発展と人の命、どちらが大事ですか?
Lecture11 沖縄 米軍基地はどうして沖縄に多いのか
Lecture12 全共闘 1968年、なぜ学生は怒り狂ったのか
Lecture13 国土計画 日本列島改造は国民を幸せにしたか
Lecture14 バブル アベノミクスはバブルの歴史から学べるか
Lecture15 政権交代 なぜ日本の首相は次々と替わるのか
あとがきに代えて 失敗の歴史から学ぶこと
文庫版あとがき

2016/12/16

処刑人

処刑人 (創元推理文庫)
処刑人 (創元推理文庫)
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シャーリイ・ジャクスン
東京創元社
売り上げランキング: 87,422
kindle版
■シャーリイ・ジャクスン 翻訳:市田泉
本書は1951年に発表された"Hangsaman"の全訳である。
今年2016年8月に文遊社から出た『絞首人』(翻訳:佐々田雅子)は原著は同じ
つまり、翻訳が「かぶった」ということ。
これ、ネットでググったら結構話題になってたみたい。知らなかった。
っていうか、先日Amazonでシャーリイ・ジャクスンの作品を検索しているときに『絞首人』も買おうかなーって一瞬迷ってとりあえず保留にして『処刑人』だけをkindle版で購入したんだよね。はー、危なかった。
まあ、両方買って翻訳の違いを楽しむというのも無くはないけど…そういうタイプの作品じゃないしね…。
それにしてもなんで1951年に出た、シャーリイ・ジャクスンの超メジャーではない作品が、同じ2016年にダブったんでしょう。すごい偶然だー。

Amazonの【商品の説明/内容紹介】はこんな感じ。
絞首人
わたしはここよ――
謎めいた少女に導かれて乗る最終バス、彷徨い歩く暗い道。
傑作長篇、本邦初訳。
装幀 黒洲零
処刑人
ある日曜の夜。独善的な父親が開いたホームパーティで、ナタリーは見知らぬ男に話しかけられ、そのまま森の陰へと連れ込まれた。(たいしたことじゃない、何もかも忘れよう)おぞましい記憶を抑圧する彼女はカレッジの寮でもなじめず、同世代の少女に対する劣等感と優越感に苦しむ。やがて、トニーと名乗る少女との出会い、ナタリーは初めて他人に安らぎを見出すが……病んだ幻想世界と救いのない現実が交叉する、ジャクスンの真骨頂とも言うべき傑作。

――全然同じ作品の紹介とは思えん! 『絞首人』の紹介文を書いたひとは最後のほうしか読んでないんじゃ?

†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*†*

さて、感想である。
シャーリイ・ジャクスン・ファンは楽しめると思う。
「らしい」世界だった。あと、思春期、ハイティーンの少女特有の「特別な自分」観みたいなテーマが好きだったらどんぴしゃ。

深緑野分さんによる解説がまた興味深くて、これは最初の方をある程度読んだ段階で「この話ってどういう種類? ホラー…じゃないよね」と思って先に「解説」を読んだんだけど(もちろん、解説途中からの【結末に触れるため、必ず本篇読了後にお読み下さい】以降は読了後まで読まなかったけど)、そこに書いてある「モデル」というのか「素材」を知らずに読むのと知って読むのとではまた感想が違うような気もする。解説を読んで「えっ、あれの」と思い、本篇を読んでいき、最後のほうになってやっと「ああそういうこと」という感じだったが、まあでも、だいぶ変化球だし、終盤以外は全然関係ないしねえ。

主人公のナタリー・ウェイトは17歳で、もうすぐ実家を離れ、大学の寮に入るというところから物語は幕を開ける。
読んでる最中何度か思ったんだけど、ナタリーほんとに17歳? 14,5歳の感じしない? 大学生ってこんな感じだっけか。特に入ったばっかだし、そうだったかも知れない。
あと、大学生なのに授業シーンとか大学生らしい日常風景がほぼ無くて。あるのは寮での生活の描写と、ナタリーの凄まじい量の思考描写。
特にナタリーは誰かと会話しながら頭の中で「刑事に問い詰められる自分」という妄想を繰り広げることがしばしばあるので、それがごっちゃに書いてあるので、ナタリー気は確かなのか、『ずっとお城で暮らしてる』路線のひとじゃないだろうな、と何度か思った。
この妄想世界の「刑事」は最初の方は何回も出てくるのに途中から全然出てこなくなる。kindleなので「刑事」でキーワード検索したら本書では33回使われているのだが、最後に使われるのが位置№1131で、本書の総数は4685なので、一目瞭然。

何故「刑事」が出てこなくなったかというと、まあ、大学生活で他の関心事でいっぱいになったからでしょうね。例えばアーサー・ラングトンとか。で、「アーサー」で検索したら158回もあるんだけど、忘れてたけど最初のほうに出てくる「アーサー」は実家の近所の住人で、6回分はそっちのひと。残り152回が「アーサー・ラングトン」。なんで同じ名前にしたんでしょう。
ラングトンの妻エリザベス――学生の時にラングトンと結婚した美しいけど不幸でいまやアル中のようになっている――は244回。
トニーは222回。でも登場するのが№2910くらい以降だから、後半集中濃度が高いかも。

自意識過剰気味の妄想壁のある17歳の少女が家族の元を離れ(作家である父親が癖のあるキャラクターなんだけど割と好きだった)、同じような自意識過剰の少女の群れの中に入り込み、自分と共感できる「真の友情」「魂のふれあい」を求めるけれどもなかなかそういう友情には恵まれず、カリスマ性や美しさを持った同級生のように華やかな学生生活を送るでもなく、意気消沈してますます自分の殻に閉じこもりがちになる…。
ナタリーと同じような年齢の時に本書を読んだらきっともっと心に響いただろうなあ。

著者が著者だけに、どういう結末になるのか、最後まで気は抜けなかったけどとりあえずハッピーエンドというか、前向きなさわやかな感じでラストを迎えていてほっとした。
なんのかんのでナタリーを応援しつつ読んでいたからだと思う。
きっと彼女もいまのわたしの年齢になったら過去を思い返して「どうしてあの頃は…」と思うのでしょうね。

↓この本と『処刑人』はおんなじおはなしです!
絞首人
絞首人
posted with amazlet at 16.12.16
シャーリイ・ジャクスン
文遊社
売り上げランキング: 369,981

2016/12/12

映画にまつわるXについて

映画にまつわるXについて (実業之日本社文庫)
西川 美和
実業之日本社 (2015-08-01)
売り上げランキング: 21,938
kindle版
■西川美和
わたしは映画をほぼ観ないしチェックもしないのでこの方を初めて認識したのは2015年2月刊の『永い言い訳』で、それも直木賞候補に上がってからだったかも知れない。「すごく興味を引かれる良いタイトルだな」と思ったが、あらすじを見るにイマイチわたしの好みとか守備範囲外のような気がする。うーん……と唸って頭の片隅に置いてあった。そしたら12月10日のkindle日替わりセールで同著者のエッセイが¥199円で上がってきたのでこれ幸いと購入。

「まー本業は映画監督のひとだし」と軽い気持ちで読みはじめたらすぐに「おおっ、これは…」と姿勢を正すことになった。
良い文章を書かれるかただなあ!
もっと柔らかいくだけた文体を想定していたのである意味硬派な、正統派というか、キリッと引き締まったハンサムな文章にびっくり。
映画は観たことないけどすごく評価されているらしいし、文才も以前から認められていたみたい。才能あるひとはいろいろ出来るんだなあ。
内容も悪くなかった。映画をほとんど観ない人間にも興味深く面白く読めた。映画は観ないけど映画を撮っているひとの考えとか思いとか現場の様子とかそういうのが書いてあって、面白い。夢をみてそこから映画になっていくのとか。へー。この本に書いてあるだけのことかと思ったら後でウィキペディアをみたらこの監督さんはいつもそうなんだとか。ほー。安部公房が夢の記録をつけていたエピソードとか思い出すなあ。

そう年齢は変わらないと思うけどいくつくらいかなと思って読んでいたら「長嶋茂雄氏が現役を退いた年に生まれた私は、」という箇所が出てきて、えーとそれって何年だっけ。とりあえず未知の作家さんの本を読むときにこちらのスタンスをつかむためによくやる、本書の最後の「あとがき」と「文庫版あとがき」に最初のほうをある程度読んだ段階で飛んでみて、珍しく割愛されていなかった解説「装丁にまつわるXについて(解説にかえて)寄藤文平(グラフィックデザイナー)」も読んで、そしたらその後に著者の簡単なプロフィールが載っていた。

映画を知らないので映画監督ももちろん知らない。「黒沢明とか?」くらいのレベルであり、本文に数回出てくる「ニッカボッカを穿いている」というイメージにすら(陳腐な古いイメージという例で引かれているのだが)追いついていないのだった。へー、映画監督ってニッカボッカ穿いてるひと多かったの? ニッカボッカって大工さんが穿いてるやつでしょ?
わたしにとって映画監督というとどういうイメージかというと「こだわりのひと」かなー。ポリシーがあって、妥協を許さない。ちょっと変わり者? 西川さんもその例にもれない、かな。

西川美和さんがどういう監督さんなのかはわからないが、この本を1冊読んだ限りでは、とても面白くて繊細で鋭い直観と感性をお持ちの方とお見受けした。読後にググってみて想像していたより美しい方だったので「まあ、これだけ綺麗だったらねえ…」と思った。女優さんも出来そうな感じだが、ご本人いわく、演技は出来ないそうである。そうかなあ。

初出は最初の章のは「ジェイ・ノベル」に2010年4月号~2013年1月頃に掲載されたもの。
次の章からのは2006年くらいに書かれたものが多かったような。初出一覧は無い。
最初の章に比べると他の章の文章は少し柔らかい感じがする。年代の差か、ご本人の意識の差か。
「フィルム」で撮るか「デジタル」で撮るかについて、やっぱり「フィルム」についての愛着とか信頼とか崇拝とかいろいろあるんだというのが何回か出てきて興味深かった。この世代の監督にでもそうなんだ。で、やっぱり実際問題いろいろ違うんだ。へー。
それって読書するときに「紙の本で読むか、電子書籍で読むか」のこだわり問題とちょっと似てる? とか考えた。まあ、デジタルとフィルムでは映画撮るコストが1千万とか違ってくるとか書いてあったのでそれは大きいなーっ。

