2014/11/30

半七捕物帳 07~16 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
こうして読んでみるといろいろな話があって、面白い、よく出来ているよなあ。
江戸時代の様子がすごく良い。江戸風俗が自然な感じでまるで江戸時代に書かれたみたいに錯覚するけどこのて読みやすい文章は大正ならでは、なのだ。
たまに単語を電子書籍の気軽さで辞書検索(触ればいいんだけど、うまくその単語をマーク出来ない場合は何度かチャレンジ)したりして。便利だねえ。

それにしてもみんな割と素直というか、半七親分に「御用だから、嘘ついちゃいけねえぜ」と云われるとけっこう正直に白状するんだよね。なにか後ろ暗いところがあるひとは最初っから顔色に出ていたり、問われたことに答えず黙っているパターンも多い。だからそういうひとが出てきたら「ああこのひとは何か知ってるんだな、怪しいんだな」とわかりやすい。

捕まえたり黙っておいたりの裁量が半七親分個人の責任で為されることも少なくなく、凄いなあと思う。半七親分が出てきたら安心、という気持ちになって読んでいる。頼もしい。

07 奥女中 ★★ 身分の高いひとは勝手だなあとちょっと釈然としない気もする。
08 帯取りの池 ★★ 出だしの謎は良いんだけど。半七シリーズにはこういう「偶然」が多いよなあ。
09 春の雪解 ★ この犯人は悪党だな……。
10 広重と河獺 ★ 江戸時代はこういう「世話をする、される」俗にいう「囲い者」がどのくらいいたんだろう。よく出てくるから珍しくもなかったんだろうね。
11 朝顔屋敷 ★★ 結末が出てからの顛末がなかなかいろいろ考えさせられる。人間、悪いことしちゃ駄目だね…。
12 猫騒動 ★ 結局、この息子はどう思っていたんだろう。現代の感覚だとそこを突き詰めると面白そうなんだけど。
13 弁天娘 ★ 大山鳴動してなんとやら、という気がしないでもないというかそこをもう少し追及した欲しかった気もする。これも彼女視点で書くと面白いだろうなあ。
14 山祝いの夜 ★ 小悪党と悪党の話だなあ。
15 鷹のゆくえ ★★ それでも鷹を飼いたいのがいるんだ……とびっくりした。
16 津の国屋 ★★★ これは怪談チックででもちゃんと理詰めの解決で、面白かった。

2014/11/27

半七捕物帳 01~06話 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
電子書籍の0円本。無料なのだ。
青空文庫からデータを持ってきているからだが、パソコンで青空文庫を見るのと違い、フォーマット、字体、行間などすべてkindle仕様で読めるため、すごく読みやすい。

半七捕物帳シリーズは二十代の初めくらいの頃に宮部みゆきの時代物にハマった流れで光文社文庫で読んだんだったと思うが既に手元に無いので今回kindle版で久しぶりに読んでみた。昔の話なのに全然難しくなく読みやすかった記憶の通り。

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)
岡本 綺堂
光文社
売り上げランキング: 23,404

ウィキペディアによれば【近代日本における時代小説・探偵小説草創期の傑作である。1917年(大正6年)に博文館の雑誌「文芸倶楽部」で連載が始まり、大正年間は同誌を中心に、中断を経て1934年(昭和9年)から1937年(昭和12年)までは講談社の雑誌「講談倶楽部」を中心に、短編68作が発表された。】とのこと。
しかし、いま読んでも全然古くないね、というか、江戸時代が舞台なので昔風で当たり前というか。読みやすい。人情、人の心の動きとかいまと変わらない感じでわかりやすいんだよね。

今日は6篇を読んだ。すべて短篇で、一話完結ですっきりした形で終わるので小気味良い。ついつい次から次へと読んでしまう。
探偵物、ミステリーとしてはそんなにひねりも無く途中で見当が付いてしまうものが多いが、舞台が江戸でその風俗とか雰囲気とかが時代物、市井もの好きにはしみじみと良い。同心、岡っ引き、手下などの役割・仕組みなどもわかりやすくおさらい出来るし。

著者の岡本綺堂は明治5年生まれ。

一、「お文の魂」★★ この犯人のような身分のひとが悪いことするというのは『アクロイド』みたい、っていう意識じゃ甘いんだろうけど。
二、「石燈籠」★ この犯人とトリックはわかりやすかった。
三、「勘平の死」★ なんという手前勝手な男だろう!
四、「湯屋の二階」 半七親分が冷や汗をかく回。
五、「お化け師匠」★ なんという偶然の連鎖(やや皮肉)。
六、「半鐘の怪」 このトリックは西洋の探偵小説で有名なのがアリマスね。気づくまでは怪奇譚かと思った。

青空文庫・岡本綺堂のページへリンクを貼っておこう。

2014/11/26

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 【再読】

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-06-05)
売り上げランキング: 16,236
kindle版
■椎名誠
単行本は1981(昭和56)年4月本の雑誌社刊。絶版。
山藤章二の装画で、ソフトカバーだったがずっしりと物理的に重たかったことを覚えている(椎名誠にハマっていた時期に購入し結構長く持っていたのだが、住宅事情から泣く泣く手放した)。

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵
椎名 誠
本の雑誌社
売り上げランキング: 974,850

2000年4月に角川文庫から文庫版が出たらしいがこれも既に絶版。
今回電子書籍でキャンペーン中だったので100円で入手出来た。
『国分寺のオババ』とか『ひるめしのもんだい』と比較すると中身が濃厚で面白く、読みでがあった。
椎名さんは1944年生まれなので、本書は36、7歳頃に書かれたものか。
随分「トンガっているなあ」と思う箇所も結構ある。雑誌をほんとによく読まれている。熱心だ。
中身が昭和56年以前に書かれているわけだから書かれている内容が古いのは当然だが、むしろ「ああ今から30年以上前はそんな感じだったんだ」とか、「この雑誌、いまもあるぞ」とか「ちょっと前まではあったんだけどなあ」とか面白いのだ。
「書棚に飾る為の全集が売れている」とか、今ではもう無いんじゃないかなあ。ほるぷ出版てそうだったのか。
「日立RAP-161型」というのはエアコンのことである。
「メメクラゲの秘密」というのは有名な「××クラゲ」が誤植?というか誤解?で「メメ」になった件。
椎名さんは新刊書店で雑誌とか立ち読みするのを是としているけど、立ち読みは中身を確認する程度はともかく、それを楽しみに書店に行くとかはわたしはいかんと思う。本を書く立場のヒトがこんなこと言ってるんだなあ。
でも全体としてずっと本、活字、その他出版関係などの話ばかりなので(後半違う媒体に同じようなことを書いているのが重複するみたいになっている部分もあるが)関心が薄れないのだ。

本書の構成は以下のようになっている。
「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」…ルポ風の創作小説。本書の総ページ数からすると16%くらいの分量。「めぐろこおじ」という活字中毒者(本書では違う言い方がされているが)が出てくるのでなんだか微妙に実在モデルっぽくて面白い。味噌蔵がある家とかそこに住む女の人とかモデルいるのかなあ。
連続性視覚刺激過多抑制欠乏症の男/午後十時三十分の笛吹きケットル/脳裏をかすめる呪いの藁人形/妙子と義男の愛憎赤裸々紙吹雪/夕陽にふるえる柿の木枇杷の木/詭計策略薄暗の逃走/地獄の味噌蔵

「活字とインキの大サーカス」…本にまつわるエッセイ。本書の32%くらい。
ほるぷ出版の本はかなしい/書店はとてもエライのだ/インチキベストセラー/うなだれし荒野のベストセラー/文藝春秋10月号四六四頁単独完全読破/サンリオ出版「恐怖の報酬」のウンコ的本づくりに文句をつける!/茗が谷書店の親父大決断!/銀行ロビーになぜアサヒ芸能はないのか/いま問題なのは電車のなかでどう読むか―なのだ/腰巻など脱がせてしまえ! 

「すべての問題を前向きに善処したいのだ」…本にまつわるエッセイ。本書の11%くらい。
駅前エロ雑誌群/オソロシ文学賞/日立RAP-一六一型/武蔵小金井の古本屋/東南アジアの純ブンガク/つげ義春の「ねじ式」に出てくるメメクラゲの秘密/朝日新聞の読み方/山松ゆうきちのギャンブルまんがには、人生があるのだ!/雑誌の特集/埼玉県の本屋さん/お熱38度6分でも読める本というのは、これはもう感動的<面白本>なのだ!/茗荷谷のキオスク/マトモ週刊誌のまんがが面白くないねえ/見てしまったのだ、ついに!/だれか原稿用紙のお話を書いてくれえ/ヨコ文字ペーパーバック/銀座の本屋さん/「のたり松太郎」の田中クンに最優秀助演賞をおくろう/こんなもんでよかんべイズム―がつくった講談社の中年ポパイ『HOT DOG PRESS』/もう見ることができないマボロシの名作雑誌/雑誌のイノチ/中野の古本屋/「しのび姫」が大好きだ

「本ばかり読んでいる人生は△である」…エッセイ風評論。本書の20%くらい。
文庫本をテストする/読み方の研究/『フジ三太郎』は新聞マンガ界の恥だ!/ブタ的編集人たちが作る金色のブタ的婦人雑誌/ゴキブリ雑誌を踏みつぶせ!

