2014/01/31

連篇累食

連篇累食
連篇累食
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目黒 考二
ぺんぎん書房
売り上げランキング: 492,245

■目黒考二
『笹塚日記』をまとめて4冊読んでいると、途中から目黒さんの自炊という名の料理が始まるんだけど、雑誌で読んでいるときは毎月ちょっとずつ読むし、同時に他の記事も読むのでそれほどでもなかった興味がわいてきた。それは「目黒さんはドライカレーばっかり作って、簡単で美味、と連呼してらっしゃるけど、いったいどんなレシピなんだろう?」ということ。
ふつうのカレーは昔から親も作ってくれたし自分でも市販のルウをつかえば簡単に美味しく仕上がるので数えきれないほど作ってきたけど、実はわたし、ドライカレーを作ったことが無かったのである。それは「だってドライカレーよりふつうのカレーのほうが美味しいし、わざわざドライにする意味がわかんない」というか、まあ単に興味が無かったんである。
目黒さんのエッセイの中で、別出版社で料理本を出すことになったと出てきて、それはぺんぎん書房というところから出ているらしい。
アマゾンでググると、新刊では無くて、出品者からの古本が非常に安価で出ている。まあでも、せっかくだから出版社のホームページから定価で買おうじゃないか、と検索して――――絶句。
ぺんぎん書房は倒産していた。しかも、『連篇累食』が2005年7月10日発行で、2005年10月28日破産宣告。うわあ。これを購入してから、『笹塚日記 ご隠居篇』を読み進んでいったら確かにこのことが出てきた。雑誌掲載時にも読んでたはずなんだけど、全然記憶に無い。忘れてたなあ。初めて印税だかなんだかもらい損ねた、って書いてある。これまで何回も日記に「版元に迷惑をかけない程度に売れてくれるといいが」とか書いてあったのと関係あるのか無いのか…。
というわけで仕方がないので古本で入手。

「はじめに」によれば、本書はぺんぎん書房のWEBで連載されたものを書籍化したものだそうだ。1つの料理に関するエッセイというか思い出話みたいなのが目黒さんらしくいろんな小説からの引用をからめて書かれてあり、最後にその料理を作ったレポートが記されているという形式。失敗もけっこうあるけどこのレシピは信用していいのだろうか。

最後の番外編は、スタジオで手打ちパスタを作りそれでペペロンチーノに仕上げちゃうという企画モノで、エッセイのカタチじゃなく担当編集さんによる記事。その場で繰り広げられた目黒さんと編集さんの会話のやりとりをベースに、料理されていくさまと雰囲気をリアルに再現してくれてあるのだが、これがもう、めっちゃくちゃ面白かった! 文字通り、吹き出し、けらけら笑い出しちゃったよ。いやあ、最高だなあ。目黒さん、これ天然ボケ? ひとの話聞かないし、すぐ忘れるとか、まあ、いままでの情報から知らなかったわけじゃないけどリアル対話で再現されるとスゴすぎるわあ。引用しようとしたら読んでも読んでも面白くて結局番外編は最後まで面白いんだもん。漫才か! ってレベル、これ本気なのかなあ。楽しすぎて、3回も読んじゃった。いままで読んだ目黒氏像もゆかいなオジサンだったけど、この一編はマジ必読。同じ対談集でも書評対談はまあ専門というか、プロだからここまで隙が無いんだけど(それでも十分面白かったけど)、料理は苦手というか初心だから余計こうなるのかな。版元倒産で読めないとか勿体無すぎる! 本の雑誌で再刊行とか出来ないのかなあ、版権とかいろいろ難しいのかなあ。まあ、そう売れる本じゃないとは思うけどサ……(かなしひ)。

「はじめに」と「番外編」の間の目次を写しておこう。これは、ホームページとか無いから載ってないからな(まだ言ってる)。

 父のすいとん 郷愁の稲荷寿司 お弁当の至福 母の雑煮 ドライカレーの真実 牡蠣との遭遇 白菜漬けに挑戦 わが青春のお好み焼き 京都久在屋の豆腐 缶コーヒーを飲む コロッケを食べに行く 主夫体験記 ほろ苦さと茶碗蒸し サンドイッチの幸せ 赤飯の記憶 喫茶店とジャガイモ料理 二子玉川のハンバーグ

なお、作って食べてみて目黒さんが「美味しい」となるよりも微妙な結果になるほうが多いような印象であるが、味わった表現にいまは青春時代とちがって先が見えていて、将来に対する不確定要素がないから「ほろ苦い」というのが何回か出てくるんだけど、「ほろ苦い」というのは「思い出」とかによく係る言葉で、だから青春とか初恋とか若い・拙いときに遣う言葉というイメージだった。おじさんがいま現在きらめきがないことを指してこの言い回しというのはどうなのかなあ。ちょっと違和感が。まあいいんだけど。

とりあえず本書を読んでさっそくドライカレーを作ってみた。材料は、スーパーの食材の旬とかなんとかで一緒じゃないけど。ルウは、削るのが面倒だなーと思ってレンジで少しチンしてみたらすぐに溶けて楽々だったよ!目黒さんに教えてあげたい。
そして初めて作ったドライカレーは確かに美味しかった。っていうか出来るまでが予想をはるかに上回る簡単さだった。すぐ出来ちゃう!ふつうのカレーと違って「煮込む」「寝かせる」なんて時間も不要。うわあ、この簡単さでこの味だったら確かに目黒さんの希望にぴったりのメニューだわ。しかも、ふつうのカレーはお弁当に不向きだけど、ドライカレーは冷めても美味だし液体じゃないのでピッタリ。これは便利なものを教えていただいたなあ。
セロリが重要かつ良いアクセントになっているので必須、玉ねぎ、にんじん、ひき肉も欠かせないかな。あとはお好みのカレーの具材を。今回わたしは目黒さんレシピのパプリカの代わりにズッキーニを入れてみたけど美味しかった。

それにしても『笹塚日記』に、本書版元がつぶれちゃって本書も売れることがなくなってしまったのでなんだか料理をする気力がなくなってしまったと書いていらした目黒さん。
残念だなあ。

2014/01/29

台所のオーケストラ

台所のオーケストラ (新潮文庫)
高峰 秀子
新潮社 (2012-06-27)
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■高峰秀子
著者についてわたしはなんにも知らなかったのだが、地元書店で文庫の棚を目を皿のようにしてホリダシモノを探しているときにこのタイトルが目に飛び込んできた。「台所の」というからお料理関係か、と思って引き抜いてみるとその通り。
ぱらりと中身を確かめると色ーんな料理がたくさん載っていて、レシピもざっくばらんで面白そう。
帰ってからネットで調べてみたら、昭和の大女優さんで、なかなかのゴウケツだったみたい、その人生はざっくりウィキペディアで読んだだけでもかなりの波乱万丈。
大正13年の生まれで、ついこないだの平成22年の年の瀬に鬼籍に入られたという。

『台所のオーケストラ』は、1982(昭和57)年6月にに単行本が潮出版社というところから出た本で、当時高峰さんは58歳くらい。それが2000(平成12)年11月に文春文庫に入り、いまは絶版のようで、2012(平成24)年6月、新潮文庫から出されたものがわたしの手元にある。潮のときと文春のときは表紙が安野光雅のイラストだったみたいだけど、新潮は著者の白黒の写真なんだね。中身にちょこちょこっと描かれているイラストも安野さん。御交流があったらしい。

大女優さんは自分で料理なんてしないわ、というイメージがあるけれど、高峰さんは日常的に台所に立たれていたようだ。解説の養女の方によれば、それも好きというよりは義務感や責任感がそうさせたらしいけど……でもヤッパリ、どこかで食べるのが好きとか美味しいものが好きとかいう食いしん坊の要素が無ければこのセンスやこだわりは生まれないんじゃないかナァ……と最後まで通読熟読しての感想である(文体がちょっと、影響されている)。

そう、文体!
わたしが本書で魅了されたのはそのメニューや食材の豊富さや手軽だけど気の利いた調理法だけではない。なにより、高峰さんの文章が素ん晴らしくって!!

