2014/12/31

半七捕物帳 60~61 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
60 青山の仇討 ★★
敵討ちの現場にたまたま遭遇した一家が犯罪に巻き込まれて……。
後味の良くない話だったなあ。
女の子たちは助けてあげればよかったのになんでああいう展開書いちゃうんだろうなあとちょっと立腹。

61 吉良の脇指 ★★
吉良上野介の脇差をめぐる因果?主人と妾をその脇差で殺したうえ、主家を脅した男をめぐる事件。お家お取りつぶしをこういうふうに悪用する人間がいたんだなあ(呆)。
物語の冒頭、年末の煤払いやそのご祝儀で蕎麦を食べるシーンがあり、読んでて「おお、タイムリー」と思った。大晦日の年越し蕎麦とは違うんだけどね。ちょっと引用しておきたい。

 大掃除などの無い時代であるから、歳の暮れの煤掃きは何処でも思い思いであったが、半七老人は極月十三日と決めていると云った。
「わたくしなぞは昔者ですから、新暦になっても煤掃きは十三日、それが江戸以来の習わしでしてね」
「江戸時代の煤掃きは十三日と決まっていたんですか」
「まあ、そうでしたね。たまには例外もありましたが、大抵の家では十三日に煤掃きをする事になっていました。それと云うのが、江戸城の煤掃きは十二月十三日、それに習って江戸の者は其の日に煤掃きをする。したがって、十二日、十三日には、煤掃き用の笹竹を売りに来る。赤穂義士の芝居や講談でおなじみの大高源吾の笹売りが即ちそれです。そのほかに荒神さまの絵馬を売りに来ました。それは台所の煤を払って、旧い絵馬を新らしい絵馬にかえるのです。笹売りと絵馬売り、どっちも節季らしい気分を誘い出すものでしたが、明治以来すっかり絶えてしまいました。どうも文明開化にはかないませんよ。

2014/12/28

スコーレ№4

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社
売り上げランキング: 193,118
■宮下奈都
これは紙の本(文庫)で読んだ。というか、kindleが届く前に買っていて、いままで寝かしてあったのを今日読んだ。
そもそも単行本が出た2007年に北上(次郎)さんが誉めていたのはずっと覚えていて、でも知らない作家さんだしタイトルが意味わからないし、となんとなく躊躇していた。2014年9月に『本屋さんのアンソロジー』で初めてこのかたの作品を読んで、「スコーレ№4のひとだ、そうかこういう空気を書くひとだったのか、これは是非読まねば」と思った。

意味が分からないと思っていた「スコーレ№4」というタイトルの意味は結局本文を読んでもどこにも説明は無くて、解説(北上次郎だった!まあ当然か)冒頭に至って初めてそのことに触れられているが、これも著者の言葉ではないので確定、では無い。
「スコーレ」はギリシャ語でスクールの語源となった言葉なんだそうで、そしてこの本を開けば目次には№1から4までが章の様に書かれている。

№1で主人公(麻子)は13歳だ。家のこと、家族のこと、何よりいちばん近い妹の七葉のことが描かれる。
読みはじめるやいなや小説にはふたつ種類あるんだったと思い出すことが時々あるんだけれど、これもそういう文章だった。
「ストーリー」に重点が置かれていてそこに力点を置いて読む小説と、その言葉のつらなりの美しさそのものに深い味わいを覚えることが出来る文章そのものが味わい深い小説だ。

この話は麻子が中学から高校、大学生活を経て社会人になり数年を経るまでを描いてあり、一種の「成長小説」だと思う。特に中学時代と、社会人になりたての頃にウエイトを置かれているかな。高校、大学時代はあっさりしすぎというかあっというまに通り過ぎていった感じだ。
最初の章で麻子がどういう性格で、なにをどういうふうに考えているか、家の商売や祖母の大きな影響、語られない祖父の時代のこと、美しい妹との濃密な関係と複雑な心境などがすごく丁寧にゆっくりゆっくり語られて息苦しいくらいだったから、十代の後半から就職までがほぼそれ一色といっていいくらいに、重要事項として書かれたのが従兄との初恋の話で、脳内が恋愛でいっぱいだったということだろうけど、それにしてもあまりにも「受験」とか「友情」とかが無く、しかも中学時代あれほど重きを置かれていた妹や祖母の問題もほとんど触れられなくなったことにちょっと戸惑いを感じた。

そして№3で麻子は就職して社会人になっている。
就職活動についてはほとんど書かれていない。超氷河期だったらこの苦労だけでひとつの長篇になるネタだけど、まあこのひとは優秀だったようでわりとあっさりと希望の会社に就職したようだ。そしてそこで配属された場所でしばし苦労する……けど、持ち前の能力で鮮やかに切り抜けていく。
これは№1を中心に積み上げてきていた彼女の地道な努力と持って生まれたセンスの良さがとてもうまい具合に効いていて、説得力があるのだ。

で、№4での出会い、飛躍。

正直№3まではわりとじわじわとした地味な努力とか内面描写とかそういう世界だったのが、№4でかなりいきなり垢抜ける。ある人物と出会い、ある出来事がきっかけで恋に落ちるわけなんだがその出来事というのがちょっとまあ普通は無い、というくらいにドラマチックでロマンチックでびっくりしてしまった。いきなりどーしたこの小説、なんかのオチがあるのではと疑ってしまったくらいだ。でもそれが「素」なのだった。まあ、いままで地道に築き上げてきた下地があるからここでぱあっとこれくらいのデカい花火打ち上げても全体のバランスとしてはギリギリセーフ、だと思うけどねえ、フィクションだしねえ、夢は大事だよね、華やかさだってあって良いよね、お話だもん。と内心言い訳(誰に?)しながら読んだ。とっても素敵な展開なので、「そりゃ惚れるわ」と思うし、面白く読んだんだけど、それは小説だからで、現実的かと問われたら「ごく普通のひとと思っていた隣人がいきなり映画のスクリーンで主役になって現れた」みたいな気もしたのは確かだ。良いんだけどね、面白かったけどね。

でもいきなり仕事の出張先(しかも海外)でそれまで付き合ってるわけでも告白があったわけでもなんにもない、ただの同僚からいきなり部屋に誘われたらそれはどうなんだろう……それこそ七葉のような華やかな女の子にとっては珍しくもない日常茶飯事かもしれないけど主人公は麻子なんだけどなあ。そして麻子は天然だからその意味に気付かず忙しいのを理由に断るんだけど……その後日の展開とか、№3までの雰囲気からいきなり箍が緩んでいるというか展開が早くなった気がして、恋愛色がばばばばーっと盛り上がってドラマチックになって、そりゃドキドキしたし面白かったけど、びっくりしたのだった。妹たちの会話で「吊り橋効果」が出てきたのは作者の自虐かと思ったくらいだ。あはは。