「雑誌についてとにかくいろんなことを言いたい」…各雑誌批評。本書の20%くらい。
其の一
 ぴあ/平凡パンチ/PHP/ビックリハウス/宝島/ポパイ/ウィークエンドスーパー/プロレス/写楽/遊/選抜面白雑誌オーダー・フィナーレ編
 其の二
 はじめに①/はじめに②/月刊フルハウス/暮しの手帖/週刊読売/PHP/家庭画報/幼稚園/小説現代その他/クロワッサン/季刊読書手帖/PLAYBOY/写楽/岳人/銀花/ブルータス/芸術生活/壮快/BOMB/微笑/発売日について/びわの実学校/月刊就職ジャーナル/食食食/家の光/スタジオ・ボイス/ビッグトゥモロー
「あとがき」なのだ/文庫本のためのあとがき

表題作になっているし、「もだえ苦しむ…味噌蔵」は強烈な印象だったのでこれがメインと思っていたがその記憶は間違っていたのだなあ。
本書の初出は「本の雑誌」が中心だが、「噂の真相」や他媒体に書かれたものも収録されている。
電子版には例のごとくホームページから目黒さんと椎名さんの対談記事転載。
また、電子書籍あとがきも有り。

2014/11/22

あたたかい水の出るところ

あたたかい水の出るところ (光文社文庫)
木地 雅映子
光文社 (2014-11-12)
売り上げランキング: 58,019
■木地雅映子
きじ・かえこさん。
このひとのことを知ったのは『和菓子のアンソロジー』で、それが良かったので他の話も読みたいと思っていた。単行本を見て「あれ、このタイトルどこかで昔見掛けてホラー小説と思いこんでいたような気が…」。温泉で「ガール・ミーツ・ボーイ」とか書いてあるし、うーん別に守備範囲じゃなさそうだけど木地さんの本で読めそうなのってこれくらいなんだよねと保留にしていたら先日タイミングよく文庫化してくれたので「ラッキー」とばかり購入(読み終わってから見たらこれ電子書籍でも同時期に出てたらしい)。

それにしてもこんな話だったとは!
帯とか裏のアラスジに書いてある文言から想像するのとはちょっと違いすぎやしないか!? いやまあ確かにそういう要素もおおいにあるんだけどさ~問題のその原因についてあっさり触れすぎててまさかこんな毒仕込んであるとは……みたいな。

毒親、っていうのか、虐待、でもあると思う、とにかく主人公の柚子の家庭環境がへヴィー過ぎて。
読みはじめはのほほんまったり~とした女子高生のお話で、「まるで川原泉の描く目が線で出来ている女の子みたいだのう~」と呑気に読んでいたのだがそのうちにだんだん家庭の中の家族の異常さがわかってきて、こんなもん途中でやめられますかいな!

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)
川原 泉
白泉社
売り上げランキング: 62,665

両親の仲はもう冷え切っていて、母親も仕事とかで家の中のことはあんまりしてなくて、子どもは柚子が次女で、他に容姿は良いけど遊びまくってる短大生の長女と、小さいころから勉強が出来る中学生の妹がいる。母親は昔からこの勉強が出来る三女だけをかまって、その子をいかにいい大学に入れるか、ということを第一目標にしていて、次女である柚子がマイペースなのを良いことに家事労働でこきつかっている。家事をしてあって当たり前で、してなかったら罵詈雑言の嵐という……。姉も三女も同様に次女におんぶにだっこ。父親は家にほとんどいなくてノータッチ。三女はそうやってお姫様扱いで育ったから我儘ほうだいで性格が歪んでしまって、しかも進学してから周囲は出来る子ばかりになってプレッシャーからおかしくなって引きこもりみたいになり、家庭内で暴力をふるうこともしばしば……

読んでいくうちに、柚子は自己防衛の手段としてああいう性格になり、ああいう生き方をせざるを得ないんだな、ということがだんだんわかってくるのである。
柚子は高校を出たら就職し、自立することでなんとか母親と家族から離れようと考えていたがその考えさえも母親の「家事をする人間がいなくなると困る」という身勝手な理由から反対される。それも表向きは「若い女の子が一人暮らしなんて危ないでしょう」というおためごかしによって。しかも「家に給料を入れて妹の進学費用の助けをすべき」とか言うんだからもう開いた口が塞がらない。

柚子、逃げて!

もはや途中から祈るような気持ちで読んでいった。
ので、終盤にかけての展開がどんだけドリーム入っていようが、「そんな都合の良い白馬の王子様が的展開あるかいな」と頭のどっかでツッコミ入ろうが、基本、オールオッケー!

倒れた先の先生や、お風呂屋さんでお馴染みになったご近所の御婦人たち、いろんなひとが助けてくれる環境でほんっとーに良かった。柚子を迎えに行く根性があって養っていく甲斐性のある、しかも恋愛感情もばっちりの素敵なオノコが表れて本当にめでたいと思った。

この話は本当にお風呂とか温泉の描写が気持ちよさそうで、温泉とかサウナとかへの憧憬と称賛にあふれていて、そういう全体に漂うあったかい「お湯」が、そしてそれを愛する柚子や周囲のひとびとのふんわりした人情がなければ、とてもじゃないけど小説として読んでいられないと思う、ほんとよくまあこんな危ういものを書いたなあ、と衝撃だ。あと、ちょっとSFとかファンタジー入っている箇所もあって、幽体離脱とかこんなふうに扱っちゃう!?ってびっくりしたり。

本書は恋愛小説としても読めるみたいだけど、毒母・毒家族の緻密な書き込みに比べるとどこもその、あまりにもキラキラふってわいた好条件の男子すぎてなんだかそのへんはのめり込めなかった。まあそれは読み手によって分かれる、かな。
あのお母さんや妹が己の間違いに気付くときは来るのか疑問だけど、お願いだから柚子にこれ以上迷惑かけないでもらいたいもんだね!

HNK-FMでラジオドラマ化するらしいけど……どこまで忠実に再現するんだろう。こんなの夜中に聴いたら眠れなくなりそうだよー。

さらば国分寺書店のオババ 【再読】

さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-05-29)
売り上げランキング: 1,508
kindle版
■椎名誠
本書は昭和54(1979)年11月情報センター出版局から刊行された後、平成5(1993)年3月三五館から新版として刊行された。
その電子書籍版。
新潮文庫版で既読だったのだがもはや手元になく、これとこの前に上げた『ひるめしのもんだい』はキンドルで100円だったので「安!」と気軽に買い直した(後で知ったがキャンペーン価格だったらしい)。
『ひるめし』はごく普通の椎名節だったが、デビュー作の本書はかなり文体がぶっ飛んでいるというかシロート抜けしていない感じがびしばし残っているというか、クセがある感じだ。でもあとがきとかで書いてあるけど「昭和軽薄体」も「スーパーエッセイ」も周囲が付けたんじゃなくて椎名さん本人が考えた謳い文句なんだそう。そして「スーパー」は「超」の意味じゃなくて「スーパーマーケットみたいにいろんなものが」という意味で付けたのを周囲が良いように誤解?して「超」だと思っちゃった、んだって。うーん、まあ、「スーパー」は文脈で明らかに「店」的な位置にないと普通は「超」だと解釈するよね。

で、中身はどういうのかというと国分寺書店という古本屋さんのことやその店主である「オババ」さんのことはあんまり書いていなくて、全編通して著者が強く訴えて(?)いるのは「公務員をはじめとする制服を着た職業のひとびと」に対する不平不満、反抗なのであった。横柄で偉そうで腹だたしいんだそうだ。最初にやり玉に挙がるのは国鉄職員で、その他警察官とかにも吠えている。
正直ほとんど共感するところはない。まあ分からないでもないけどそんなにトンガらなくても……という感じだ。

面白いのは巻末に載っている目黒さんとの対談だがこれはホームページ「椎名誠 旅する文学館」からの転載なので、そちらで読むことが出来る。椎名さんがどういう過程でサラリーマンから作家になっていったとかそのへんのいきさつが書かれている。

本書の沢野さんの挿し絵はいつもの落書き調とは違う感じだ。筆とかで書いてる感じ。

ひるめしのもんだい 【再読?】

ひるめしのもんだい 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-03-28)
売り上げランキング: 823
kindle
■椎名誠
本書は初出「週刊文春」1990年1月4日号~12月13日号、1992年7月単行本の電子書籍版である。
新宿赤マントシリーズの第1弾を読みたいと思って検索したらこれがヒットした。
「椎名誠 旅する文学館」という著者のホームページがあるが、それと連動企画っていうやつなのかな?

例によって解説は省略されているが、「あとがき」「文庫版のためのあとがき」「対談 椎名誠×目黒考二(ホームページからの転載)」、「電子書籍版あとがき」「椎名誠の人生年表」が付いている。
沢野さんの挿し絵もちゃんと載っている!(だから容量がけっこう大きいよというメッセージがダウンロード時にあったんだね)。

1990年ということで、時代が出ているかなあと思って読んでいったけれどもあんまりわからなかった。
第1回を読めばなんで「赤マント」なのか分かるかなと思って読んだけれども結局わからなかった(書いてなかったよね?)