こういう文章は、文筆業をメインにされている方にはあんまり見かけない。しかもここ数十年の作家さんにはまず無さそうな、どこかシロウトくさい、サバけたざっくばらんな口語体で、カタカナの遣い方とか、方言めいたものを混ぜて茶目っ気を出すのだとか、わざと乱暴な口調にしておどけるのとかね、「古い」はずなんだけど、女優さんが書いてらしたと想像するとなんだか愉快。気風が良くてイナセな感じで素敵ねえ。飾らなくて、自然体。これはね、ご本人が書いてるなっ、って絶対に確信できる。ゴーストライターじゃ出せないし、編集者が直したらこんなチャーミングにならない。
文章に惚れて、まだ読みかけだったけど思わず帰り道の書店で高峰さんの他の著作を探しちゃった。

本書は大きく4つに分かれていて、「和風」「中国風」「洋風」それに「ソース類」。1つの食材について見開き2ページ、右側にその食材に関するエッセイ、左側に材料と作り方が書いてあるというのが原則パターン。

レシピは、料理超初心者にはちょっと不親切かもしれなくて、何故なら調味料の分量とかが細かく書いていなくてそれは「それぞれのお好みでご自由に調整してね」というスタンスだからだそうだ。逆にわたしのような大ざっぱな人間にはこのほうが感覚で作れてしかも面白い。

メニューは、目次が新潮社のホームページで全部見ることができる(のを、検索していて知って、ハッと気付いて先日苦労して書き写した平松さんの著作の出版社ページに飛んで確認してガクゼン…ここに全部書いてあるじゃないかあああ、写さなくてもコピペで数秒で済んだじゃないかあ、わああああ脱力!)。

――スミマセン、少々取り乱しましタ。
話を戻して、えー、本書には和食48品、中国風24品、洋風34品、合計106の料理とそれに加えて数々のソースのレシピが載っていて、文庫1冊でほんっとお買い得、しかも読んでるだけでじゅうぶん楽しい。

昭和に書かれた料理本?古臭くない?と思うことなかれ! いま読んでもめっちゃおしゃれでハイカラなメニューがたくさん。もちろん、昔からの「古き良き日本のおばんざい」風なものは主に「和風」の項で参考になるし。

エストラゴンとか、エシャロットとか、アンディ―ヴ、シュペツレにケパーなんていうのが出てくるんだけど、こんなのわたし食べたこと無いんじゃないかなあ。知らぬ間に外食で口にしてる可能性はあるけど意識してないわけで。少なくとも自分で調理したことは一回も無い。そのへんのスーパーで売ってるのも見ない気が。伊勢丹の百貨店地下とかに行けば、あるかしら?

ともあれ、本書の基本は、「そこらにあるもので、手間をかけず、ぱぱっと作れる簡単なもの」。ほんとに簡単なものは数分で出来ちゃうのもあり、中には(これ、ほんとに30分で出来るのかなあ?)というのもあるけれど、「手軽目先を変えたい」というのにはピッタリ、良い刺激になるように思う。

2014/01/27

サイバラの部屋

サイバラの部屋 (新潮文庫)
西原 理恵子
新潮社 (2013-12-24)
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■西原理恵子
文庫オリジナルの対談集。
13人のいろんなジャンルのひとと西原さんが対談したものを集めたもので(掲載誌とかバラバラ)、出所後の堀江(貴文)さんと話しているらしいのでそれを読みたくて、ほかもなんにんか気になるひとがいるし、気軽に楽しめるかなと先日購入したもの。

昨日、なにげなく夜にネットを見ていて無記名の変な毒素にやられて気分が悪くなってしまったのでこれを読んで気晴らしを試みた。見事に効いた。これぞ、毒をもって毒を制す!って感じだなあとしみじみ。でも本書が極端な意見で「きゃあああ」と思うような内容でもいっそ清々しいのは全部記名で、責任とポリシーもってそのひとが話しているからだよね。

対談記事の前に簡単なプロフィールも載せてくれてあって、親切。全員有名人なので、知らない人はいなかったけど。

肝心の堀江さんとの対談は、もっと獄中のこととか詳しいのかと思ったらテーマがダイエットとリバウンドとかで……あとは下ネタで。
いや、ダイエットに関心が無いとは言わないけど、こんな極端に太って極端に痩せて、みたいな特殊なひとのは参考になんないんだよー。めちゃくちゃな食生活してて、それをやめて運動もしたら痩せた、って当たり前すぎて。

いちばん面白かったのは、重松さんの回かな。

西原さんが偉いなと思うのは、相手によってきちんと礼儀を使い分け出来てて、クダけて良い相手にはどんどん飛ばして記事的に盛り上げるけど、そうじゃない相手にはちゃんと線引きをしているところ。それにしても、自分をさらけ出して血肉を削って稼いでるなあ、グラウンドが違いすぎるので遠くから眺めて口をあけてぽかーん、でも時々こっちの共感を呼ぶ鋭い真理もおっしゃるから読み飛ばせない。

対談相手リストと掲載誌・年月。
 養老孟司「日経ビジネスアソシエ」2005.10.18号
 よしもとばなな「婦人公論」2006.9.22号
 重松清「早稲田文学」2010年2月号
 姜尚中「女性自身」2010.7.10号
 柳美里「婦人公論」2010.9.22号
 ともさかりえ「マリ・クレール」2009年7月号
 深津絵里「MORE」2009年10月号
 荻原博子「女性自身」2011.3.8号
 堀江貴文「女性自身」2013.5.14/21号
 みうらじゅん「ユリイカ」2006年7月号
 リリー・フランキー「小説現代」2006年8月号
 伊藤理佐「CREA」2010年1月号
 やなせたかし「詩とファンタジー」2011年秋茜号

本書を読んで自分の人生の参考にする、というのもアリだろうけど、基本的には劇薬だと思うので取扱い注意かも。かなり極端な意見も出てくるので、拒否反応を起こしたら素直にスルーしよう。
西原さん並みに稼ぐことが出来て、腹くくって道化も出来て、度胸と実行力があるひとなんてそうそういないよね。
いろんな意味で、スゴいひとだわ。

2014/01/26

笹塚日記 うたた寝篇

笹塚日記 (うたた寝篇)
目黒 考二
本の雑誌社
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■目黒考二
シリーズ第3弾。
本書の初出は「本の雑誌」2002年8月号から2004年10月号まで。
親子丼篇とうたた寝篇のどっちが先だったか、奥付の発行日を見ないとわからない。笹塚日記1,2,3,4と打ってくれたら一目瞭然だったんだけど。
脚注にある鼎談じゃなくて4人だから座談会か、の参加者は営業事務の浜田さん、営業の杉江さん、編集の荒木さん、そして目黒さんご本人。
笹塚日記は雑誌掲載時に一度読んであるので、単行本としてはどちらかというと初読みである脚注が気になるので、変則的な読み方でまず脚注を通しで最後まで読んでしまう(脚注の内容に応じて本文もその都度拾い読みしていく)。そのあとあらためて本文だけを頭から通しで読む。
おんなじような日常が続いているのに面白くて飽きないのは何故だろう。

それにしても浜ちゃんて何歳くらいなんだろうとひそかに気になっていたのだが、本文中(2004年8月某日)で営業事務の女性、浜田さんの年齢が暴露されていた。いいのか。

競馬場にもうひとりお友達のぶんもお弁当を作っていくところがすごく楽しそうで、目黒さんお弁当作りを楽しんでるなあという感じ、まあ、レジャーのときの、たまに、だからというのは大きいと思う。

チャパタというパンをよく食べてるなあ。チャパタってどんなだろうとネットで検索してみたが、たぶんわたしはまだ食べたことが無い……。このへんが、クィーンズ伊勢丹とそこらのスーパーの違いなのか、東京と田舎の違いなのか、それとも単にわたし個人の情報不足ゆえか(最後の可能性が一番大きい)。