この話で主人公が、母親が独身時代は輝いていたけれど結婚・出産のために家庭に入ったことを知らされ否定的にとらえ、それをベースに自身の結婚観を持つシーンがある。かつてわたしもそういう考え方を長く持っていたので共感し、でも同時に実はそうでもないことをいまは知っているので、そうでもないんだけどな、そう単純に決めつけられるものでもないんだけどな、と思いつつ読んでいた。だから、最後のほうで主人公が同じようにそのことに気付く描写が出てきて「そうだよなあ、気付けるような相手を見つけられて良かったなあ」と頷き、ほっとした。

今回は初読みで、読んでいくときはこれがどういうテーマの小説かわからなかったので、妹の七葉のことがずっと絡んで来たり、家の問題が大きくなっていくのかと想像していた。もっと云えば、七葉とあまりにも近すぎ、それがだんだんずれて行ったりすることで問題が起き、重い苦しい展開になるのではないかと恐れながら読んでいた。だからそうじゃないとわかって、ちょっと拍子抜けでないこともない。近いうちに落ち着いて再読し直したい、ゆっくり文章を味わい直したいという感じだ。何気ない風景描写とか、骨董(古道具)屋である家の様子とか、川と町の景色とかがとてもきれいな小説でもあったから。あとそれに、靴のこともね!靴を買いに行きたくなる話でもあるよね、それもちょっと贅沢な良い靴を…。

半七捕物帳 58~59 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
58と59は同じ犯人が絡んでいた。58で犯行に関わっているであろうことはみんなわかっていたんだけど巧く逃げられたのと、証拠が直接は無いことと、その罪だけではそもそも大したものじゃなかったから見逃されたんだね。もともと札付きの悪だったんだけど。で、それが59でやらかすという…。しかも殺人、3人とそれにもうひとつ、ネタバレになるから書けないけど生き物の命すんごく嫌なやり方で奪ってるんだよね。58で捕まえとくべきだったよなあと、架空のお話に対して一瞬考えちゃった。でも現実、そういうことってあるんだろうなあ、いっぱい。

58 菊人形の昔
菊人形は直接関係ないというか。要するに、人がたくさん集まる催しで起こる事件。この時代だから異人さんが絡んでいて、異人さんが絡むとオオゴトになる。後味の悪い話。

59 蟹のお角
58で出てきた異人さんやなんやかやが絡む話。この話の犬の書かれ方が……西洋や、現代みたいに犬って愛されてなかったのかなあ日本では。最後のところで「この以上のことはお角もあらわに申し立てません。役人たちも深く立ち入って詮議をしませんでした。吾八も薄々はその秘密を知っていたらしいのですが、これも知らないと云って押し通してしまいました。わたくしにもお話は出来ません。」と書いてあって、明らかに何かあるらしいのだが、それが何かわからないのが気になる。わかるひとには読んでいれば察せること、ってことなんだろうけど。うーん。こういうのは解説が欲しくなっちゃうなあ。
この話もある程度話したところで「調子に乗っておしゃべりをしていると、あんまり長くなりますから、もうここらで打ち留めにしましょう」と半七が半七老人に戻るんだけど(つまり江戸時代を「いま」として書かれる方式から明治の語りに戻るんだけど)、つまり事件をリアルタイムに追っていく話からいきなり「で、結局犯人はどうなった」という結論に飛ぶわけで、小説の書き手としては随分乱暴というか手抜きというか、そういうふうにちょっと感じないでもない。まあ、ダラダラ冗長になるよりいいんだろうけどね。毎回ちょっとだけ、釈然としない気持ちになる。

この2つはなんかあんまり好きじゃなかったので★無し。

2014/12/23

クリスマス・プディングの冒険 【再々読】

クリスマス・プディングの冒険 (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 1,074
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:橋本福夫・他
というわけでこちらも読むことに。前回読んだのは調べたら2005年1月1日だった。まあ、元日に読んだのね。日記には「アニメの1シーンだけ通りがかりにみて気になったので本棚から引っぱりだした。」と書いてあるんだけど、アニメってなんだろう……。土曜日だったみたいだけど。
短篇集

表題作「クリスマス・プディングの冒険」 翻訳:橋本福夫
まさにザ・英国の古き良きクリスマスの描写がてんこもりで満足。
ミステリーとしては小粒かなあ。
最初っから「この家」の指定がある理由がイマイチ飲み込めないんだけど……そこまで突き止めてあるならなんで自分らでどうにか出来んのかとか…あ、それが問題を大きくしたくない云々ってやつ?でもポアロさんが行ってる時点で犯人側にはバレバレだしねえ。
よくわかんないっす。
でもお話としてはクリスマスっぽくて、ほんわかしてて、良い。
クリスマス・プディングとプラム・プディングはおんなじ物のことなんだね(この話の中だけの話なのかなあ)。
実はこれの作り方を先月あたり検索してたんだけど(1ヶ月寝かせるものだというからクリスマスにベストに持ってくるには11月下旬に作らなくてはならないから)「マズイ」っていう意見が少なからずあって、材料とか見てると本格的に作るにはそこらのスーパーでは売ってなさそうなものもあって、その結果がマズイのは嫌だなあととりあえず見送った。でもこの話でポアロさんが美味しくいただいているので、美味しいのは美味しいのかな?それかイギリス人の口には合うけど…ってやつなのかな?

他の短篇はまだ読んでいないので読み終え次第書き込みを追記予定です。読み終えたので追記です。

まず本書には最初に「はじめに」というのがあって、クリスティのコメントがある。子ども時代のクリスマスの思い出などを絡めて書いてあり、とても楽し気な一文。

スペイン櫃の秘密 翻訳:福島正実
ミス・レモンが登場する。英国ドラマ版「ポワロの事件簿」ではミス・レモンはわりとレギュラー出演しているイメージだけど原作だとそんなに出てこない。ポアロさんは彼女の想像力のなさを嘆いているけど(ヘイスティングスが飛躍しすぎっていう見方もあるよね)。
クレイトン夫人みたいなひとって苦手だなあ、と読みながら思った。そしてこの犯人気持ち悪い思考するなあ。

負け犬 翻訳:小笠原豊樹
数年前にこういう言葉が日本でも流行したなあ。この話の「負け犬」はそういう意味じゃないけど。
誰が聞いても犯人はこのひとでしょう、という不利な条件を持った人物が逮捕されたんだけど、被害者の妻が真犯人は別の人間だと「直感によって」主張しているのでポアロのところへ依頼が来る。
催眠術がほんとうに出てきたのにはびっくりした!