【目次】
映画にまつわるXについて
X=ヒーロー/裸/オーディション/バリアフリー/信仰/再生/お仕事探訪/生き物/アプローチ/免許/音
プール一杯分のビール
プール一杯分のビール/快適な入院生活/プリーズ・ストップ/迷い犬/蔵書の掟/私の名医/深夜二時の男/ああ、旅情/同胞の人
夢のあとさき
映画『ゆれる』プロダクション・ノーツ 
1原案 2脚本 3キャスティング 4是枝監督のこと 5香川照之のこと 6オダギリジョーのこと
その気のない転機
わたしが監督/夜の闇/緑色の氷嚢のあたたかさ/カエルとダザイ/足りない女/密陽に射す光/その気のない転機/父のカチンコ/あやふやな東京を撮る
あとがき
文庫版あとがき
装丁にまつわるXについて(解説にかえて)寄藤文平

2016/12/04

現代小説クロニクル 2010~2014

現代小説クロニクル 2010~2014 (講談社文芸文庫)

講談社
売り上げランキング: 564,534
■日本文藝家教会・編
2015年12月11日刊、2015年12月25日にアマゾンで購入して数篇読んで放置してあった(いつのまにかもう1年経ってしまった)のをいい加減読んでしまわないと、と気合を入れて最初から読み直す。
1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ、最終巻。ということだが他の7巻は買っていない。この巻は読みたい作家のが結構収録されているから「効率いいなー」と思ったからこそ購入したんだが、実際読んでみたらものすごく読みづらいというか暗いというかありていにいって面白さがわかりづらいのが多くてついつい放置してしまった。まあものすごく真面目な叢書だとは思うんだけど。つまり「面白さ」で選ばれているわけじゃないから。コンセプトが違うのねー。
でも同時代を生きる作家たちのキレキレの作品をまとめて読むことはそれなりに意味がある、と思う、ていうかそれじゃなきゃ成立しないこのシリーズ。
川村湊の「解説」から少し引用。
こんな時期に、文学だけが明るく、未来志向型で、楽天的なままでいられるはずがない。文学の世界においても閉塞感は強まっており、前向きな積極性など薬にしたくともできない相談かもしれない。
まあ、暗いのは時代を反映してんだから「しょーがないよねー」っていうことらしい。

目次】に感想を付け加える。
考速(円城塔)
ハヤカワ文庫JA『後藤さんのこと』に収録されており、既読。感想はそちらにも書いたが、俳句を連想させる言葉あそびというか。同音異義語を使った作品。両方意味があるように考えられているところが面白い。円城さんが俳句つくったらどんな感じなのか興味があるなあ。

絵画(磯崎憲一郎)
これは描写が「絵画みたいってことかな?」と考えながら読んでいったらやがて「画家」が出てくる。その画家の視点と思考に引き継がれるんだけど、なんかこのひと変だ…橋が揺れたときの描写とか、若い母親への視線とか、中年の夫婦に対する思考とかが不安定というか妙な執着があるというか、うーん気持ち悪いひとだなあ。

街を食べる(村田沙耶香)
この本を買ったときはまだ彼女の作品を読んだことがなかった。
子どもの頃新鮮な野菜なら食べられたのに、大人になって町で売られている安い野菜はまずくて食べられなくなった主人公が、町に生えている野草なら食べられるかもと考え、それを実行に移す話。「町に生えている草なんて汚れているし地面に栄養もないから食べられたものじゃないと思うけどな」と思いながら読んだら案の定だった。というか、それ以前にこの主人公は致命的に料理センスが無くて、うまく料理すればまだしものところを調理方法が下手すぎて完全に駄目にしている。たとえば、葉物をきざんでから、茹で汁が緑色になるまで茹でている。「茹でてから刻むんだよー、っていうかそもそも茹で時間長すぎ!」と苛々してしまったがまあそういう話じゃないのである。それはわかってる。わかってるんだけど、気になって。
住んでいるところで「自給自足」(の真似事だけど)をしてそれで「生きている」実感みたいなのがわく、という発想そのものは好きだし、頷ける。
とりあえず彼女には『山賊ダイアリー』(全7巻・岡本健太郎)を熟読して素材を殺さない料理法というものを勉強してもらいたい(偶然同時期に読んだ。5巻に山菜を食べる話も収録されている。タイムリー!)。

山賊ダイアリー(5) (イブニングコミックス)
講談社 (2014-08-22)
売り上げランキング: 537

みのる、一日(小野正嗣)
山下澄人『ギッちょん』をなんとなく連想させるはじまりかただった。英語の習得を目指すみのるのカタカナでの英会話は、言葉が足らないひとのそれを描いているのかと最初思ったが読んでいくうちに違う意図であえて英語で話しているのだということが示されていく。あわせて描かれる「臭気」。徐々にほのめかされていく真実…。グロテスクなのだけれども、恐ろしいのだけれども、同時にどこか哀しい憐れがある。

さよならクリストファー・ロビン(高橋源一郎)
いかにもこの著者が好みそうな、いろんな物語の登場人物を絡めた純文学作品のひとつ。ここでは主に童話に出てくるキャラクターたちを題材としている。浦島太郎はここまで長生きしたらさぞ苦労したろうね。あと、狼さんの錯乱は同情に値するね。
そして謎の消失…。「虚無」の侵食。
クリストファー・ロビンというのは「くまのプーさん」の著者の息子のこと。

田舎教師の独白(高村薫)
なんで高村薫のこの作品を選集に選んであるのかは不明で、でも考えてみればこの著者の短篇ってほぼ知らないから何とも言えない。
全然学習意欲がない高校生たちを相手に数学を教えている田舎の高校教師の視点からずるずる延々語られる話で、「極限値」と「微分係数」の授業の実況中継みたいなのが混じっていて文系だったわたしには正直よくわからんなあと思いながら読んでいたら、いや、まあ、不穏な空気は書かれていたけどまさかこういうラストとは。えー? ここから何を汲み取れと? もうちょっと生徒側の視点が欲しかったけど、うーん。

塔(松浦寿輝)
ミステリチックな設定で、こういう独特の感性をそのまま生かした建築物件の話とかすごく面白くてわくわくする。綾辻行人みたい。もちろん純文学なので殺人とかは起こらない。起こっても面白いとは思うけど。実際に「塔」が建ってからの延々モノローグとかが純文学っぽいけどちょっと冗長に感じてしまった。

うどん屋のジェンダー、またはコルネさん(津村記久子)
先日読んだ『浮遊霊ブラジル』のほうに先に感想を書くことになったが読んだのはこちらの選集が先だった。こういううどん屋の店主みたいなひと、いそう。実際に具体例は浮かばないけど、ありがたいことに。津村さんの書く登場人物はそういうのが多くて、リアルな感じがする。主人公が著者と同年代の女性ではなく中年の男性だというのが珍しいなと思った。 知らない中年男性にうどん差し出されたらかなり警戒するな、とも思った。

きことわ(朝吹真理子)
この作品で2010年芥川賞を受賞されたので「きことわ」という言葉だけは見聞きしていて、なかなか印象に残る美しい言葉だなと思っていたので本書を読みはじめてすぐに判明するのだがそれがこの話の中心人物二人の名前「貴子(きこ)」「永遠子(とわこ)」からきているのだと知ってちょっと、いやかなり「なんだそれ」とがっくりきたのだが、しかしこの話の主な語り手は永遠子であり、この名前が繰り返し使われることによって字面的には「永遠」が頻出する。「貴重」の「貴」も頻出する。それによる脳への刷り込み効果というのか、ある種の雰囲気、イメージの定着には少なからず意味がある、著者の狙いがある、と思う。永遠子と貴子は同世代ではなく8歳も違うのだが、まるで双子の姉妹のように同化して、何度も髪が絡まり合ったりして、少女特有の異常なまでの密着度が濃密で濃厚である。
物語は少女時代から中年女性になった彼女らの現在に飛んでそこからまた話が続くのであるが、空気をそのまま持ちこして、回想している。大人になってから振り返ったからこそ見えてくるものもある。
もっとドロドロしていくのかと思いきやそこまでは至らない、お互い自立した大人の女性になっていて、そこは安心した。海の潮騒と潮のにおいが感じられるような、浪間のキラメキがまぶしいような、美しい小説だった。ただ、ちょっと飽きるかな。

波打ち際まで(鹿島田真希)
2012年『冥土めぐり』で芥川賞受賞。2009年絲山賞受賞のときからちょっと気になっていたけど未読だったので読めて嬉しい。
依存系の女の話。そこまで狂ったか?と思わせて実は別人の話、みたいな地続きの描写が何度かあって、しかし女の内面はかなり病んでいる。何故男がこれをどうにかしないのかはよくわからない。 ある種、ちょっとしたホラー。

うらぎゅう(小山田浩子)
2014年『』で芥川賞受賞のかたですね。このひとも気になっていた作家のひとり。
離婚を決めて実家の両親に報告しに田舎に帰った推定年齢30代後半の女性。こういう展開でホラーだととんでもない目に遭うので、はらはらしながら読んだがまあ純文学なのでそれは無かった。現代の女性が受けるプレッシャーとかハラスメントとか、都会はうまく隠されているけど田舎は露骨だ。でもこれがまだまだ「社会の本音」なんだろう。やっぱりホラーか(違)。

夫を買った女/恋文の値段(瀬戸内寂聴)
これは2つの全然別の話。瀬戸内寂聴の小説は初めて読んだが、読みやすくはあったが、内容はどこが良いのかちっともわからなかった。「夫を買った女」はそういうひともいるのかもしれないけど現実感が伴わないし、恋文の値段については最後がいきなりすぎて意味がわからない。センセーショナルな内容で「驚いたでしょ」と言いたいんだろうか。純文学っていうよりはエンタメかなあ。