あとドライカレー、鮭の塩焼き・納豆・冷奴の組み合わせもしょっちゅう食べている、目黒さんて自炊と外食の差はあれど、気に入ったものを食べまくる、というのは変わらないのね。

笹塚日記 ご隠居篇

笹塚日記 ご隠居篇
笹塚日記 ご隠居篇
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目黒 考二
本の雑誌社
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■目黒考二
第4弾にして最終巻。初出は「本の雑誌」2004年11月号から2007年3月号。

まず最初に「あとがき」を読んで、それで気になっての脚注を見たら目黒さんに関わりのある文筆家、書評家の方とか、元本の雑誌編集にいた方などから寄せられた「笹塚日記が終わってしまうなんて!思えば目黒さんとわたくしは……」という趣旨の寄せ書きならぬ寄せエッセイ集になっている。「あとがき」に最終巻のゲラは著者校なしと言われた、とか書いてあって、つまり本になってからのサプライズっていうわけね。浜本さんの粋な計らいというやつか。
本文には出て来ないし、雑誌を読んでいた時もあまり見かけた覚えがないのだが、この寄せエッセイに頻出するのが笹塚の本の雑誌社の目黒さんの居室を指して云う「トトロの森」なる符丁。目黒さんが丸々と肥えておられることと、本で埋もれて森の様相を呈していることから出来た言葉であることは説明を要さないが、いやあ、身も蓋もないコメントになるけどトトロとは可愛く言い過ぎじゃないのかなあ。

目黒さんは1946年10月生まれなので、2006年10月に還暦という計算になる。それにしてはほんと、よく寝るなあ。8時間や9時間ではない、10時間以上はザラで、まれに14時間とかぶっ続けで寝てるのだからすごい。わたしは20代後半から寝すぎると起きた瞬間から頭痛に悩まされる体質になったので、こんなのはあり得ない。うらやましいというかなんというか。

本書終盤で浜田さんと杉江さんと編集松村さんの日常?というか人となり?が突如順番に語られる日があって、「本の雑誌」愛読者には大変興味深くて面白い。雑誌初出時に読んで「へえ、浜田さん自転車通勤なんだ。近いのかと思ったら遠いし。すごいなあ」という感想を持ったことを思い出した。

日記をまとめて読んでいるとわかるけど、目黒さんってほんとひとにかまってもらうのが好きなおじさん。だから反応が良い浜田さんとか杉江さんと相性が良いのね。逆に、クールで「その写真はもう見ました」とか冷静で正直な反応しかしない松村さんを冷たい呼ばわりする。まあそこは上司の顔色と空気読んで『ええーっ、昔の目黒さんてこんな細かったんですかあ!』となんべんでも大きなリアクション取るのが部下のサービス精神というものと思わないでもないけど、わたしだって仕事が忙しいときとかだったら殺意すら覚えてしまうだろうしなあ。まあ、人間関係ってほんと相性だよね。松村さんだって愛想ふりまきたくなる相手にはそうするだろうし。

そういう意味でも本書に寄せられた大森(望)さんの一文は一読必笑モノの面白さで、最高である。みんながしんみり引き留め系だった中で情に流されないのは流石、「読むのが怖い!」で長らくタッグを組んでおられる大森さんならでは。

鏡明が「目黒さんはQueen's伊勢丹派ですか、ちなみに私は成城石井派ですけどね」と誰も訊いていない高級スーパーの利用で見栄を張っていたので(性格が出るなあ)と思ったり。クイーンズ伊勢丹は身近にあるのかなあと調べたら首都圏だけの出店だった。ふーん(目黒さんの口癖。そういえば、全4巻の「ふーん」の回数を調べていたひとがいたなあ。これも面白かった)。
目黒さんの奥さんは「笹塚日記」読まれていたのかしら。主婦はこういう買い物の仕方しないわねえ、と思ったので気になった。セレブがどうこうというじゃなくて、冷凍しては溜まっていって後でまとめて捨てるという無駄が多いのがダメだ。

あと読んでいてすごく気になったのは、本を買ったり出版社から送られてきたりしていて、「部屋のどこかにある」のは確かで、でも探しても見つからない、あるいは探している時間が無いから同じ本を何回も買う、というのが頻出すること。勿体ないなあ、でも仕方ないのかと思って読んでいたけど編集部の藤原力が探したら一瞬で見つけたり、無いと思ってあきらめて買ってきたそのすぐあとに見つかったり、もしかして、目黒さんて整理整頓も下手だけど、探すのも下手なんでは。
ああああ、目黒さんのこの部屋に行って整理整頓してやりたい!と何度思ったことか。

以下はわたしの当時の日記から。

2007年2月8日(木)
◆書店で一応念のため、と雑誌コーナーに行ってみたら「本の雑誌」3月号が出ていたのでびっくりした。本当に発売日の読めん雑誌だな(笑)。今月は早くてうれしーい! 表紙がすんごくレイアウトとかもおしゃれで飾っておきたいくらいでなんか「本の雑誌」じゃなくて「絵本の雑誌」みたい。眠る前にちらっと見たら「笹塚日記」が最終回のようだ。えっ。

2007年2月10日(土)
◆「本の雑誌」3月号を読む。「笹塚日記」最終回はいつもよりページを多く割いてあって、目黒さんと浜本さんの愛(笑)がすごくよく伝わってきて、ちくしょうこいつら良いなあ、浜やんイイ男だよなあ、って思った。「町田日記」を書いてなにがいけないのか、って思うけど、それはライター・目黒氏の線引きなんだからあれやこれや云えない。さびしいけど。「笹塚日記」の第1回から読めた幸福を誇りたい。毎月すごく面白くて、私の理想の日記がここにあるなあ、って感じだった。ああ浜やん、酒屋で説得しておくれな。4月号からあっさり「町田日記」が始まっていたらいいなあ。

2014/01/19

晴れた日は巨大仏を見に 【再読】

晴れた日は巨大仏を見に
晴れた日は巨大仏を見に
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宮田 珠己
白水社
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■宮田珠己
大仏と言えば奈良とか鎌倉とかだと思うのだけれども、実は日本にはそれよりももーーーっとでっかい巨大仏が各地に点在しているのだ、それを見に行くのだあ、という企画本。
単純に、高さだけの比較だと、鎌倉の大仏が11.54メートル、奈良の大仏が14.7メートル、でもこの本に登場する巨大仏は40メートル以上。いちばん大きな牛久大仏はなんと120メートルもあるというからスゴい。写真も載っているのだが、デカすぎて、なんだかもう異様だ。有難味はどうだろう……。

第1章 牛久大仏 茨城
第2章 淡路島世界平和大観音 兵庫
第3章 北海道大観音 北海道
第4章 加賀大観音 石川
第5章 高崎白衣大観音 群馬
第6章 長崎西海七つ釜聖観音 長崎、久留米救世慈母大観音 福岡、篠栗南蔵院釈迦涅槃像 福岡
第7章 会津慈母大観音 福島
第8章 東京湾観音 千葉
第9章 釜石大観音 岩手
第10章 親鸞聖人大立像 新潟
第11章 仙台大観音 宮城
第12章 太陽の塔 大阪
第13章 うさみ大観音 静岡、小豆島大観音 香川

読後、グーグルで各地の大観音をいくつか見に飛んでいってみた。近くまで寄れないのもあるけど、道路沿いからばっちり見えるものもいくつかあり、やはり独特だ。異様だ。

なお、同行する編集者は2人いるのだけど、1人(女性)がすぐに下ネタというか色ネタに走るのがううむ、という感じだ。
詳しい感想は初読み時感想に書いたのでこのへんで。 

