2014/12/31

半七捕物帳 60~61 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
60 青山の仇討 ★★
敵討ちの現場にたまたま遭遇した一家が犯罪に巻き込まれて……。
後味の良くない話だったなあ。
女の子たちは助けてあげればよかったのになんでああいう展開書いちゃうんだろうなあとちょっと立腹。

61 吉良の脇指 ★★
吉良上野介の脇差をめぐる因果?主人と妾をその脇差で殺したうえ、主家を脅した男をめぐる事件。お家お取りつぶしをこういうふうに悪用する人間がいたんだなあ(呆)。
物語の冒頭、年末の煤払いやそのご祝儀で蕎麦を食べるシーンがあり、読んでて「おお、タイムリー」と思った。大晦日の年越し蕎麦とは違うんだけどね。ちょっと引用しておきたい。

 大掃除などの無い時代であるから、歳の暮れの煤掃きは何処でも思い思いであったが、半七老人は極月十三日と決めていると云った。
「わたくしなぞは昔者ですから、新暦になっても煤掃きは十三日、それが江戸以来の習わしでしてね」
「江戸時代の煤掃きは十三日と決まっていたんですか」
「まあ、そうでしたね。たまには例外もありましたが、大抵の家では十三日に煤掃きをする事になっていました。それと云うのが、江戸城の煤掃きは十二月十三日、それに習って江戸の者は其の日に煤掃きをする。したがって、十二日、十三日には、煤掃き用の笹竹を売りに来る。赤穂義士の芝居や講談でおなじみの大高源吾の笹売りが即ちそれです。そのほかに荒神さまの絵馬を売りに来ました。それは台所の煤を払って、旧い絵馬を新らしい絵馬にかえるのです。笹売りと絵馬売り、どっちも節季らしい気分を誘い出すものでしたが、明治以来すっかり絶えてしまいました。どうも文明開化にはかないませんよ。

2014/12/28

スコーレ№4

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社
売り上げランキング: 193,118
■宮下奈都
これは紙の本(文庫)で読んだ。というか、kindleが届く前に買っていて、いままで寝かしてあったのを今日読んだ。
そもそも単行本が出た2007年に北上(次郎)さんが誉めていたのはずっと覚えていて、でも知らない作家さんだしタイトルが意味わからないし、となんとなく躊躇していた。2014年9月に『本屋さんのアンソロジー』で初めてこのかたの作品を読んで、「スコーレ№4のひとだ、そうかこういう空気を書くひとだったのか、これは是非読まねば」と思った。

意味が分からないと思っていた「スコーレ№4」というタイトルの意味は結局本文を読んでもどこにも説明は無くて、解説(北上次郎だった!まあ当然か)冒頭に至って初めてそのことに触れられているが、これも著者の言葉ではないので確定、では無い。
「スコーレ」はギリシャ語でスクールの語源となった言葉なんだそうで、そしてこの本を開けば目次には№1から4までが章の様に書かれている。

№1で主人公(麻子)は13歳だ。家のこと、家族のこと、何よりいちばん近い妹の七葉のことが描かれる。
読みはじめるやいなや小説にはふたつ種類あるんだったと思い出すことが時々あるんだけれど、これもそういう文章だった。
「ストーリー」に重点が置かれていてそこに力点を置いて読む小説と、その言葉のつらなりの美しさそのものに深い味わいを覚えることが出来る文章そのものが味わい深い小説だ。

この話は麻子が中学から高校、大学生活を経て社会人になり数年を経るまでを描いてあり、一種の「成長小説」だと思う。特に中学時代と、社会人になりたての頃にウエイトを置かれているかな。高校、大学時代はあっさりしすぎというかあっというまに通り過ぎていった感じだ。
最初の章で麻子がどういう性格で、なにをどういうふうに考えているか、家の商売や祖母の大きな影響、語られない祖父の時代のこと、美しい妹との濃密な関係と複雑な心境などがすごく丁寧にゆっくりゆっくり語られて息苦しいくらいだったから、十代の後半から就職までがほぼそれ一色といっていいくらいに、重要事項として書かれたのが従兄との初恋の話で、脳内が恋愛でいっぱいだったということだろうけど、それにしてもあまりにも「受験」とか「友情」とかが無く、しかも中学時代あれほど重きを置かれていた妹や祖母の問題もほとんど触れられなくなったことにちょっと戸惑いを感じた。

そして№3で麻子は就職して社会人になっている。
就職活動についてはほとんど書かれていない。超氷河期だったらこの苦労だけでひとつの長篇になるネタだけど、まあこのひとは優秀だったようでわりとあっさりと希望の会社に就職したようだ。そしてそこで配属された場所でしばし苦労する……けど、持ち前の能力で鮮やかに切り抜けていく。
これは№1を中心に積み上げてきていた彼女の地道な努力と持って生まれたセンスの良さがとてもうまい具合に効いていて、説得力があるのだ。