二十四羽の黒つぐみ 翻訳:小尾芙佐
このお話は子ども時代に子ども用にまとめられた短篇集で読んだことがあって、そのときから非常に印象に残っていて、好きな話なのだった。何故かを考えるに、たぶん、日本とは違うレストランのメニューの言葉の響きに魅了され、わくわくしたからだと思う。また、「女性は違う物を食べるけれども、男性は同じものを食べる」という考え方を示されて「へえーそういうものなのかな?男と女で違うものなのかな?」と面白く感じたものだ。
調べてみたらこの本だった↓

アガサ=クリスティ 推理・探偵小説集〈1〉 (偕成社文庫)
アガサ クリスティ
偕成社
売り上げランキング: 846,261

 翻訳:小倉多加志
毎日ピストル自殺する夢を見ておかしくなりそうだという相談を富豪から受けて1週間後、実際にその人物が夢の通りの状況でピストル自殺した…。まあこれは、ポアロさんを巻き込んだ時点で負け確定だよね。

グリーンショウ氏の阿房宮 翻訳:宇野利泰
この話だけジェーン・マープルもの。
ストーリーやミステリがどうこうよりも家とか庭とか室内とかの全体的な描写が面白い。
ところでこの話の原題は"Greenshaw's Folly"なんだけど、Follyには「愚か」って意味だけじゃなく「金ばかりかかるばかげた事業[企て、建造物]」っていう意味もあるんだね。「阿房宮」というのは検索すると「秦の始皇帝が建てた大宮殿」と出てくる。これも同じ意味なのかなあ。

ポアロのクリスマス 【再読】

ポアロのクリスマス (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 1,156
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:村上啓夫
これも再読なのに覚えていなかった。
それどころか、昔デヴィッド・スーシェが演じていたイギリスのLWTのテレビシリーズ「名探偵ポワロ」をNHKで何話か観てたんだけど、その中にこの話もあって、あるシーンがすんごく印象だったのでそこだけは明確に覚えていて、それがトリックの解明するシーンだというのもわかっているんだけど、でも犯人とか細かい話の流れとかはすぱーんと覚えていなかった。
…わたしのノウミソ、大丈夫なのかな?

まあそれはさておき。
今回再読するにあたって、クリスマス時期に読もうとちょっと置いてあった。
でも実際読んでみたらあんまりクリスマスっぽくなかったというかそういう描写はほぼ無かった。まあ、離散していた家族がクリスマスだからというんで生まれた家に戻ってくるというのはクリスマスならではなんだろうけど(日本のお正月みたいだなあと思う)、ツリーも飾りもパーティも無かった。英国の伝統クリスマス・プディングも出てこなかった。ちょっとがっかり。

最初のほうはそれぞれの家族の描写でちょっと鬱陶しい感じなんだけど、物語がはじまっていくとどんどん面白くなっていく。何よりミステリーとして素晴らしい。ぜんぜん犯人わからなかったーーー! クリスティに見事に騙されたーーー! やっぱりクリスティは凄いね、巧いね。

犯人がわかってから犯人の名前を範囲指定して本文中登場シーンを検索かけてたどってみたけど、「わかってて読む」から「ああそうか、このシーンは裏の意味があったんだな」って納得出来るけど知らずに読んだら別に違和感ないんだもんなあ。

ちょっと翻訳が古いかなーとは思った。若い男女がじゃれているシーンで男が女に「赤ちゃん!」って云うんだけどこれって「baby!」でしょ、原語はたぶん。そりゃーbabyは赤ちゃんだけどここは意訳するもんなんじゃないのかなーみたいなね。途中から話が面白くなったので気にならなくなったけど、最初の方は日本語がどうも読みにくくて少し時間がかかってしまった。
調べてみたらこの翻訳者は明治32年生まれだからまあこんなもんなのかなあ。
それに、そもそもクリスティの話っていうのは昔に書かれたものなんだから(原題:Hercule Poirot's Christmas{アメリカ:Murder for christmas}は、1939年に発表された)、あまり現代ふうの翻訳にしないほうがイイのかもしれない。でもなんか「ここって誤訳?」って思っちゃうような意味がわかりにくい箇所があったんで、どうなのかなあ…。

最後、犯人がわかってからの大団円のくだりがあまりにもみんな良いひとになっていて、ちょっと違和感があったけど、もともと何もなければ彼ら彼女らはそういう常識のある人々だったんだろう、でもこの集まりに対して最初っから神経質になっていて、そこに殺人事件があって疑心暗鬼になっていたんだろう、それにお金も絡んだし。そもそも父親のお金にたかって生きてるみたいなのはどうなんだろうとは思ったけど。ジョージとマグダリーンは特に好かんなあ。被害者のじーさんも好きになれなかった。
なんかもっと、クリスマスっぽい平和なイメージの話が読みたかったなあ…(殺人事件を選んでる時点でわたしが間違っているんだけど)。

2014/12/20

2014年に読んだ本ベストテン 発表

妖怪ウォッチ 05 コマさん

例年より少し早いですが、
2014年に読んだ本ベストテンの記事を公開いたしました。

このページの上のところにある「年間ベストテン」から該当ページでご覧下さいm(_ _)m

コマさんがあまりにも可愛いので関係ないけど貼らせていただきました。

2014/12/19

半七捕物帳 51~57 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
51 大森の鶏 ★★★
新春早々の雪の参詣帰り、半七親分と子分は茶屋で鶏に襲い掛かられる婀娜っぽい女に遭遇する。そこから何か因縁があるのではと調べが始まり…。よくここから事件に結びついたなあ。

52 妖狐伝 ★★★
狐のいたずら?いやそんなわけは無いというわけで調査開始。黒船なども絡み、なかなか面白かった。

53 新カチカチ山 ★★★
昔話のタイトルがついているが内容は読めば読むほど犯人の身勝手さに腹がたつ話。被害者が気の毒すぎる。 

54 唐人飴 ★★★
唐人飴売りの風変わりな様子、羅生門に切られた腕が落ちているという事件、なかなか面白かった。半七親分は芝居好きだけど、昔の人はそういうひとが多かったのかな、テレビもラジオも無い時代だしね。しかし「男女」とは…。

55 かむろ蛇 ★★
この犯人も身勝手で(まあたいていの犯罪者はそうだけど)腹立つなあ。かむろ蛇の祟りにまつわる話。迷信も信じすぎると身を滅ぼすね。お嬢さん頑張れ!