巻末エッセイ(村田沙耶香)
解説(川村湊)
作者紹介

2016/11/26

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル
浮遊霊ブラジル
posted with amazlet at 16.11.26
津村 記久子
文藝春秋
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■津村記久子
先日発売された単行本。
題名からして「なに、なんのお話なんだろう」と興味を引かれるいかにも面白そうなオーラを放っていて、気になって仕方なく、短篇集と知って一回保留にしたのだがやっぱり、ということで買ってあった。最近は通勤に単行本を持って行く気力がないのでしばらく本棚に寝かせてあって、このあいだの週末に4篇読み、本日後半の3篇を読んだ。
何故か装丁に使われているイラスト(@北澤平祐)をシールにしたものがオマケとして挟んであった。サイン本を買ったつもりがサインは無かった。あら、間違えちゃったなあ(がっくり)。 
シールは数量限定らしかったが、「本を買ってもらうために、いろいろ工夫されているのだな」と微笑ましく思ったが、シールをもらったところで貼るところがない。「それでこれをどうしろと?」と少し困惑した。本より大きいサイズなので本に挟んで収納しようとするとあまり具合は良くない。小さい子どもにあげて喜ばれるようなデザインでもないし。ははははは。

短篇集で、連作ではなくて、全部独立している。7本どれも変わっていて、それぞれ面白かった。津村さん確実にメキメキ上手くなられてるなあ。凄い。頼もしい。進化しているって感じだ。
特に、最初の話を読みはじめてすぐに主人公が女性でもなく、著者よりずっと年上の世代ということが書かれている箇所を読んだときに「おやっ」と思った。わたしは津村記久子の著作を全部読んでいるわけではないが、それなりにチェックはしているので、珍しいなと感じたのだ。本書の短篇の語り手は世代も性別も全部ばらばらだけど、あまり同世代のひとはいない。下の世代ではなく、まだ経験していない上の世代を書いてある。ほほう、と思った。

以下、各話について思ったこと、連想したこと、感想など。

給水塔と亀
数十年ぶりに故郷に帰ってきた男性の目線で描かれる淡々とした話。懐かしさと目新しさの混じった好奇心のある目で静かな町を見つめているのが良い。こういう何事にも焦らない、ビールと思ったらビールだけを買って一日の買い物としてしまえる境地って良いよなあ。
給水塔といえば連想されるのは「給水塔占い」@フジモトマサル『二週間の休暇』。

二週間の休暇〈新装版〉
二週間の休暇〈新装版〉
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フジモト マサル
講談社
売り上げランキング: 22,596

うどん屋のジェンダー、またはコルネさん
うどん屋で繋げてきたね、と思ったが初出はこちらが2年ばかり先なのだ。
これは『現代小説クロニクル2010~2014』というアンソロジーに収録されていて(数篇読んだだけで長らく放置してあるのでこのブログ上に感想は載せていない)既読だったがもう一回改めて読んだ。まあ、タイトルどおり、ジェンダーの話だ。田舎のそのへんのこういうメンタルのおっさんというのはいくらでもいそうなリアリティがある。
まあ、疲れてる時に、こういう店と知ってるなら、何故行ったんだ、という気がしないでもない。誰かに当たり散らしたかったんかねコンタクトレンズ屋のお嬢さん。気持ちはわからないでもないけど、あなたが受けた傷や、いま感じている後悔(ほかの罪のないお客さんに迷惑をかけたなとか)に比してうどん屋のオッサンが感じているそれははるかに、はるかーーーーーに低いと思うよ。やつらはそんな繊細さも反省も持ち合わせちゃいないのさ。
現代小説クロニクル 2010~2014 (講談社文芸文庫)

講談社
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アイトール・ベラスコの新しい妻
こんな考え方の人間がいるのか…それはもう、どうしようもないよね、矯正できそうもない、同じクラスにいたらかなり終わってる。
読み終わった後に、インターネットでアイトール・ベラスコの新しい妻について検索してみたくなっているのに気付いて、思わず我に返って苦笑。凄いな。津村さんがよく外国のスポーツ記事サイトを見るのを趣味にしているとエッセイに書かれているから、現実とごっちゃになっちゃったわ。リアリティ有り過ぎた。あと、娘さんはもう性格的にかなりひん曲がってるだろうから今からどうこう出来ないんじゃないかな、よっぽどのことがなくちゃ、だって困ってないからね本人は。

地獄
凄い、冒頭からのけぞっちゃったわ、地獄の話なんだー、比喩とかじゃなくて。
落語みたいだね。米朝師匠の「地獄八景亡者戯」を瞬間的に思いうかべたけど、また全然違う切り口で。生前やってしまった「業」に合った内容の苦行をノルマとしてこなしていかないといけないとか、担当の鬼がいるだとか。その鬼も悩んでたりデモデモダッテ星人だったり不倫してたりなんだか非常に人間臭い。でもちっともドロドロさせずユーモラスな感じで淡々と描いてある。面白いなあ。

運命
これも津村さんが何故だかしらないけどひとから道を訊かれる、とどこかで書いてらしたことを思い出してにやりとさせられる話。外国はまあ、そんな馬鹿なと思いつつもあるのかなという感じだがその先の展開には「ままままさかのSFかよ!」とびっくりするやら笑えるやら。最後の展開はちょっとその後にしちゃ、使い古された感あり過ぎな気がしないでもなくもない。初めてこういうの読んだとしたら斬新だと思うんだろうけど、もう昔から書かれまくってるから陳腐で。えーなんでって思っちゃった。なんであの斬新の後にこれ持ってきたんでしょう。

個性
こういうことって、本当にあるんでしょうか。こういう認識をされる方って実際にいらっしゃる?
これもひとつの「就活」小説、なんスかね。現代の「就活」のあの独特の感じがなかったら、この小説は成立しないもんなあ。はあー。
読みはじめたときはいったいなんの話かと思って、なかなか舞台とか彼らの立ち位置とかが掴めなかった。恋愛、とは違うのかな? 

浮遊霊ブラジル
表題作。すんごく不思議な変わったタイトルだったので、読む前に寝かせている間にいろいろ想像したりもしたのだが、こういう話だったかー。面白いねー。予想していたのより数段落ち着いているというか、老成している淡々とした話だった。しかもブラジルは真の目的じゃなかったとか…。何故「浮遊霊アラン諸島」「浮遊霊アイルランド」ではなく「浮遊霊ブラジル」なのだろうか。単語のすわりが良いからか。
浮遊霊アイルランド」。……なにがなんだかわからんな。まあ、「浮遊霊ブラジル」もわからんけど、陽気な感じでオバケさんがサンバでも踊り出しそうで、楽しそうだ。全然そういう話ではなかったけど。ユーモラスではあったけど。「浮遊霊アラン」だとアランって名前と勘違いされそうだしね。
ひとにとりついたときの語り手の視線とか、いろいろ現世のどろどろとかにあえてタッチしていかないところとかが、まあそこは深入りしたら話の雰囲気がおじゃんなので正解だが、取りついてるのにそんなに見ないでいられるのか、設定的に無理があるのでは、と勝手に気をもんだ。
どうでもいいけど市岡さんは男を見る目がないな。仲井さんの息子はちょっとどうしようもないな。これだけで全然別のはなしが1本出来そうだけど、書かないところが気持ちいい。

2016/11/18

ミステリーの書き方

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)
幻冬舎 (2015-10-08)
売り上げランキング: 30
■日本推理作家協会 編・著
初出は幻冬舎のPR誌「ポンツーン」に掲載されたもの。初出を見ていたら2003年・2004年・2007年・2008年という感じなんだけど、2年ごとに集中連載したってことかな?
2010年11月幻冬舎単行本刊、2015年10月幻冬舎文庫化、の電子書籍版。
日替わりセールで上がってきたので本書の存在を知り、ミステリーを書こうなんておこがましいことは一度も考えたこともないが、内容説明に【ミステリーの最前線で活躍する作家が、独自の執筆ノウハウや舞台裏を余すところなく開陳した豪華な一冊。】とあったので完全にミステリーファン目線で購入した。

想像していたよりずっと真面目に真剣に、各テーマに沿って43人の一流の作家さんが書かれていて豪華だなあと思った。自筆の場合と、インタビューを行ってそれを構成したものと2種類ある。また、本文のほかに推理小説協会所属の作家対象のアンケート結果も載っているがこれはkindleでは画像になっていてかなり字が小さい(拡大できることはできるけれどもだいぶ粗い)のでほとんど見ていない。

kindleの総ページ数で7924もあり、結構読みでがあった。Amazonの単行本のレビューの中に「1ページ2段構えで、461ページ」という記述があった。

最初に「おこがましい」と書いた理由はわたしは逆立ちしたってミステリーを書けない人間であると自覚しているからで、本書を読んでますますその意を強くしたが、作家が自作の種明かしをしてくれるタイプの本はそうそう無いので、これは貴重。ひとによるけど、かなり細かいことまで喋ってくれているひとが何人もいる。適当なところで納めているひともいるけど。

インタビュー記事の場合、聞き手も実力ある書評家の方だったりするからかなり読みこんで準備していって理論的に「これはこうじゃないですか」と予測して臨んでいるわけだけど、作家さんってある種天才だから、理論とか理屈とか超越したところでお話を作っておられたりするわけで、その食い違いが面白い。特に北上次郎さんが聞き手のパターンが面白くて、これは記事の最後にいくまで聞き手が誰かは書いていないんだけど、読んでいて途中で気付くというか。大沢(在昌)さんのインタビュー記事は途中で笑えてくるくらい面白い。「――身を乗り出して、」とか書いてある。聞き手が北上次郎で構成が大森望とか最後にあって、にやり。あの爆笑書評集のコンビだもんなあ。宮部(みゆき)さんの場合は途中で名前が出てきたけどね。これは結構真面目に聞いてる。

ちなみに大沢さんの記事で話題になっているのは『新宿鮫』シリーズなんだけど……わたしこれ昔、「有名だから読んどかなくちゃかなー」と読んでみてあまりにも男性の夢物語というか主人公の鮫島とヒロイン晶の関係が気持ち悪くて一応最後まで読んだけど第1作しか読めなかった。調べたら2003年5月に読んでる。感想記事はこちら

このインタビュー記事でそれは大沢さんが半ばヤケ気味というか、「えげつない」ことを自覚したうえで書かれたことがわかり、かなり興味深く読んだ。っていうか、北上さんは評論家目線でもあるけどもはや途中からファン目線も混じってきてますよね(さすが目黒さん。にやにや。ほんとに小説が好きなんだなあ)。