笹塚日記 親子丼篇

笹塚日記 (親子丼篇)
笹塚日記 (親子丼篇)
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目黒 考二
本の雑誌社
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■目黒考二
初出は「本の雑誌」2000年8月号から2002年7月号で、当時誌面で読んでいたのだが、もちろん10年以上前のことだから覚えていないこと多数。

雑誌掲載時と違うのは脚注があることなんだけど、今巻の脚注は鼎談。日記の記述のあれこれについてこと細かく解説風の3人さんの雑談トークが追記されている。参加者は、目黒さん、金子さん、杉江さん。
このころは編集の金子さんがいらしたのねえ。金子さんのイメージは、ちょっと変わった我が道をゆく人(だって選ぶ本が変わってるんだもん)。杉江さんは営業さんだから、人付き合いが慣れてる感じ。

本書の後半あたりからぼつぼつ目黒さんの自炊がはじまる。それまでは冷やしおばけそばばっかり食べてたり、とんかつや天ぷらばっかり食べてて運動しなくてよく寝てて、ほんとに体に悪そうだったのだ。
自炊になる移行期間では、スーパーで魚中心の緒惣菜を買ってきて体に気を遣ったりしはじめる。
そしていよいよ電気釜購入!
そうそう、炊き込みご飯がしょっちゅう出てくるんだよね、栗ごはん覚えてるわあ。最初は料理なんて無理と思ったそうだけど、料理本を何冊も買い込み、3食すべて違う物を作っていたりして、意外にマメ!
しかし脚注によれば、目黒さんは「料理をしているんじゃなくて、自炊してるだけ」という意識らしくて、うーん、どう違うのかなあ?

とりあえず営業事務の浜田さんが目黒さん情報を常に事務所内で発信していて、金子さんはそれを「別に知りたくないのに浜ちゃんが教えるから」と思っていたそうだ。あはは。松村さんはいっつも遅くまで仕事していて、凄いなあ。帰るの遅そう。浜本さんも遅そう。「本の雑誌」ってそういう方たちの頑張りで出来ているのね。

2014/01/14

わたしの旅に何をする 【再読】

わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)
宮田 珠己
幻冬舎
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■宮田珠己
変なタイトルで、変なイラストの表紙で、見るからに面白そうな本であるが、読んで驚くことに中身はもっと面白いのである。素晴らしい。
時々ちょこちょこ拾い読みしていたがまとめてきちんと通読再読するのは久しぶり。ああ初期の宮田珠己節はこうであったなあ、懐かしいことよ、と堪能した。

本書は2000年5月に旅行人から出版された単行本の2007年(平成19年)6月に幻冬舎文庫版である。どうでもいいけどこういう出版情報が同じ1冊の文庫本の中でも表記統一されていないのは非常に不親切というか、文庫の奥付フォーマットが元号表記であるのに、本文がすべて終わった260頁には「この作品は二〇〇〇年五月旅行人より刊行されたものです。」とか西暦表記のみで書いてあるのはどうにかなんないのかなと思う。これはこの出版社だけじゃなくてしょっちゅうあちこちで見かけるんだけど、いささか不便である。

まあそれはさておき。
本書の内容は「あとがき」によれば、雑誌「旅行人」に4年間にわたって連載されたエッセイを加筆修正したものに若干の書き下ろしを加えた、著者4冊目の単行本だそうで、つまり1996年くらいからはじまる。その頃はまだ宮田大兄はサラリーマンだった。
1964年兵庫県に生まれ、大阪大学工学部土木工学科を卒業し、リクルートに就職し、9年と3カ月勤めた後退職し、その後作家として活躍されるわけである。

つまり意地の悪い見方をすれば「阪大出のエリートが一流企業にバブリーな時代に勤めはった後にもっと旅行したいとか言わはって、会社辞めはって、年収は会社勤めのときの5分の1とかになってしもたけど精神的にすっごい楽になったとかいうことが書いてある」わけである。
読む人が読めば「おお、ええ御身分じゃのう」と立腹することもあるのかもしれないが、そういうひとはそもそも本書のタイトル及びイラストなどを見て手に取らないであろうから、余計な心配か。

わたしも就職氷河期に就活をした人間であるので、時々思うには、もし宮田大兄がいまのような時代に苦労の末就職したとして、それでもやっぱり旅行をしたいから辞める、とか考えるのかなあ、ということで、まあよくわからないが、結論としては、旅行云々はさておき、宮田大兄は作家になりたいと小学生のころから考えていたというのがこのエッセイ中に書いてあるし、本文を読めばそういう、文章を書くことが好きだ!というパワーが伝わってくるので、細かい経緯はどうあれ、やはり最終的には作家になったんだろうなあと思う。

っていうか本質的に作家なひとは就職するとかしないとか、そういう次元で考えられることじゃないんだろうなあ。
たぶん、若いときっていろんなことの視野が狭くなってて、例えば「就職できなかったら人生ダメだ」とか思い詰めちゃうこともありがちなんだけど、そうじゃないんだ、そんな単純な損得勝ち負け勘定で人生は判定できるもんじゃないんだ、ということが宮田大兄みたいなひとにはたぶん最初っからわかっているような気がする。わたしはわかるのにだいぶ時間がかかってしまったけど。

人間、自分の人生に本当に必要なこと、大切なことってなんなの?
あんまり本質や理想ばかり追求して自分の資質や度量を度外視していると単純になんにも出来ない口だけ人間になってしまうけど、でも頭の隅っこには常に置いておいたほうがいいような気がする。

話が本書の感想からだいぶズレてしまっているが、まあ再読の感想なので。
……なんでこんな変な感想になってしまったんだろう。
最近読んだ就活を描いた小説があまりにも苦しそうで辛そうだから、というのもあるかな。『何者』とか『ポースケ』の中の1篇とか。
むちゃくちゃ面白かった、宮田大兄大好きだという一言で終わりそうで、そうならないように書いたらこうなってしまったようにも思う。
すみません。
初読みのときの素直な(?)感想はこちら

2014/01/13

フキンシンちゃん (コミック)

フキンシンちゃん (エデンコミックス)
長嶋有
マッグガーデン (2012-04-14)

■長嶋有
ということで、この長嶋さんの描いた(というかソフトを使って作った?)コミックが発売されたのはもっと前なんだけどネットとかで一部を読んで「うーんよくわからん」と保留していたもの、『問いのない答え』を読んでその登場人物の中にフキ子ちゃんが出ていて興味を持っちゃったので遅ればせながらアマゾンでポチりました。

2回通読しての感想ですが……やっぱよくわかんないっス。
「不謹慎」ってこういうことと違う気がするんだけどなあ。フキンシンちゃんはそういうテーマが好きなだけと違うの?

第7話がすごいですね。これはすごくびっくりした。
あと、いろんな小ネタの解説が最後にあるのも助かります。
コミpoというツールはどうなんでしょうねえ。まだまだ不完全っぽいけど、今後進化するのかなあ。

とりあえず、いろんなベタなネタがあって笑えました。

笹塚日記 【再読】

笹塚日記
笹塚日記
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目黒 考二
本の雑誌社
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■目黒考二
本書は、「本の雑誌」に1999年4月から2007年3月号まで連載された、「笹塚日記」の1999年4月号~2000年7月号までの掲載分を書籍化したものである。

わたしはこれを雑誌掲載時にリアルタイムで読み、書籍化(2000.7.25初版発行)されたときも読み、その後ぱらぱら再読などもしてきたが、ここ数日けっこう久しぶりに再読してやっぱり面白いなあと思った。さすがに10年以上前の話になってしまったので、古いなあ、というのもあるんだけど。

目黒さんは夜中から朝方にかけて読書をされることが多くて、それも1日に3冊とか普通に読んじゃう。書評家であり、お仕事なんだからというのもあるけれど、すごいと思う。速さもそうだけど、いっぺんに3冊も読むと1冊ずつへの感情の思い入れとかいろいろ気持ちの整理が追いつかないんじゃないかと思うんだけど、まあ、仕事だったらそんな悠長なこと言ってられないのかなー。でもやっぱり常人には無理なんじゃないかな。