もっと「初期!」の軽薄体、とか云われた文体なのかと思っていたけれど、書かれたのは1990年で、椎名さんのデビュー作「さらば国分寺書店のオババ」執筆が1977年だから、うーんなるほどなあ、このへんになるともう随分最近のと変わらないというか、まあ椎名節の必殺四字熟語重ね!みたいなのは散見されるけど46歳だもんね…(と、こういうのが「人生年表」ですぐにわかって非常に便利なのである)。

目次はアマゾンでも全部載っているからコピペはやめておこう。
「ひるめしのもんだい」というのは中の1篇からのタイトルで、要は、お昼時になるといつも「昼飯をどこ(の店)で食べようか」と迷ってしまう問題、なのだった。まあ「これが食べたい」と決まっているときなんかは良いけど、なにも食べたいのが浮かばないときとかはわたしもこんな感じになるかな…ふだんはお弁当(雑な作りデス)を作って持って行っているのだけど。椎名さんはお弁当方面も考えたみたいだけど室内で食べるのはどうも性に合わない、とかだったようだ。

それにしても本書を読んでいて気になったのは、飼い犬(けっこうデカい犬種)を散歩時にリードで繋いでいなかったり(自分の周辺から離れないから、と書いてあるけど犬が苦手な人間には怖いんだよー)、社会のルールを守ることに「うるせいうるせい」なんつってけっこう反抗してたりして、「それってどうなの?」と。まあ椎名さんの周辺は「ですよねー」としか言えないんだろうけどさ。1990年はまだしも、2014年には絶対に向かないよなあ。

あ、時代を反映したことあった。この頃はバブルで、ワンレングスが流行ったときなんだね、それで誰もかれもが長い髪をばっさーってやって、機内とかで枝毛切ってる、という描写が何カ所か出てくる。いまもロングヘアのひとはたくさんいるけど、電車とかで枝毛切ってるひとは見ないよね。マナーの向上、っていうかみんなヘアケアしてるから枝毛が減った、というのが大きいのかなー。

なお、本書は初読みと思っていたが自分のパソコン内を検索するとどうやらハルカ昔に既読、なのだそうだった。文春文庫版で。ふーん。

2014/11/20

タコの丸かじり

タコの丸かじり
タコの丸かじり
posted with amazlet at 14.11.20
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 4,682
kindle版
■東海林さだお
本書は「丸かじり」シリーズの記念すべき第1弾で初出は昭和62(1987)年1月~9月「週刊朝日」の連載「あれも食いたい、これも食いたい」を書籍化したもの。
単行本も文庫も絶版。それがkindleを入手することで電子書籍として読むことが可能になった。電子版ということで文字だけかと思っていたら東海林さんの挿し絵?というかヒトコマ漫画というのか?もちゃんと載っているのが嬉しい。まあちょっと小さめだけど。
いまからざっと26,7年前ということで、時事風俗的な違いや東海林さんの言い回しが興味深かった。

コンビニのことを東海林さんが「コンビニエンスストア(以下長すぎるのでコンストと略す)」って書いてたり、回転寿司屋での作法(?)が解説してあったりするのは時代だなあ。
このときから既に「鯨」は遠くなりつつあったんだなとか、おにぎりの具にマヨネーズとかいろいろびっくりされたのがこのへんからなんだなとか、激辛ブームは昔からあったんだなあとか。
東海林さんって変なことにこだわるなあというのが丼というか器の重さで、これは近著でも何回か見かけたがなんと第1弾から出てきたのには驚いた。要は、外食のときとかに見かけで器の重さを無意識に想定して持ち上げるので、瀬戸物のようなプラスチック容器だと勢い余って持ち上げ過ぎてしまう、とかそういうことが書かれているわけなんだが、そうかなあ。別にそんなので困ったこと無いケドなあ。プラだと味気ないなとかそういうのは感じたことあるけど。
あと、「当人」と「体」を分けて別々の扱いにして書いているのが2カ所あった。これは世間的な流行りなのか東海林さんだけなのか不明。

目次。
ナイター・弁当・生ビール/激突!激辛三十倍カレー/究極のネコ缶を食べてみる/「おいしい」ってどんな味?/馬食い団、ひそかに浅草へ/とうもろこしは律儀である/ナゾの季節物、冷やし中華/スイカはガブリ食いに限る/どこへ行ったか「かき氷」/終戦当時の前科を告白する/殿がたはバイキングが苦手/ああ八丈島のタコ丸焼き/プラスチック丼世に氾濫す/本もののうな重に巡り合う/嘆かわしい新おにぎり事情/天下一品丸かじりのすすめ/秘伝「技あり」炒飯のコツ/焼き鳥の串の業績を讃える/うれし懐かし、鯨食べたい/回転寿司なんかこわくない/フライ物の正しい生きかた/もうくさくない「くさい飯」/「ピーナッツのナゾ」を追って/がんばれ、デパート大食堂/勇気をもって厚く切る塩鮭/いい気な「おせち」を叱る/牛丼屋のムードはなぜ暗い/やっぱり試食はむずかしい/にぎり寿司の賢い運営計画/台所の「捨てられない」面々/爽やかに散歩シーズン開幕/油揚げの処世術を見習おう/花見点描「花より段ボール」/伝統を誇る菓子パンを統括/立ち食いそばを「評論」する

解説は沢野(ひとし)さんだったようだけど、kindle版では省かれている。やっぱ解説は別料金が絡むからややこしいのかしらね。

2014/11/19

ハロウィーン・パーティ 【再読】

ハロウィーン・パーティ クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 11,761
■アガサ・クリスティ 翻訳:中村能三
ポアロもの長篇第31作品目。原題:Hallowe'en Party。1969年。
クリスティの分身?とされるアリアドニ・オリヴァが登場する。最初のほうだけだが従僕ジョージも出演する。昔なじみのスペンス元警視も出てくる。

ハロウィーンのパーティで「殺人を見たことがある」と主張した女の子が何者かに殺された。りんごのいっぱい入った桶に頭を突っ込まれて……。

この残忍な殺害方法は衝撃的で忘れようもないのだが、例によって犯人とか動機とかいったことはいっさい覚えていなかったのでポアロさんが種明かしするまで全然わからなかった。再読どころか何回かは読んでいるはずなのになんで忘れてるのかなあ。まあ、おかげでミステリーを愉しめるので有難いんだけど。

この話は庭園萌えなシーンがあって、描写も素晴らしく美しく、うっとり。
また、森の妖精のように可愛らしい少女も出てきて、微笑ましい。

アリアドニ・オリヴァが好きだし、設定も好きなのでこの話はかなりお気に入りだったけど、以前読んだときはまだ庭萌えは無かったと思う。


2014/11/17

エール! (1)

エール! 1 (実業之日本社文庫)
大崎 梢 平山 瑞穂 青井 夏海 小路 幸也 碧野 圭 近藤 史恵
実業之日本社 (2012-10-05)
売り上げランキング: 19,411
■大崎梢・近藤史恵ほか
大崎さんを最近また少し読むようになって、光文社のアンソロジーがなかなか良かったこともあり、このアンソロジーも読んでみたくなった。
実業之日本社文庫。
実業之日本社は知ってるけど、文庫なんかあったんだ。本書を本屋で探そうとして初めて知った。そういう目で本屋さんの棚をずっと見ていくと、あるんだね、小さな書店にも実業之日本車文庫のスペースが。売れっ子東野圭吾の文庫がここからも出ているとわかり、「おお、稼ぎ頭がいて良かったなあ」なんて思っちゃったり。

調べてみたら実業之日本社の創業は1897(明治30)年と古いけど、実業之日本社文庫の創刊は2010年10月5日とごく最近のようだ。

『エール!』は現在3冊めまで出ているアンソロジーで、ホームページの記載によれば
【笑って泣いて元気になれる、お仕事小説アンソロジー第1弾!!(中略)
オール書き下ろし、文庫オリジナル企画。書評家・大矢博子責任編集。】
ということだ。「1」の解説は大矢さんで、それを読むとこのひとが企画したんだなということは読み取れるようにはなっていた。
働く女性のために、眠る前に1つずつ読んで、ちょっとでも元気になってもらえたら、というコンセプトらしい。わたしはそういう「ためて読む」ことは出来ないタイプなので眠る前に4つ読んで、会社の昼休みに残り2つも読んじゃったけど、いくつか読んだ時点で「これはハッピーエンドが約束されているんだな」とわかったので気を張らずに読めたのが良かった。
本書を読んで仕事をやる気になるとか落ち込んだのが癒されるとかそういう効果があるかというと、少なくともわたしには自分と重ならない設定ばかりなので共感とか引き寄せて考えにくいのでそれは無いなという感じだ。

第1弾はこの6作品収録(2012年10月05日発売)。
全員若い女性が主人公、そういえば全員独身で彼氏もいないっぽい。
お話同士でちょっとリンクというか目配せがあるのが面白い。あの話に出てきたあの店がこっちの話にも、とかそういう遊びがある。

以下、内容に触れています。

大崎梢「ウェイク・アップ」★★★★
◎漫画家が主人公。
漫画家さんの実態がわかって面白かった。それにしてもこの少女漫画家いくたさんは画力が相当あるよね、少女漫画家には若い女の子は描けても背景とか小物や年配の人物は「?」というひとも少なくないから、こういう実力があるひとが狭い枠の中に閉じこもらず新たな才能を発揮できそうなラストですごく良かった。いくたさんが描いた作品を読みたいと思った。

平山瑞穂「六畳ひと間のLA」★★★ 
◎通信講座講師が主人公。
初。
28歳の主人公があまりにも危機感無さ過ぎて腹が立った。なんで個人特定できる情報書いちゃうのよ。しかも相手がヤクザ系……。号泣するシーンは同情しつつもあまりにも型どおりの「泣かせ」でちょっと醒め気味。しかし通信教育ってこんな親切なのかなあ。この先生すんごく純粋で偉いなあと思った。