最初に自分がファンである作家の記事を読んでいって、2巡目はとばしたところを読んだ。内容的に「自作を例にとって具体的に説明」しているから、ネタバレを読みたくない未読作品の場合はそこでジャンプした。
あと関心がない作家・テーマ・読みだしたら面白くなかった記事はちょこちょこ飛ばした。

基本的に「作家になりたいならこんなの読んでるひまがあったら書け」という内容のことは複数の作家の方が書かれていて、まあその通りだろう。習って書くもんじゃないと思う。
あと、「書く」のは「小説」にだけ注いで、メールとかSNSとかブログに書いて「書きたい欲求」を発散させないほうがいい、とどなたかが書かれていたけどこれもその通り。

この本では執筆されていないけど昔、森(博嗣)さんが「話は全部頭の中に出来上がっていて後はそれをアウトプットするだけ」と書かれていた。恩田(陸)さんは別の本でストーリーはあまり決めないで書いていくと書かれていた(本書ではそのことは書かれていない)。宮部さんは恩田さんに近い感じみたい。ごくまれに「その後のストーリー展開予定」を編集者に渡すことがあって、でも結局全然違う展開になったと。書くことで初めて「リアルに実感」するから続きが考えられるということらしい。

【目次】
まえがき 東野圭吾
本書について/巻末「ミステリーを書くためのFAQ」について →これは本書の内容のあんまり便利でないINDEXに過ぎないので、本書を最初から最後まで読んだら同じことである。

第1章 ミステリーとは
はじめに人ありき (福井晴敏)
ミステリーを使う視点 (天童荒太)
ミステリーと純文学のちがい (森村誠一)

第2章 ミステリーを書く前に
オリジナリティがあるアイデアの探し方(東野圭吾)
どうしても書かなければ、と思うとき(法月綸太郎)
アイデア発見のための四つの入り口 (阿刀田高)
実例・アイデアから作品へ (有栖川有栖)
アイデアの源泉を大河にするまで (柄刀一)
ジャンルの選び方 (山田正紀)
クラシックに学ぶ (五十嵐貴久)
冒険小説の取材について (船戸与一)
長期取材における、私の方法 (垣根涼介)

第3章 ミステリーを書く
プロットの作り方(宮部みゆき)
プロットの作り方(乙一)
本格推理小説におけるプロットの構築 (二階堂黎人)
真ん中でブン投げろっ!(朱川湊人)
語り手の設定 (北村薫)
視点の選び方 (真保裕一)
ブスの気持ちと視点から(岩井志麻子)
文体について(北方謙三)
登場人物に生きた個性を与えるには(柴田よしき)
登場人物に厚みを持たせる方法(野沢尚)
背景描写と雰囲気作り(楡周平)
セリフの書き方(黒川博行)
ノワールを書くということ(馳星周)
会話に大切なこと(石田衣良)

第4章 ミステリーをより面白くする
書き出しで読者を掴め!(伊坂幸太郎)
手がかりの埋め方(赤川次郎)
トリックの仕掛け方(綾辻行人)
叙述トリックを成功させる方法(折原一)
手段としての叙述トリック――人物属性論(我孫子武丸)
どんでん返し――いかに読者を誤導するか(逢坂剛)
ストーリーを面白くするコツ(東直己)
比喩は劇薬(小池真理子)
アクションをいかに描くか(今野敏)
悪役の特権(貴志祐介)
性描写の方法(神崎京介)
推敲のしかた(花村萬月)
タイトルの付け方(恩田陸)
作品に緊張感を持たせる方法(横山秀夫)

第5章 ミステリー作家として
シリーズの書き方(大沢在昌)
連作ミステリの私的方法論(北森鴻)
書き続けていくための幾つかの心得(香納諒一)

あとがき 大沢在昌
文庫版あとがき 今野敏

2016/11/12

学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇

kindle版
■池上彰
東京工業大学リベラルアーツセンターでの池上彰さんによる講義「現代世界を知るために」をベースにした書籍の文庫版の電子書籍版。講義の様子のダイジェストは毎週「日本経済新聞」に連載された。それを元に2013年10月文藝春秋社単行本刊、2015年11月文春文庫刊。
文庫化にあたり、加筆・修正がなされ、ISについての記述が「文庫版あとがき」に書かれている。

池上さんといえば、1994年から11年間、NHK「週刊こどもニュース」で「お父さん」役を務め、時事問題や世界の出来事などを実にわかりやすく解説してくれたかた。池上さんがNHKを退職された後は同番組の「お父さん」役は違うひとが引き継がれたがどうもイマイチで、「『NHKのお父さん役』がわかりやすいシナリオに沿って喋ってるんじゃなくて、『池上さんが』わかりやすい解説を心掛けておられたんだな。『池上さんが』凄かったんだな」という感想を強く持った。その後、NHK以外のテレビ局で同様の解説番組を池上さんがされるようになり、やはりそうかと頷いた。

そんな池上さんは著作も多いが、本書は2012年から東京工業大学リベラルアーツセンターの教授になり、その講義を元にしたシリーズ『この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう』『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」』に続く第3弾が本書である。第1弾と第2弾は未読なのだが。
第3弾は兼ねてから「現代史って学校でもきちんと習っていないし、毎日のニュースの下敷きとして知っておきたいなあ」と思っていたので、先月日替わりセールでピックアップされたのをきっかけに購入。数日かけてぼちぼち読んだ。

あくまで「浅く広く」ではあるのだろうが、わかりやすかった。「こういう事件が起きたのは、そもそも…」という歴史的な流れをざっくり説明してくれるので、納得しやすい。わかりやすい。詳しい人には「今更…」なのかも知れないが。でもちょっと前の出来事についてだから知ってるんだけど、この本を読んで「ああ、あったあった。ノド元過ぎたら忘れてるけど、そーだったよな」と再確認することも結構あったり。「なんとなく知ってるけど」をきちんと補強してもらったり。やっぱり現代史は2016年11月の今日にもつながっているわけで、こういう本を読んで流れで先日のアメリカ大統領選の結果とかを見ると「うーーーーん」という気持ちになったり(ブッシュって本当に最悪だったよな、やっぱり誰がアメリカ大統領かって大事な問題だよな、とか)。
別にアメリカの話だけではなくて、イギリスとか中国とかロシア(ソ連)とか世界の出来事と歴史がわかりやすくピックアップされていて面白い。日本のことは関連で出てくるくらいなんだけど、それは第2弾で多分語られているはず(やっぱり読むべきか)。

もちろんこれは「池上彰」というひとりのジャーナリストの見解に基づいているから、違う意見や別の見方もあるだろう。そのことは常に頭の中に置いておかないといけないことは百も承知だ。でもまあ、全体として、そんなに偏ってはいないと思うけど。
本書を読んで「風吹けば桶屋が儲かる、じゃないけど、歴史は全部つながってるんだな」ということを強く再認識した。池上先生の言葉によれば
歴史は暗記物ではありません。】【因果関係を辿っていく学問なのです。
また、
「自国の利益のために他国に干渉したりなんだりすると結果的に最終的に自国に跳ね返ってくる」という意味の言葉は太字で書かれており、本書で世界のいろんな悲惨な事件を続けざまに読んでくると本当にそうだなと切実な感じで深く納得できる。
引用すると、
自国の都合で他国に手を突っ込むと、結局は自国に難題が降りかかることがある。各国とも、これを繰り返してきたのです。こうした愚かな歴史を知ることで、少しでも失敗を繰り返さないようにする。これが、現代史を学ぶ意味なのです。
(赤字は原文で太字表記されている箇所)

本書の最後に書かれている、
歴史を知らない指導者は、危険極まりない存在であることを示したのです。】という言葉はブッシュ大統領を批判して書かれたものですが、そのまんま、次期大統領に決まったトランプとかいう御仁にも当て嵌まりそうで……。
「歴史は繰り返す」にならないことを、切に、願う。本当に。

【目次】
はじめに 冷戦がわかると「この世界のかたち」が見える
Lecture1 東西冷戦 世界はなぜ2つに分かれたのか
Lecture2 ソ連崩壊 プーチンはスターリンの再来なのか
Lecture3 台湾と中国 対立しても尖閣で一致するわけ
Lecture4 北朝鮮 なぜ核で「一発逆転」を狙うのか
Lecture5 中東 日本にも飛び火? イスラエルやシリアの紛争
Lecture6 キューバ危機 世界が核戦争寸前になった瞬間
Lecture7 ベトナム戦争 アメリカ最大最悪のトラウマ
Lecture8 カンボジア 大虐殺「ポル・ポト」という謎
Lecture9 天安門事件 「反日」の原点を知っておこう
Lecture10 中国 「経済成長」の代償を支払う日
Lecture11 通貨 お金が「商品」になった
Lecture12 エネルギー 石油を「武器」にした人々
Lecture13 EU 「ひとつのヨーロッパ」という夢と挫折
Lecture14 9・11 世界はテロから何を学べる?
あとがきに代えて それでも未来へ進むために
文庫版あとがき

2016/11/09

永楽屋 細辻伊兵衛商店 RAAK 2WAYがま口バッグBOOK

■永楽屋 細辻伊兵衛商店
先月、散歩のために降りた近場だけど初めての駅、そこから歩いて違う電鉄会社の駅まで。ここも初めて。その近くの町の本屋さんで見つけたけどそのときは「もったいないかなー贅沢かなー」と購入を見送った。でもなんとなく忘れ難く、11月9日に難波の大きい書店に行ったときに「もう売り切れてるかもしれないけど、もしあったら買おう」と思った。探したけど女性誌のコーナーには無くて、そしたらますます欲しくなって、もしかしたらと手芸関係のコーナーに行ってみたら1冊だけ、あった。買った。定価¥1,800円+消費税(=¥1,944)。数年前にリバティのバッグが付いたオマケつき雑誌買ったけど、2回目だな。
いまAmazon見たら正規のはもう売り切れてて中古が¥2,677~出品されている。利鞘稼ぐために商売で買ってるってことなんだろうなあ。うーん。
こういうのの記事は早く書かないと意味ないですね、すみません。ネットでググってみたら、オマケ付き雑誌だけを紹介しているサイトさんとかもいくつかあるようです。すごいなー。
雑誌付録ラボさんの該当記事

