2014/10/29

夜中にジャムを煮る 【再読】

夜中にジャムを煮る
夜中にジャムを煮る
posted with amazlet at 14.10.29
平松 洋子
新潮社
売り上げランキング: 543,643
■平松洋子
再読。
本書の初出は「考えるひと」で、うーんあの雑誌の雰囲気と合うなあ、とか考えつつ。
「夜中にジャムを煮る」を読んで「そういえば、なっきーが平松さんのこの本のことどっかで書いてらした!」と本棚から『不思議な羅針盤』を引っ張り出して、該当箇所を探して読んでみる。うーん、平松洋子の文章を読んでいる最中に梨木香歩の文章を読むとその雰囲気の違いに驚愕、くらくらするなあ(どっちも大好きよ)。
ちなみにあらためてググってみると、梨木さんは1959年生まれの鹿児島出身。同志社大卒業。私生活をほとんど作品に出されないが、どうやら息子さんがひとりおられるようだ。
平松さんは1958年生まれ、倉敷市出身。東京女子大学卒業。エッセイストなので、私生活がよく書かれる。娘さんがおひとりおられる。
あんまり年齢変わらないんだなあ。もしお二人が対談したらどんな感じになるのかしら、なんて妄想したり。

詳しい感想は前回初読み時に書いたが、今回読み直して「この本、塩作りレポートとか韓国旅日記とかも載ってて、盛りだくさんだなあ」と思った。単行本は2008年刊。このあたりは日韓関係がわりと良好だったんだよね…。
平松さん家は電子レンジを捨て、ご飯は炊飯ジャーではなく鍋で炊くというふうにシフトしていったらしいが、ウチは無いと困るなあ。たまに気分で鍋で炊くのは良いんだけど。

基本的に辛い物が苦手だしお酒も弱いので、平松さんの嗜好そのままを真似ることは出来ないのだけど、このかたのスタンスには憧れるというか、素敵だなと思うので、いろいろ学びたい。
毎日の食事をどうするかって要するに「楽さ」と「手間」と「(良い意味での)こだわり」のバランスをどうするかってことだと思う。
「ひとりで食べる、誰かと食べる」には深ーーーく感銘を受けた。ゴハンをどうしてるか、その状況をどう感じているかって、いろいろ現れてくるのかも。

目次。
I 台所でかんがえる
こんなものを食べてきた/漆と別れる、出合う/飲みたい気分/夜中にジャムを煮る
II 鍋のなかをのぞく
わたしのだし取り物語/ぴしり、塩かげん/おいしいごはんが炊きたい/手でつくる――韓国の味/手でつくる――うちの味/旅日記・韓国のごはん
III わたしの季節の味
お茶にしましょ/夏はやっぱりカレーです/麺をつるつるっ/蒸しもの名人になりたい/炭を熾す
IV いっしょでも、ひとりでも
今日は何も食べたくない/ひとりで食べる、誰かと食べる

巻末に料理の説明・レシピあり。
口絵に日置(武晴)さんの写真ページもある。

いまは文庫版が出ている。解説はくだんのなっきーのエッセイが転載されているらしい。松尾たいこの表紙が可愛いなあ…。

夜中にジャムを煮る (新潮文庫)
平松 洋子
新潮社 (2011-11-28)
売り上げランキング: 66,932

2014/10/28

3時のおやつ

3時のおやつ (ポプラ文庫)
壁井 ユカコ 大崎 梢 平山 夢明 絲山 秋子 森見登 美彦 仁木 英之 ミムラ 伊藤 たかみ 大島 真寿美 椰月 美智子
ポプラ社 (2014-10-03)
売り上げランキング: 12,632
■平松洋子、大島真寿美ほか
【本書は、「asta*」掲載のエッセイ「3時のおやつ」を再構成し、加筆・修正して文庫化したものです。】とある。文庫ではおやつの名前のあいうえお順で収録されている。
「ああそれわたしも食べた!」というのもあれば「なにそれ初めて聞いた」というものもあり、でもそれぞれ美味しそう、というか郷愁の情と共に書かれているものが多いので、自然、読んでいるほうも子どもの時代に思いを飛ばす機会が増える本だなと。
母親が3時になると毎日おやつを用意してくれたという方が結構いらっしゃる。また一方で母親は働いていたのでお小遣いをもらって買いに行っていたという方もちらほら見受けられる。甘いもの大好きという方もいれば、塩辛いもの、しょっぱいものが好物という渋いお子様だった方たちもいる。

ウチはどうったっけ? たまに母親がホットケーキを焼いてくれると本当に嬉しくて有頂天になったがあれはおやつだったのか昼食だったのか。父親のお供をして買い物に行くと毎回おやつを買ってくれて、グリコのおまけつきキャラメルが楽しみだったという記憶はある。盆暮れに祖母の家に遊びに行くといろんなおやつが用意されていて、中に近所では見かけないシンプルな米菓があり、一心に食べていたら次行ったときに「これ好きやろ」と差し出されて「おばあちゃんはちゃんと観察してるんだなあ」とびっくりしたのを覚えている。

エッセイの後に簡単なプロフィールが載せられていて、年齢によるおやつの違いなども興味深く読んだので、目次に著者の生年・出生地を書き加えてみた。
18/47都道府県。多いのは東京の8名、次いで大阪と神奈川が3名ずつ。年齢別だと2014年時点で60代4名、50代5名、40代10名、30代7名、20代1名、平均年齢45歳ということになる。だからどうだというにはデータが少なすぎるので、これは単なる暇つぶし。
それにしても久しぶりに絲山さんの文章を読んだけど、読みながら思わず吹き出しそうになってしまった。サービス満点だなあ。森見さんの「桃太郎のきびだんご」に対する思いはまったく激しく同意!って感じ。山崎さんの「女は酒、男はスイーツ」はわたしの周りには当てはまらない。お酒も甘いものも両方好きってのが多いかな。
どれも良かったけど、エッセイとして特に面白かったのに★印。

井村屋のあんまん 壁井ユカコ :生年非公表。長野県育ち。
いもだんご 大崎 梢 :生年非公表。東京都生まれ。
カップヌードル 平山夢明 :1961年神奈川県川崎市生まれ。
★木登りバナナ 絲山秋子 :1966年東京都生まれ。
★吉備団子 森見登美彦 :1979年奈良県生まれ。
キュウリ 仁木英之 :1973年大阪府生まれ。
グミベアー ミムラ :1984年埼玉県生まれ。
ごかぼう 伊藤たかみ :1971年兵庫県生まれ。
ココナッツサブレ 大島真寿美 :1962年愛知県生まれ。
★さきいか 椰月美智子 :1970年神奈川生まれ。
サンタの長ぐつ 越谷オサム :1971年東京都生まれ。
塩トースト 平松洋子 :1958年岡山県生まれ。
★タルト 万城目 学 :1976年大阪府生まれ。
★ちいさくてかたくてしょっぱいもの 彩瀬まる :1986年千葉県千葉市生まれ。
チョコクリーム 益田ミリ :1969年大阪府生まれ。
豆花(ドゥファ) 加藤千恵 :1983年北海道生まれ。
★煮りんごセラピー 柚木麻子 :1981年東京都生まれ。
パウンドケーキ 東 直子 :1963年広島県生まれ。
バタークリームケーキ 安東みきえ :1953年山梨県生まれ。
はったい粉 天野頌子 :生年非公表。長野県佐世保市生まれ。
パフェ 山崎ナオコーラ :1978年福岡県生まれ。
★パン 宮下奈都 :1967年福井県生まれ。
百円玉 中脇初枝 :1974年徳島県生まれ。
風船ガム あさのますみ :1977年秋田県生まれ。
ぺヤングソースやきそば 原 宏一 :1954年長野県生まれ。
ホットケーキ 森 まゆみ :1954年東京都文京区生まれ。
ホームランバー 犬童一心 :1960年東京都生まれ。
★めくるめく角砂糖 梨屋アリエ :1971年栃木県生まれ。
★ラムネ 内澤旬子 :1967年神奈川県生まれ。
ロバのパン屋さん 金原瑞人 :1954年岡山県生まれ。