青井夏海「金環日食を見よう」★★
◎プラネタリウム解説員が主人公。
初。
先月地元のプラネタリウムで解説員さんの「星とか大好きマニアぶり」が伝わるお話に感心したばかりだったので、個人的にタイムリーだった。小学校が急に決めるくだりはリアルだったなあ。
館長がステレオタイプすぎてやや興ざめ。

小路幸也「イッツ・ア・スモール・ワールド」★★★
◎ディスプレイデザイナーが主人公。
昔は大きな百貨店相手に仕事をしていたのに経費節減で切られ、いまは小さな客相手にしなければならないと屈折している主人公の心理などがなかなかリアルで興味深かった。元彼に名前呼び捨てされて嫌じゃないのかなーとちょっと気になる、あ、この著者は男性だからかなるほどねー。

碧野圭「わずか四分間の輝き」
◎スポーツ・ライターが主人公
初。この話に出てくるひとは主人公も含めて何故か全員好きになれなかった。フィギュア・スケート好きでその専門的なライターが、仕事のために「スポーツに興味がないひとにでも食いついてもらうために」選手の恋愛暴露を書けと言われる話。まあ普通にありそうだ。だがそれを断った後にああいう展開はそう無いと思う。ドリームだね。

近藤史恵「終わった恋とジェット・ラグ」★★
◎ツアー・コンダクターが主人公
5㎏や10㎏痩せたって、英語を習ってツアコンが出来るレベルになったって、「自分」は駄目なままだという主人公のボヤきから話がはじまり、のっけから共感できなかった。5~10㎏もスリムになったら着られる服がまず違うし、周囲のひとだって「変わったな」って絶対わかるよ! それに英語が喋れるって絶対便利だし尊敬しちゃう。ましてやその両方を同時にやれるなんてすごく努力家で偉いと思う。
なんでこのひとはそんなに自虐的なの?って感じ。読んでいくとつまり昔の彼に二股かけられた挙句あっさり捨てられて、それで自己否定になっちゃったのかな、でもそれをきっかけに頑張って痩せて英語も習得したんだから立派なのに。嫌な客にも気配りを怠らないプロの姿勢が素晴らしいし。この主人公は自分の魅力に早く気付いて欲しいなあ。

2014/11/15

死んで生き返りましたれぽ 【漫画】  [pixivの衝撃作が書籍化]

死んで生き返りましたれぽ
村上 竹尾
双葉社
売り上げランキング: 61
■村上竹尾
pixivを半年前くらいから暇なときに覗くようになったのですが、そこで読んで「これはすごい。実体験だもんなあ」と衝撃を受けた作品が書籍化。
昨日2014年11月14日が発売日。
pixivでは読めないのかなと思ったらまだ読めるようです(無料)。太っ腹……!

内容はタイトルのとおりです。
「なぜ、どうして」に対しての説明がpixivではあんまり描いていなかったんですが病気じゃなくても、働きすぎでちゃんと食べたり寝たりしてなかったら人間て死んじゃうんだなあと、まあ当たり前なのかも知れないけれどもあんまり実感していなかった。
そしてそこから竹尾さんは生き返っていくのです、まさに、文字通り。その経緯が描かれています。

イラストの表現の仕方がすごく独特のセンスで、逆にリアルというか……。
pixivでは書籍化する前は「竹尾」というハンドルネームだったと思うのですがいつのまにか苗字が増えていました。

pixivの中の作品を読むのには登録が必要です。http://www.pixiv.net/
pixivって何?というのはえーと、あんまり詳しくないんですけどわたしは絵師さんの投稿サイトと思ってるんですけど……。いまググりました。SNSの一種で設立は2007年9月10日だそうです。イラストや漫画や動画イラストなどがメイン。ここからプロの漫画家になられた方も少なくないみたいです。わたしは見てるだけで投稿はしません。

卵町

卵町 (ポプラ文庫)
卵町 (ポプラ文庫)
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栗田有起
ポプラ社 (2014-02-05)
売り上げランキング: 356,238
■栗田有起
この著者の作品は10年ばかり前に『お縫い子テルミー』と『オテルモル』を読んでけっこうその雰囲気が好きだった。
久しぶりに新作を読む。
本書は「asta*」2012年9月号~2013年10月号に連載されたものに加筆訂正して文庫化したもの(単行本はなくていきなり文庫のパターン)。
「asta*」はポプラ社のPR誌っていうのかな、大きい書店のレジ脇とかに無料でどうぞって置いてあるのを2回ほどもらって目を通したことがある…と思ってググったら「ポプラ社新小説誌」なんだって。年間購読2,000円(送料込み)。この手の冊子って1冊だと無料で配ってたりするんだけど(「図書」とか)年間だとお金かかるんだよね、まあ個人で買ってる人ってすごく少ないと思うけど図書館とかが買うのかなあ。

話が逸れてしまった。
ちなみにこれはkindleじゃなくて紙の本。kindleにはまだ無いし。

主人公の女性サナはつい最近実母を亡くしたばかり。
年齢は出てこないけど「仕事を終えると」と書いてある。独身で、兄と父親がいる。お母さんは高齢ではなくまだ若いのに亡くなってしまったというのはなんとなくわかる。読み進むとサナは高校を出てすぐ就職したと書いてある。まだ三十そこそこか、下手したら二十代かもしれない。
サナは母の最期の頼みに応えるために「卵町」にやってきた。

「卵町」はサナが「住んでいる町からは、電車を乗りついで、三時間あまりで着く」と書いてある。この「三時間」には新幹線は含まれないらしい。何故ならすぐ後に「さほど距離が離れているわけではないのだが、かなり異なる世界に足を踏み入れた気分になる」と書いてあるから。それでどちらかというとメインの路線ではなく、不便なほうへ行く感じなんだろうなと見当がつく。
町は卵のように楕円形をしているそうだ。そして「いたるところに医療施設があり、住民のほとんどが施設の関係者である。」らしい……。

この小説を読みながら、「この物語は、まるで書いたひとが己のこころの傷を、書くことで癒すために書いたようなそんな印象を受けるなあ」と思った。別に事実そのとおりかどうかまでは知らないけれどもイメージの話だ。主人公が母を亡くし、喪失感でなにか茫然自失のままとにかく「卵町」にやってきて、母の依頼を叶えようとする、その「ふわふわした定まらないこころ」ぶりが「元気でエネルギッシュな気持ち」と正反対の感じで、まあそういうときってあるよね……と。

サナは母親と仲が良かったというよりは、どちらかというと距離感を感じていた。兄と父のほうがよほど母と仲が良く、だからこそ兄と父は母の死を受け入れることが難しかった。でもサナも母としっくりいっていなかったと感じていたからこそ、あっけなく逝ってしまった母との関係が宙ぶらりんのままな感じになってしまって、だからしんどいんじゃないかなあ。

「卵町」でサナは何人かのひとと知り合い、そして料理を作ってもらって食べることでだんだん「回復」していく。サナ自身はどうやら料理はあんまりしないタイプのようだ(ブリの切り身とあらをそのまま茹でてスープとして食べようとするのにもびっくりしたが、味付けに「塩コショウ」というので「ええええ」と引いてしまった、それを食べた友人は「なかなかうまい」けど「ブリのあらは下処理しないと」と忠告する。わたし的にはお醤油とかお酒とか大根とか無いのかなと思ってしまった)。

この物語では食べ物がけっこう重要な「癒し要素」として出てくる。アパートメントの女主人が作る料理はどれもすごく美味しそうで、しかもなにかあたたかいパワーがもらえそうな感じだ。彼女が作るスープにはいったい何が入っているのだろう。

読んでいてちょっと作品や表現について荒いというか粗いというか、そういうのは2,3目についたがまあ雰囲気を楽しむべきと流して読んだ(たとえば役所で担当者のきっちりした髪型とネクタイを「目に焼き付けながら」役所をあとにしたりするんだけど、それをしっかり記憶して何か意味があるのかなと思ったらなんにもなかったり。なんで「焼き付ける」必要があったんだろう? あと、サナは庖丁を研ぐのが得意らしいけど、肝心要の研いでいるシーンの描写が一度も出てこなかったのは残念だなあ。刃物を静かに研ぎながらどうこう……っていう具体的な描写があると良かったんだけど、砥ぎ石をサンドペーパーで整えるためにそれを探すシーンとかは書いてあるのにね)。

まあ細かいことは無視して楽しんだほうが良いのは間違いない。

2014/11/14

ナイルに死す 【再読】

ナイルに死す クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 14,245
Kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:加島祥造
原題:Death on the Nile。1937年発表。
ポアロの長篇もの15作目。
エジプトが舞台。ナイル河をめぐる客船の中で起こる殺人事件。
純文学ではないのでエジプトやナイル河の情景描写はあんまり無いけど物売りの子がわらわら寄ってきて大変だというのはよくわかった。エキゾチックな感じはほぼ無かったかな。西洋人ばかりの船だし。

若くて美人で頭も良い、おまけに富豪の娘で大金持ちというリネット・リッジウェイ。彼女の女学校時代の親友が失業した婚約者を雇ってくれと頼みに来て、リネットは快く承諾するが……。
金持ち娘が貧乏な親友から婚約者を奪って略奪婚、というメロドラマみたいな展開が導入部にあって、そこから舞台はエジプトに移る。ミステリーの始まりである。この話は全篇通して人間の恋愛模様がいろいろ枝葉のも含めて絡んできて、なかなかドラマチックだった。
ポアロさんは仕事じゃなくて休暇を楽しんでいたのだが、状況的に探偵稼業に戻らざるを得なくって……実際的に考えるとこれってタダ働きだよねえ。お気の毒だわ。
クリスティお得意の人間の感情の動きが見事にストーリーを組み上げていて、面白かった。登場人物はけっこう多いのだけれども、最初のほうの「訳者からのお願い」通り、ゆっくり読んでキャラの性格を理解するよう努めて読むと混乱も無く入り込めた。主要なのはみなしっかりキャラ立ちしてるからこそだなあ。
★注意★以下はネタバレはしないように気をつけましたが未読の方はスルー推奨です。