開けてみたら申し訳ばかりに薄っすいぺらぺらのカラー冊子(8ページ)が同封されている、けど、これは……「BOOK? 本? 苦しいなあ」。ほとんどオマケしか入っていない。ビックリマンチョコよりも苦しい。「かばん」だと書店では売れないからだろうけど。リバティのやつはちゃんと雑誌としても成立してたけどこれは「パンフレット」だと思う。

がま口バッグは表紙の写真で見るよりもパンダの白がくすんでいるかな。全体的にくすんでいるかな。ちゃちい、かもしれない。まあ、値段が安いから。でもパンダ可愛い! 形も可愛い! だから重いものは入れられないというか、入れたくない。ハンカチとお財布くらいかな。ほぼファッションというか、「服装上の飾り」として愛用したい。大事にする。
永楽屋のホームページに行ってみたら、ガマ口バッグは取り扱いが無かった。
RAAKというのは何かと思ったら、【現当主十四世細辻伊兵衛が立ち上げた 手ぬぐいブランド】らしい。

ふつう、かばんを買うときは実物を手に取ってみて、色とかチャックの具合だとか内ポケットの有る無しや、縫製の丈夫さなどすべて細かくチェックして納得して購入することが可能であるが、こういう「オマケ」はそれが一切、出来ない。お店の側がどういうスタンスでこういう売り方をしているのかはわからないけど、「チェックできない」っていうことをどういうふうに捉えているか、っていう条件についての解釈がこういう商品を売る側・買う側双方であんまり乖離してなければまあいいんだな、というようなことを考えた。
「安い」のはそういう面もあるのかな、とかね。「アンテナ」の意味もあるとは思うんだけどね。

永楽屋 細辻伊兵衛商店ホームページ

2016/11/08

木曜組曲 【約17年ぶりの再読】

木曜組曲 (徳間文庫)
木曜組曲 (徳間文庫)
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徳間書店 (2014-05-14)
売り上げランキング: 28,631
kindle版
■恩田陸
初めて読んだ恩田陸は『木曜組曲』だった。
1999年11月徳間書店刊。
書評誌「本の雑誌」で取り上げられていて興味を持ったのがきっかけ。
数年後ホームページで恩田陸についてのコメントを書くときに、【そのしっとりした、女たちの静かな戦いに「こういうミステリーもあるのか」と衝撃を受けたことを今でも覚えている。】と記したのがパソコン内に残っている。
単行本は何年か前に処分してしまっている。
内容については「女の人4人くらいだけしか出てこない」「面白かった。良かった。」という感覚をぼんやり覚えているだけで、ほぼ忘却の彼方。題名キレイですよね~。恩田陸はタイトル付けが昔から上手いんだよな~。

今年の7月のkindle月替わりセール対象品になっていて、ぎりぎりまで迷って購入だけしてあった、のをようやく今朝から読みだした。うーん、見事に忘れているなあ! 読んでいてもほぼ既読感無し(17年前の既読なんて初読みと同義語か。)
いざ読みだしたらやっぱり面白くて読みやすいしミステリーなので先が気になる。というわけで、昼休みと帰宅後読書であっというまに読了。うーん、エンタメだなあ。久々に恩田陸読んだけど、このひとお話考えたり書いたりするの大好きなひとなんだなあ、ということをしみじみ感じた。あの最終部のこれでもかの畳み掛け。こういうのを読むとわたしはパン作りの最初の工程を連想する。丁寧にこねればこねるほど、美味しいパンが出来る。ひっくり返し、こね、生地を引き伸ばし、たたきつけ、伸びた生地をまたたたんで、こねる。こねる。こねる。
…ちょっとしつこいかな? って思わないでもなかったけど。

この話は舞台が「うぐいす館」という1軒の家の中で完結し、登場人物は女性ばかり5人だけという、非常に伝統的な「本格ミステリ」的な作りをしている。それがまず素晴らしい。4年前に亡くなった、多くの熱心なファンを持つ小説家、重松時子をめぐる5人の女たち――。
4年前の時子の突然の服毒死は、遺書が見つかったこともあり、自殺として処理された。
だが、それは果たして真実だったのか――?
というミステリーだ。
こういう、「過去の事件の真相を探る」というのも黄金期にもよく見られる王道ミステリーですね。
4人のお客はみんな健啖家で、よく食べる。食事シーン、メニューなども読んでいて楽しい。

本格ミステリ好きのツボをよく心得ていらっしゃるなあ、面白いなあ、と心ゆくまで愉しめた。
ちょっと気になったのは、複数がいっぺんに会話するシーンで誰が喋っているのか意味がある場合はもちろんきちんと書き分けているのだけど、本当に雑談の場面では全員が女性言葉で同じように喋るので誰が喋っているのかわからないこと。まあ、区別する意味がないから区別していないのかなと思うけど。無駄にモノローグが長いなー冗長だなーというのも時たま気になったかな? 全体としてそんなに長い小説ではないけど。

登場人物は
重松時子(故人。作家。)
綾部えい子(時子の元同居人。料理が上手い。経験豊かな敏腕編集者だが、物語のほとんどでは家政婦とか料理人の印象が強い)。
重松静子(時子の異母妹。父親の会社を手伝いつつ、小さな出版プロダクションを経営している。)
塩谷絵里子(静子の母の妹の娘。ノンフィクション系のライター。)
林田尚美(時子の弟の娘。主婦かつ、ミステリーなどエンタメ系の売れっ子作家。)
杉本つかさ(尚美の異母姉妹。歯科技工士兼純文学作家。)
…モノを書く人たちだからこその筋立てになっているのです。

2016/11/07

白いおうむの森

童話集 白いおうむの森 (ちくま文庫)
筑摩書房 (2013-09-27)
売り上げランキング: 3
kindle版
■安房直子
昨日のkindle日替わりセールで上がってきて「おお、懐かしいな」と購入。
以前に読んだのは高校生くらいだっけかなあ、地元の小さな書店で、ピンクの講談社文庫で。タイトルに「花束」とついていたように思うのだが、さっきからネットで随分検索したけれどそのような本の画像は見つけられなくて、もしかしたら立原えりかの童話集と記憶違いの可能性があるんじゃ……と思えてきた。
てことは、初?
このひとのお名前を初めてみたとき以来ずっと「安部公房を連想させるなあ」と思っていたのだけれど、このたびあらためて検索してみて当たり前だけど関係はないのであった。
さっきからどうでもいい独り言みたいなことばっかり書いていて、すみません。

【目次】順に感想を。
内容・ストーリーに触れていますので、白紙で読みたい方はスルーしてください。

雪窓
タイトルがきれい。屋台のおでん屋さんの名前なのです。お客さんとしてやってきたたぬきさんがあまりにもおでんに関心を示すのでお手伝いとして雇って毎日仕事終わりにいっぱいやるのとかほのぼの~。と思っていたら幼い頃死んだ娘が成長したらかくや、と思われる16歳の娘さんがやってきて……店主がものすごい思い込みの強さを示すのがなんだか読んでいて意味不明で痛々しくて苦々しかったんだけど、この後の話とか読んでいくうちにだんだん思い出してきたんだけどそう、童話ってこういう「理屈では説明できないけど、でも絶対そうなの!」という思考回路が頻出する世界だったなあ。

白いおうむの森
おそらく十歳になるかならないかの少女みずえが主人公。宝石店の中の大きなゴムの記に白いおうむがとまっていて、「こんにちはー」しか言わないんだけど、みずえは幼いころに亡くなったという自分のお姉さんの名前を憶えさせようと毎日通っておうむに話しかけている。この設定時点で「えー?」と思ったけど、この店の店主がインド人で、そしてあるときおうむがいなくなって、店主からみずえが飼っているミーという猫が食べたんだろうとか決めつけてくるのとかもう「えええええー?」って感じだった。いやいやいやいや、仮に猫が食べたとしてもですよ? 町の中に猫なんか何匹でもいるでしょう。意味がわかんない。でもそういわれて「そういえば最近ミーは元気がなかった」とか結構あっさり信じるみずえとかもう童話世界ルールすごいですね。さらにミーまでいなくなって、みずえはすぐにインド人が復讐のためにさらったのだと悟る(=根拠のない思い込みですとも、ええ)のです。そして店に行ったらゴムの木の陰に地下に降りていく階段とか出来てて、そこを降りていくとさらにすごい世界に通じているのです。もうここまでくるとツッコむのは忘れて「童話すげー!」とひたるしかありません。最後の展開はちょっとびっくりしました。子どもたちはこのやり場のない思いをどう消化させるのでしょう。

鶴の家
この話の展開はまったく予想外でした。
てっきり復讐だと思ってずっと読んでいったので、最後まで疑いながら読んでいったので、最後「おおおおお」と思った。
青いお皿。最初小さいお皿みたいに受け取れる書き方をされていたので、途中で「大皿」って出てきたのでびっくりした。ああでもいま読み返したら長吉さんはちゃんと【両手で受け取って】いるなあ。そっかそっかー。大きい青い皿に丹頂鶴。想像するだに、美しい。丹頂さんは、怒ってなかったのかな。どうだったのかな。どういう気持ちで、お皿をくれたのかなあ。

野ばらの帽子
ちょっと怖いお話。でも最後に救いがあって良かった。いまどきは、知らない十代前半の女の子に大学生が道で声をかけたら「声掛け事例」で通報されたりするんだぜ。道もきけないんだぜ。世知辛い世の中だけど、実際怖い事件がいっぱいあるから仕方ないんだぜ。
でもこの鹿のおかあさん、それこそ牧歌的な時代とはいえ、よく知らない大学生の男に自分の娘の家庭教師をやれとか言えますね。とか思って読んでいたら、鹿のほうがよっぽどウワテで怖い存在なのだった。復讐て。そんなざっくりした理由で手当たり次第に。まあ同じ「人間」というくくりですからやむを得ないのかね。

てまり
この話はよくあるお姫さまのわがままからはじまり、童話によくあるお姫さまと貧しい者の友情かと思って読んでいて、最後のところで「おおおおお」と思わされた。なあんてリアリストなんでしょう。
それにしても「はしか」。ついこの夏、久しぶりに関西では「はしか」が流行しているということでニュースになっていましたので、ちょっと面白く思いました。昔は子どもがあたり前にかかる病気だったんですよね。