追悼 赤瀬川原平

新解さんの謎
新解さんの謎
posted with amazlet at 14.10.28
赤瀬川 原平
文藝春秋
売り上げランキング: 302
トマソン大図鑑〈空の巻〉 (ちくま文庫)

筑摩書房
売り上げランキング: 162,810
■赤瀬川原平
きのうの新聞に訃報が載っていました。26日に亡くなられたとのことです。

初めて読んだ赤瀬川さんの本がなんだったかも定かではないのですが、とにかく最初に読んだのは二十歳そこそこのときで、「こーんなに面白い遊びを大真面目に、大の大人がやってる。しかもセンス良すぎ!格好いい!」とたちまち惚れ込んだものです。千円札裁判の件は、後から知りました。まだインターネットがこれほど発達していませんでしたので、最初は赤瀬川さんがナニモノカもよくわかっておらず、エッセイを読んだり雑誌の特集を見たりするうちにだんだん知っていく感じでした。生き方が芸術なお方やなあというのがわたしのなかの赤瀬川さんです。
『トマソン大図鑑 無の巻/空の巻』、『新解さんの謎』、『老人力』、『今月のタイトルマッチ』、『こいつらが日本語をダメにした』……。 純文学作家としても素晴らしく、短篇集『父が消えた』の桶から水があふれていくのに例えた描写は凄すぎです。
調べたら、とてもたくさんの著書があるのですね。わたしが手にしたものなどほんのひとかじり。 雑誌「太陽」で特集されていた、ニラハウスが素敵でした。
 こころからご冥福をお祈りいたします。

2014/10/26

背表紙は歌う

背表紙は歌う (創元推理文庫)
大崎 梢
東京創元社
売り上げランキング: 77,645
■大崎梢
新人書店営業マン・ひつじくん、もとい井辻くん奮闘記第2弾。 いちおう謎が絡むね、という程度にはミステリー。ひとが死んだりなんだりはナシ。


 「ビターな挑戦者
取次会社の強烈なキャラの持ち主、「デビル大越」が登場する。 なお、解説は取次に勤める方で、本書のために著者の取材も受けたらしく、その結果?こういう性格のキャラが出てきたことに対してかなりショックを受けられたらしく、「そんなことないですよ~怖くないですよ~」的なアピールに努めておられるのが面白い。 しかし取次さんまで出てくるなんて、本当にギョーカイマニアック! って感じだ。内容的にはちょっと肩透かしっぽかったかなー。

 「新刊ナイト
新刊を出すことになった人気新人作家はサイン会はNG。でも今回初めて書店挨拶まわりをして、サイン本を作ってくれることになった。そのあとには画家とのトークショーも企画された。ところが、またもや問題発生! このシリーズって「謎」っていうか、社会人ならではの仕事上のトラブルをどうやって解決するか、という話が多いなあ、さっきのもそうだしこれもそう。で、とどのつまりそれって、「人間関係のトラブル」なんだよね……。 せっかくやきもきさせられたのだから、クライマックスを目をそらさずに描写してほしかったなあ~。

 「背表紙は歌う
 なんとも想像心をあおる素敵なタイトルだ。 中身は、読んでいくうちにいろんな人間の複雑な一筋縄ではいかない心情が絡まり合っていて、なかなかビターだった。かつて書店員さんと結婚していた営業さんのお話なんだけど、娘さんがけなげだなあ。おとなはそれぞれの事情で別れちゃう、これは仕方ないんだけど子どもは気の毒だなあと思った。

君とぼくの待機会
大きな賞の候補作が上がった。本書では「東々賞」。とうとう賞。とうとう取れましたね…との引っかけなのかな?現実に当てはめると、書店員や出版社の「候補作に上がっただけでも売り上げに影響、ましてや受賞した日には」という盛り上がりぶりから推して直木賞かな。この受賞者が既に決まっている、というデマが流れて……。 それにしても受賞者インタビューって事前撮りするもんなの??と思ってググったら本当にそうらしい。ひえー。落ちる確率が結構あるなかでそんなの受けなくちゃいけないって凄いしんどそう……。

 「プロモーション・クイズ
新刊が出るとなると、各社は広告活動をする。昨今は、書店員さんに事前にゲラをよんでもらって感想コメントをよせてもらうというのが流行している。人気の書店員さんはいろんなところから頼まれるから、場合によっては断られてしまう場合も。そんななか、該当作品の中に解答の出てこないクイズが載っているものがあり、ある書店員さんがそれを解いたばかりか、推薦コメントと一緒に新たな問題を出してきた。ところがそれらの問題をひつじくんや周りのひとはなかなか解けなくて……。 大崎さんのもうひとつの人気シリーズ、成風堂書店が登場する楽しい作品。

2014/10/25

羊をめぐる冒険 【再々読】

羊をめぐる冒険 文庫 上・下巻 完結セット (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 154,960

■村上春樹
極私的な感想なのだけれども、本書は初読みして衝撃を受けてそれ以来ずっと自分の中で大事にしていた物語だったんだけれども、今回読んで【いまの自分】にはこの小説はもう響かなくなってしまっている、賞味期限が過ぎてしまったんだな……ということをじわじわと確かめていくような読書になった。つまりこれは、わたしのなかの変化を読書によって確かめた、ということなのだと思う。それを「青春の終わり」だなんてカッコよく言うつもりはない。でもある種の【若さゆえの】時間はもう過去になってしまったんだろう。

この話のすごく表面的なアラスジで主人公の「僕」を見ると、『1973年のピンボール』で出てきた会社にいた女性と結婚していたが、4年で離婚となった。その時点から物語はスタートする。そして共に働いていた男はアル中寸前(彼は家庭を維持しており、子どももいる)。「僕」はある謎めいた権力者の秘書に「体に星のマークのある羊」を探さざるを得ない方向に持って行かれる。その羊と旧友「鼠」はつながっており、つまりこれは「鼠」を探す旅でもあった。
…というふうになるんだけど、脇にすごく耳の綺麗な不思議な若い女性が出てきて「僕」と行動を共にしたり、羊に脳を支配された人間が出てきたり、そのひとりは「羊博士」になっていたり、羊の着ぐるみを着た「羊男」が出てきたりして、ファンタジーの世界が混じっている。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』には無かった要素のように思う。例の「やれやれ」もたくさん出てくる。

右翼の大物が住んでいる屋敷がお金はかかっているけど悪趣味っていうのが面白い。その運転手さんがすんごく普通に良いひとなのも面白い。ドルフィン・ホテルがぼろぼろなのに受付・経営者のおじさんが喋ってみると意外に知的で良いひとなのも嬉しい。彼らに幸あれ、と思う。

いけすかない秘書は読んでいるうちに脳内で「ムスカ@天空の城ラピュタ」の絵になっていた。うんうん、ぴったり。

読後、ウィキペディアを見てみたら、《川本三郎との対談で、村上はレイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』を下敷きにしていると述べている[13^:「対話 R・チャンドラー、あるいは都市小説について」『ユリイカ』1982年7月号。]。》とあって、読んでいる途中に主人公の言動がフィリップ・マーロウっぽいなと思っていたのでおお!という感じ。秘書に言われてジャーナリスト倫理を盾にすぱっとなんの躊躇もなく断るシーンとかね、マーロウの美学っぽいよね。

わたしの手元にあるのは↓こちらの版。1985年10月15日第1刷の1995年12月第29刷(上)、1996年2月第29刷(下)。

羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 247,015


2014/10/23

1973年のピンボール 【再々読】

1973年のピンボール (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 16,926


■村上春樹
前回読んだのは2004年1月10日。その前は不明。
現在流通している講談社文庫はこれ(2004年11月16日改訂版)↑だが、わたしの手元にあるのはこちら↓。
1983年9月15日第1刷の1996年1月16日第37刷分だ。
なお、本作品の初出は「群像」1980年3月号、同年6月単行本刊。

1973年のピンボール (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 80,962

『風の歌を聴け』の続篇。次の『羊をめぐる冒険』とあわせて三部作となっている。

前作で一時的に神戸に帰っていた「僕」は本書では東京に戻っている。友人と翻訳事務所を作り、そこで翻訳の仕事をしている。友人はフランス語を、僕は英語を専門としている。なかなか景気が良さそうだ。ある日目覚めると両脇に双子の姉妹が眠っていて、彼女たちとの奇妙な同棲生活が始まって、終わるまでがこの小説(というまとめ方はある種のファンの方にはものすごい嫌な顔をされそうだな)。いやーでもふつうに共同生活っていうんじゃなさそうだし。「ベッドでじゃれあい」とか書いてあるんだからこれはーえーとーこーゆーのがいっさいなければほんと村上春樹好きなんだけどねーっていういつものあれだ。やれやれ。
なんちゃって。なお、本書にはかの有名な「やれやれ」出てこなかった。前作はどうだったけかな?