56 河豚太鼓 ★★★
人込みで行方不明になった少年。迷子か、神隠しか、誘拐か? 床下のみかんを遠くから見かけてその字に気が付くとか半七親分はすごいなあ、猫の声で天井見るとかはむしろ普通というかそれまで全然地の文にも書いてないんだもんなあ。この話は昔は種痘に「牛になる」という迷信があったという世間話から入っていくのだが、中断して読んだのでそのことを忘れていた。

57 幽霊の観世物 ★★★
蛇女とかろくろ首とかそういう香具師の見せ物かと思ったら幽霊のそれっていまの遊園地にあるお化け屋敷そのもので、おおっと感動。江戸時代からあったんだねえ。でもこの時代のは人間がお化けになってるのは駄目だったんだ。知られると商売に差し支えるんだと。へえ~。でも文章で読んでるだけでもこのお化け屋敷結構怖そう!しかも一人で行くとかわたしは無理だなあ。お化け屋敷だけでも怖いのに、その中で殺人とかめっちゃ怖すぎる!

この7篇は600を超えるものは無かったので、49,50話がたまたま?長かっただけのようだ。でも500前後だったので最初の頃に比べるとやや長めにはなってきている傾向があるのは確か。なかなかハイレベルだったなあ。
男女のもつれ、事件が起こったらまず身内調べとその関係者を調べる、というのが王道のようだ。で、「たまたま」事件のカギにぶつかるということが最近ちょっと減ってきたけど。
このシリーズに言えることとして「読者への挑戦状」的な意識があんまりないというか、「読者にも推理できるように公平にヒントを書く」という意識はあんまり無さそう。話が盛り上がってきたところで「長くなるからこのへんでまとめましょうね」的な展開もちょこちょこある。種明かしの段階で初めて明かされる事実がわりと珍しくないので、そういうもんだと思って読んでいる。にしても、よくいろんな話を考え付くなあ。レベル全体的に高いし。半七親分のキャラが何より、読んでいけばいくほど素晴らしいだよねー。

2014/12/16

半七捕物帳 49~50 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
49 大阪屋花鳥 ★★★
最初に花鳥というトンデモない悪いのがいた、というところからはじまるからその後の話で結局はそれがどこかで絡んでくるんだろうなと考えつつ読んだけど騙されたほうはまさかと思うよねそりゃあねえ。
いやあえげつない女がいたもんだー。そしてまた男女のもつれかよーすごいバリエーションだなー。お金も絡んでるけどさー。
牢名主という制度はなんで禁止にならなかったんだろう。犯罪の親玉が牢屋で権力持つとか良いワケないのに。案の定、若い軽微な犯罪者が泣きを見ている。おかしいだろう!
『はいからさんが通る』に出てきた牢名主さんは可愛げがあったなあ…。

はいからさんが通る(1) (講談社漫画文庫)
大和 和紀
講談社
売り上げランキング: 83,169

50 正雪の絵馬 ★★★
正雪というのは由井正雪のことで、冒頭、半七老人が歴史小説の愛読者であることが判明する。そこから江戸時代の思い出話になっていく。
この小説で「マニア」なんて言葉に遭遇するとは予想していなかったなあ。江戸時代からマニア、蒐集狂はいたのだ。でも盗んだりするのはいくらなんでもイカンと思うしそういうのを自慢気に見せびらかすとか本人の倫理観ぶっ壊れてるのもあれだけど、見せられたほうも通報とかしないもんなのかねえ。
これにももちろん男女のもつれが絡んでくる。これは事実がそういうもん、ってことなの……かなあ。

なんかこの2つの話はちょっと他のより話の展開が複雑で長い気がするけど気のせいかと思って読後kindleの総ページ数を他と比べてみたら実際に長いのだった。
49話は(kindleの活字の大きさ・行間によって変わるであろう総ページ数は)627。
比較として、01話「お文の魂」が404。10話が434。20話は295(短っ)。30話は407。40話は380。
50話は608とこれも長め。一つ前の48話は408だ。
これ以降は長い話が続くのかなあ?
やはり長いだけ設定とか詳しくなるし、事件の展開もいきなり明治に飛んで解決篇とかならなくて最後までほぼ江戸のやりとりで解決するし、小説に奥行きが出るというか落ち着きがあるという印象。

2014/12/14

旅はときどき奇妙な匂いがする: アジア沈殿旅日記

旅はときどき奇妙な匂いがする: アジア沈殿旅日記 (単行本)
宮田 珠己
筑摩書房
売り上げランキング: 2,900
■宮田珠己
宮田大兄の新刊である。
手軽な近場の書店には無かったので大きい書店に行って買いもとめた。
アマゾンの商品紹介には
サラリーマン人生を棒に振って旅を選んだ男が再びアジアを放浪する。それでも私は旅をしたい。チカラ入りまくりの脱力系旅エッセイ。
と書いてあって、本の帯には「『旅の理不尽』以後、ふたたびアジアへ!」と書いてあって、おおいに期待をたかぶらせられたのだが、結論から云うと、これらの文言から想定したものと実際に読んでの印象はかなり、大きく違うものであった。

というか、いま引用して思ったけど【サラリーマン人生を棒に振って】ってなんなんだよなあ(怒)。【人生を棒に振る】ってどういう意味か知ってんのか。【サラリーマン人生を棒に振る】って【サラリーマン人生】ってそんな後生大事に抱えるようなものか、っていうか少なくとも宮田珠己と云うひとに限って【サラリーマン人生を棒に振る】って表現はすんごい違和感があるよなあ~。宮田大兄はサラリーマン人生もきちんと糧にして、そのうえで「いま」があるんだって愛読者としては感じているぞ!

