2014/05/21

からくりからくさ→りかさん→ミケルの庭 【再々々々読】

からくりからくさ
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りかさん (新潮文庫)
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■梨木香歩
最初に読んだ順番が、偕成社『りかさん』→新潮社『からくりからくさ』→新潮文庫『りかさん』だったので、執筆順もそうだといままで思い込んでいたが、今回『からくりからくさ』を読んだ後に新潮文庫『りかさん』(「りかさん」と「ミケルの庭」所収)を読んで、確認したくなって発行年を調べたら、
新潮社『からくりからくさ』1999年5月
偕成社『りかさん』1999年12月
新潮文庫『からくりからくさ』2001年12月
新潮文庫『りかさん』2003年6月(書き下ろし「ミケルの庭」所収)
ということなのだった!ひええええ。

『りかさん』は児童書なので、この短いお話の裏にこんな長いおとなの物語があって、それを後に書いたのね、とずうぅっと考えていたのに、実は『からくりからくさ』が先だった、というかこれはもうほぼ「同時」じゃないのか、構想とか執筆時期とか。
どっひゃー。いや、わたし以外のみなさまには「なにをいまごろ云ってるの?」という感じでしょうがだって細かい年数は不確かだけど確実に十年以上!このカンチガイに気付かなかったってわけだから……愕然。

もっとも今回『からくりからくさ』を読みなおして一番考えさせられたのは自分の記憶処理についてで、読む前は「『りかさん』の続篇と思ってあなどっていたら大人の女の三角関係でけっこーどろどろしてるんだよね」という認識だったのだが、そして中盤くらいまではそれでも平穏に「なっきーの植物ラブ!はここでもう発揮されまくってたんだなあ、南蛮キセルは『家守綺譚』が初かと思ったらここでもう出てたんだ」とか思いつつ味わっていたのだが、中盤から終盤は怒涛の展開でめっちゃしんどい話で「そういえばそうだったなあ」と。重いテーマが三角関係だけじゃなくて出版社のこともあったっけ。

思えば、最初に読んだときは【紀久とマーガレットと男の三角関係】に圧倒され、再読したときは【紀久の出版をめぐる権力との闘い】に共感したのだった。そして今回読んで「はっ」とさせられたのは【マーガレットがシングルマザーになること】に対する登場人物のそれぞれの対応とかが「ああ、『雪と珊瑚と』のテーマは既にここで書かれていたのか!」ということと、あとはS市の旧家などの考え方、【家中心でとらえられている女のアイデンティティー、その家の子どもを産んで初めてその家の人間と認められる社会】。ええと、『からくりからくさ』も『家守』みたく百年前の設定だったっけ?って思わず確認したくなっちゃったよ、違うよね、現代のお話だよね。

これはつまりおんなじ話を読んでも、読み手であるわたしの年齢や関心事・アンテナが違うのでメッセージの受け取り方が違ってきているということかなあ。前回読んだときは年配の男性社員の仕事のやりかたに反発を感じているときだったので紀久にシンパシー感じて反応しまくったけど、いま冷静に考え直してみると出版社側の立場とかも合わせてみてくだんの先生の出方も「そりゃ立場的にそうなるのかもなあ」と多少はわからないでもない(認めるわけじゃないし、紀久が正論であるのは間違いないが)。

『からくり』を読み終わってすぐに感想をとても書ける気がしなく、続けて『りかさん』を読んだ、ああ登美子ちゃんは覚えていたけど初枝さんもマーガレット(の母親)もここで登場するんだと驚く。
そして『ミケルの庭』も読んで、ああこれも紀久の話だったと……そしてこの紀久の苦しみに同情を重ねながら読み終わって、解説を読めば「自責の念からただおろおろするばかりの紀久」と断じられていて「そうか、感情的にとらわれずに客観視すれば紀久ってそういうタイプと判断されるのか」と少々衝撃すら感じたり。まあ、紀久ってけっこう内面の黒々したところにスポット当てられて書かれてるし、4人の中でいちばん女女してるし、同性に好かれにくいかもね。かく云うわたしも紀久はあんまり好きじゃない。本音と建前が違いすぎるんだもの。
蓉子は凄く人間が出来ているしこういうひとになりたいと理想には思うし大好きだけど、あんまり現実にはいそうじゃないなあ。与希子は不器用なところ、友人の恋愛についてそういう面を自分では見たくないと思ってしまうところなんかがすごくよくわかる。恋に恋するみたいになってるとことかも、いざ目の前に相手が来て手を差し伸べたら引いちゃうとことか、すごく共感。マーガレットについては異国の事情を背負ってるから複雑すぎて判断できない。友人だったら反応が読みにくくて気を遣うかも。

比べるものではないかもしれないが『からくりからくさ』よりも『りかさん』のほうがわかりやすくて好きだ。りかさんがちゃんと喋るし。ほんとうに素晴らしいお話で、何度読んでも大事な、宝物のような本だ。『からくり』も好きだけど、ずっと4人だけの世界でいれば美しかったのになあと思ってしまう、このお話ではほんとうに異性が、色恋事が邪魔に感じてしまう。
梨木さんはもう児童文学は書かれないのかなあ。

前回、りかさん→ミケルの庭→からくりからくさを読んだときの感想。

追記
「ほぼ日」の「担当編集者は知っている。」に『からくりからくさ』執筆時期?構想時期に関するこんな記事がありました。2008-06-20-FRIの記事。