「僕」視点の章と、「鼠」視点の章があり、交互というわけではなく、適宜、順番に出てくる。「鼠」は神戸でジェイのバーでくすぶったり、女のひとと適当に遊んだりしつつもどんどん苦しく追い詰められていっている感じだ。それで『羊をめぐる…』に至るんだなと確認する感じで読んだ。

舞台はタイトルにあるように1973年が中心だ。この小説の最初の方でひとに生まれ故郷の話を訊きまくった時期のことが書いてあり、木星や金星を故郷とするひとが出てくるが、彼らはそこで出てくるだけであり、どうということもないのだけれど、これはどういう存在なのかなあ。あと「直子」という僕のかつての恋人も出てくる。

ピンボールと云えば、windowsのxpとかには標準で(?)ゲームが入っていたけれど、7とか8には入っていない。で、懐かしくなって検索したら某所で簡単にダウンロードできたので、久しぶりにちょっと遊んでみた。
小説で、行方不明のピンボール台を見つけて見に行くシーンはなかなか面白い。底知れぬ不気味さもあり、奇妙な静けさの中でぴかぴか点滅する明かりたちを想像するだにぞわぞわする。そして臭いの描写。
こういうところがあるから、村上春樹を読んじゃうのだろう。

2014/10/21

幸福な食卓 【再読】

幸福な食卓 (講談社文庫)
幸福な食卓 (講談社文庫)
posted with amazlet at 14.10.20
瀬尾 まいこ
講談社
売り上げランキング: 116,424


■瀬尾まいこ
……………………そう。再読なんだよなあ。がっくし。
というのは、いま現在の本棚にこれが無いからというのもあったんだけど、読んだことスカーッと忘れていて、本屋さんでふつうにまた買っちゃって、初めて読む本として読みはじめてしまったんである。頭のすんごい隅っこのほうで「これ、読んだっけかなあ?」とすこーしだけランプがチカチカしてたんだけど、ま、読んでないっしょ、と思っちゃって。
んで、そんだけならまだしも、読みはじめてずーーーっと「あれ、これ読んだことあるワ」と気づかなかったんである、222頁を読むまで!
222頁でこの小説における結構な大きなショッキングな出来事があるのでそれ読んで流石に「あれ?」と思って、でも全然覚えてなかったのは一緒だから、そのあとも真面目に読んで、最後まで読んでからこのブログ検索したら読んでやんのー2007年6月30日に!
ぐはあっ。ヤラレタあああ。おかしーと思ったんだよ、どっかでチカチカランプ光ってたんだよー……。

orz


で、まあ気を取り直して感想なんだが。
大枠は、前回読んだときの感想と同じだった。ので、今回読んで違ったことを書いておきたい。

前回は、終盤に起こる出来事に対するショックが大きすぎて、がっかりしてしまって、残念だったという感情でいっぱいになってしまったんだけど、今回はそれだけでもう全部が台無し!とかそこまでは思わなかった。まあショックではあったんだけどね。この話はあそこに持っていくことは予定済みで書かれた話だったんだなと妙に納得してしまったというか。2回目だからかな。でも前回読んだこと忘却の彼方だったんだからほぼ初読みみたいなもんだしね。

で、今回結構思ってしまったのが、主人公に対して「あなた、そんなに大浦君のこと好きだったかしら?」という、まあミもフタも無いことで、んーでも、222頁に至るまでの主人公の彼に対する感情と、その後の彼への感情の溢れさせ方になんだか戸惑っちゃって。
上手く言えないけど……この主人公は大浦君が仲良しの友達だったとしても、こういうふうになっちゃうんじゃないかなって思った。つまり、「彼氏を」失ったから、ぼろぼろに悲しんでるんじゃなくて、「失った」ことに対する悲しみ。主体は自分。んでこの主人公だけがそうなんじゃなくて、わたしも多分そうなんだろうし……「喪失」はやっぱり、デカいよ、いろんな意味で。

ああ、なんか自分でもなに云ってんだ?って訳わからんこと書いてしまってるなあ。別に大浦君と主人公の恋愛否定してるとか薄いとかそういうこと云ってるわけじゃないってことは強調しておきたい、あと主人公が自己愛だとかそういうんでもなく。
ええとつまり、この小説のテーマはなんなのかな?ってこと、それは決して「恋愛」じゃないよね、もっと大きな、広い意味でのつながりとかひととの関係とかそういうのを書いてるよね、ってこと。
そうやって丁寧に丁寧に編み上げてきたうえで、ずとんと。
爆弾を投下してくるわけだ。

やってくれるわね。ショック受けないほうがおかしいでしょうよ。ふつうに「失恋」とかじゃないところがもうね。そもそも中学生だった主人公が5年前に目にした父と母の事件だってえげつなすぎたしね。ほのぼの系のようで、あちこちに出てくる設定が妙に鋭い切っ先でもって切りかかってくる感じなんだよなあ。

あと、主人公が真っ白に燃え尽きている状態の時に両親や兄がいろいろ心から慰めてくれているのが読んでいてもすごくしんどくて、気持ちはありがたいんだけど、でも正直すんごくウザくて、主人公がキレずに対応しているので凄いなあと思った。わたしここまで大人な対応出来ないわ。

2014/10/18

平台がおまちかね

平台がおまちかね (創元推理文庫)
大崎 梢
東京創元社
売り上げランキング: 128,860

■大崎梢
2008年6月創元クライム・クラブの1冊として刊、2011年9月創元推理文庫化。
『配達あかずきん』書店シリーズでデビューした大崎さんの、出版社営業マンを主人公に据えたシリーズ、をいまごろようやく読んだ。
というのは書店シリーズで、ほのぼのしつつ書店が舞台ということで面白かったんだけどけっこう毒もあって、毒は嫌だな~とちょっと敬遠していたから。
でも最近読んだ近著が面白かったからこれも読もうと思って。
読んでみたら本書には毒が無かったのでほっとした。
出版社の営業さんといえば「本の雑誌」の杉江さん……と思ったらそのひとが解説を書いていたのでビックリ! 最初に読もうかと迷ったけど色眼鏡無しに読みたかったので最後まで本編を読んでから読んだ。

大崎さんの著書などで出版社の営業さんは出てくるからまったく初めて知ったとかではなかったけど、本書を読んでそのお仕事内容がすごくよくわかった。解説によれば、新人のテキストに使えるくらいリアルだそうだ。

ひとの死なないミステリー。というか、ミステリーと仰々しく言うと誤解があるかな、日常の謎、ちょっとした「何故だろう」を主人公の羊くん、じゃなかった、井辻くんがいろいろ考えて明らかにする話(どうも、キャラ的にも推理・解決という感じじゃないんだよね)。

井辻くんは大学生の時に出版社でバイトを2年やっていて、卒業後は営業として採用された。まだ2年目。営業として書店回りをし始めて4ヶ月。まだまだ知らないことがたくさん。
本人は自信がなかったり、前前任者がイケメンで超優秀であちこちにファンがいたような営業さんだったから比べて落ち込んだりもするようだけど、すごく頑張っていて、よく出来るので感心する。