そんでもって、本書を読み進めば一目瞭然なことに、これは断じて「脱力系旅エッセイ」では無いし、『旅の理不尽』とは最初のスタンスからして全然別物なのであった。

最初の章「Ⅰ 台湾」を読んでいるときにあまりにも宮田大兄のテンションが低く、暗いので心配になったくらいだ。鬱、ってよく知らないけど鬱々とした文章である。
「はじめに」で足が原因不明の痛みに襲われそれが慢性的に継続している、そこから脱却するために「仕事」ではなく「休暇旅行」に行かんとする、という意志が表明されているんだけど、んーでも結局その旅について書いてあるのがこの本なわけで、ってことは結果的に仕事になってるわけで、そのへんはどうなんだろう?とも思ったんだけど。
なんか、旅行の本なのに、旅先の描写とかが少なくて、自分の内面にどんどん入り込んでいってるというか、思考描写にガンジガラメになってる感じで、全然リラックスできていない感じだし、大丈夫なんだろうか。
よくわからないので、「Ⅰ」を読み終わったくらいで「おわりに」を先に読んでみた。すると、こう書いてあった。

旅についての本を書いてみたいと、前々から考えていた。旅の本はいくらもあるけれど、旅についての本、つまり、旅先ではなく、旅そのものについて書かれた本…(中略)。 
の中にいるときの日常とは異なる感覚、興奮と不安とときに倦怠が同居し、意識がいつもと違う位相で覚醒しているような旅の時間。私はどうもあの非日常感に惹かれて旅を続けているように思うのだ。だから、それをそのまま描写してみたかった。

……成程。
 つまり「目的通り」なわけね、この書き方で。
納得できたので、Ⅱ以降もそのつもりで読むことができた。
つまり本書は紀行文ではなくて、旅に行って書いてある本だけれども、そのときの見聞録じゃなくて、思考過程録というか、そういう本なのだ。「Ⅰ」はなんだか暗い感じがするんだけど「Ⅱ」以降はましになっていく感じなので、安心した。

宮田大兄の「原風景」について書かれていたり、とにかく「考えたこと」が書かれているので、ファンにはなかなか興味深い作品であると思う。
ただ、ちょっと思ったのが、本書で初めて宮田珠己という作家に触れた読者はどうかなあ――ということで、もしそういう方がいたら「ぜひ他の作品も読んでみてね♪」と明るくサワヤカに薦めておきたい。

Ⅰが台湾でⅡはマレーシア、Ⅲはラダック(インド)と海外なのだけど、Ⅳは熊本で、日本だ。なんか日本が来てちょっと気易い感じだ。そして熊本の阿蘇の話から、夏目漱石『草枕』のモデルとなった地に行った話になって、読みながら「おおおおお」と少し興奮した。『草枕』の愛読者なもんで、宮田大兄も漱石の中ではこれが一番好きとか書かれていて嬉しい。
まあでもそもそも「『草枕』のモデルの場所に行ってみたい」と望んだことはわたしはいままでなかったわけで、それは何故かと云うに、あの世界はあの小説の中にしか有り得ない、「非人情」のフィルターを通して書かれた架空の世界だからである。
今回の宮田大兄の文章を読んでいろいろ興味深くはあったが、やはり、その予測を裏付けられた感が強いというか、このひとはやっぱり男性だから那美さんの美女ぶりが気になるんだなとか、そういう感じだった。

本書は「webちくま」に「アジア沈殿旅行記」として2013年4月から2014年3月まで連載されたものに加筆修正したものだそうだ。
謎の足のピリピリした痛みはいまも原因不明のまま続いているということで、人間の体ってどうなってるんだろうなあという不思議な感じである。エンタメノンフ繋がりの高野(秀行)さんも原因不明の腰痛について書いた本があるけど、あれは最後にはなんだか水泳とかで改善されて良かったな、という終わり方だったんだけど。
宮田大兄はいろいろ真面目に考えすぎるから、しんどくなっちゃう面があるんじゃないかと一読者として思わないでもないが、それが足の痛みと関係あるのかどうかは、わからない。
早く治るといいなあ。

2014/12/12

半七捕物帳 44~48 【再読】

■岡本綺堂
日記じゃないけど昔のメモに半七捕物帳(全6巻)が挙げてあるから既読なことは確かなんだけど、全然内容を覚えていないので実は初読みと同じことである。まー、わたしの場合、きっちり読んで、ブログに感想文書いていて、書棚に実物もあって、という状況でも10年も前のミステリーだったら内容を覚えていないことが珍しくもないので半七もその例なんだろうと思う。それにしても読んでいてもいっこうに思い出さんのはどうなっておるのかと我ながら不信である。
今日読んだ第48話は「ズウフラ怪談」とかいって、このタイトルを目にしたときから「ズウフラ…なんだろう、何語だろう」と気になっていたんだがやはり記憶に無く、本文を読んでもあんまりぴんとこなかった…ズウフラってメガホンみたいな感じ?と思ってググったらなんだかスイスのアルプスホルンみたいな絵がひっかかってきたけどこれなのかなあ。でもこれ通した声と地声はまるっきり響き方が違うからすぐばれるんじゃないの、っていうか遠くにも聞こえるだろうけど近くでも当然聞こえるだろうよ、なのにどこが発信源かわからないとか有り得るの???

44 むらさき鯉 ★★
これまた怪談町のはじまり。途中で種がわかったと思いきやもう少し複雑だった。単なるウソで巻き込まれたひとが可哀想というか、意味がわからんウソだなあ。

45 三つの声 ★★
内容的にはそんなに好きじゃないけど、ミステリ的にはなかなかイイなと思った。声だけで対応するのがやや不自然だなと思っていたらこういう話か。また、奥さんが寝乱れ姿のまま戸口に行くけどふつうは身なり多少整えるんじゃないの、と思ったけどこれもははあ、そういうわけか、と納得。

46 十五夜御用心
これは話の作りも展開もミステリとしてもちょっとひどいなあと思った。雑というか。ちゃんと全部拾ってあるところは偉いと思ったけどね。それにしても「睡り薬」と書いてあるけどそれで死んじゃってるっていうのは「永久に寝ちゃう睡眠薬」ってこと?ぎゃーこわーい。

47 金の蝋燭 ★★★
徳川家の盗難事件から始まり、中に金の延べ棒が仕込んである蝋燭をめぐるミステリー。
なかなか想像力をかきたてられる面白い話だった。お金の問題かと思わせておいてこれも…。

48 ズウフラ怪談 ★★
ズウフラって変な響き。ミステリとしては王道だね。後始末のあれやこれやでちょっとゴタついた感があったけど。殺人そのものについてはいたってシンプル。