あらすじだけで読むとリネットってとんでもない性悪女みたいだけど、実際話として読むとそう悪い印象でも無いのだよね不思議と。契約書をきちんと読んでからしか決してサインしないとかしっかりしている。「甘やかされたぱっぱらぱーの金持ち娘」じゃないところがとっても魅力的。
この話、初めて読むわけじゃないと思うんだけど、ほとんど覚えていなかったので初読みみたいなものだ。ふつうに考えたら「このひとが動機を持ってるし犯人でしょう」と思うひとがいて、直前に『スタイルズ荘』を読んでいたのでまさか同じパターンじゃなかろうなと思ったりしたんだけど、そのひとたちは完璧なアリバイを持っている。やはり同じパターンは無いか、じゃあほかの誰が、と考えながら読んだ。金持ちの令嬢というのは殺される理由がいくつもあるのだ。恐ろしい。
ポアロさんが種明かしするまで犯人はわからなかった。それにしても3人目は本人がもうちょっと危機感を持って静かにしてたら殺されずに済んだものを。
また、この話の本筋以外でロマンスが数組生まれるんだけど、それがまたなかなか好ましくてよかった。

些細だけど気になること…
本文の中に飲み物を「すすった」という表現が出てきて、しかもそのひとはマナーが出来ている設定のひと。西洋人は「すする」のはタブーなはず。翻訳が適切で無いということなんだろうけど気になったなあ。クリスティの他の作品でも見かけたことがあったけど、やはり翻訳が古いからかなあ。
翻訳の加島祥造と云う方は大正12年生まれだそうだが。うーむ。
ちなみにキンドルで便利な点はこういうときに本文検索が出来ること。本書には飲み物を「すすって」いるシーンが4回出てくるんだなとすぐわかる。

2014/11/13

スタイルズ荘の怪事件 【久しぶりの再読】

スタイルズ荘の怪事件 クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 2,408
Kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:矢沢聖子
原題:The Mysterious Affair at Styles。
1920年に発表されたアガサ・クリスティのデビュー作。エルキュール・ポアロシリーズの長篇での第1作にして初登場作品。
レギュラーキャラではワトソン役のヘイスティングズ、ジャップ主任警部も登場する。

第一次世界大戦で負傷したヘイスティングズが友人ジョンに招かれ田舎の屋敷に滞在しているときに起こる事件。
ジョンには父親の再婚相手の義母がいるが、高齢の彼女が突然20歳も年下と再婚したことで家族の中に剣呑な空気が漂っていて…。

クリスティにハマっていた十代後半のときに初読みし、以来折に触れて何度か読み返したポアロ・シリーズ。クリスティファンというか、ポアロさんのファンなのである。
この話はポアロさんとヘイスティングズ大尉が初めて登場するし、話の雰囲気も好き。
住宅事情で文庫本を処分してしまって以来、たぶん十年以上経っている。今回電子書籍で購入し久しぶりの再読となったが、読みはじめるといろいろ思い出して懐かしかった。そして肝心要の真犯人とメイン・トリックについてはすぱっと忘れていたので(おおなんという都合の良い我が脳みそよ!)、ミステリーとしても楽しむことが出来た。

詳しいことはネタバレになっちゃうので書けないが、デビュー作にして既に彼女のお得意の「毒」ネタと「人間感情が縺れ合うドラマ」が確立しているのは素晴らしいと思う。
ヘイスティングズが友人の妻にのぼせ上っているのとか、道義的にどうなのかなあと思うんだけど別に「良いなあ」と思うぶんにはかまわないってことかな。それにしても彼は鳶色の髪の女性に弱いね!
あと、ポアロさんが記憶にあったよりもかなりユーモラスな滑稽な存在として描かれていてちょっと意外だったんだけどこれは本作だけのことかな?跳んだりはねたり忙しい。まあ、「外国人だから変わっている」というスタンスが全篇にあったのは覚えているんだけど。

今回ポアロシリーズを読み返そうとシリーズリストを見直したりしているのだが傑作・有名作はそのトリックおよび犯人があまりにも衝撃的すぎて流石に忘れられないんだよね。犯人とトリック覚えていてなおかつ再読する、っていうのはよっぽどほかに動機がなくちゃ楽しめないでしょう。アクロイド、ABC、ブルートレイン、オリエント急行がそうなんだけど、とりわけABCは子ども向けのジュブナイルで読んじゃったのでちゃんと読みたいんだけどなあ……。
でもそれ以外はざっくりアラスジを読んでも犯人を思い出さないので(!!)大丈夫(違)。しばらく再読を楽しみたい。次は何を読もうかなー。

2014/11/11

アジア おいしい話

アジア おいしい話 ちくま文庫
筑摩書房 (2013-10-04)
売り上げランキング: 35,154
■平松洋子
2004年8月ちくま文庫版。現在絶版。1996年に晶文社から出た単行本『アジアの美味しい道具たち』を改題したもの。
古本で購入するか、kindleの電子版で購入するか(まあ図書館で借りるという手もあるが)。
わたくしはkindle voyage購入記念すべき第1冊めとして本書を選んだ。

読みながらまず思ったことは「写真が欲しい!」だってアジアのいろんな珍しかったり面白かったり使い勝手が良かったりする道具が平松さんの好き好きオーラ全開で紹介されているエッセイ集なのに写真がひとつも無いんだもの。
これは電子版だから割愛されたというのもあるけれど、もともと写真ではなく挿し絵だったうえ(あとがきで判明)、絵の点数自体少なかったらしい(amazonのちくま文庫版へのレビューで判明)。晶文社版は挿し絵どうだったんだろう…。

平松さんの文章は「古い単行本ベースだから、どうかな?絶版になってるってことはあんまりよくないのかしら」と危ぶんでいたのだけれどまったくの杞憂。いろんな国の食文化と密接に関わっている台所道具たちを生き生きと描いてあり、とても面白かった。
また「何故アジアなのか」が文庫版あとがきに書かれていて、それが平松さんファンになって以来関心の的だったので、非常に興味深かった。同じ「ものを食べる」ことなのに、国によってマナーも方法も違ったり、同じところがあったり、そういうのにわくわくするのってとっても大事だ。平松さんは異文化に敬意とたっぷりの好奇心を持って積極的に突き進んでいくとっても食いしん坊さんで、そこが素敵だな。
流石に韓国で犬鍋を食べる機会があったときは大変だったみたいだ。わたしは絶対に食べたくないが、味としてはおいしかったそうだ。まあだからこそそういう文化が続くわけだろうが……でもやっぱりイヤだ。
ココナッツを搾る文化もあるけど若い人は店で買ってくるのが増えてたり、キムチをつくらない韓国家庭が少なくなかったり、石鍋は重いから嫌だという意見があったり、……やっぱり文化って残そうと思わないとどんどん楽なほうに生活は流れていくから、日本とおんなじなんだなあと思った。
なお、解説は酒井順子だけど電子版では割愛されている。600円もするのに削りすぎじゃないか!

読後、気になった道具をググってみたけど、ぱっとそれらしき物が出てくるケースはイイけどそうじゃないのも結構……「ピントー」はインドの女優フリーダ・ピントーの情報がズラッと出てくる。「弁当箱 ピントー」にしたらようやくヒット。
「タイ コイ」で検索したらまず鯉が出てくる。「タイ すり鉢 大理石」で検索したら「クロック」が出てくる。まあ一緒のモノということなのかね。呼び方違うだけで。
「ジャティ スパイスボックス」なんて全然ダメで「ジャティの木」でいろいろ見たらどうもジャティって要するにチーク材のことなのかな…。
うわーん、日置さんの写真が欲しかったよう! 

目次
タイ
 ココナッツを搾る(アルミの小ザル)/タイ鍋で、パスタ(両手鍋)/目からウロコが落ちまくる(フライ返し)/田んぼのなかの重箱(ピントー)/タイ米の炊き方指南(クラトゥック・カオ)/サンカンペン村から(竹の盆)/幸せの石の音(クロック)/トンビが鷹を生んだ話(素焼き土鍋)/はさみ打ちの名人芸(竹串)/黒い鉢のなかの功徳(バアツ)
※アジアで覚えた、あの料理1 :裏通りの食堂で食べた味がなつかしくて
干し豚肉の香り焼き/ラープ・イサーン

インドネシア
 椰子の実ひとつ(ココナッツの殻のしゃもじ)/竹で送る風(竹のうちわ)/ジャティにひと目惚れ(スパイスボックス)/日暮れてなお、道遠し(チョベック)
※アジアで覚えた、あの料理2 :おいしくて便利なたれが、いろいろ
 サンバル/ヌク・チャム

韓国・朝鮮
 汁かけごはんのお楽しみ(トゥッペギ)/台所のお守り(チョリ)/キムチの匂い(キムチ用ステンレス容器)/萩の小枝のうえの禁忌(チェバン)/白い酒が揺れる(パガジ)/解放記念日の冷麺(ククストゥル)/「重さ」のハードル(石鍋)/お膳のうえのモンドリアン(ポジャギ)/混ぜて、混ぜて、また混ぜて(チョッカラッとスッカラッ)/女ひとり食べる焼き肉は(飯器)
※アジアで覚えた、あの料理3 :いつのまにか唐辛子のおいしさに、やみつき
 ピビム麺/豚肉と白菜キムチの鍋