最初のほうで、井辻くんが編集部には配属されたくなかったとか、なにか重大な事情があるっぽく謎めかして書いてあるのでなにかと思って読んでいたら出てきた答えがものすごく拍子抜けする程度のものだったので「なんじゃそりゃー」とちょっと思ってしまったが。

わたしも吉野さんのファンです。井辻くんもかわいいケド。「ニックネーム・ひつじくん」は断固として否定するサガなのね。いいじゃん他社の先輩方に可愛がってもらって……。

短篇5つ収録。
「平台がおまちかね」★★★
このタイトル、こういう話だったとは!平台や書店飾りつけにはやっぱり書店さんの思い入れ、熱意があるんだね。素敵。

「マドンナの憂鬱な棚」★★
マドンナの笑顔を守る会のメンバーが判明する話(違)。オチを読んで、そういえばそこには注目したこと無かったかも~とあらためて思った。喫茶店とか他の店だったらそういうのにも意識が行くのにね~なるほどな~流石元書店員さんだな~(あんまり書くとネタバレになっちゃう)。

「贈呈式で会いましょう」★★★
これの犯人にひつじくんが云ってやったヒトコトはなかなかピシャリ!と相手の愚かさ、視野の狭さを突いていて上手い!とすっきり。

「絵本の神さま」★★
この書店には続いて欲しかったけど個人書店ってそんなに厳しいんだ。ネット書店や大型チェーン店ばかりでなく、町の個人書店でも出来るだけ買おう!(まあ欲しい本が置いてないという悪循環がどうしてもあるんだけど…)。

「ときめきのポップスター」★★★
各社営業氏が自社本と他社本のポップを書いて売上を競う、というその催しがすっごく面白そう!
しかも実在のタイトルが10点出てきたので楽しかった。ラインナップはこうだ。
①新堂冬樹『忘れ雪』角川文庫 未読
②井上ひさし『青葉繁れる』文春文庫 未読
③竹内真『カレーライフ』集英社文庫 未読
④恩田陸『ライオンハート』新潮文庫
⑤隆慶一郎『柳生非情剣』講談社文庫 未読
⑥三浦綾子『母』角川文庫 未読
⑦筒井康隆『旅のラゴス』新潮文庫
⑧若竹七海『サンタクロースのせいにしよう』集英社文庫
⑨加納朋子『ななつのこ』創元推理文庫
⑩ジョン・ダニング『幻の特装本』ハヤカワ文庫 未読?

未読のがけっこうあるなあ。既読は④⑦⑧⑨だけだ。ダニングは『死の蔵書』は読んだとはっきり云えるんだけどこれはどうだったかなあ。
でも正直、既読の4冊の自分の中の評価から、「これぞわたしのイチオシ!」とするレベルなのかどうかはちょっと疑問というか……まあ、現在あんまり売れてなくて、これをきっかけにその本と著者の本がブレイクするきっかけとなる本、という設定があるので難しいんだけど、それを差し引いても詳しいことはネタバレになるけど話の持って行き上、ある程度制約があってこうなったっていうのがあるのかもね。まあ趣味の違いと云われたらおしまいなんだけど。読んでみたいなと思ったのは『カレーライフ』かな。全然未知の作家さんなので、楽しみ。
肝心の謎解きは……「おおこれに何か意味が?」と意気込んだだけにさすがにこれはちょっと苦しいというか別にどうでもいいというか……。

2014/10/16

戦友の恋 【再読】

戦友の恋 (角川文庫)
戦友の恋 (角川文庫)
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大島 真寿美
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-01-25)
売り上げランキング: 144,863

■大島真寿美
この話を読んだのは書評家の北上次郎が大絶賛していて、「編集者と漫画原作者の友情」っていう設定に興味を持ったからなんだけど、しばらくぶりに本棚を眺めて「これ、どういう話だったっけ」と何気なく読みはじめたらものすごく面白くて、翌朝から再読した。

「戦友の恋」「夜中の焼肉」「かわいい娘」「レイン」「すこやかな日々」「遥か」という6つの連作短篇集のようにも読めるかもだけどやはり章と解釈して長篇小説かな。
主人公はアラフォー、独身、職業は漫画原作者の山本佐紀(山本あかねが本名)。彼女の初めての担当編集者でデビューのころから一緒に仕事をしてきた同い年の編集者が石堂玖美子。
これ、この名前ね……書き写してみて改めて思ったんだけど、主人公の名前およびペンネームの凡庸さに対して「石堂玖美子」の絶妙の気合の入れようはなんなんだろう、モデルとか思い入れがありそうな気がするんだけど。だって「山本さん」「佐紀ちゃん」はそこらにいっくらでもいそうだけど「石堂さん」って珍しい苗字だよね、で「久美子」じゃなくて「玖」美子なんだもの。

この小説では始まった段階で玖美子が既に故人である。最初の話で二人のなれそめ(?)やなんやかやが語られ、「夜中の焼肉」は佐紀の元彼で友人になった男性との話、「かわいい娘」は佐紀がよく行くスーパー銭湯で働いている高校を中退したまた十代の女の子の話、……というふうに要は生きている佐紀の生活を中心に描かれており、別に佐紀は始終玖美子のことを思い出し悲嘆に暮れているというわけでもないのだが、でも例えば急遽後任になった若い男性編集者とか、ずっと行きつけのライブバーの経営者との共通の思い出とか、いろんなところに玖美子さんの存在がかつて有り、いまも残っていることは間違いないのだった、それを探しているわけじゃ決してなく、生者の生活というのはもっと些末なことで忙殺されていくのだけれど、でもふとしたときに考えてみずにはおれない、というか。

今回読み返してみてストーリーの展開が面白かったのも勿論なのだけれど、何が面白いって主人公佐紀のキャラクター、性格がすんごい面白くて、変わっていて、好きだ。そして出てくる他のひともかなり個性的で面白くて、そこへの視線のやりかた、人間観察・解釈するさまがまた面白い。
例えば昔付き合っていた男女が焼肉を食べに行って、仕事やめたいと女が云って、男が「じゃあ結婚しようか」と云いだして、女があっさり断ると男が「結婚をしたいという話じゃなかったの?」というその流れとか……。
ありそうありそう! そしてこの「男」に代表される「俗世間の物の味方」のなんとステレオタイプな旧態依然さよ。別にそこを批判するとかそういう空気は全然なくて、さらっとした日常の一コマとして書いてあるだけだから、むしろここだけをクローズアップするのは間違いなのかも知れないけど、でも例えばだ、例えばこういう細かいところに深く深く頷いてしまうナニモノカ――たぶんそれが著者の持ち味であり凄いところ――があるんじゃないかな、と思う。

それにしてもわたしは佐紀さんとそんなに年齢は変わらないんだけど、随分「日常」が違うなあ、というのはすごく感じた。行きつけのライブバーとか……そこのオーナーの女主人との古い馴染みみたいな付き合いだとか……めっちゃ恰好良いなあ、でも自分の人生にはままず性格的に向いてないよなあ、ライブバーに通う時点で苦痛だし。お酒が強くないのもあるけど、朝型人間だし、夜間外に出てると不安になるから。あと、佐紀さんが一人暮らしで自分のためだけの晩ごはんなのに、いくつもおかずを用意して晩酌もして〆にお茶漬けまで食べていることに感心した。わたし一人だったらかなりいい加減な食事になるので……っていうか普段もあまり品数多くないので。大島さん家の食卓がこんな感じなのかな?