それにしても半七捕物帳では男女のもつれが動機の殺人がめちゃくちゃ多いな! あと、大正時代に連載されたので物語の「現在」も大正かと思っていたけど「金の蝋燭」で「明治三十年前後の此の時代に」という記述が出てきてあやや。その後さらに「こんにちと違って、そのころの停電は長かった。」とあるから、つまりそうか、明治時代に江戸時代のことを半七親分が思い出して語った話を大正時代になってわたしが思い出して書いている、という設定なわけ、か。このシリーズの最初の方にちゃんとそういうのがわかる記述があったんだろうけれども読み飛ばしたか意識出来ていなかった…。それにしてもややこしいな。現代は大正で、大正に江戸の岡っ引きが生きているわけにもいかないから明治時代に聴いた話ですよ、ということか…。

半七捕物帳〈4〉 (光文社時代小説文庫)
岡本 綺堂
光文社
売り上げランキング: 95,560

ひとりで飲む。ふたりで食べる は単行本の改題だったorz

ひとりで飲む。ふたりで食べる (講談社+α文庫)
平松 洋子
講談社
売り上げランキング: 10,673

よい香りのする皿
よい香りのする皿
posted with amazlet at 14.12.12
平松 洋子
講談社
売り上げランキング: 451,634
■平松洋子
本書は2008年に講談社から出た単行本『よい香りのする皿』に加筆修正して講談社+α文庫から改題して出たもの。

不親切だー!!アマゾンの商品紹介になんっにも書いていないんだもの!

ネット書店で買ったり、中身を確かめずに買ったらわかんないでしょう。
わたしは今日、リアル書店で見つけて中身をぱらっと開けたら「なんか既視感が…」と思ったので奥付をみたら小さい字で改題版の旨が記してあって「ううう、加筆あるっていうけど…」と一瞬迷ったけどそのまま棚に戻してきました。単行本持ってるんだもの。

平松さんの責任じゃないと思うけど。
平松さんの本ってほんとうに単行本から文庫化する際に全然違う題名になることが多い。

改題メモを集めた記事を更新させていただきました↓この前の記事です。

※平松洋子著作 改題、増補版などのメモ 2014.12更新

ややこしいので自分用のメモを作りました。
以下の書籍は単行本から文庫本になるときに題名だけ変わっていたり、以前出たものの改訂版だったり、出版社がつぶれて他から出ることになったりしています。
「おなじもの買ってもたー!!orz」
とならないための忘備メモです。


●『アジアの美味しい道具たち』晶文社/1996年5月⇒文庫改題『アジアおいしい話』ちくま文庫/2004年8月 ※絶版。電子書籍はあるようです。未読(後日、kindle版で読みました)。

●『台所道具の楽しみ』新潮社(とんぼの本)⇒改訂『決定版 一生ものの台所道具』新潮社(とんぼの本)2009年11月 ※これは読みものではありません。フライパンとか包丁の…料理の基本みたいな本で、決定版のほうを買いましたがわたしとしては得るものはありませんでした。

●『おいしいごはんのためならば』世界文化社/2003年1月⇒文庫改題『おいしい日常』新潮文庫/2007年4月

おいしい日常 (新潮文庫)
おいしい日常 (新潮文庫)
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平松 洋子
新潮社
売り上げランキング: 52,518

●『こねて、もんで、食べる日々』地球丸/2005年7月⇒文庫改題『世の中で一番おいしいのはつまみ食いである』文春文庫/2008年8月

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである (文春文庫)
平松 洋子
文藝春秋
売り上げランキング: 309,117


『ひとりひとりの味』理論社・よりみちパン!セ28/2007年4月 ⇒2011年10月~イーストプレス版に

●『鰻にでもする?』文藝春秋/2010年8月⇒『買えない味2 はっとする味』ちくま文庫/2013年10月

買えない味2 はっとする味 (ちくま文庫)
平松 洋子
筑摩書房
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●『よい香りのする皿』講談社/2008年7月⇒『ひとりで飲む。ふたりで食べる 講談社+α文庫/2014年11月 加筆修正改題の上、文庫化したもの。

2013.10.20作成
2014.12.12追記

2014/12/10

半七捕物帳 34~43 【再読】

kindle版
■岡村綺堂
34 雷獣と蛇 ★★
昔の人は雷獣というのが落ちてきて暴れる→被害が出る、というのを信じていたそうだ。ほーん、なるほどねえ。電気という概念が一般になったのはいつからなんだろう。
この回は珍しく2本立て。ヘビがうようよ集まって塚みたいになっている図というのは確かに気味が悪いなあ。髪を焼くとヘビが集まるというのは本当なのかな。

35 半七先生 ★
ユーモラスなタイトルだけど、中身は非常に後味が悪い。それは、いい大人がみな自己中心的でそれがために十やそこらの子どもが犠牲になる話だからだ。しかもあっさり夫婦におさまったりしていて、胸糞悪いわ(言葉が汚くなって失礼)。
 
36 冬の金魚 ★★
江戸時代にもこういう風流と云うか半自然の贅沢が流行ったそうで。冬にぬるま湯のなかで生きる金魚というのを結構なお値段で取引するというのだ。お金持ちの道楽よねえ。
それにしてもこの話なんかわかりやすくそうだけど、「半七親分の説明の段になって初めて書かれる事実」っていうのが結構あるよなあこのシリーズって…。それを書かずに謎だけ提示してきたら読者は推理もへったくれもない。まあそういうスタンスで書かれていないんでしょーけども。
 
37 松茸 ★★★
このお話で半七親分の誕生日は十月半ばであることがわかる。毎年息子夫婦と孫2人と知人で赤飯と尾頭付きでお祝いをしているのだと。まあなんて素晴らしい。
それはともかく、江戸時代の「御松茸」をめぐるこの事件は姑さんがお嫁さんを大事にしていて、夫婦仲も睦まじくて、お嫁さんの里から付いてきた女中さんもすごくよく出来た鑑のようなひとで、とっても良い話だった。犯人はとんでもない人間のクズだったが。こんなのに付込まれたら最悪だよなあ、こちらに何の落ち度もないのに!
これもある迷信が絡んでいる。この迷信はわたしも知ってるから現代でも気にするひとは少なくないのかも知れない。