長い灰色のスカート
これは怖くてすごく悲しい話。なのにとても美しく幻想的に、妖しく、引き込まれるように描いてある。絵を思いうかべるとぞっとしつつも主人公の少女がどんどん中に入っていくのを止めたい、やめなさいという思いと幼い弟を隠してしまったモノへの怒りが込み上げてくる。灰色の長い長いスカートの襞。怖い。最後のところを読んで、必死に探し回ってやっと姉だけは生きて見つけたお父さんの気持ちとかを忖度して、とても悲しくやりきれない思いがした。

野の音
泰山木の花ってとっても綺麗ですよね。大きくて、豪華で。うっとり。でもこのお話を読んでしまったからには、また全然違う目で泰山木の木を(もしそれが大きい木であればあるほど)見上げてしまうかも、という気がしました。最初のところで女の子が消えてしまうくだりで店主のおばあさんが全然我関せずっていうふりをしていたので「あれ?このおばあさんの仕業じゃないのかな」と思ったけど、どんどんわかっていくとなんであんなふうな静かな書き方だったのかなあと思う。いま、そこのところを読み返してみたけど、うーん、なるほど、うーん。そうか、このひとにとっては別に当たり前のことだから、かな…。作業が滞りなく進んだ、それだけのことということか。怖いねー。
助けに来たお兄さんが最後ああいうことになって、でも読後感は何故だか「ハッピーエンド」なのだった、おかしいかな? そもそもこのお兄さんの望みはなんだったんだろうとか、まあ、これが童話じゃなくて、そしてこういう世界での出来事じゃなかったら絶対絶望的なラストの筈なんだけど。泰山木の魔法にかけられちゃったのかしら。


お話たちは、どれも「昔話」のような懐かしい雰囲気を持っていて、でも実際はどれもそんなに昔の話ではない。
アンゴラの手袋が忘れ物だったり、バスが走っていたり、自動ドアが開いたり、ランプの光に照らしたり、マーケットにお母さんと行ったり、ストーブとカーテンとミシンがあったりする。そういうのが出てこないのは「てまり」だけで、これは他の話より少し時代設定が昔というふうに読める。

本書は1973年11月筑摩書房より刊行され、1986年8月にちくま文庫に収録された。とある。電子化にあたり、解説と画像は割愛したともある。
そうかー、1973年か……40年と少し前。
40年前は「昔話」かも知れないな。作者がどういう時代設定で描いたかわかんないけど……。

2016/11/05

レモン畑の吸血鬼


レモン畑の吸血鬼
レモン畑の吸血鬼
posted with amazlet at 16.11.05
カレン・ラッセル
河出書房新社
売り上げランキング: 175,749
■カレン・ラッセル 翻訳:松田青子
松田さんの小説とエッセイを読み、以前からタイトルと素敵な表紙に興味は持っていたけどどうなのかな~と眺めていた『レモン畑の吸血鬼』がこの松田さんの翻訳だと認識し、俄然読みたくなって購入。カバーしていても素敵だし、カバーを外しても素敵……装丁は、やはりそうでしたかの名久井さん。

現代アメリカ小説で前衛的なのは時に難解というか、読み手が試されているような感じの作品があったりするが、カレン・ラッセルは予想したよりもずっとわかりやすかった。そして設定が変わっていて、「レモン畑の吸血鬼」なんていうから可愛らしい感じなのかと思わせておいてズダーンと急展開を持ってきたりとか、作品によっていろんな違う空気と世界観を創り出していて、わくわくするというかセンスオブワンダーというか、「次の話はどうくるのかな」という楽しみがあった。

カレン・ラッセルは1981年フロリダ州マイアミ生まれ。松田さんは1979年生まれ。原著者と翻訳者が同世代だというのも、良いんだろうな。

注意! 以下、ストーリー展開や内容に触れながら感想などのコメントを書きます。
本書を未読の方はスルー推奨。
別に展開を知ったからといって価値が無くなるとは思わないけれど、知らないで読んだ方が断然面白いしどきどきわくわく出来ると思うので。

【目次】
レモン畑の吸血鬼
イタリアのナポリ、ソレントのレモン畑に小ざっぱりした服装の日焼けしたノンノ(じいさん)が座っている。彼は吸血鬼である。『ポーの一族』は薔薇を育てて生きていたけれど、彼とその妻はいろいろ試した結果、レモンが一番だという結論に達した。
青年期をセオリー通りに暮らしてきたの吸血鬼が妻と出会い、
で、血に何の効果もないことにいつ気がついたの?
と訊かれるところとか、めちゃくちゃ面白い。
明るい陽光の中の、ほのぼのしたシーンから、意外な吸血鬼像ときて、さて、と思って読んでいたら吸血鬼夫婦の熟年破局ときて、そこからなんでかわからないけどいかにも昔ながらのホラーチックな吸血鬼物的展開になっていくのが……。
変な話だなあ。前半の空気が好きだった。

お国のための糸繰り
なんと舞台は明治時代の日本。製糸工場の女工もの。
でもただの女工物じゃなくてなんとここに連れてこられるときに飲まされたものによって彼女たちは……。
主人公が飲むところはぞわぞわっ。なんてものを飲むの!信じられん!
彼女たちの映像をリアルに想像することを脳が拒否する、かなりグロテスクな絵づらだなあ。でも布とかは綺麗なんだよな……最初からそれぞれの色が付いてるとか……すごいこと発想するなあとびっくりしながら読んだ。
映画化絶対しないでね。

一九七九年、カモメ軍団、ストロング・ビーチを襲う
なんかこれは男性がよく書く現代アメリカ小説っぽいな。
少年の、片思いの相手が自分の兄と付き合って悶々とするのとか。
カモメたちがいろんなものを取ってきて集めている巣を見つけてその中身を出してきて取る言動とかが理解しにくいんだけど、でもなんとなくそうしなければいけないような気がするのもわかるというか。指輪のくだりはちょっと意外だったなあ。やられっぱなしじゃないんだー。でも随分なビッチだなあ。

証明
西部開拓時代みたいな。
この地では監査官によって「証明」してもらわないと自分の土地に出来ない。んでそこで重要な役割を持つのが何故か「ガラス製の窓」だというね。「ガラス製の窓」は貴重でどこの家でも持てるものじゃないからこっそりみんなで共有して監査官が来る時だけ嵌め込んでしのぐんだとか。で、主人公の少年は父親に重要な任務を任されるんだけど……。展開はセオリー。お母さんが止めるのとか。少年が早く大人として認められたがるとか。わかりやすい心理描写と、ちょっと次元の歪んだ状況・設定描写のズレが面白い。
悪夢的というのか、ちょっとカフカっぽいかなあ。

任期終わりの廏
この話ではなぜか歴代のアメリカ大統領たちが馬に転生している。でも全員じゃないし、転生の順番もばらばら。それについての説明もいっさい無し。
みんな、ある家の厩に連れてこられて飼われている。厩の中の半数は生粋の馬。敷地から抜け出そうと試みる馬もいた。そして成功したのは1頭だけ。
アメリカ大統領についての関心があんまりないからここにいる大統領たちにどういう意味があるのかとかよくわからないけど、抜け出した後に蹄の跡が無いっていうのが怖い。なんなんだろうなー。

ダグバート・シャックルトンの南極観戦注意事項
南極で毎年開催されている「食物連鎖対戦」(なんじゃそりゃ)。対戦するのはクジラ対オキアミ……って食物連鎖的に勝敗ハナから決まってますケド!? というツッコミがなされる余地は一切ない。
観戦における、オキアミチームメンバー注意事項。
途中から、書き手の関心はむしろ別れた妻なんだなーということがわかってくる話でもある。
それにしても南極にクジラ対オキアミの試合を観に行くとか、凄い設定を思いつくなあ。

帰還兵
昔、小説に書かれる帰還兵といえばベトナム帰りと決まっていたが昨今はイラクなんだね。
主人公はベテランの女性マッサージ師。
軍曹だったまだ若い彼の背中には、戦友を亡くしたときの「記念」としてタトゥーが彫られていた。
刺青が現実にあった「絵」になっていて、その背中をマッサージしていくと起こる奇妙で不思議な現象と青年に起こる変化が面白い。
なんかちょっと心理カウンセラー的な役割をマッサージ師が担っているのとかも。ちょっと魔法の世界というか夢判断というのか、理屈で説明できないけど感情的感覚的には「ありそう」「あるかも」「あったら面白いな」的な。ハッピーエンドの方向に行くのかと思いきや途中から変化していくのも一筋縄じゃなくて良し。危うさは見せかけて、安直な恋愛に落とし込まないのも良し。

エリック・ミューティスの墓なし人形
悪ガキ4人組が自分たちのシマで案山子を見つける。
ほのぼのした話かと思いきやかなり重たいテーマを背負っていて、読んでいてどんどん気が滅入っていった。でもリアルだなあ。すごい説得力がある。主人公のちょっと昔の感情も、現在の奇妙な非科学的な恐怖心も。思いついたことから逃れられなくなっていって、冷静に見たら「なんで?」ってことなんだけど、でも主人公にはそうとしか思えないし、実際にこの話の中の「実際」はそれに沿う展開をする。例によって合理的な説明も解説も何もないままなんだけど。
いろんな意味で救いが無い。最後のほうの展開はせめてもの気休め、くらいにしか思えないしなあ…。
この話はしかしすべての十代に読んでもらいたい気はする。この感情を、自分の中で再確認してもらうために。

2016/10/29

バーナード嬢曰く。3巻 【漫画】

バーナード嬢曰く。 3 (IDコミックス REXコミックス)
施川ユウキ
一迅社 (2016-10-27)
売り上げランキング: 175
■施川ユウキ
第3巻が発売されています。
絶好調に面白いです。
なんと深夜枠でアニメにもなっているのですね。

第3巻はSF以外の本がけっこうあって、わたしが既読作品も多くて、共感しやすかった。
エドワード・ゴーリーも出てきたよ!

町田さわこ(ド嬢)が初期に比べてちゃんと本読んでることが多くなったなあ。
神林さんの台詞にはいつも爆笑させられますwww

しっかし……相変わらず絵は本当に下手だなー(内容がこれだけ面白いから良いんだけど)。

アニメ観てみたけどみんな恐ろしく早口だった!