2014/10/14

丹生都比売 梨木香歩作品集

丹生都比売 梨木香歩作品集
梨木 香歩
新潮社
売り上げランキング: 1,752

■梨木香歩
この書籍の情報を知った時、『丹生都比売』は既に原生林から1冊の単行本として出ている作品だから、それを『梨木香歩作品集』として出す、ということは、以降も続刊がある全集みたいなものの1巻目としての出版なのかと思った。装丁も(パソコン上では)それっぽく見えたし。
ファンサイトで「丹生都比売」以外の作品も収録されると知り、それでも全集の1巻という印象は消えなくて(だって分厚さはわからなかったから)、それで先日実際に書店で実物を見たら、全然全集じゃなかったのだった。250頁くらいのごくふつうの単行本。目次で確認すると、9つの作品が収録されている。装丁も、帯に鳥の絵があったりして、シンプルだけどとても美しい本だ。

というわけで買い求めて家でまず最初に「あとがき」があったのでそれに目を通したら、そのへんの事情が書いてあり、つまり原生林の『丹生都比売』は単行本にするために少し嵩増ししたものだったので、それを原点のすっきりした形に戻したものが今回の「丹生都比売」なんだそうだ。(しかし読了後、あらためて原生林『丹生都比売』をものすごーく久しぶりに開いて中を確認したら、そんなに長さ自体は変わらなさそうだった。まぁ、原生林のレイアウトがだいぶん底上げしたスタイルだからなあ、児童書だから1ページあたりの文字数を抑えたということなんだろうけど)。

ごちゃごちゃ書いてしまったが、結論からいうと既に持っている「丹生都比売」以外の話もとっても素晴らしかったので、購入しないなんてとんでもない、読めて良かった! というご本だった。
でも全集じゃない、けど、作品集として今後もいろんな媒体に発表した短い作品はこういう形でまとめていただけるのかな、そうだと有難いなあ。

収録作品。長さの目安として目次のページ数、奥付手前の初出も写す。
「月と潮騒」5  「母の友」2008年11月号
「トウネンの耳」13 神奈川県立近代美術館 美術館だより「たいせつな風景」2008年3月
「カコの話」21 朝日新聞夕刊 2005年9月
「本棚にならぶ」39 「しゅっぱんフォーラム」2007年3月号、4月号
「旅行鞄のなかから」51 2006年 未発表
「コート」69 2005年 未発表
「夏の朝」77 「飛ぶ教室」1994年春号
「丹生都比売」127 出版工房原生林(1995年)を改稿
「ハクガン異聞」233 「ミセス」2011年2月号
あとがき250

いちばん感動したのは「夏の朝」、これだけでも本書を買った意味があった。出だしはファンタジーかと思いきや甘い話からずばっと現実のしっかりした目線で切り込んでくる、ずしりとこころに響くテーマを書いてくれる、これぞ梨木香歩に惚れたところだ、という感じ。話の筋も、現象も、すごく好き。ガンダムがまさかこういうふうに扱われるとは!あとこのお母さん、最初は大丈夫かなと不安だったけど、素晴らしい対応をされて、すごい。賢い。
あと「コート」も優しさと厳しさがすごく絶妙のバランスで書かれていて、短い話だけど深みがあって読後もいろいろ考えてしまう。姉妹がいるかたが読むと、また違うのかな。
「本棚にならぶ」はそのシチュエーションというか設定がすごく面白い、SFだよなあ。こわいけど。
「カコの話」は雰囲気や世界の感じがこのなかではいちばん『家守綺譚』に近いかなー。主人公はちょっとイケ好かないと思わないでもないけど、カコが小さい人魚で出てくるのとか、作った池がとっても綺麗でそのなかに奥さんの過去が見えるとか面白い。奥さんのことを「主婦」という呼び名?で書いてあるのとか不思議な感じ、これも主人公の頭の構造がこうなってるからなんだろうなあ、イケ好かんなあ、奥さんはさぞご苦労されたでしょう。
「月と潮騒」は不思議で、はかなくて美しくてとってもきれいな物語。冷蔵庫はどこから来たのかな。どこに行ったのかな。これも好き。
「トウネンの耳」も変わっているけどこういう「感覚の誤作動」って脳のなんかの加減で実際にある、ってどっかで読んだ。「カコの話」とちょっとリンクしているような気もする。
「旅行鞄のなかから」は難しかったというか、こういうふうに絡め取られていく系は静かに不快さが押し寄せてくるような不気味さがある。
「丹生都比売」は『丹生都比売』を昔途中までしか読まずにやめたような気がするのだが、今回のはちゃんと読んで、なんていうか、うーん、持統天皇ってこういうひとだったのか…。というか、その「固有名詞」にとらわれがちだけど、それを無視して考えて、こういう母親と子どもの関係って…とかいろいろ凄すぎて、正直未消化である、自分の中で。
「ハクガン異聞」は日本昔話みたいだ。こういうふうになるなら道に迷うのも大歓迎なんだが。

原生林『丹生都比売』↓。
抹茶色の表紙を開けると深い紅の見返しがあって、とっても美しい装丁。今回改稿された「丹生都比売」とあまり大きく印象は変わらない。同じ目的、テーマの基の改稿だからだろう。

丹生都比売
丹生都比売
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梨木 香歩
原生林
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風の歌を聴け 【再々々読】

風の歌を聴け (講談社文庫)
村上 春樹
講談社
売り上げランキング: 440

■村上春樹
村上春樹のデビュー作。
最初に読んだのは学生時代で、再読は日記によれば2004年1月。その次読んだのは2006年3月。
大学生の時に読んで、主人公の感覚が全然古さを感じさせなかったので当時は「昔に書かれた作品だ」ということをあまり意識しなかったのだが、社会人になってあるときふっと村上さんの年齢などからそれに気付き、愕然としたことを覚えている。
本書の「あとがき」には1979年5月、と記されている。今から35年前だ。
講談社文庫奥付は1982年7月15日が第1刷で、わたしの手元にあるのは1996年4月12日第46刷。

2006年の日記にはこう書いている。
【3月12日(日)
◆『神戸在住』第7巻を読み返し落涙す。
村上春樹『風の歌を聴け』(講談社文庫)貸していたのが帰ってきたのでさっくり再読。うーん、なんていうか、うーん、うまく言えないけど、「若い」ってこういうことなんだろうねえ……でも22歳の弟がのたもうたのだが「こんな喋り方の21歳はおらん」。うーんそれはそうかもねえー。】

何故コピペしたかというと、今回読み直して最初に思ったのが「こんな喋り方の男がいたら、頭から水をかけてやりたいくらい癪に障る。まして、それが21歳のぺんらぺらの若い男だった日には、」ということだったからで、まったく1979年にはこういう大学生が違和感なしに存在したんだろうか。
でも少なくとも2014年の今よりも、2006年時点ではこの作品に対して共感する面がわりとあったんだろうな、この書き方からすると(ちなみに2004年の再読時はこの作品については特に日記に書いておらず、『羊をめぐる冒険』を読むためにシリーズ第1、第2作も読み直したという感じ)。

「あとがき」に出てくるデレク・ハートフィールド、アマゾンで探して読んでみようかなと思ったらこれは架空の作家なんだそうだ。どうりでいままで他の村上さんのエッセイとかに出てきたことが無いはずだよ……。

大学生がお酒を飲みに行く場所が居酒屋じゃなくてバーだったり、女の人が電話をするために公衆電話なので小銭が必要だったり、飲酒後の運転がさらりと出てきたり、音楽を聴くために買うのがレコードだというとこらへんが「昔に書かれた小説」かなあ。

今回読んで、「ああ、神戸が舞台の小説だったんだなあ」としみじみ思った。

2014/10/12

考えるマナー

考えるマナー
考えるマナー
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赤瀬川 原平 佐藤 優 高橋 秀実 井上 荒野 劇団ひとり
中央公論新社
売り上げランキング: 287,008

■赤瀬川原平・井上荒野・劇団ひとり・佐藤優・高橋秀実・津村記久子・平松洋子・穂村弘・町田康・三浦しをん・楊逸・鷲田清一

本書は、読売新聞火曜日夕刊の「たしなみ」欄掲載が初出、12名の方が見開き2頁ずつテーマに沿った(さまざまの多種多様なマナーについて)エッセイを書かれている。詳しい初出時期は単行本の奥付の手前のページに載っているが。まあだいたい2009年~2014年の間だ(人によって担当時期が違うみたい)。
2014年7月25日中央公論新社刊。

大きい書店に行ったらこれが表紙見せで置いてあり、表紙に執筆者の名前が書いてあり、パッと見ただけでも好きなひとの名前がいくつもあったので一気にコウフンして飛びつくように買ってきた。面白そー!