インド
 地獄の闇鍋(マサラ・ダヴァ)/小麦粉はしみじみおいしい(タヴァとバトゥーラ)/「食べ方が要求する」食器(ターリー)
※アジアで覚えた、あの料理4 :家のなかいっぱい、スパイスの香り
 じゃがいものサブジ/キーマカレー

ベトナム
 ヌクマムの泉(コイ)/先を急ぐ包丁(せん切り包丁)/「鬼おろし」とモダンデザイン(おろし金)/紙のごはんにぴったり(丸盆)/楊枝を使う恥、使わぬ恥(楊子)/道具の行く末(ココナッツ削り器)/バゲットをサイゴンで(コーヒーフィルター)/恋しやバナナの葉(バナナの葉)/今朝の買い出しは(買いものかご)
※アジアで覚えた、あの料理5 :どこの国でも、お母さんの味が一番だから
 牛肉とパイナップル炒めのっけごはん/カレー風味の焼き鶏
 
中国、台湾
 新宿発、香港経由、銀座着(飯架)/魚に梅干し(魚鍋)/おかずは勝手に(公勺)/ヨーロッパから廻り道(カトラリーボックス)/すっきりいこう(棕櫚のはけ)/麺棒一本、晒しに巻いて(麺棒)/竹筒事件の教訓(竹筒)/雲南の秘具(汽鍋)/フカヒレ料理の助っ人(編竹)/霞の向こう側(火鍋子)/粉をこねる(手)/たったひとつ(アルミのボウル)

おいしさの理由――あとがきにかえて/文庫版あとがき

2014/11/10

kindle voyage ゲッツ!&実際に読んでみた。

Kindle Voyage Wi-Fi
Kindle Voyage Wi-Fi
posted with amazlet at 14.11.10
Amazon (2014-11-04)
売り上げランキング: 118

紙の本大好き装丁萌え人間なのであるが、去年あたりから密かに気にはなっていました、キンドル。
電子版書籍だけにする気はさらさら無いけど、住宅事情や既に読んで処分してしまった本をもう一回読みたくなったときなどに同じ本をまた紙の本で買うのも業腹だし、そういうときに良いんじゃないかな~と。

きちんとキンドル(kindle paperwhite)について調べ出したのが今年の5月くらいで、どうもページ捲りがスムーズかどうかがポイントらしい。ググってみると初夏くらいに2014年版が出るという情報があって、いままでの不具合とかが改善されているということだったので7月くらいから今出るか、それ出るかと気をもんでいた。結局発表があったのは9月中旬くらいだったけど。
しかも改良版はvoyageとか云っていままで1万円くらいだったのが2万円以上するとあって、ぎゃふん! いきなり倍かよ!
paperwhite2014年版も出る、廉価版みたいなのもあるというし、どうしようかなあ…。
迷ったけど「どうせ電子版読書デビューするなら今一番良い条件のをどーんと買って、そんで今後の読書方針を考えたいですたい!」と思ったのでvoyageを注文した。 これが9月22日。

当初は「発送は12月中旬だよん」とかメールが来て「11月始めの発売なのにそんなに混んでるのか~待ち遠しいけどまあ仕方ないか~」と思っていたけど発売日過ぎたらまたメールが来て「早く送れるようになったから送るよん」ということで、ついにvoyageが我が手に!
11月6日に受け取り、Wi-Fi(広告なし)バージョンを選んだのでWi-Fiの設定をして使えるようになりました。充電はじめたら画面に手順が出るのでそれに従って進んでいけばオッケー。
それにしても、アマゾンさんよく分かんなかったっす。ネットの表示では10月くらいに「今買うと11月中にお届け」みたいに書いてあってやきもきさせられたり…。


青空文庫と連動で無料本もたくさんあるようですがまず購入したのは絶版になっていて古本か電子版でしか読めない状況である平松洋子『アジア おいしい話』(ちくま文庫)¥600円也。

まだ操作が不慣れなので不用意に画面にさわってページをめくってしまったり(脇のボタンでめくる仕様なんだけど画面タッチでもめくれるらしい)、戻るつもりで進んでしまったりもあったけど、これは使い手の問題であって、機能自体はとても便利。ページ捲りボタンは紙の本と遜色ないというか、違和感を感じないで済む。
パソコンで青空文庫を読むのと比べると縦書きなのですごく読みやすかった。画面もきれいだし、明るさもフォントの大きさも行間も変えられる。辞書も付いていて難しい言葉が出てくる小説なんか読む場合には便利そうだ。

パソコンで小説を読むと紙で読む7割くらいしかのめり込めない感じがわたし個人はするタイプなのでキンドルはどうかなと危ぶんでいたが感触としては9割読めた感じだ。慣れて行けばもっと良くなるだろう。充電も1回すればかなり持つ感じだし。
ということで思ったより断然良かった、キンドルボヤージュ!

紙の本にしかない魅力は捨てられないのであくまで並行して使い分けしていく所存。だいたい電子化してる書籍の中に自分の好きな作家のがまだ全然少ないし……。

☆kindle1カ月弱使用後のレビューはこちら


2014/11/09

ブックカバーお願いします 補強版

話題になったので手持ちのブックカバーを本棚から引っ張り出してみました。
やっぱりというか、意識して集めていないからちょっとしかありません。
ほとんどの本は全国区の大型書店で買いますし。いちおう、できるだけ自前のマイ・ブックカバー活用するようにもしてますし。
あんまり少ないので良い機会だからとカバー目当てで波屋さんに行ってまいりました。


波屋書房(難波千日前南海通)
猥雑な通りに面しているのに一歩入ればまるで古本屋さんのような渋い空気の書店で番台(?)には白髪交じりの親父さん、その奥に若い店員さん。
近くにジュンク堂難波店があることもあり、専門化を意識してあるっぽい、入ると食関係の本がずらりと左壁一面埋めている。
じっくり選んで結局欲しいものが文庫1冊だけで、悪いなあ――と思いながらレジに差し出したら「はいっ、ありがとうございます!」とこちらの気持ちをいっきに軽くしてくれる実に心のこもった丁寧な挨拶を頂戴し、あまつさえ、「あ、荷物重たかったらこちらに置いてくださいね」などと言われてしまった、本屋さんでお会計の際にそんなの言われたの初めてです!
噂のカバーもきっちりと丁寧にかけてくださり。
なんていうか、ひとつひとつの動作に本への愛情が満ち溢れていました。
帰ってからあらためて調べたら知るひとぞ知る食関係の専門書店だそうです。さもありなん。
そしてカバーの粋なこと!



啓林堂書店(奈良)
十代の頃からずっとお世話になってました。奈良県北部に数店展開してます。駅のそばの便利なところにあって、いずれの店もそこそこ広い売り場面積があってCDとかも売ってて、ほんとに地域の本屋さん、って感じです。



KINTETSU BOOK CENTER(近鉄百貨店内書籍売り場)
地元に展開する百貨店内の書店です。ちなみに服とか買ったときの袋は白地ベースですから本を買ったときだけですねこの色で包装してもらうのって。


BOOK STUDIO(大阪駅フロートコート2F)
この店は最初もっと地の利の良い大阪駅御堂筋口に広いスペースであってレイアウトなどにも凝ったおしゃれで便利な書店だったのですが駅改装でフロートコート(これも駅の施設ではあるらしい)2階に。敷地面積もだいぶ狭くなってしまいました。ここのカバーはシンプルで落ち着いていてかっこ良くて好き。ちなみに同デザインのしおり、5千円以上買うと頂けるカバンもあります。当然頑張ってゲットしました!





ふたば書房(京都・滋賀)
京都に行ったときにふらりと入った書店で2冊買ったら2種類のカバーを掛けてくれました。しかも両方素敵なカバーだったので保存してあるわけです。
わたしが行ったのは京都の地下のショッピングモールの中にあるお店でしたが、絵本売り場ではちょうど”読み聞かせ”をしていて、小さい子どもたちが集まっていて良いなあ、と思いました。



八重洲ブックセンター(東京八重洲)
よく「本の雑誌」なんかにも出てくる有名な書店なので東京に行ったときにここは行っておかないとという感じで寄ったのですがカバーをかけてもらってびっくりしました。プレゼント用の包装をしてもらったのかと思ったらこれがデフォなんですね……!
デパートの包装紙かと見紛う艶やかさだがよく見るとしっかり書店名が書いてあるのでした。

恵文社(京都・一乗寺)
本好きには有名なガーリーな雑貨屋さんを兼ねた書店。
おしゃれな雰囲気の店内はセレクトショップみたいな品揃え。


ユーゴー書店(大阪・阿倍野)
阿倍野の商店街の中にあった個人書店さん。残念ながら2011年12月6日(火)閉店されました。



新潮文庫の夏100キャンペーン用カバー
ずいぶん昔のカバーです。
凸山凹太先生読書日記シリーズ、俳優の永瀬正敏さん。
「青空は、史上最大の読書灯である」というコピーが付いています。