まだワープロのほうが慣れていて、パソコンを買うけど「先生」にメールのやりかたからいろいろ教わっていたり、親指シフトのキーボードだったり。
「笹塚日記」は途中から自炊を始められて、ごはん日記の様相も呈していくのだが、この1冊に入っているぶんはまだそうなっておらず、店屋物を取ったり外食したり。

1週間分の荷物を持って出社し、会社の入っているビルの上の階で寝泊まりし、週末は競馬場に詰めていることが多く(これは仕事じゃなくて趣味)、いったいいつご自宅に戻るんだろうといつも読みながら思っていた。むかし、雑誌で読んでいるときに母にその話をしたら「家庭がうまく行ってないんじゃないの」と言っていたが、うーむ。まあ普通はそう解釈するよね。でも本の雑誌の読者は目黒さんの読書愛とか変人ぶりも知ってるからいちがいにそう言い切れないんじゃないかというのもあって、どうなんだろう。

目黒さんはとりあえず本を毎日わしわしと読まれているが、当時はまだ雑誌の発行人ではなかったかもしれないけど顧問だったので、そういう仕事もあって、本のタイトルがいっぱい出てくるが、感想とかはほとんど無い、でも面白い。
「あとがき」に「笹塚日記」のはじまりのきっかけとかが書いてあるけど、いやほんと、連載になって良かったよねと思う。わたしも連載されていたときは、雑誌を買って一番に読んでいたもん。

そういえば関西在住のわたしが東京に数日遊びに行ったことがあって、そのときにひとりで「本の雑誌社」をさがしたけど見つからなかったことがあったのだった。当時はまだグーグルマップとか無かったんであった。でも隣のファミマは知らずに寄っていたという…。

◇当時の日記(2006年5月)から。
この日の予定は未定だったのだが思いつきで目黒顧問の「笹塚日記」の記憶を頼りに「本の雑誌社ツアー」を決行する。クイーンズ伊勢丹(及び紀伊國屋書店の入ったスーパー)とささ家(閉まっていた)はすぐ発見したが肝心の聖地がわからず。かなりぐるぐる回ってついに諦めて帰ったのだが、奈良に帰ってからその付近で水分補給のため入ったコンビニのレシートの住所をふと見たら隣の番地だった。……ああっ、目黒さんがいつもスポーツ新聞買うファミマってあそこだったのか!orz。しばし愕然。
ぎゃー( ̄□ ̄;)!あの場でレシート見て住所確かめてたらよかったっ!でもそんな習慣ナイし!てゆーかもっと下調べしていくべきだったよな、あんな住宅街だとは思わなかったんだよー!!!!!
……ま、いいさ、だいたい町の雰囲気知れたから良しとしようよ(負け惜しみ)。
ちなみに今、「本の雑誌社」は神保町にある。

2014/01/12

本の花

本の花
本の花
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平松 洋子
本の雑誌社
売り上げランキング: 79,422

■平松洋子
本の雑誌社から平松さんの本が出た!なんだかミーハーに嬉しい。「おしまいに」によれば担当したのは宮里キャンドル潤さんらしい。「本の雑誌」がらみの初出は少しだけなんだけど。宮里さん、グッジョブ! 

本書はきちんとしたまっとうな書評集だけど、それでもなお本好きのエッセイとしても読めるのは文章にタマシイのこもった技がこめられているゆえ。導入から「そう展開するのか」とわくわくするような文章がたくさんあって、なんだかちょっと向田邦子のそれを読んでいる感じを思い出したりもした。
それにしても平松さん、本好きだなあ。趣味が良いなあ。料理関係もあるけど、それだけにとどまらない守備範囲の広さ。『野蛮な読書』よりもさらりとしたおしゃれな雰囲気の本が多かったような印象がある。
ほほう、そんな本が。面白そう。というのがけっこうあって、嬉しい。読んでいるとナニゲに「当時わたしは寺山修司さんと交流があり」とか書いてあって「なにっ!?どういう関係?もしやつきあってたの?」とイロメキたち、年齢差を確認してどうやらそれはないかなと思ったり(平松さん19歳、寺山氏40過ぎなので無いわけじゃないだろうけど)、平松さんと小川(洋子)さんが対談している情報が(対談記事は非常に残念なことに本書には収録されていない)あって、「おおそういえば同郷(岡山市と倉敷市)で年齢も近いよね確か(確認したら4つ違い)!」と興奮したり。
本書を読んで感じたことは、読書範囲もそうだけど、実際の人間関係のカオの広さというか人脈の深さというか。
ヒトに歴史ありって感じだなあ~カッコいい50代だなあとつくづく憧れます。颯爽としてるよね。平松さんの食器棚の写真は見たことがあるけれど、本棚も見てみたい。ザツゼンとしているのかしら、シャキーンと美しく著者別に揃っているのかしら。

目次から、書籍タイトルと著者名のみ転記しました。一文ごとのタイトルはここでは省略させていただきます。
それにしても、多い!
文書ファイルに書き写しながら、「誰だよこんな作業しようと決めたの(自分しかいない)」と3回くらいは思いました。そもそも最初に躊躇したんですけどね。でもこの作品のセレクト、並びの素晴らしいセンスの良さこそ、本書の魅力、平松さんの目利きの素晴らしさだと確信しているので。読んだことのあるもの、作家名だけ知っているものもあったけれど、まったく知らないものもたくさんあり、読書の海の広さにあらためて亡羊とするおもい。
(既読本だけ文字色を変えてみたけど少な!もっと読まなきゃっ。ちなみに書き写したおかげで、誤植を2つ見つけたょ。吉田さんの名前が目次では抜けてることと、「青鞜」の時代の』の位置が間違ってるんだょ!レア!←違)

章タイトルごとに。
食の本棚
『嘘つき卵』向田邦子*『ジュージュー』よしもとばなな*『開店休業』吉本隆明、ハルノ宵子*『愛の山田うどん「廻ってくれ、俺の頭上で!!」』北尾トロ、えのきどいちろう*『エキストラバージンの嘘と真実 スキャンダルにまみれたオリーブオイルの世界』トム・ミューラー*『やわらかなレタス』江國香織*『異国美味帖』塚本邦夫*『絶倫食』小泉武夫*『キムチの文化史 朝鮮半島のキムチ・日本のキムチ』佐々木道雄*『飼い喰い 三匹の豚とわたし』内澤旬子*『ステーキ! 世界一の牛肉を探す旅』マーク・シャツカー*『牛を屠る』佐川光晴*『食べることも愛することも、耕すことから始まる』クリスティン・キンボール*『聡明な女は料理がうまい』桐島洋子*『京都の中華』姜尚美*『この夢の出来ばえ 片岡義男写真集』片岡義男*『ちょっとそばでも 大衆そば・立ち食いそばの系譜』坂崎仁紀*『東京いつもの喫茶店 散歩の途中にホットケーキ』泉麻人*『作家のおやつ』コロナ・ブックス編集部編*『新版 娘につたえる私の味』辰巳浜子、辰巳芳子*『ナポリへの道』片岡義男*『石井好子のヨーロッパ家庭料理』石井好子*『喰いたい放題』色川武大*『食物漫遊記』種村季弘*『鱧の皮』上司小剣*『神楽坂 茶粥の記』矢田津世子*『湯葉 青磁砧』芝木好子*『台所のおと』幸田文*『春情蛸の足』田辺聖子*『飲食男女』久世光彦*『風の食いもの』池部良*『対談 美酒について』吉行淳之介、開高健*『天下一品』小島政二郎*『居酒屋百名山』太田和彦