文章を読むのは今回まったく初めて、という方は劇団ひとり、佐藤優、楊逸、鷲田清一の四方で、劇団ひとりさんはテレビのバラエティで知っているし、楊逸さんは芥川賞作家である、ということくらいは知っていたが、残りお二方はちょっと何してる方かもわからなかった、ので後でインターネットで調べた。せめてこの本に簡単な略歴くらいつけておいてくれたら親切なのになと思わないでもない。

佐藤優さんはググってお顔を見たら「ああ、テレビで拝見したことがある」ひとだった、元外交官なんだそうだ、ふーん。鷲田清一さんは哲学者で大学教授、大阪大学総長もされたことがあるそうだ。へえー。

全体的に、軽い読み物といったふうで、新聞の夕刊で目を通すのにふさわしい内容。
ちょうど付箋が手元にあったので、試しに興味がある内容だったり、共感したり、面白いなと思った内容につけて行った。執筆者のばらつきはどうなるか試したかったからだ。
エッセイの数はざっと数えて131本(確認していないので間違っている可能性アリ)。
エクセルを開いて、付箋をつけたタイトルと、執筆者の名前の頭文字を列挙してみた。並べ替え…著者別カウント…。その結果、じゃーん!
赤瀬川5、井上2、劇団2、佐藤1、高橋1、津村6、平松6、穂村3、三浦7、楊5、鷲1
というわけで、なかなかに普段の読書傾向というか趣味が出たなあ、という結果に。楊さんのは日本の良いところを褒めてくれてあるから気持ちがいいんだよね。町田さんはよくわかんなかったっス…。

同じような年代の女性である津村さんとしをんさんのお風呂に対する考え方というかウェイトの置き方が全然違うのが面白かった。わたしはどっちかっていうと津村さんに近いかな、疲れをとりたいからお風呂は大事というのは昔から身に染みていて、最近までそれを認識していなかったというしをんさんに驚愕だ。
ほむほむのはほむほむの本で既読のばかりだった。
平松さんはもう平松さんのファンなんだなーわたし、という感じがスゴクした。ツボにくるというか。

ちなみに付箋をつけたタイトルは以下の39本。他がつまんないわけじゃないヨ。
おいしい(あるいはその逆の)店に行ったときのマナー/消えるマナー/老化のマナー/居留守のマナー/最弱のマナー/物忘れのマナー/さよならのマナー/まんが喫茶のマナー/相席のマナー/取り調べのマナー/スポーツクラブのマナー/いいとものマナー/そうめんのマナー/大皿のマナー/お辞儀のマナー/横断のマナー/ブックカバーのマナー/袋のマナー/エスカレーターのマナー/乗客観察のマナー/電車のマナー/放送のマナー/降りますのマナー/散歩のマナー/フリースのマナー/もの惜しみのマナー/節電のマナー/ラジオのマナー/環境音のマナー/美容室のマナー/笑いのマナー/放吟のマナー/根回しのマナー/自分取扱いのマナー/病気のマナー/時間の経過のマナー/ジンクスのマナー/入浴のマナー/自己流のマナー

2014/10/10

ゴハンの丸かじり

ゴハンの丸かじり (文春文庫)
東海林 さだお
文藝春秋
売り上げランキング: 37,582

■東海林さだお
丸かじりシリーズ20。単行本は朝日新聞出版から2002年10月刊。文春文庫版は2006年2月刊。
解説は画文家の大田垣晴子。

続けて丸かじりシリーズを読んでわかったのだがこれは2冊以上続けて読む類のモンではないな。
たまに読むから面白い。というか続けて読むとダレてくる。
今回はダレたので先に興味を持ったのからアトランダムに読み、後で読み飛ばしたのを埋めるように読んだ。

感想ざあっと。
東海林家のニラ玉は汁気が多いみたいだけど、わたしのイメージでは玉子焼きにニラが混じっているというヤツ。各家庭の独特の料理があるというのは面白いよね。/キンピラと干ぴょう巻の長さが同じというのはちょっと強引なんでないの。/2003年当時は100均がこんなに新鮮だったのかなあ。/おせちをおよばれするのはたしかに難しそう。/ラーメン戦争はいまだに衰えを見せず。/回転寿司もお店によって良い悪いあるよね。/おかゆといえば風邪のときというイメージだけどたしかに中華のおかゆは別物だ!/日本茶の喫茶店ってすたれちゃったのかな。見たことないワ。/玉子パン知らんけど似たもの食べたことあるような。/雛祭りはいろいろ華やかで楽しいね。/蕎麦屋でカレーはないけどわかる気がする。/そばめしって神戸のほうにお店あるよね。入ったこと無いケド。/蕎麦がき……知らんなあ。/菜の花は炒めてマヨが好き。/高級ジャムたっぷりのジャムパン、美味しそうだけど飽きそうだなあ。/鶏のから揚げ弁当って定番であるような?/味付け海苔にさらに味を付けるとは。/釜飯テンション上がりません?/ああ、讃岐うどん。/甘食、これも似たもの食べたことあるような。/たぬき丼って飽きそう。/鳥わさはともかく板わさは平松さんのエッセイで出てくるけどオトナの渋さを感じさせる。/そーめんゆでる時の結ってあるのが取りにくいというのはあるある!/銀鉄丼って結構手間かけてるよね。/麦茶は袋のも沸騰させたほうが美味だす。

わが家のニラ玉/ナムルの働き/アブナイきりたんぽ/キンピラ牛蒡のヨロコビ/楽しい百円生活/「開き」でいいのか/春巻の厄介/お茶のひととき/おせち小笠原流?/煮豆一族/「普通のラーメン」/寿司が回転していいのか/鰤大根の人徳/粥論/日本茶の喫茶店/玉子パン再食/楽しかった雛祭り/蕎麦屋のカレーライス/合併の味そばめし/立ち飲み屋にて/寂しき蕎麦がき/なのはなそば/ジャムの幸せ/鶏のから揚げの出っぱり/味つけ海苔の奮闘/韓国食材スーパー探検/学校給食に釜飯を/セルフのうどんの店築地に誕生/甘食のナゾ/驚くなかれたぬき丼/鳥わさの不思議/ソーメンはエライのか/ああ、栄光の銀鉄丼/北京ダック食べ放題/麦茶の夏。

2014/10/08

どぜうの丸かじり

どぜうの丸かじり (文春文庫)
東海林 さだお
文藝春秋
売り上げランキング: 38,522

■東海林さだお
丸かじりシリーズ第21弾。2004年2月朝日新聞出版刊。2007年2月文春文庫刊。
今回の表紙の絵、愛嬌があって好き。
どじょうじゃなくて「どぜう」。いいよねー。

本書では「構造改革」とか「反対勢力」とかいう単語が出てきて小泉総理の時代だったんだなあと思う。後のほうでブッシュさんを案内した居酒屋とか出てくるし(cf.近年、安倍総理は銀座の高い鮨屋にオバマさんを案内した)。
それにしても東海林さんはお酒も大好きなのに甘いものも相当イケるようで、バームクーヘンの穴のぶんが「ズルだ」っていうくらいなんだからスゴイよなあ。
本書には珍しく奥さんの存在がわかる一文がある。「フレンチトースト」の冒頭部分。
ほんと、このひとって知らなかったら一人身だと勘違いしやすい内容を書いているなあ。仕事場で料理もしょっちゅうしちゃうし。どこがどうとは云えないんだけどなんとなく文章とかその内容が醸し出す雰囲気が独身、やもめっぽいんだよね。