38 人形使い ★★
夜中に人形がひとりでに動いているのを見た人形つかい。それがきっかけで人形つかい同士で喧嘩になってしまう。事件は思わぬ展開を見せ…。

39 少年少女の死 
タイトルだけで悲しくなるが中身もそのとおりだった。大正の自転車が流行り出したころの雑談(下手な素人がぶつかってくるとか…玄人がいるのかなあ?)から江戸時代の思い出話に移る。
これも2本立て。少女の死は現代でもそのまんま、こういう事件が度々あるよなあ。言語道断。もうひとつの話は子どもが可哀想というのは勿論だけど被害者の父親が愚か者過ぎて腹立つ!理性をうしなっていたんだろうけど母親が憐れ過ぎる。DQNは江戸時代にもいたんだな。
子どもが犠牲になる話はつらい。自転車の話から派生するのは無理があるなあと思った。

40 異人の首 
尊皇攘夷がさかんになっていた時代ならでは、攘夷派を騙った押借りがちょこちょこ出たらしい。冒頭の半七親分の妹さんの花見の相談が可愛らしい。

41 一つ目小僧 ★
怪談風?だけどすぐにそうじゃないとわかる。茶坊主が掛け軸を何回もくるくるするところが面白かったな。こういう事件が成立するということは武家の空き屋敷がけっこうあったってことかな?それにしても鶉一羽が15両って凄いなあ。10両以上の犯罪だと首が飛んだ、って次の話にも出てきた。今でいうと10両ってどのくらいの価値なんだろう…。

42 仮面 ★★★
面白かったけど、これは捕物じゃないよなあ。道具屋が欲をかかなければ何も起こらなかったわけだよね。しかも25両を150両とかどんだけ…。仮面1枚に150両。首が15回飛ぶってことっすね。
 
43 柳原堤の女 ★★
これも怪談風の出だし。いろいろ謂れのある清水山という場所に謎の女が出没するという…。
ミステリーによく出てきて迷信&誤解のある病気ナンバーワンのやつなんだけど、うーんこの話読むとすごい違和感があるなあ。この話は3つの謎が絡むんだけど最後の1つに関してはよくわからないまま。謎を盛り上げるためにいろいろ仕込んだけど収集つかなくなった感が否めないかも。解決篇までは面白かった。

半七親分の妹・お粂さんは常磐津の師匠で、母親と二人暮らしでまだ独身で、このシリーズには時々登場するけどすごく感じのいい人。半七親分の奥さんお仙さんも同じ程度の登場率かな。このひとも良い感じ。奥さんについてはほとんど描写が無いんだよね。半七シリーズは短篇だし、事件の話だけで手一杯になっちゃうのはわかるけど。あと江戸時代の元号で全部出てくるのでちゃんと調べて表にでもしないと時系列がわかんないというのもあるな。このとき親分いくつ?みたいなのは全然わからん。まあ、細かいことは気にせず読んでマス。

2014/12/07

Kindle Voyage 1ヶ月ばかり使ってみてのレビュー

Kindle Voyageを入手して1ヶ月くらい経ちましたので使用感をお伝えしようかと。
ちなみにわたしは電子書籍はこれしか使ったことがありません。
携帯電話はガラケーなのでフリック入力?とかもKindle Voyageが初めてでした(。・ω・)ノおっくれってるー。

①画面表示、読みやすさ
きれい。フォントの種類はゴシック、明朝、筑紫明朝の3つから選べます。
大きさは8段階、行間や余白は3パターンずつあります。
画面の明るさも選べるので、自分が楽だと思うのを適当に選んで読んでいます。
最初の1,2冊は紙の本に比べて7,8割のノメリ込み度くらいで100%じゃないなあと思いましたがすぐに紙の本と比較することを忘れるというか、気にならなくなって自然に普通に読めるようになりました。

②ページめくり
問題ないです。画面の外の黒い部分に縦長いボタンが左右にあり、どっちを押しても「進む」なのに、最初はつい「右を押して進む、左は戻る」という固定概念があり右ばっかり押したりしていましたがこれもすぐに慣れます。また、ボタンを使わず画面をさわってもページはめくれます。
ボタンを押したときの軽い振動は強さを調節できますが、デフォの「中」で慣れたので変えていません。
ちなみに戻るときは黒い部分の点ボタンを押すか、画面をさわるかで出来ます。
途中で「最初に戻る」とか特定のページに戻る、などは画面上部をさわってメニューボタンを表示し「移動」を利用します。

③電子書籍ならではの面白さ「単語検索
読んでいて気になる単語があったらその部分を軽くなぞるようにしてマークすると辞書が開きます。
部分によってはうまく熟語が指定できなかったりして、これは慣れの問題だけじゃなくて画面の精巧さが微妙なせいもあるんじゃないかと思うんですが…。

単語検索した言葉は自動的に「単語帳」に保存されていきます。単語帳を開くとこんな感じ。
フラッシュカードという機能を使うとリアル単語帳のように1語1語がカード状で表示されます。これでお勉強できる仕組み(英語の本とかで単語覚えるのに良さそうですね)。
どの話のどういう文脈の中に出てきた単語かも単語帳でわかります。面白い、便利!
とりあえず気になった単語はマークしときたくなりますね。
単語じゃなくて文節とか文章単位でマークしたい場合は範囲を選ぶと「メモを追加/ハイライト/シェア/その他」を選ぶウィンドウが開きます。メモを追加を選んだ場合は「マイクリップ」にそれが保存されていって後で見ることができます。

④恐ろしい点
わたしはWi-Fiなんですが、つまり家にいながらいつでも本を買えてしまう環境になったのです。それってパソコンでネットで買い物するのと同じでしょ?と思うかも知れませんがkindleはデフォルトの設定がワンクリック購入だったので「購入」ボタンを押すと速攻購入になっているのです。便利だけどいまだにちょっとドキドキします。
しかも購入と同時にその本が即、読める状態になっている!
これ、想像するよりずっとなんか、魔力というか魅力というか威力がありますっ!
たとえばコミックなんかで続きが気になる!でもいっぺんに読んじゃったらもったいない!というときに「ボタンさえ押せばすぐに続きが読めますぜダンナ、ふへへへへ」という誘惑を断ち切るのはけっこう自制心が要るのです。

というわけで結論。
「ボヤージュ、恐ろしい子…!」

2014/12/05

半七捕物帳 28~33 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
28 雪達磨 ★★
冒頭で当時の読者からのクレーム?に対する反論が述べられているのが面白い。半七が縄張り外で活躍するのはおかしくないかというのだね。
大雪が降って雪だるまが江戸中にたくさん作られた。そのひとつが溶けた中から男の死体が出てきて…。
南京玉って飴玉かと思ったらガラスか陶器のビーズのこと、それが事件の謎をとく鍵になる。
このシリーズは難しい言葉では書かれていないんだけど、いまは日常つかわないような言葉がけっこう出てくるので、文庫とかだと脚注があるのかな。電子書籍版だとその場でとりあえず検索してるけど、この辞書そんなに親切じゃないのが玉にキズ。あと、画面の具合でうまく単語をマーク出来ないことがたまにあるのでそれがちょっと残念。