新潮文庫の夏100キャンペーン用カバー
これは最近のYonda?パンダのです。広げてみました。


この記事は2008年9月29日掲載分に2014年11月9日加筆したものです。

2014/11/08

ねじまき鳥クロニクル 【再読】

ねじまき鳥クロニクル 全3巻 完結セット (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 17,538
■村上春樹
この本を最初に読んだのは文庫化された1997(平成9)年で、次に読んだのは日記によると2004年1月16日らしいのだが【少し読み出すけどこれはさすがにだいぶ覚えているし、どうかなあ。やっぱ初期の作品が良かった……。】と書いてあるのでほとんど読まなかったのだろう。
文庫で上・中・下と3冊あって下が一番分厚く500頁越え。
今回「中」の終わりまでは真面目に読んだけど「下」になるとかなりダレてしまって、部分的に斜め読みしつつとにかく最後まで気にはなるので読んだ。

それぞれの巻のタイトルが上手いよなあ、そそられるというか、いかにも物語的に面白そうで。
第一部 泥棒かささぎ編
第二部 予言する鳥編
第三部 鳥刺し男編

なお、文庫だと3巻一緒に発売だったが、ウィキペディアによると執筆時期が第三部だけ後なんだね。1,2は1994年4月に発売で、3は1995年8月発売なんだと。ふーん。『1Q84』も3巻目だけ後で書かれたけどまたそれとは事情が違うみたいだけど……。

前回再読しかけたときは「初期の作品が良かった」と書いているけど今回『風の歌を聴け』から続けて同時期に読み返してみて『ねじまき鳥』は随分アカぬけたなあ、おしゃれに洗練された小説になっているなあ、ということをかなり感じた。具体的にどこがどうとは云えなくて、全体的な印象なんだけど。話の持って行き方というか、散りばめられている小道具・印象的なシンボルとかの配置がぐぐっと興味をそそられるようになっている。例えば、空家の庭にある謎めいた鳥の石像とかね。枯れた井戸とか、そこに縄梯子かけて降りていくだとか、壁抜けだとか……ファンタジック!わっくわく! みたいなね。

ちゃんと読んだのが1997年ということは17年も前なんだけど、それにしては話のあちこちを覚えていた、というか正確にいうと読みながら「あ、次はあのシーンが出てくるな」と思い出しそれを読むことでよりクリアにたどっていく感じ。
だってこれ面白かったんだもんなあ!

最初に読んだときからノモンハンの皮はぎのシーンがあんまりにも強烈で、今回も「あ、あれが来る……」とどきどきして一瞬読み飛ばしちゃおうかとも迷ったけどでもこの小説であそこはナナメに読んじゃいけないだろうとちゃんと読んで、そしてやっぱりすごい衝撃だった。史実的なものだという頭で読んでいるからそうなるんだけど。まったくのフィクションだと思ったらここまではショックを受けないだろうから。
あの衝撃が1巻で既に出てきていたのか……。

この話のわたしのツボ。
・路地、路地に降りてそこを歩いてミステリアスな空き地に行ったりする設定。
・井戸に降りてそこでいろいろ不思議なことが起こるところ(井戸はイド(自我とか超自我とか心理学用語的な)に通じるのかなやっぱり。心理学は大学の般教や教免絡みの授業でかじった程度なのでよくわからんけど)。
・壁を通り抜けて別のところに出る設定が夢じゃなくて現実にも影響を与えている設定。

この話には女の人がたくさん出てくる、若い女の人がほとんど。で、また例の村上春樹流「交わり」描写がいっぱい書かれる。もうこのひとはこういうひとなんだろーなーと諦めんといけんのじゃろうね。でも無くても良いと思うんですケド!無かったらもっといいのにと思うんですケド!

『鼠』シリーズと違うなあと思うことが結構あって、主人公の他のキャラとの付き合い方とか、……他人に対してわりと積極的に働きかけていく感じがした。あと、ストーリーに実際あった戦争などの話が絡むこととか。ノモンハンのエピソードとか1巻だけかと思ったらずっと引きずって関わってくるんだよね、ソ連の皮はぎ野郎は本当に胸糞悪かったけどこのひとって綿谷ノボルとなんか関係あるのかな……生まれ変わり的な。なんかそんな印象なんだけどこれって本文のどっかでちゃんと書かれているんだろうか(3巻ナナメ読んだ弊害で不明)。

加納マルタとクレタというのが結局なんだったのかとか、綿谷ノボルがどうして女の人をああいうふうにすることで「汚す」ことになるような能力?というかそういう影響力を持つ人間であるのかとか、猫が突然失踪してまた唐突に戻ってきた(けどシッポは違う?)のは何故なのかとか、よくわからないことは残ったままだけど、まあでもこの話の一番メインの「クミコ(妻)をこの手に取り戻すぜ!」という目的には光が見えたから大団円、ということになるのかなあ。でも普通奥さんが出て行ってもう電話するのも苦痛だって言ってるのに「戻ってこさせるぜ」って言ってる男はストーカーということになっちゃうよね……奥さん視点で考えるとこの主人公はなんでそこまで自信があるのかという気もするなあ、とか思いつつ読んだ、結局最後の方で語られるクミコの話で主人公のひとりよがりじゃなかったことが判明するわけだけど、それはこれが特殊な物語で、したがって奥さんの失踪理由も極めて特殊だからこそ成り立つんだよね。

なんだかんだ云って男主観の男視点の話だよなあ、というのが全体的ぼんやりした感想でもあった。あと、村上春樹の小説の主人公はどうしても、そう読んじゃいけないことは百も承知なんだけど著者本人のイメージが抜けきってくれなくて、いまいち萌えきれないのだった。女の人にモッテモテなんだけどシュッとしたハンサム青年の像が浮かべられないの……。

2014/11/06

今日はぶどうパン

今日はぶどうパン
今日はぶどうパン
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平松洋子
プレジデント社
売り上げランキング: 14,998
■平松洋子
小さい書店数件では見つけられなかったので大阪の大きな書店に行った。ここは広い。新刊だけが並べられている棚だけで何列もある。そこと「日本の作家」の「ひ」あたりの棚をざっくり流し見ても気が焦っているためか見つけられなかったので、端末のほうが早いかとPC検索したらその結果が面白かったのでここに印字したものを貼らせてもらう。


えええまさかの実用書!? 平松さんがパンの焼き方を書いた本!? タイトル「今日はぶどうパン」てそういう意味じゃないと思うんだけどまさかのレシピ本なの!? 出版社はプレジデント社かあよく知らないなあ、うーん100%無いとは言い切れないけど…。なんだかおかしくて愉しくなって実用書コーナーに行ってみた。
見つけて手に取ってすぐ、まず中身をぱらぱら見て「パン作りHOW TO」の本かどうかを確かめてしまったのは今回くらいのものだ。
この仕分けした書店員さんは平松洋子を知らんのだろうなあ。表紙も美味しそうなパンの写真だしねえ、などとにやにや。
その後、ゆったりした気分で「なにかイイ本出てないかな」と新刊が並んでいる棚を眺めていたらちゃんとそこにも並べてあった。…わたしったら粗忽者。

さて、内容の感想だ。
実用書ではなく、これは文芸書だよね。食材や料理・日々の食べることに絡めた思索を紡いだエッセイ集だ。
食の雑誌「dancyu」の連載「台所の時間」2010年5月号から2014年6月号掲載分に加筆訂正したもの。
調理方法による味の工夫、地味な食材へのスポット、日常目にする何気ない雑貨、いろんなひとの生活の中の味…。
いつもの平松節に、日置さんのカラー写真が贅沢に載っていて目を奪われる。
「手袋」で新美南吉「てぶくろをかいに」に触れられていて懐かしく思い、「夕焼け」では穂村さんの短歌が引用されていて、にんまり。
それにしても平松さん、揚げ物お好きだなあ。お酒もお好きだなあ。日本酒を嗜まないのでお店で猪口を選ぶとかそういう「文化」があると初めて知った。大きいのを選びたいけど露骨かなと迷うとか、面白いなあ。
タンポポのサラダってなんだか童話みたいだけど、大人の味なんだね。そのへんに生えてるのを食べるのはちょっと躊躇われるかな…。
路地は子どものときとか「探検だっ」って感じで大好きだった、いまも風情ある路地には心惹かれる。いま併読で村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を読み直しはじめたんだけど、ここにも印象的な「路地」が出てくるのでちょっと「おっ」と思った。
「桜町」の桜は見てみたいなあ、『猫町』風とはそそられるぜ。

目次
[これも味のうち]
乾かす 美味を招く変化 /挟む 知恵と工夫の産物 /噛む いいことずくめ /絞る 手加減ひとつ /切り口 緊張の一瞬 /薄める 濃度を操縦する /浸す 思うさまどっぷりと /赤い 日本人のハレの印 /しずく これも味のうち
[おいしさのタネ]
ちくわ、かまぼこ じんわり粘り強い /すじ 肉の屋台骨 /炒り卵 食卓の太陽 /揚げもの パワースポットのオーラ /ソース、ケチャップ うっすら緊張する /種 神秘の結晶 /パンの耳 ひそかな宝物
干しぶどう 今日はぶどうパン /かたまり 解放のかたち /一升瓶 汲めども尽きぬ泉 /お宝 ちょっとやっかい /みかん 神々しくて、うぶ
[そこにあるもの]
ストロー いつも悩ましい /ひも 生活の友 /ペットボトル マラカスにもなる /手付き あるとなしでは大違い /緩衝材 籾殻がなつかしい /台ふきん とにかく揉み洗い/手袋  ふたつでひとつ /ショーケース この世の曼荼羅図
[だから気になる]
店長 店長はすごいよ /おおきい ちいさい 人生の一大事/爪 感情を刺激する /棘 針以上の痛み /記憶 こころのなかで呼吸している /負ける 達人の必殺技 /満腹 生きていてよかった
[待ちぼうけの丼]
出前 待ちぼうけの丼 /行列 みんなで一致団結 /チラシ 世間というカオス /草 生命の根源 /墨 闇の味 /迷う 人生のY字路 /夕焼け 一瞬の祭事 /路地 街の廊下 /時間待ち それも味のうち /めまい くるくるの恍惚