感想ざくっと。
どじょうはいまだに食べたことがない。/調べたらO-bentoは2001年から発売、2007年内に発売終了してんのね。/スタバは1回しか行ったことないけどこんな難しい注文してないよ。/土瓶蒸しについてはわたしも胡散臭いと思っていた。/この奢るひとはケチだなあ。/確かにトンカツには刻みキャベツしか考えられない。/この串揚げのお店面白そうだなあ。/お寿司はやっぱり魚がいいけどなあ。/お好み焼きは作るのもエンタメなんだよね。/甘栗剥いちゃいましたは画期的だったなあ。/プリッツよりポッキー派。/フレンチトーストは家庭料理なんだろうなあ結局。牛乳の量がポイントかなー。

解説は田崎真也氏。ワインのソムリエならではの面白い感想だった。ワイン飲めないので試せないけどね、しくしく。
以下は目次。

ネギの位置/どじょう丼をどうじょ/一人生ビール/O-bento発売/真夏のバーベキューは/カレー魔現る/ニラの怨念/おじさんスタバデビューす/五色納豆の混迷/好きです、さつまいも君/疑惑の松茸土びん蒸し/実りの秋だ「皮考」だ/温泉卵のゆるゆる/おごられ酒はつらいよ/旨いぞ豚しゃぶ/トンカツの刻みキャベツ/バウムクーヘン穴疑惑/コーンフレークの迷い/串揚げ、ブームとなる/野菜寿司にコーフン/鱈ちりの鱈の立場/数の子ポリポリ/栗キントンの陰謀/清純、白百合根学園/串を駆使する/紙でできた四角いDon/おじさんお好み焼きを焼く/「スティックを食べよう」/甘栗「剥いちゃいました」/構造改革は料理界にも/懐かしの喫茶店/「ブッシュと居酒屋」/試食のギクシャク/プリッツの響き/私的フレンチトースト史

2014/10/06

秘密と友情 [『人生問題集』改題]

秘密と友情 (新潮文庫)
春日 武彦 穂村 弘
新潮社 (2014-09-27)
売り上げランキング: 7,705

■春日武彦・穂村弘
本書は2009年3月角川書店より刊行された『人生問題集』を改題したもの。
精神科医・春日先生と歌人の穂村さんの全篇対談集である。
両方、漫画家の吉野(朔実)さんの読書エッセイ漫画に頻出する方で、単行本のタイトルが面白そうだなーと思ったことは覚えているがいつのまにか忘れていて、このたび文庫化をきっかけに読んでみた。

穂村さんについてはエッセイとか歌集を読んでいるからある程度プロフィールを知っていたが、春日先生は純粋に吉野さんの漫画で描かれた像しか知らなかったので、本書を読んで「へー一人っ子なんだー、奥さんはナース(婦長さん)なんだー、親も親戚も医者の家系だったんだー」とか初めて知った。1951(昭和26)年、京都生まれなんだ。ふーん。っていうかずっと精神科医だと思ってたら最初は産婦人科医だったんだ。

14の問題について吉野さんを通じて友人になったおふたりが対談している。たまに編集者の質問などが入る。穂村さんは1962(昭和37)年生まれなので10歳くらい年齢差があるんだけど、タメ口なんだなあ。

テーマはあえてお二人らしくないものを選んだっぽい(春日先生による「まえがき」参照)。
①友情 ②怒り ③救い ④秘密 ⑤努力 ⑥孤独 ⑦仕事 ⑧家族 ⑨不安 ⑩記憶 ⑪言葉 ⑫お金 ⑬愛 ⑭読書
特別ふろく 煩悩108コンテンツリストがそれぞれ。
あとがきは穂村さん。
解説はなんと!大ファンの平松洋子だったのでなんだか得した気分!西荻つながりかな~。平松さんの本の解説ほむほむがやってたことあるもんね、お返しだね~。

読んでの感想だけど、いやー「変だ」とは思っていたけど穂村さんも春日先生も随分変わってらっしゃる。っていうか身近にいたら「なにゆってんのか意味わからんし」って距離置きたくなるかもしれん。このふたりの結婚観とかちょっと嫌だなあ。特に穂村さんのが嫌だなあ。

穂村さんと春日先生は似ている面もあるけど、やっぱり少しずつ違って、お互いが喋りながらいろいろ質問したりして理解を深めたりして、ツッコんだりして、読みやすくはあるし、おっしゃる内容はわかるけど、それに共感できるかというとちょっと「引いてしまう」ことも結構あって、っていうか嫌悪感みたいなのを軽く抱くことさえあって、まーでも基本的にお二人とも吉野さんの漫画で親近感を持ってるお二人なので嫌いにはならないんだけど。
前の方で穂村さんが喋ったこと(学生時代セールスのバイトをしたけど1日でイヤになってやめたヘタレだと自虐するエピソード)を後の方で春日先生が全然覚えてなくてそーなんだ、とか普通に流していて、そういうのはわたしは内心密かに凹むと思うんだけど穂村さんもそうじゃないのかなとかそんなふうに思ったりしながら読んだ。

タイトルは『人生問題集』のほうがカッコイイしキャッチ―だけど中身がそういう感じとはまた違う(だってお二人とも個性的過ぎて非一般的というか、ほぼ参考にならないんだもん)からあえてこういうダサめのカタそうなタイトルに変えたのかなあ。

人生問題集
人生問題集
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春日 武彦 穂村 弘
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 64,443


2014/10/04

ホットドッグの丸かじり

ホットドッグの丸かじり (文春文庫)
東海林 さだお
文藝春秋
売り上げランキング: 325,004

■東海林さだお
丸かじりシリーズ第23弾。単行本は2005.5.12朝日新聞社刊。文庫は2008.11.7刊。
解説は角田光代。

通俗小説と一緒で、流行りものを入れるとその当時はわかっても7年後の今読むと既に「時代だなあ」というのがあって、まあそういう時代反映も織り込んでこその「丸かじり」なんでしょうけどね。
大滝秀治さんの「つまらん、お前の話はつまらん」というのはググったら2002年にキンチョールのCMがあった(そういえばと思い出した、懐かしい)とかね。
100円うどんの「はなまるうどん」は知らなかったので今はどうかな?とホームページを見たらちゃんと全国にあった、メニューによればほとんどの商品は小で300円だけど、かけうどんの小は130円で、そうかー、30円値上がりしたんだね。ググったら2013年11月5日までは105円だったんだね。すごいなあ。

以下感想ざっくり。
鯛茶漬け美味しそう。/漬物は塩分控えめにはテキだす。/カツ丼を別盛りにしたら冷めやすそうな?/東海林さん肉まん好きやねえ。/オイスターバーってそんな高いんだ!/あれおのろけ豆って云うのか初めて知った!/切り干し大根は手間じゃなくてむしろ簡単で安くて美味しい認識なんだが。/3000円のお好み焼きは味付けをソースとマヨにするのが勿体ないと読んでいて思った。/ロールケーキ流行のこれは前……だよね。/ふりかけそんな好きじゃないのでこの一文は違う意味で激しく同意。/地上でまで機内食食べたくないわあ。/なんだマクドナルドのことか、近年落ち込みが激しいらしいっスね。/タンについては深く考えたら食欲失せるので考えないで食べているのでこれも斜め読み。/バター醤油かけごはんって美味しいってよく書いてあるけど、そうかなあ?/この定食屋さん美味しそう!せやけど関西やったら愛想も必要やで。/みんな人参苦手ということ?/冷やし中華にカラシ無しで食べてたけどそんなに必須なのか、今度試してみよう。/ナポリタンは逆に近年純喫茶と一緒にブームになってるよね!/IKEAのホットドッグ安くて美味いっスよ。/ラーメンにフカヒレ……(絶句)。/そうめんにはネギ派。茗荷は炊込みご飯派。/ウイロウ食べたくなってきた。/スイカは確かにそう!逆だったら良いのにね!/アンミツって今までちゃんと食べたことが無い気がする。/生きてるイカ丼……ちょっと躊躇しちゃうかも。/いまや中国産は……。/こないだリゾット作ったけどあれもナマのお米とがずに炒めて、芯を少し残す感じだよね。ご飯の仲間と思わないで食べる、というのはご慧眼!