29 熊の死骸 ★★
「ぼんくら」という言葉がこの話でもつかわれる。江戸の大火事の様子が恐ろしかった。そこへさらに獰猛な熊が加わって大変である。いったいどういう話になるのかと思ったら最終的にはこれもお金と男女の縺れのミックス。まあ事件の原因の二大要素だもんね。そこからよくここまでバラエティー豊かに話を作るなあ。

30 あま酒売 ★
江戸時代ならではだなあ、半七さんや同心の旦那まで「切支丹」で頷き合ってて驚愕。そして最終的な甘酒売りの老女の「たたり」の正体も現代では有り得ない解決でみんなが納得しているのがなんともはや。

31 張子の虎 ★★
悪人を捕まえるのを助けて一躍有名になった遊女が何者かに殺された。その枕元には張り子の虎が…。
タイトルになっているくらいの「張り子の虎」なのに、このイキサツは後であわてて取ってつけたみたいでちょっと残念だなあ。この種のハッタリでツカミ→あとでつじつま合わせというパターンが少なからずあるような気が。まあストーリー展開そのものや謎解きの過程はなかなか良かった(それにしても犯人がしゃべるのを陰でこっそり聞いて御用、のパターンもけっこうあるよね。そんな都合よく隠れつつ内緒話が聞けるものかなあ)。

32 海坊主 ★★
潮の満ち引きや颶風が来るのをいち早く予言した謎の奇怪なナリをした男。それがどうして半七親分の事件になるのかなあと疑問に思いつつ読んでいったけど最後まで読んでも何故予言出来たかは結局不明なままだし、何故あの話から半七親分が事件とか犯罪のにおいをかぎつけたのかもよくわからなかった。変な話だから面白かったけどね。ふつうのひとびとが岡っ引きに協力的なのが意外だけど江戸時代はそんなものだったのかしらん。

33 旅絵師 ★★★
隠密の話。思うところある様子の娘の言動と旅絵師の心情がなかなか面白かった。現代と変わらないなあこういうのは。隠密についての話というのもイイ。父親の依頼のエピソードも時代ならではだなあ。短篇だけど、深みがあった。

2014/12/03

半七捕物帳 17~27 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
17 三河万歳 ★ 鬼っ子を抱えた若い男が死んでいて。
鬼っ子をたよりに手がかりを探す中で猫を無くしたのがいてそれに引っかかるくだりがよく呑み込めなかった。竜頭蛇尾気味。

18 槍突き ★ 槍突きの通り魔か?猫が娘に化けた? 娘の正体が小気味良かった。

19 お照の父 ★ 河童が飛び込んできて殺した? 犯人うんぬんより河童のくだりが面白かったなあ。「向島で河童と蛇の捕物の話」をするという約束をしたのは10話「広重と河獺」の〆んところデスね。

20 向島の寮 ★★ 法外な高給で奉公の長期契約。蔵の中の謎。謎めいたふうにしたかったんだろうけどヘビはどこ行ったのかなあ。このシリーズはホームズの影響を感じるけどこれもなんとなくそんな雰囲気がした。

21 蝶合戦 ★★★ 尼さんが首を切り落とされ殺害。猟奇的殺人。「何故犯人はそうしたか」ミステリーの王道だね。問題提起から解決までなかなか面白かったが後半はほとんどまとめ語りというのにはずっこけた。長さが決められていて仕方ないんだろうけどもさ…なんとかならないのかねえ。この種の「はしょり」はこのシリーズいままでも何度かあったけど、この話は群を抜いてひどかった。

22 筆屋の娘 ★★★ 筆をなめて売ると評判の美人姉妹の姉が毒で死に…。この犯人バカ過ぎる。

23 鬼娘 ★ 喉を喰い千切られ殺される事件が連続して起こる。半七親分がカッコいいところを見せる。

24 小女郎狐 ★★★ 松葉でいぶされて若者7人の内5人が殺された。狐のたたりか。
宮部みゆきがこのシリーズの愛読者というのは有名だけど江戸の同心を主人公にしたのが『ぼんくら』シリーズ。で、この話に「ぼんくら」に傍点つきが出てきたので思わずニヤリ。

25 狐と僧 ★★★ 住職が行方不明となり住職の格好をして死んでいる狐が発見された。住職は狐だった!?これも面白い事件。こういうのを理詰めで解いてくれるのが嬉しい。

26 女行者 ★★ 実は京の公家の娘だという評判の美人行者の正体は…。単なる詐欺か、尊皇攘夷派が絡んでいるか手探りという幕末ならではの役人たちの神経質になっている様子が興味深し。関係ないけどこの話に「木挽町」@吉田篤弘が出てきてこれもニヤリ。

27 化け銀杏 ★★ この事件の冒頭は「ひええ、酷い!」とこちらの心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。それにしてもある意味狐と狸の騙し合いみたいなところあるね。最後らへんのお殿様の思い切りの良さには「や、やっぱ育ちが違うわ、庶民では考えられんわ」と驚愕。にしてもお寺の人間に悪いのがけっこーふつうにいるっていうのは何だかイヤだなあ。

ここまで読んできて現時点の雑感。
①とりあえず「ツカミ」が大事みたいで面白そうなネタが出てくるが、最後まで面白いのもあればしゅるるるとしぼんでいくのもある感じ。でも総じて一定のレベルは保たれており、素晴らしい。
②ネタによったら前後篇に分けたりしてじっくり書いてくれてもいいのに「一話完結読み切り」シバリがあったんだろうなあ、惜しい。
③半七親分恰好良すぎ。惚れるわ。時々自腹を切ってるけど、大丈夫なのかなあ。
④現代の感覚だと犯人が超簡単に死刑になるのが厳しいなあというか。死刑のなかにもランクがあって、厳しいのは市中引き回しの上…っていうやつか。ある事件で犬を生き埋めにして処刑というのがあったが、これは現代の感覚からすればまったく有り得ない、犬に刑罰は無いよねえ。飼い主が罰されるだけで充分かと思うんだけど、むしろ犬のほうが残酷な殺され方してるところがなんとも…。