で、№4での出会い、飛躍。

正直№3まではわりとじわじわとした地味な努力とか内面描写とかそういう世界だったのが、№4でかなりいきなり垢抜ける。ある人物と出会い、ある出来事がきっかけで恋に落ちるわけなんだがその出来事というのがちょっとまあ普通は無い、というくらいにドラマチックでロマンチックでびっくりしてしまった。いきなりどーしたこの小説、なんかのオチがあるのではと疑ってしまったくらいだ。でもそれが「素」なのだった。まあ、いままで地道に築き上げてきた下地があるからここでぱあっとこれくらいのデカい花火打ち上げても全体のバランスとしてはギリギリセーフ、だと思うけどねえ、フィクションだしねえ、夢は大事だよね、華やかさだってあって良いよね、お話だもん。と内心言い訳(誰に?)しながら読んだ。とっても素敵な展開なので、「そりゃ惚れるわ」と思うし、面白く読んだんだけど、それは小説だからで、現実的かと問われたら「ごく普通のひとと思っていた隣人がいきなり映画のスクリーンで主役になって現れた」みたいな気もしたのは確かだ。良いんだけどね、面白かったけどね。

でもいきなり仕事の出張先(しかも海外)でそれまで付き合ってるわけでも告白があったわけでもなんにもない、ただの同僚からいきなり部屋に誘われたらそれはどうなんだろう……それこそ七葉のような華やかな女の子にとっては珍しくもない日常茶飯事かもしれないけど主人公は麻子なんだけどなあ。そして麻子は天然だからその意味に気付かず忙しいのを理由に断るんだけど……その後日の展開とか、№3までの雰囲気からいきなり箍が緩んでいるというか展開が早くなった気がして、恋愛色がばばばばーっと盛り上がってドラマチックになって、そりゃドキドキしたし面白かったけど、びっくりしたのだった。妹たちの会話で「吊り橋効果」が出てきたのは作者の自虐かと思ったくらいだ。あはは。

この話で主人公が、母親が独身時代は輝いていたけれど結婚・出産のために家庭に入ったことを知らされ否定的にとらえ、それをベースに自身の結婚観を持つシーンがある。かつてわたしもそういう考え方を長く持っていたので共感し、でも同時に実はそうでもないことをいまは知っているので、そうでもないんだけどな、そう単純に決めつけられるものでもないんだけどな、と思いつつ読んでいた。だから、最後のほうで主人公が同じようにそのことに気付く描写が出てきて「そうだよなあ、気付けるような相手を見つけられて良かったなあ」と頷き、ほっとした。

今回は初読みで、読んでいくときはこれがどういうテーマの小説かわからなかったので、妹の七葉のことがずっと絡んで来たり、家の問題が大きくなっていくのかと想像していた。もっと云えば、七葉とあまりにも近すぎ、それがだんだんずれて行ったりすることで問題が起き、重い苦しい展開になるのではないかと恐れながら読んでいた。だからそうじゃないとわかって、ちょっと拍子抜けでないこともない。近いうちに落ち着いて再読し直したい、ゆっくり文章を味わい直したいという感じだ。何気ない風景描写とか、骨董(古道具)屋である家の様子とか、川と町の景色とかがとてもきれいな小説でもあったから。あとそれに、靴のこともね!靴を買いに行きたくなる話でもあるよね、それもちょっと贅沢な良い靴を…。

半七捕物帳 58~59 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
58と59は同じ犯人が絡んでいた。58で犯行に関わっているであろうことはみんなわかっていたんだけど巧く逃げられたのと、証拠が直接は無いことと、その罪だけではそもそも大したものじゃなかったから見逃されたんだね。もともと札付きの悪だったんだけど。で、それが59でやらかすという…。しかも殺人、3人とそれにもうひとつ、ネタバレになるから書けないけど生き物の命すんごく嫌なやり方で奪ってるんだよね。58で捕まえとくべきだったよなあと、架空のお話に対して一瞬考えちゃった。でも現実、そういうことってあるんだろうなあ、いっぱい。

58 菊人形の昔
菊人形は直接関係ないというか。要するに、人がたくさん集まる催しで起こる事件。この時代だから異人さんが絡んでいて、異人さんが絡むとオオゴトになる。後味の悪い話。