デラックスじゃない

デラックスじゃない (双葉文庫)
マツコ・デラックス
双葉社 (2016-06-16)
売り上げランキング: 15,913
kindle版
■マツコ・デラックス
2014年6月双葉社刊の単行本の電子書籍版を「買おうかしら~(興味あるわ~)でも単行本価格出して買うほどではないというか…」と迷っていたのがいつのまにか文庫化&文庫価格電子書籍化していた(手持ちの発行日は2016.8.31になっているけどAmazonだと2016.6.16なのは文庫の発売日ってことかしら)のに気付いて購入したわ。

読んでの感想としては、まんま、テレビで観る印象・イメージどおりのマツコさん、って感じだったわ。気軽に読めるし、面白かったわよ。
「文章で読むとイメージ違ったわ~」とか全然なかった。
でも正直、
「あれ? マツコさん雑誌の編集のバイトとかされてた過去があったり、いろんなポリシーがおありのような生き方されているわりに文章は全然こだわっていないというか正直全然……なのね」
と少しガッカリしてしまったのも事実よ。
タレントさんの書かれた本を読むのははじめてじゃないけど、あのマツコさんだから、もう少し何か、深い知性を覗かせる文才を期待してしまっていたのね。
「でもまあ、マツコさんがふだん言ってるスタンスのままだし、マツコさん好きだし、内容は気軽に読めるし悪くないし」
と自分に言い聞かせながら最後まで読んで、びっくりしたわ。
「2016年の世迷いごと。」は小社月刊誌『EX大衆』2014年8月号~2016年6月号に掲載された連載「マツコ・デラックスの売られてないけど買い言葉」に加筆・修正をしたものです。また本書は語り起こしです。
なんて書いてあるじゃないの。
「2016年の世迷いごと。」っていうのは「文庫化によせて」として「おわりに」の後に収録されている一章分で、まあ、よくある文庫化に際してのボーナス・トラックみたいなものね。これは月刊誌に連載されたものである、と。まあそれはわかるわよ。問題はその後よ。
本書は語り起こしです。
語り起こしなんて言葉、寡聞にして初めて聞いたので思わずググってしまったわ。どうやらまだ新しい言葉のようね。
「書き下ろし」は作家が雑誌連載をせずにいきなり単行本として発表すること。
ひとが話したことを文字にするのを「活字に起こす」と言うわね。
このふたつをあわせたような意味らしいわ。
つまりマツコさんが書いたわけじゃない、ってことなの。

どぉーりで魂の抜けた文章だったわけよ!!!(超納得したわ。)

誤解しないで欲しいのだけど、マツコさんを責める気は一ミリも無いわ。
責めるとしたら本書担当の編集者ね。あと「起こし」た人物にも「もうちょっと、神経つかってもよかったんじゃないの」と言いたくはあるわね。
ところどころ雑なのよ。具体的にいえば、実際にあった出来事について触れるときにウィキペディアから引用したような説明くさい文章がものすごくくだけた話し言葉の中にいきなり放り込まれているのが何回かあって、そこだけ明らかに浮いているのね。
まあ、こちらが細かいこと言っているのは百も承知よ。
気にしなければ気にならないレベルなのかもしれないわ。でも、
「素人くさいわね~。まあ、マツコさんはプロの文筆家じゃないから仕方ないのかしら」
って読んでる最中思っちゃったのよ。
あたしはマツコさんが好きだから「仕方ないのかしら」なんて彼女に対して思いたくなかったわ!
それなのに最後の最後のページを読むまで誤解してしまっていたのよ!
あなたたちがマツコさんのこと愛してこの仕事を大事にしていたらこの程度の直し入れることは簡単に出来たはずよ。
だっていままで口述筆記(語り起こしなんて言わなくても昔からちゃんとある言葉よ)の作品や、対談・鼎談の記事を読んだことが何度もあるけれど、みんなきちんとしていたもの。
マツコさんの名前を使うんだったら、彼女の価値を貶めないようにちゃんと仕事してよね!
と言いたいわ。

内容は、ふだんテレビで全部観ているわけじゃなくて、ほんの一部しか知らないけれども「マツコさんって『毒舌』とか言われているけどすごく常識家でマナーもきちんとされている方ね」って思っていたそのとおりのことが書かれていたって感じよ。
あんまり年齢も変わらないので、世代的に共感しやすいっていうのもあるのかしら。例えば、ネット社会、SNSについての感覚とか。でも彼女はネットで批評される対象にあるから、より感性が鋭くなっているなとは思ったわね。
印象に残ったことは、なんとなく彼女は自分の体形を変えたいとか思っていないと勝手に思ってしまっていたので、たびたびダイエットに挑戦されている、というのは少し意外だったわ。でも確かに、スタイル云々じゃなくて、体調や健康上、生活していくうえでの不便さとかがあるわけね。マツコさんには長生きしてほしいから、そこはご自愛いただきたいと思ったわ。
それと、趣味がない、というのも意外というか……逆に何故そこまで「趣味に至らない」で終わってしまうのかがわからなかったわ。
仕事がきちんとあるし、生活に困っていないし、でも【ここんとこ、ずっとテレビ局と自宅マンションを往復するだけの日々ね】というつぶやきが何度か出てくるんだけど、その気持ちはわたしも覚えがある、と思った。というか、たぶん多くの人がそれで趣味や恋愛に時間をかけるんだと思う。でもマツコさんの場合、いままでの人生で満足感を得たことがあまりなくて、あるとき脳科学の先生から「もともとあるはずだったDNAが1つない」から説(そういうひとは「食」に走るから肥満になりやすい)を聞いて納得していて、マツコさんが趣味やペットにハマれないのはそういう影響があるのかもしれないわね。まぁ、どこまで本当か、よくわからないけれど…。

今回の感想は本書の文体にあわせてオネエ言葉で通してみたわ。読みにくかったり不愉快だったらごめんなさいね。

【目次】
はじめに ~ずっと迷って生きてきました。いまもまだ迷っているんです~
第一章 生来 ~いまのアタシを作った出来事~
流されて四十年~マツコの半生略歴 A面~/モラリストのDNA~エアコンと二槽式洗濯機と両親と~/女装のはじまり~初めての口紅、思春期のポスター~/マツコが思うマツコ~差別されてるから笑われてんのよ!~
第二章 懺悔 ~編集者・文筆家・タレントとして爆走後~
編集者マツコの全力疾走~ゲイの闘いIN高知~/破天荒コンプレックス~文筆家時代のウソ~/一生の不覚~思い込みという視野狭窄~
第三章 怠惰 ~変わらない私生活~
超自堕落にて四十年~マツコの半生略歴 B面~/無欲な食欲~デブはビールを飲んでも酔いません~/夜更けの縄跳び~リバウンド尽くしのダイエット~
第四章 趣味 ~地味すぎる息抜き~
体重のせいでベッド破壊~大塚家具探検に行く~/ジオラマ&MAPに釘づけ~森タワーで働きたい~/伝統芸ハロプロ鑑賞~日本を歌うアイドルにくびったけ~
第五章 覚悟 ~電波芸者の意地~
アタシがテレビを選んだ理由~いい加減さにぴったりハマった~/安っぽい正義感なんてクソ喰らえ~振り向けばネット住民~/生涯ケンカ宣言~制約とギリギリのせめぎ合い中~/テレビへの恩返し~午後11時台こそ新ゴールデン・タイム~
おわりに ~アタシの人生は旧時代のメディアと一緒に没落していく~
文庫化によせて 2016年の世迷いごと。

2016/10/27

辺境中毒!

【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)
集英社 (2014-05-01)
売り上げランキング: 4,603
kindle版
■高野秀行
2008年に本の雑誌社から出た単行本『辺境の旅はゾウにかぎる』を改題し、親本の冒頭にあったエッセイをカットし最後に角幡氏との対談記事を入れた、2011年10月20日集英社文庫の電子書籍版。
それと、わざわざ「カラー版」とあるけど(kindle版では関係無いけど)本書には表紙以外の写真は無くて、しかも表紙も文字だけのカラーだし、いったいなにをそんなに「カラー」強調しているのかなあ?
Amazonの9月26日の日替わりセールで購入だけしてあったのを先日からようやく手をつけた。

本書には『アヘン王国潜入記』のその直後談とでもいうべき「アヘン王国脱出記」が載っていて相変わらず大変そうなところに足を突っ込んでいるなあ。『潜入記』は未読。だってアヘン作ってる集落とかそんなヤヤコシソーなところに関心が向かないんだよなあ。

余談になるが、感想を書くためにウィキペディアを開いたら奥さんの情報が載っていて、片野ゆかさんというやはりノンフィクション作家さんらしい。高野さんと同じ年の生まれ。奥さんと一緒に探検行った著作ってあるのかな? 高野さんの本は結構多いんだけどたまに興味がわいたら読んでるだけなので全然読めてないんだよなあ。
高野さんの著作を読むと「ひゃー、よーやるわー わたしには到底無理やわー」と何回も思う、というか、氏の本に臨むときはハナからそういう「構え」になっているのでハードルは上がっているはずなのであるが、それでも今回も何ヶ所かで「ギャー」と心中顔を顰めたり「無理無理無理無理」と具体的に想像することを意図的に排しながら読んだりした。

本書にはそういう冒険実話のほかに、探究心・探検絡みで数名との対談や書評がたくさん収録されていて、とても面白い。
内澤旬子との対談が白眉かな。高野さんも変だと思うけど内澤さんも想像の斜め上を行く変人だとわかった。前から興味はあって、でも書籍できちんと読んだことがなかったんだけど。気持ちのほんの端っこはわかるけど(良いなと思うものは欲しくなる、というのはよくわかるがその対象と入手困難度と実地で行くっていうのが…)。大槻ケンヂのエッセイには二十代のときハマったけどとかたしかに波長合いそうだな~。なんと角田の光ちゃんともやっている、そういえば昔はバックパッカーだったもんね。マラリアの話、書いてた書いてた。
書評は自分がふだん読まないジャンルだけに書評だけでも「ふーん、そんな世界があるのか」と。こういうふうにわかりやすく概要を説明してくれるのはありがたい。中島京子の著作がとりあげられていたのも意外だったが肝心のタイトルになっている作品についてまったく触れられていないのはどうかと思う。紙幅の都合だろうが、だったら書籍化するときに加筆してほしかったなあ。でも中島京子をこういう視点で評しているのは初めて読んだ。読みたくなるな~。