物語の本棚
『暗い旅』倉橋由美子*『昨日のように遠い日 少女少年小説選』柴田元幸編*『いやいやえん』中川李枝子*『ひそやかな花園』角田光代*『パスタマシーンの幽霊』川上弘美*『噂の女』奥田英朗*『最終目的地』ピーター・キャメロン*『想像ラジオ』いとうせいこう*『さきちゃんたちの夜』よしもとばなな*『いつも彼らはどこかに』小川洋子*『最果てアーケード』小川洋子*『未見坂』堀江敏幸*『梨の花咲く町で』森内俊雄*『木挽町月光夜咄』吉田篤弘*『脊梁山脈』乙川優三郎*『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ*『祖母の手帳』ミレーナ・アグス*『陽子の一日』南木佳士*『雪と珊瑚と』梨木香歩*『ある日』いしいしんじ*『右の心臓』佐野洋子*『火山のふもとで』松家仁之*『初夏の色』橋本治*『岸辺の旅』湯本香樹実*『野を駆ける光』虫明亜呂無*『ノンちゃん雲に乗る』石井桃子*『西瓜糖の日々』リチャード・ブローティガン*『硝子戸の中』夏目漱石*『みちのくの人形たち』深沢七郎*『鎌鼬』細江英公*『内田百閒全集』内田百閒*『JAMJAM日記』殿山康司*『春泥 三の酉』久保田万太郎*『山家集』西行*『安閑園の食卓』辛永清

暮らしの本棚
『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』辛酸なめ子*『オレって老人?』南伸坊*『戸越銀座でつかまえて』星野博美*『自転車ぎこぎこ』伊藤礼*『スバらしきバス』平田俊子*『科学以前の心』中谷宇吉郎*『日本の空をみつめて 気象予報と人生』倉嶋厚*『釜ヶ崎語彙集1972-1973』寺島珠雄編著*『新宿、わたしの解放区』佐々木美智子、岩本茂之*『呑めば、都』マイク・モラスキー*『風来記 わが昭和史(1)青春の巻』保阪正康*『原由美子の仕事 1970→』原由美子*『相対性コム デ ギャルソン論 なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか』西谷真理子編*『建築とは何か 藤森照信の言葉』藤森照信*『金平糖の味』白洲正子*『森山大道、写真を語る』森山大道*『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京1新宿区』加藤嶺夫*『立ち上がるヒロシマ1952』岩波書店編集部編*『こども 牛腸茂雄写真』牛腸茂雄*『レトロスペクティブ』ロベール・ドアノー*『ピュリツァー賞受賞写真全記録』ハル・ビュエル*『国民のコトバ』高橋源一郎*『熟成する物語たち』鴻巣友季子*『日本語を使う日々』吉田戦車*『「おじさん」的思考』内田樹*『山下清の放浪地図 昭和の日本をぶらりぶらり』山下浩監修*『山下清作品集』山下浩監修*『治りませんように べてるの家のいま』斉藤道雄*『長い道』宮﨑かづゑ*『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』川内有緒*『はるまき日記 偏愛的育児エッセイ』瀧波ユカリ*『つげ義春の温泉』つげ義春*『土の話』小泉武夫・文 黒田征太郎・絵*『共に在りて』千葉望*『明治<美人>論 メディアは女性をどう変えたか』佐伯順子*『安井かずみがいた時代』島﨑今日子*『日本の美女』コロナ・ブックス編集部編*『ミシンと日本の近代』アンドルー・ゴードン*『『青鞜』の冒険女が集まって雑誌をつくるということ』森まゆみ*『民族衣装を着なかったアイヌ 北の女たちから伝えられたこと』瀧口夕美*『羆撃ち』久保俊治


その他、「買って、読んで」の章でもさらにたくさんの本が出てくるのですが、読書日記形式ですので書評というかんじとはちょっと違いますし、一冊に対するコメントも短いため、その書き写しは省略させていただきます。

書評以外の記事。
・酒飲みの秘かな愉しみ(鼎談)太田和彦、大竹聡、平松洋子
・夏の本(読書日記風):書き下ろし
・秋の本(同上):書き下ろし
・再読するということ(対談)鴻巣友季子、平松洋子:トークイベントより
・おしまいに
・初出一覧(「朝日新聞」「読売新聞」「波」「文學界」「東京人」「サンデー毎日」「本の雑誌」「北海道新聞」「新潮」「銀座百点」「山陽新聞」「文藝春秋」など。2009年~2013年頃)
初出の原稿に加筆したものを収録しています、との一文あり。

2014/01/09

問いのない答え

問いのない答え
問いのない答え
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長嶋 有
文藝春秋
売り上げランキング: 10,186

■長嶋有
表紙に人物の絵がたくさん描いてあったから、そういう小説なんだろうと構えてはいたけれど、実際読んでみるとそのとおり、たくさん人が出てくる話で、しかもその一人一人についての書き込みが異様なくらい薄いというか少ない、明らかにそういう意図をもって書かれた小説だった。
例えば最初のほうである女性が夫を略奪されて離婚に至ったと友人に打ち明けるシーンがあるので、ふつうの小説を読む感覚で、相手の女の名前などをいちおう記憶に置いて読み進むわけだが、この問題については最後まで読んだけれどもこれ以上の深入りはない。離婚した女性はそのあとも何度か顔を見せるけれども(という言い方が正しいのかどうかわからないが、様々な人物の様々なシーンがアトランダムに次々につながれていく「いま」「どこで」みんながそれぞれどうしているかをひろーく、俯瞰で、「神の視線で」見たような小説だから)、直接その件にはもう言及がないし、その夫や相手の女は出て来ない。出て来られても不愉快なだけなのでよかったけど、そうか、あれはもうあれで終わりだったのか、とちょっとびっくりした。

そういうふうに、ツイッターで同じ言葉遊びに参加している仲間たちのそれぞれの人生の一場面あるいは数シーンだけを、前後の説明や背景などは最小限にして書いてある、のだと思う。それぞれの主観の区切りが数行とかで、共通する生活用品や景色などからしりとりのように繋いであることもあり、ふつうに続けて読んで、前の文と次の文で主語が変わっているのでああこっちは別のひとに変わったのかと気付く。行開きなどはないので、最初は戸惑ったけれど、そのうち慣れた。ツイッターをやらないのでわからないけど、こういう感じがあるのかな?
でもたまにひとりの主観で長く書いてあり、数ページ同じ人の思考言動が続くとさすがに感情移入しやすく、この違いはなんだろうと考えたりした。

いちおう、章があるのだけど、章の区切りは改ページとかは無くて●という黒丸があるだけ。章タイトルは目次と、あとは本文には無くて脚注みたいな?ページの下の方に書いてあるだけ。●が章の区切りなのにそこに章タイトルは書かれていない。変わってるー。
光/帰る/マジカルサウンドシャワー/問いのない答え/フキンシンちゃん奮闘する!/Antediluvianisch(ノア洪水以前の)/ダイナモ/真円でないもの/点と点と点

誰が主人公でもない話。小説家のネムオというおじさんが出てきて、いつもどおり彼の話なのかと思ったらそうじゃなかった。
印象に残ったキャラクターは、サキさん、少佐、フキ子ちゃん、被災地のJK(女子高生という意味なんだって!なんじゃそりゃ)一二三ちゃん、植木職人じゃなくて庭師というのらしい女性クニコさんなど。
フキ子ちゃんというのは長嶋さんがマンガソフトで描いた『フキンシンちゃん』で、ネットで数話見たことがあるだけだったので、そのイメージとはちょっと違って(こんなにいろいろ考えてたのか!)、「CGみたいにかわいい」とか出てきて笑っちゃった。サキさんというのは新人作家で共感はしにくいキャラだったけど、たくさん長く出てきていろいろ考えていることも読めたので。ちょっと柴崎(友香)さんを連想しながら読んじゃった。だって長嶋さんとよく対談してるみたいだし。少佐はハンドルネームで、朴訥とした飾らない正直な人柄が良いなあと思った。もちろんシャア少佐からきているんだけどキャラは全然違う。植木職人の女の人はなんか、落ち着いた知性的で上品なひとでお知り合いになれたらいいなという感じ。素敵な女性でかっこいい。手に職があって毅然としているところ、背伸びしていない感じがいい。

帯に「なにをしていましたか? 先週の日曜日に、学生時代に、震災の日に――」とあったから、震災後のことを書いた話かとも思っていたのけど、むしろ秋葉原の無差別殺人事件のほうが多く出てきて意外。なんとタイトルもそこからなのだ。あの犯人は、問われてもいないのに「答え」だけを出したのだという解釈。うーん。
あらためてあの事件についてネットで検索していくつかのまとめサイトを見たんだけど、やっぱり異様に理解不可能で怖ろしい。この小説では他にもいろんな「忘れないようにしている」事件についての記述があり、つらいものばかりで、「ああああ」と思った。忘却は人間の最高の精神安定剤なんだぜ?