2014/11/03

ダンス・ダンス・ダンス 【再々読】

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 13,143
■村上春樹
もういいかなとは思ったのだけど「鼠」をめぐる「僕」シリーズの完結篇にあたるこれ、ちょっと読みはじめたらなかなか面白かったので最後までつきあうことにした。

前3作は「わたしのなかでもう賞味期限が切れてしまった」という感じがしたが、本書はそういう感じがせず、ふつうに「物語」としてストーリー展開などに興味を持って読むことができた。まあさすがに3回目なので読む前にだんだん思い出してそれをなぞっていくようなところもけっこうあるのだけれど(前回読んだのは調べたら2004年1月だから10年ぶり)。

この話の「僕」は34歳になっている。
前作でいろんなものを失った彼は、なんだかとっても無気力なアンニュイな感じになっているところのようだ。無理もない。

それにしても読みはじめから読み終わりまで彼が見事にずっと…なんというか…「マッチョ」というのかなこういうのを?
もちろん彼は筋肉ムキムキの肉体派ではない。そういう「マッチョ」じゃない。でもなんていうか、――「草食系男子」と真逆の位置にいるというか……絶えず女のひとが絶えない。34歳なんだけど出てきてそういう関係になるのはすべて20代前半で、若くて綺麗でスタイルのいいひとばかりだ。そのことごとくが彼に好意を示す。別に恋人とかそういう関係にはならない、恋愛感情があるとも思えない、でも最終的にはいずれも彼とベッドを共にする。
男性も出てくる。結局彼も「僕」に親愛の情を示す。
なんていうか……読みながら「勝手にやってれば?」という意地悪な気がしてくるのはわたしがひねくれているからなんだろうか。
これってそんなに普通のことなのかなあ?

この話では実に多くのひとが死ぬ。
読んでいて、そのことは全然覚えていなかった、というかそういう話だと思っていなかったのでびっくりしたのだが「僕」の周りでひとが「消えて」いく。
そしてそのへんの処理の仕方がここぞとばかりに「純文学性」を発揮していて、つまりそれは「ある個人の死」というよりはまるでなにかの象徴かのように語られる。

本書の単行本が出版されたのは1988年で、2014年現在の意識でこれを読むと「ああ、このころの日本は元気だったし未来はずっと明るく見えていたんだろうな」ということを何回も考えずにはいられなかった。なんせ「高度経済成長期」「経費で全部落ちるんだ」というワードがぱかぱか出てくるのだ。「消費は美徳」だった時代。

電話がかかってくる約束がある「僕」は夜、外出を断る。
そういう時代だったんだなあ。



2014/11/02

ドミトリーともきんす 【漫画】

ドミトリーともきんす
ドミトリーともきんす
posted with amazlet at 14.11.02
高野 文子
中央公論新社
売り上げランキング: 7
■高野文子
9月25日刊のこの本、そこらの小さな書店では見つけることが出来なくて、先日アマゾンで発注したらやってきたのは10月20日の既に第3版だった。人気あるなあ!

感想は……思ったよりおっきい本が来た!嬉しい。あと、高野文子の本を読むと毎回必ず新たな試みがしてあって、挑戦し続けているなあというか、わくわくする。

web「マトグロッソ」で2回ぶんくらいはさらっと見たことがあった。今回は「科学」がテーマということで、「難しそうだなあ」と思ってたんだけど、科学を高野流に漫画にしてあって、「そういうふうに漫画にしちゃうんだ」という驚きとともに読んでいく感じ。
ただ、あまりにも「さわり」だけな感じがして、もうちょっと踏み込んであるといいのになと思った。これは、それぞれの科学者の著作を紹介する、そういうスタンスなのかも知れないけど…。

絵柄も作品によって変わる漫画家さんだけど、この本は「自分のことから離れて描く」というふうに書けるように練習したと「あとがき」にあって、「絵を、気持ちを込めずに描くけいこ」をしたと書いてあって、ふおー!と感心してしまった。
なんか、ちょっと、読んでいると手塚治虫を連想したのはわたしだけでしょうか…。

「Tさんは、この夏…」は「うわわこんなふうに描いちゃう!?」と興奮。
 漫画ってこんなことも出来ちゃうんだ。

以下、もくじに初出を付けくわえて。

球面世界:「真夜中」№12 2011Early Spring
ドミトリーともきんす 1~11:web「マトグロッソ」2012.11.8-2014.2.20
プロローグ:書き下ろし
1 トモナガ君 おうどんです 朝永振一郎「鏡のなかの物理学」
2 トモナガ君 泣かないで 朝永振一郎「滞独日記(一九三八年四月七日-一九四〇年九月八日)」
3 マキノ君 お正月です 牧野富太郎「松竹梅」
4 ナカヤ君 お手紙です 中谷宇吉郎「簪を挿した蛇」
5 ナカヤ君 コタツです 中谷宇吉郎「天地創造の話」
6 マキノ君 蝶々です 牧野富太郎「なぜ花は匂うか?」
7 ユカワ君 お豆です 湯川秀樹「数と図形のなぞ」
8 ユカワ君 松ボックリです 湯川秀樹『「湯川秀樹 物理講義」を読む』
9 ユカワ君 ハゴロモです 湯川秀樹「自然と人間」
10 ようこそ、ガモフさん ジョージ・ガモフ『G・ガモフ コレクション1 トムキンスの冒険』
11 詩の朗読 湯川秀樹「詩と科学――子どもたちのために――」
ともきんすと白銀荘について/参考資料/あとがき
Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、おどりたい。:「真夜中」№14 2014Early Autumn

特集 高野文子

絵柄に惹かれて漫画を手に取った。最初に読んだのはちくま文庫の『るきさん』。
いま思えば高野作品の中でももっとも一般受けするわかりやすい・入りやすいところから入ったんだな。
好きな高野さんについてなにか書こうとまとめて読み直してみた、いろいろ思うこと、感じることはあるにはあるのだが上手く言葉に出来ない感じで、2002年に「ユリイカ」が高野文子特集をやったときのを引っ張り出してきてこれをまた読みかえしてみたがまー皆さん難しいことを書いてらっしゃる、やっぱり各人それぞれに思い入れみたいなものがあるし、同じ作品でも目の行く場所が重なるポイントもあるけれどそうでないところもあるようで。
というわけで難しいことはこの雑誌をどうぞ。
高野さんご自身の対談とかもあるのでいろいろどういうふうなことを考えて書いてらっしゃるかなどもわかって興味深い。


ユリイカ 2002年7月号 特集 高野文子

青土社
売り上げランキング: 334572


▼わたしの好きなシーン、はっとしたシーン等。

 観音さまが動いてらっしゃる、その手・布地の流れが美しい。はなしの内容の悲しさと女の子や観音さまの飄々とした表情のギャップが何度読んでもやっぱり素直には飲み込めなくてアタマで読まなきゃやってられない。 「ふとん」(『絶対安全剃刀』所収)より

本好きの、本にのめり込むようにして生きている実ッコちゃん、でも本を読む習慣のない周りの人間にはその欲求はただの贅沢・無駄とさえ扱われ、現に彼女の母親はこういう表情をする。その容赦のない目の陰り眉の顰め方口元に込められた不満にシン、としてしまう。 『黄色い本』より


親元を離れ東京に行きたいという思いと家にずっといて良い子でいなければならないんじゃないかというせめぎあい。無口なかずちゃんがラジオからかかってきた電話ですんなりと自分の本心を語るシーンがとても鮮やか。
その直前のこのシーン。ラジオで自分の名前がいきなり呼ばれたら本当にびっくりして信じられないくらいどきどきしますよね。
「あぜみちロードにセクシーねえちゃん」(『絶対安全剃刀』所収)より

スクリーントーンの濃淡、白い部分とのコントラスト、畳の上に投げ出されたぷっくりした小学生の手足のやわらかさ。
日本の、少し前のどこにでもあったろう夏、を実に鮮やかに端的に表わしている作品。
「玄関」(『絶対安全剃刀』所収)より



このお話は洋画風というかやたらドラマチックなコマ割り・気障ったらしいネームが多い「作られた話」という感じなんだけど(まあそれはそれで面白いんだけど)、ほぼ脇役である主人公の主人である大富豪の娘ダリヤ=ポポーンズ嬢がわたしはとても好きである。
『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』より

▼寡作なので単行本は以下の6点のみ。『るきさん』は単行本・文庫本の2種類あり。
絶対安全剃刀―高野文子作品集おともだちラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事 (Mag comics)
るきさんるきさん (ちくま文庫)棒がいっぽん (Mag comics)
黄色い本―ジャック・チボーという名の友人 (アフタヌーンKCデラックス (1488))

▼以下、高野文子装丁の本・CDなど画像の一部。
新井素子『グリーン・レクイエム』は中学のときにこの作家にはまっていたので中学か高校で読んでいる、この表紙も覚えている、ああ、高野さんだったんだなあぁ~。

チボー家のジャック(新装版) 別冊宝島「北村薫CompleteBook」 (別冊宝島 (1023)) グリーン・レクイエム (講談社文庫)
覆面作家は二人いる (角川文庫) 覆面作家の愛の歌 (角川文庫)
※この記事は再掲載です。