角田さんの解説を読んで。えー、ちゃんと全部読まないのかなあ。アトランダムも良いケド未読のが残ったままとか気持ち悪くないのかなあ、と思った。

以下は目次。

正月にピリオド鯛茶漬け/ガンバレ!お新香/別盛りカツ丼は夢か/100円うどんを食べに行く/「盛り合わせ」の思想とは/肉マン走りの人々/オイスターバー見参/おのろけ豆の謎/切り干し大根の怪/ついに立ち食い寿司出現/3000円のお好み焼き/ちらし寿司の春/鯛ラーメン登場/ケーキ巻き巻き/ふりかけの実力は?/ミリン干し応援団/機内食を地上で?/ブランドバーガーを食べる/タン塩の時代/バター醤油かけごはん讃/午後の定食屋/人参の不思議/ミレーを食べる宵/冷やし中華kkもリストラ/懐かしやスパゲティ・ナポリタン/野球抜きでホットドッグ/3000円ラーメンとは/茗荷に学ぶ/ウイロウを庇う/テッペンタベタカ/アンミツ構成員/動く丼/豚づくしレストラン/桃缶の甘美/パエリヤ旨いか

2014/10/02

和菓子のアンソロジー

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)
坂木 司
光文社 (2014-06-12)
売り上げランキング: 17,070

■坂木司リクエスト
10人の作家さんのうち、4人が初めて読む作家さんだった。
2013年1月単行本刊、2014年6月文庫化。早いなあ。
「まえがき」でわかったのだが、光文社で作家さんリクエストのアンソロジーが3つ出ているけれどもそもそものはじまりは坂木さんが何気なく雑談で喋った、そこから始まっていたのだ。良い企画だなあ。
というわけで作品ごとにざくっと感想を。

空の春告鳥 坂木司 ★★★★
和菓子のアン』の続きというかエピソード。この短篇を読んで、本篇を読んだときに主人公に感じたまだるっこしさを思い出した。なんていうか……高校卒業すぐのアルバイトにしてもあまりにも知識無さすぎじゃないのかなあ。頭は良さそうなのに、無知すぎてブレーキがかかりまくるところが。この話で言えば、あの状況で「飴細工」と言われてその場にそのお菓子がなければ「ああ、なにか例えたんだな」くらいわかりそうなもの。人形浄瑠璃も、詳しくは知らなくたって、聞いたことくらいあるでしょうに。あと、マジで食べ過ぎ。
…とか文句ばっかり書いてしまったので信じてもらえないかもしれないけど、この話『和菓子のアン』好きなのでシリーズ化してほしい。

トマどら 日明恩 ★★★
初。話は姉と妹のことだけでなく人間の情とかを描いたとてもしみじみした良い話だった。でも語り手の警察官をわざわざ数字に細かくケチな設定にした意味がわからない。この話のオリジナルじゃなくて、この著者の読者にはお馴染みのキャラ立ちしたキャラなのかな、それならわかるんだけど、解説とかにも書いてないので不明。オリジナルの、季節の果物が入ったどら焼きというのが美味しそうだった。

チチとクズの国 牧野修 ★★★
初。変なタイトルだなあと思っていたら中身の導入部があれで、どうしてこの題名?と読んで行ったらびっくり展開が。暗く重くはじまったのが、すっきりさわやかあたたかな〆でほっとした。ユニークな三途の川だなあ。

迷宮の松露 近藤史恵 ★★★
忙しすぎる仕事を辞め、モロッコに滞在していた女性が思いがけない場所で出会った祖母との思い出である京都の和菓子。人間、こういう時期もあるだろうなあと思った。松露を検索してみたら、同じ松露でもいろんな色のがあるんだね。

融雪 柴田よしき ★★★★★
きゃあ、ロマンティック! 柴田よしき、久しぶりに読んだなあ~。山間のペンションで山菜や有機野菜中心の料理とか、めちゃくちゃ美味しそうで和んだ。設定が素敵で展開がロマンというね。

糖質な彼女 木地雅映子 ★★★★★
初。ひきこもりの主人公もその母親もイケメン医者もなんだかなあと思って読み進んだらなかなか面白い展開になって、読了後もいろいろ余韻があって良かった。この話はあとでもう1回読みたくなって読み返したけど、最初よりもより良く感じた。二回目読むとユーモアとかがあるなあ、と。著者の視線の向け方が良いんだろうな。

時じくの実の宮古へ 小川一水 ★★
初。これは……ふだん読まないタイプのお話だ。SFだ。和菓子の話でこれは想像しなかったなあ。この状況で和菓子作れるっていうのが凄すぎると思うんだが…。

古入道きたりて 恒川光太郎 ★★★★★
ああ久しぶりに恒川さん読んだけどやっぱりこのひとの世界好きだわ、上手いよなあ。脳内にその絵を思い浮かべるだけで不思議でぞわぞわして面白い。おはぎ、季節によって呼び方が違うんだ。おばあさんがおはぎを作ってくれた心情を思いやるとかそういう細やかな描写が素晴らしい。

しりとり 北村薫 ★★★★★
北村さんだから上手いだろう、とハードルを上げていてもやはりきちんと上手かった、流石。それにしても男の人のロマンチストって本当に繊細ね。高校生の出会い、甘酸っぱいなあ、古き良き時代って感じで、それで長年連れ添うとか素敵だなあ。

甘き織姫 畠中恵 ★★★
謎解き、なかなか面白かった。変人オタクの凄すぎるキャラ、お金持ちで頭が良くて超絶美形で唯我独尊の性格だなんて、京極夏彦の薔薇十字探偵社のあの御方を彷彿とさせる…。でも十代の嫁といい、みんな妙にキャラ立ちしていて、これももしかして畠中ファンにはお馴染みの、なのかしらん?

塩をひとつまみ 坂木司 これはあとがき?ミニ解説?みたいな。
豪華なメンバーというだけではなく、今まで読んだアンソロジーと比べてもこれはなかなかレベルが高くて充実していて、実にナイスだった。
ちゃんとした和菓子屋さんに和菓子買いに行きたくなるなあ(とかたぶん『和菓子のアン』のときも思いつつそこらのスーパーで買った適当な和菓子でお茶を濁しているんだけど……)。

2014/10/01

強運の持ち主 【再読】

強運の持ち主 (文春文庫)
強運の持ち主 (文春文庫)
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瀬尾 まいこ
文藝春秋
売り上げランキング: 147,293

■瀬尾まいこ
前回読んだのは2年前。
2年前だから感想はおんなじだったら省略しようと思ったら微妙にいま現在の感想と違ったので書いておこう。今回読み返して一番感じたのは「人情、あったかさ」だ。
OLあがりのなんちゃって(?)占い師さんが主人公の連作短篇集というのか長篇というのか。
読んでいるとほのぼのしあわせな感じがあって、和む。
占い師さんというよりは、第三者的な相談相手みたいな、話をきいてもらって、背中を押してもらう相手みたいな感じ。

わたしもむかーし、1回だけ試しに3千円払って占い師の方にみてもらったことがあるんだけど、相手が母親より少し上のおばさまだったこともあり、感触としては相談に乗ってもらった感じ、あと「占い」の効果によってちょっと安心を与えてもらったような、100%信じるとかじゃないけどちょっと心情的に助けになるかな?みたいな感じだった。おおまかな占いだったので外れなかったけど、どんぴしゃアタリ!みたいな劇的な短期間の結果が出るみたいな話でもなかったしね。

このお話も占いに振り回されたりすることもあるけれど、結局は自分の直感が一番、自分で感じて決めるほうがいいね、みたいな流れになっている。
出てくる主人公の彼氏がとても穏やかなあたたかい人柄で、彼女はいいひとを選んだなあと思う。でも占いで相手をうばっちゃうなんてちょっとスゴイなーとも思うけどね、取られた方は気の毒だよね、そのへんはまあでもワレナベトジブタでそのひとにはもっと合うひとがいたんだろーと脳内処理しておこう。

話としては最初の「ニベア」が好きだ。切なくて、あったかい。