本作は、いままでの長嶋さんの作品の雰囲気とまたちょっと変わったなあという気がする。
たくさんのひとが出てくるけど群像劇、というのとは違う気がする、こんな小説いままでほかにあったのかなあ。新しい、小説だ。それぞれが少しずつしか書かれないけど、そのひととひとのネット上でのつながり、言葉と言葉が積み重なっていくこと、人間のつきあいってなんだろうなと思う。実際会うからこその絆みたいなのがあるような気もするが、会わないからこそ言えることとか、ネット上のつきあいならではの結びつきもきっとあるのだと思う。これはツイッターはしたことがないけど、むかし、ブログがまだ無くて、個人ホームページがもっと盛んだったころにそのBBSで交流していた実感から言える。いまはそれがもっとリアルタイムで濃厚なんだよね、たぶん。

この小説にはいろんなひとが出てくる。真面目なひとも、ちゃらんぽらんなひとも、好感をもつキャラもその逆も、だけど最後まで読むとなんだか、みんながしあわせであるといいな、というか、あったかい気持ちだ。
みんな生きてる。

装丁は野中深雪、装画はしりとりコ(ウラモトユウコ・鶴谷香央理・オカヤイヅミ)。こちらで表紙イラストの制作過程が見られるよ!

あと、長嶋さんの小説を読んでいるといつもオタクっぽい知識というか雑学というかサブカルのこととかがさりげにたくさん盛り込まれてて勉強になる(?)んだけど、今回面白いなと思ったのは円周率3.14で実際に図形を描くと真円ではなく57角形になって、でもそれは肉眼ではマルに見えて、ペンタコンタヘプタゴンという名前もあるというやつ。ペンタゴンという言葉のなかにいろいろはさまっている感じで、面白いなあ。

2014/01/06

クライム・マシン 【再読】

クライム・マシン (河出文庫)
ジャック・リッチー
河出書房新社
売り上げランキング: 187,093

■ジャック・リッチー 翻訳:好野理恵ほか
以前読んだのは2009年の10月だったらしいが、久しぶりに読んだらなんとなくは覚えてはいたが、オチや犯人やその他いろんなことの多くを忘れていたので、面白く読めた。1922年生まれのひとなんだよなあ、とあらためて驚く。おしゃれで、全然古くなくて、洗練されている。素敵。

14篇。ざっくり感想。

「クライム・マシン」★ これは巧いよなあ。鮮やか。
「ルーレット必勝法」 数学者が憎たらしく描写されているのが主人公よりに読ませるね。
「歳はいくつだ」☆ ある意味デスノの月君みたいだよね。
「日当22セント」 最後まで読んでなるほどというか、病気だなあというか。
「殺人哲学者」 同情の余地なし。
「旅は道づれ」 ああだから一石二鳥なのね、って、まーなんという。
「エミリーがいない」 定番だからね。
「切り裂きジャックの末裔」 どっちにしろ幸せにはなれないような。
「罪のない町」 志村、後ろ!という感じ。
「記憶テスト」 このタイトルは内容と合ってないような。
「記憶よ、さらば」 もうちょっと疑おうよ。
「こんな日もあるさ」 下手な鉄砲数打ちゃ…当たったじゃないかある意味。
「縛り首の木」★ これは怖いよなあ。星新一にもこういうのあった。
「デヴローの怪物」 なんかバスカヴィル家の犬連想した。

2014/01/05

ポースケ

ポースケ
ポースケ
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津村 記久子
中央公論新社
売り上げランキング: 47,204

■津村記久子
ポトスライムの舟』の続篇。
ポトスライムはナガセが主人公で、友人4人が出てきたが、ポースケはそのうちの一人ヨシカが主人公的位置にいる、連作短篇集。残りの3人も出てくる。
ポトスライムの時に「その描き方はどうか、不公平ではないか」と思っていたそよ乃の書き方が本書では公平になっていたので良かった。そよ乃だって苦労してるし、でもそれを乗り越えてたくましく元気に生きてるってことがわかって嬉しかった。
ごはんと喫茶をやっている奈良の商店街にあるという設定の「食事・喫茶ハタナカ」が舞台なので、「カフェ小説」としてもすんごく素敵で興味深い。お料理が庶民的かつ日常的で美味しそうで、これを読むと「ごはんを丁寧に作るって大事だなあ」としみじみ実感して、「ありふれてるけど、家のごはん」的なものをきちんと作ることにすごく意義がある気がして、台所に立つのが誇らしくなる。いいなあこれ。大好き。

登場人物がわりと多くて、主軸はハタナカに関わるひとたちで、あとそれぞれの話のときにそのひとの生活に関わるひとたちが出てくる仕組み。

★ハタナカに関わる主なキャラのメモ
・ヨシカ=畑中芳夏 34歳。〝食事・喫茶 ハタナカ"の店主。「ポースケ?」「ヨシカ」「ポースケ」の3篇の主役。
・とき子=十喜子 50代半ば。ハタナカの3時以降のパート。3人の子持ち。「亜矢子を助けたい」の主役。
・竹井佳枝 28歳。7時~14時のパート。「歩いて二分」の主役。
・梅本ゆきえ 30歳くらい? お客の一人。「コップと意思力」の主役。
・ナガセ=長瀬由紀子 34歳。ヨシカの友人。『ポトスライムの舟』の主人公。
・林冬美 37歳。お客の一人。ピアノ教室の先生。「我が家の危機管理」の主役。
・林匠 36歳。冬実先生の夫。著述業。
・又吉さん ナガセの会社の営業。中年のおじさん。
・りつ子=梶谷りつ子 34歳。ヨシカの友人。
・梶谷恵奈 小学5年生。りつ子の娘。「苺の逃避行」の主役。
・加藤のぞみ お客の一人。ウミウシの写真集を置いていったひと。社会人5年目。「ハンガリーの女王」の主役。
・そよ乃 34歳。ヨシカの友人。
その他、老婦人の小宮山さんなど。

★9篇をざっくり紹介
連作短編集と書いたけど、長篇の章に近いかなあ、短篇としても読めそうだけど。話によって長さも微妙に違う。長い話は47頁ある。20頁くらいのも30頁のもあり、最終話は8頁だけだ。本書はは書き下ろしとのこと、さもありなん。