旅に持って行く7つ道具の話で「コンタクトレンズ」が含まれていて、普段はメガネなのだけれどメガネをかけていると一発で「外国人」とわかってしまうからコンタクトが良い、というのが「へえ~」と思った。文明度はコンタクトのほうが最先端なんだけどまあ、見た目にはわからないし、高野さんが行くような辺境では「メガネ」はまだまだ「文明国」の象徴なんだなあとびっくり。
あと辺境で何でも食べる、っていうのはなんとなく知っていたけど、猿の子どものくだりは……想像を絶するにも程がある!みんなすぐに順応したとか本当か!飢えたらわたしも順応してしまうんだろうか。想像上では到底無理なのだが…。

あと本書を読んで『三国志』は読んだけど『水滸伝』は未読なので読んどくべきか…。高野さん、『南総里見八犬伝』とかも既読のようで、そういうイメージ無いけど、読書家だよなあ。
旅先に持って行く本でいつもものすごく悩むそうだが、近年の電子書籍は導入なさってるのかな。メガネもダメなんだからタブレットとかはお話にならないのかな。ちょっと気になる。

以下に目次を写したが……謎なのが、「対談 辺境+越境」の章の編集方法で、エッセイと対談が交互に組まれているのだが、関係があるわけではなく、本書巻末の初出を見ても掲載誌も時期も全然別なのだ。よくわからんなー。

【目次】
ケシの花ひらくアジアの丘
「辺境」へ。それは、ブラックボックスをのぞく旅
アヘン王国脱出記
テレビの理不尽「ビルマロード」世界初完全踏破の裏側
ミャンマーのゾウに乗って
乗り物――牛とゾウという乗り物
野生動物――ヤマアラシの肉はかたかった
雨季――道が川になるミャンマーの雨
服――リラックス・タイムはやっぱりロンジー
酒――草葺き屋台で飲むヤシ酒の味
宝石――ルビーとヒスイの宝庫
金――なぜミャンマー人は黄金が好きなのか
六十年の詐欺
対談 辺境+越境
 「ショー」よりも「幕間」を
旅――自由気ままもムズカシイ。【角田光代】
ゾウ語の研究
人生は旅だ! 冒険だ! 【井原美紀】
中島みゆきは外国の夜行によく似合う
現場が一番おもしろい! エンタメ・ノンフィクション宣言【内澤旬子】
暦――辺境地の新年を考える
ノンフィクションから小説へ【船戸与一】
田舎の駄菓子屋で出会った不思議な切手
『ムー』はプロレスである【大槻ケンヂ】
辺境読書―エンタメ・ノンフ・ブックガイド
「謎モノ」との出会い―エンタメ・ノンフとは何であるのか
旅に持って行きたい文庫
歴史的事実に沿った現代中国の「水滸伝」(『ゴールデン・トライアングル秘史』鄧賢)
ケモノとニンゲンの鮮やかな反転(『サバイバル登山家』服部文祥)
五感ギリギリの状態で生きるおもしろさ(『アマゾン源流生活』高野潤)
支隊を消した「真犯人」は誰か(『シャクルトンに消された男たち』ケリー・テイラー=ルイス)
時も場所にもこだわらない(『海の漂泊民族パジャウ』ミルダ・ドリューケ)
「伊藤」は辺境地によくいる男(『日本奥地紀行』イザベラ・バード)
言実一致のナカキョー、最高!(『均ちゃんの失踪』中島京子)
イラン人の生の声を聞こう!(『例えばイランという国――8人のイランの人々との出会い』奥圭三)
四万十川で再会(『忘れられた日本人』宮本常一)
腸の中から屠畜と土地を描く傑作ルポ(『世界屠畜紀行』内澤旬子)
男の本能がかきたてられるドタバタ探検・冒険記(『アフリカにょろり旅』青山潤)
エンタメ・ノンフの雄、宮田珠己を見よ!(『ふしぎ盆栽ホンノンボ』宮田珠己)
エンタメ・ノンフの横綱はこの人だ!(『素晴らしきラジオ体操』高橋秀実)
愉快、痛快のアジアお宝探索記(『魔境アジアお宝探索記』島津法樹)
南極探検もびっくりの秘境駅巡り(『秘境駅へ行こう!』牛山隆信)
究極のエンタメ・ノンフは純文学か(『KAMIKAZE神風』石丸元章)
ビルマ商人が見た七十年前の日本(『ビルマ商人の日本訪問記』ウ・フラ)
世間はいかにマンセームー脳人間が多いか(『X51.ORG THE ODYSSEY』佐藤健寿)
織田信長は日本初のUMA探索者か?(『信長公記』太田牛一)
いかがわしき奴らの「天国の島」(『金門島流離譚』船戸与一)
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辺境の旅はゾウにかぎる
高野 秀行
本の雑誌社
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2016/10/21

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方
「ない仕事」の作り方
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みうら じゅん
文藝春秋
売り上げランキング: 2,556
kindle版
■みうらじゅん
文藝春秋社2015年11月24日刊(単行本)の電子書籍版。日替わりセールであがってきたので購入。

みうらじゅんの単独著書を買うのは初めてかも。いとうせいこうとの共著『見仏記』は既刊全部読んだけど。
そもそもみうらじゅんというのが職業なんなのかとか謎の存在すぎたので、本書を買う動機のひとつとなったわけだけど、読んでみてビックリ、思ったよりもずっと計画的長期的に努力のひと……だった。なんか、天才肌の変わり者と思ってたし、実際読んでみてそうだと思ったけど、天才がコツコツ努力もしていたという。
天才が努力するとかもう最強じゃね!? って感じ。
努力をひとに見せないんだよね。好きなことやってますーって雰囲気なんだよね。

驚いたのは「マイブーム」と「ゆるキャラ」という言葉を考え出し、世間に広めるためにいろんな媒体使って活動したのってみうらじゅんだったんデスねー!(有名なことらしいのでコイツ今頃何言ってんだって思われるでしょうが)。
そのへんの経緯というか、具体的にどういうふうに着想→実行→実現していったのか、ノウハウが全部本書には書いてある。凄いなあ!
でも書いてあるからってそれを誰でも出来るかっていうと……。要するに「一人電通」とか言っちゃって広告代理店(しかもかなり大手の)がやるようなことを企画から実行までしちゃうんだから……
あたりまえの話だけど、大学生時代くらいから少しずつ積み上げてきた人脈とか仕事の実績とかがあって、出来ることなんだよね。で、それも全部本人の努力だから。
たまにみうらじゅんのところに「あなたみたいな仕事がしたいから雇ってくれ」と言ってくる若いのがいるらしいが……「みうらじゅんみたいな仕事」をするにはどれだけ才能があって、おまけにその上に努力と年月が積み重なっているのか、ちゃんと考えたことがあるのか、想像してみたことはないのか、あったらそんなこととてもじゃないけど言えないはずだよね。

みうらじゅんといえばややくせ毛の長髪にサングラスの怪しい風体、でインプットされていたが、ほんの駆け出しだった頃に糸井重里さんのアドバイスに従って当時の流行の最先端だったテクノカットにボストンメガネというスタイルだった時期があったらしく、その写真が本書には載っているのだがこれが……幼さが残ってて、可愛い! みうらさんてば若いころはこんなに可愛いかったのぉ!? っていうかコレがアレになんのぉ!? ヒャー!加齢って残酷!!!
男性に可愛いっていうのもナンだけど、少なくともこの写真で見る限り、二十代前半のみうらじゅんはカッコいいとかハンサムとかじゃなくて「可愛い」んだよなあ。童顔だし。
あと、氏がしばしば描かれるカエルっぽいキャラクターのイメージイラストがあるのだけれど、みうらじゅんって涙袋がくっきりあるんだね、「あーここの特徴をとらえてあの絵になるわけね、似てるわー」と初めて納得できた。

【目次】
まえがき すべては「マイブーム」から始まる

第1章 ゼロから始まる仕事 ~ゆるキャラ
「ゆるキャラ」との出会い/「ゆるキャラ」と命名/自分洗脳と収集/雑誌に売り込む/イベントを仕掛ける/ブームとは「誤解」/みうらじゅんが作った「ゆるキャラ」たち/

第2章 「ない仕事」の仕事術
1 発見と「自分洗脳」
伝わっていないものを伝える~吉本新喜劇ギャグ100連発/ないものから探す~勝手に観光協会/自分を洗脳する~テングーとゴムヘビ/逆境を面白がる~地獄表/趣味は突き詰める~ブロンソンズ/人からの影響も受ける~大島渚/好きなものが連鎖する~崖っぷち
2 ネーミングの重要性
ネーミングでマイナスをプラスにする~いやげ物/本質を突く~とんまつり/怒られることを逆転する~らくがお/重い言葉をポップにする~親孝行プレイ/流行るものは略される~シベ超/意図しないものが流行る~DT
3 広めることと伝わること
母親に向けて仕事をする~人生エロエロ/雑誌という広報誌~奥村チヨブーム/接待の重要性~VOW!/チームを組む~ザ・スライドショー/言い続けること~AMA/好きでい続けること~ディランがロック/暗黙の了解を破る~アイデン&ティティ

第3章 仕事を作るセンスの育み方
1 少年時代の「素養」が形になるまで
一人編集長~怪獣スクラップ/自分塾の大切さ~DTF/デビューと初期作品~オレに言わせりゃTV/糸井重里さんとの出会い~見ぐるしいほど愛されたい/まだないことを描く~カリフォルニアの青いバカ
2 たどり着いた仕事の流儀
見合った方法で発表する~色即ぜねれいしょん/「私が」で考えない~自分なくしの旅/不自然に生きる~グラビアン魂/安定していないふりをする~ロングヘアーという生き方/「空」に気づく~アウトドア般若心経/ぐっとくるものに出会う~シンス

第4章 子供の趣味と大人の仕事 ~仏像
仏像スクラップ/「見仏記」の開始/「大日本仏像連合」結成/「仏画ブーム」到来/「阿修羅展」という事件/仏像大使に任命

あとがき 本当の「ない仕事」 ~エロスクラップ