「ポースケ?」
導入的な。ハタナカに集まる面々のさわり。ポースケとはなんとなく飼ってる鳥の名前と思っていたのだが、お祭りのことなんだそうだ。復活祭とかイースターと同じこと。
「ハンガリーの女王」
OLである加藤さんの話。職場の女性の先輩とか後輩の人間関係がストレスな感じなこととか、肌が弱いこととか。私生活まで先輩だからって口出しするなよって、わかるなあ~。
「苺の逃避行」
小学5年の恵奈ちゃんの話。こんな嫌な先生がいたら最悪だなあ。
「歩いて二分」
いろんなことを知っていて、語学も得意な竹井さんの話。パワハラで会社を辞めざるを得なくなって、鬱病とか睡眠相前進症候群とかになってしまっていて、電車にも乗れなくなって……というつらい状況。そよ乃さんがいい仕事したなあ!
「コップと意思力」
試験室で働いているゆきえさんの話。以前つきあっていたモラハラっぽい男からストーカーみたいなことをされている。このひとの思考回路は自分と全然違うなあとか思いながら読んだ。現実に怖い事件がしょっちゅう起こっているので、ゆきえさんのストーカーが我に返ってくれることを祈る。
「亜矢子を助けたい」
50代のお母さんが、就職活動で落ちまくって苦しんでいるわが娘のことを心配している。このひとの長男は結婚して東京におり、次男は仕事が続かず現在はプータロー状態。これまで読んだのだと「よくしゃべるおばちゃん」という感じだったのだがこの話を読むとすごく冷静でしかも優しい、賢いひとだなあと認識を改めた。人間、表面だけではわからんね。それにしても亜矢子はこの母親の得難さをわかっているのか。
「我が家の危機管理」
夫婦二人暮らしで、ピアノの先生をしている冬実先生の話。子どもがいなくて、欲しくてたまらないひとの話。そこまで思い詰めるひともいるのだとちょっと衝撃だった。無いなら無いで夫婦仲良く、という選択肢はないわけ? あと、詐欺にだまされやすいからって雑誌買うとかもよくわからなかった。冬美先生も匠さんも好きだけど、年の割にアンバランスだなあ。
「ヨシカ」
ヨシカの会社員時代の話、店をやると決めるまでの話。篠宮さん素敵だったのになあ。
「ポースケ」
みんなが集まってバザーみたいな、出し物会みたいなのをして、後で食事会(メニューは死刑囚の最後の晩餐!)をする話。竹井さんが前進していてすごく嬉しかった。

けっこうへヴィーなネタを扱っているので軽くは読めなくて、一篇一篇じっくり少しずつ休憩をはさみながら読んでいったのだけれども、どれもものすごく(笑うという意味じゃなく)面白くて、息を詰める感じで、丁寧に読ませてもらった。深刻なんだけど、みんな生活してる、生きてる感じがあって、ときどきはっとするような鋭い見解や考察なんかも見受けられて、こころに沁みた。津村さんの作品を読んでいて、なんかこのひとの書くキャラは独特の思考回路があるというか、わたしとは違うなと思うことがあるのだが、「わからんわ。共感できんわ」という作品もあれば「共感はしないけど、わかるように思う」という作品もあって、本書はかなりわかりやすかった気がする。

なお、本書には「あとがき」もあって、取材に行かれたカフェの実名が3つ上がっている。
イラストは100%ORANGE。装丁は名久井直子。

以下蛇足。めっちゃ細かいことやけど気になった点。
この話の舞台の店は奈良にあって、近鉄電車を登場人物たちは使うのだが、そのときに必ず「特急」に乗らはる。しかし奈良の人間からするとそれは「特急じゃなくて急行あるいは快速急行のことちゃうの」とひっかかってしまう。例えば奈良から生駒は快速急行で290円なんだけど、特急に乗ると特急料金500円も払わないといけなくて、合計790円もかかることになるのだ。本数も少ないし、停まる駅もかかる時間もほぼ一緒やし。伊勢とか名古屋行くなら特急乗る価値あるけどなあ。難波程度では快急乗るんちゃうの。と思ってしまうのである。津村さんはどういう意味で書かはったんやろうなあ。

2014/01/03

ジャージの二人 [映画]

ジャージの二人 [DVD]
ジャージの二人 [DVD]
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メディアファクトリー (2009-03-06)
売り上げランキング: 16,137

■出演: 堺雅人, 鮎川誠
監督: 中村義洋
原作:長嶋有

ようやく観ました。
感想は、映像作品のことはよくわかりませんが、こころなしか、小説よりも主人公と奥さんのぐだぐだをクローズアップしてある気がしました。かなり原作に忠実に作ってあるとは思いますが。

カマドウマ仕込んでありますねー。
あと、父親役のひとの台詞が聞き取りにくかったような。特に寝てるときとか。ボリューム上げたんですけど。
堺さんはさすがに声が通りますね。

原作のときも主人公をなんだかなと思ってたけど映像で観たらものすごくヘタレでダメなへなちょこ野郎だなあとしみじみ思った。中の人が堺さんなのに! 演技力、なんだろうと思うけど、役者さんというのはすごくて、本当にこういうひとみたいに映像を観ているあいだは思ってしまう。

花ちゃんが予想以上に可愛かった。仕草とか、笑顔とか、めっちゃらぶりー。
遠山さんは活字で読むのとちょっとイメージ違ったかな。

ほのぼの系なんですけど、でもいろいろ地雷があるような気もします。
結論としては、「わたしはこの話の設定とかスジが好きなんじゃなくて、文章とか雰囲気が好きなんだよなあ」という再確認をした感じでした。長嶋有の文章大好き。

特典映像のメイキングを観ていたら車酔いみたいになりました。しんどくなって舞台挨拶まで観られませんでした。また気力があるときに。

ジャック・リッチーのあの手この手

ジャック・リッチーのあの手この手 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ジャック・リッチー
早川書房
売り上げランキング: 42,349

■ジャック・リッチー 編・訳:小鷹信光
大晦日からお正月にかけて読んだ今年の読み初めはこれ。師走に買って寝かせてあった。
ハヤカワポケミスで明ける年とはなかなか乙なものである。「すべて初訳/日本オリジナル短篇集」と帯にあるように、本書収録の23篇はすべて本邦初お目見えなのだ。前口上でこれを確認して「おおそれは嬉しい」と購入した。
収録作品改題によれば「本書に収録することになった未訳短篇の原文の半分以上」は、ジャック・リッチーの次男とメールのやりとりをする中で、PDFで送ってもらったものだというから凄い。
翻訳は、松下祥子さん8篇、高橋知子さん8篇、編者の小鷹さんが残り7篇を訳し、全篇を通して翻訳監修をするというかたちをとったそう。

収録作品タイトルとネタバレしないように気を付けて自分用メモ。
まっさらで読みたいという方はとばしてください。

「儲けは山分け」・・・原題は"BODY CHECK"。ここでのBODYは死体のこと。
「寝た子を起こすな」・・・ふつうのミステリだとここから始まっていくんだけどね。
「ABC連続殺人事件」・・・クリスティーの名作を踏まえた作品。パロディとして面白い。
「もう一つのメッセージ」・・・ふつうのミステリだと(以下同文)。
「学問の道」・・・これは良かった。ほのぼのサスペンスと思ったらもうひとひねり。こういう気の抜け方がイイね。
「マッコイ一等兵の南北戦争」・・・南北戦争についてのこだわりが、そういうもんなのかなあと。
「リヒテンシュタインの盗塁王」・・・この状況で一塁に投げるとか、無いわー。
「下ですか?」・・・えええええ、そういうふうに持っていくとは。
「隠しカメラは知っていた」・・・してやったり!小気味良いね!
「味を隠せ」・・・あはははは。ブラックだね。定番を踏まえて。
「ジェミニ74号でのチェス・ゲーム」・・・チェスがわかるともっと面白いのかな。
「金の卵」・・・これも定番を逆手に取ったおもしろさ。
「子供のお手柄」・・・そら知らんわ。
「ビッグ・トニーの三人娘」・・・まさかのジャンル違い。
「ポンコツから愛をこめて」・・・これも出会い?
「殺人境界線」・・・んなあほな。
「最初の客」・・・これ、最近乙一でまったく同じオチを読んだなあ。
「仇討ち」・・・ああそういう話か。
「保安官が歩いた日」・・・これもミステリの定番を(ry
「猿男」・・・島には行けるの?
「三つ目の願いごと」・・・このジャンルは星新一に名作がいくつもあるからなあ。
「フレディー」・・・でも「負け」な気がするんだよね。
「ダヴェンポート」・・・怖いよう。

2014/01/02

いつもお越しいただき

ありがとうございます

本年が みなさまにとって

より良き年になりますように

翌の読書手帖



サーカスのしろいうま (おひさまのほん)
石津 ちひろ
小学館
売り上げランキング: 950,511