59 蟹のお角
58で出てきた異人さんやなんやかやが絡む話。この話の犬の書かれ方が……西洋や、現代みたいに犬って愛されてなかったのかなあ日本では。最後のところで「この以上のことはお角もあらわに申し立てません。役人たちも深く立ち入って詮議をしませんでした。吾八も薄々はその秘密を知っていたらしいのですが、これも知らないと云って押し通してしまいました。わたくしにもお話は出来ません。」と書いてあって、明らかに何かあるらしいのだが、それが何かわからないのが気になる。わかるひとには読んでいれば察せること、ってことなんだろうけど。うーん。こういうのは解説が欲しくなっちゃうなあ。
この話もある程度話したところで「調子に乗っておしゃべりをしていると、あんまり長くなりますから、もうここらで打ち留めにしましょう」と半七が半七老人に戻るんだけど(つまり江戸時代を「いま」として書かれる方式から明治の語りに戻るんだけど)、つまり事件をリアルタイムに追っていく話からいきなり「で、結局犯人はどうなった」という結論に飛ぶわけで、小説の書き手としては随分乱暴というか手抜きというか、そういうふうにちょっと感じないでもない。まあ、ダラダラ冗長になるよりいいんだろうけどね。毎回ちょっとだけ、釈然としない気持ちになる。

この2つはなんかあんまり好きじゃなかったので★無し。

2014/12/23

クリスマス・プディングの冒険 【再々読】

クリスマス・プディングの冒険 (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 1,074
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:橋本福夫・他
というわけでこちらも読むことに。前回読んだのは調べたら2005年1月1日だった。まあ、元日に読んだのね。日記には「アニメの1シーンだけ通りがかりにみて気になったので本棚から引っぱりだした。」と書いてあるんだけど、アニメってなんだろう……。土曜日だったみたいだけど。
短篇集

表題作「クリスマス・プディングの冒険」 翻訳:橋本福夫
まさにザ・英国の古き良きクリスマスの描写がてんこもりで満足。
ミステリーとしては小粒かなあ。
最初っから「この家」の指定がある理由がイマイチ飲み込めないんだけど……そこまで突き止めてあるならなんで自分らでどうにか出来んのかとか…あ、それが問題を大きくしたくない云々ってやつ?でもポアロさんが行ってる時点で犯人側にはバレバレだしねえ。
よくわかんないっす。
でもお話としてはクリスマスっぽくて、ほんわかしてて、良い。
クリスマス・プディングとプラム・プディングはおんなじ物のことなんだね(この話の中だけの話なのかなあ)。
実はこれの作り方を先月あたり検索してたんだけど(1ヶ月寝かせるものだというからクリスマスにベストに持ってくるには11月下旬に作らなくてはならないから)「マズイ」っていう意見が少なからずあって、材料とか見てると本格的に作るにはそこらのスーパーでは売ってなさそうなものもあって、その結果がマズイのは嫌だなあととりあえず見送った。でもこの話でポアロさんが美味しくいただいているので、美味しいのは美味しいのかな?それかイギリス人の口には合うけど…ってやつなのかな?

他の短篇はまだ読んでいないので読み終え次第書き込みを追記予定です。読み終えたので追記です。

まず本書には最初に「はじめに」というのがあって、クリスティのコメントがある。子ども時代のクリスマスの思い出などを絡めて書いてあり、とても楽し気な一文。

スペイン櫃の秘密 翻訳:福島正実
ミス・レモンが登場する。英国ドラマ版「ポワロの事件簿」ではミス・レモンはわりとレギュラー出演しているイメージだけど原作だとそんなに出てこない。ポアロさんは彼女の想像力のなさを嘆いているけど(ヘイスティングスが飛躍しすぎっていう見方もあるよね)。
クレイトン夫人みたいなひとって苦手だなあ、と読みながら思った。そしてこの犯人気持ち悪い思考するなあ。

負け犬 翻訳:小笠原豊樹
数年前にこういう言葉が日本でも流行したなあ。この話の「負け犬」はそういう意味じゃないけど。
誰が聞いても犯人はこのひとでしょう、という不利な条件を持った人物が逮捕されたんだけど、被害者の妻が真犯人は別の人間だと「直感によって」主張しているのでポアロのところへ依頼が来る。
催眠術がほんとうに出てきたのにはびっくりした!

二十四羽の黒つぐみ 翻訳:小尾芙佐
このお話は子ども時代に子ども用にまとめられた短篇集で読んだことがあって、そのときから非常に印象に残っていて、好きな話なのだった。何故かを考えるに、たぶん、日本とは違うレストランのメニューの言葉の響きに魅了され、わくわくしたからだと思う。また、「女性は違う物を食べるけれども、男性は同じものを食べる」という考え方を示されて「へえーそういうものなのかな?男と女で違うものなのかな?」と面白く感じたものだ。
調べてみたらこの本だった↓

アガサ=クリスティ 推理・探偵小説集〈1〉 (偕成社文庫)
アガサ クリスティ
偕成社
売り上げランキング: 846,261

 翻訳:小倉多加志
毎日ピストル自殺する夢を見ておかしくなりそうだという相談を富豪から受けて1週間後、実際にその人物が夢の通りの状況でピストル自殺した…。まあこれは、ポアロさんを巻き込んだ時点で負け確定だよね。

グリーンショウ氏の阿房宮 翻訳:宇野利泰
この話だけジェーン・マープルもの。
ストーリーやミステリがどうこうよりも家とか庭とか室内とかの全体的な描写が面白い。
ところでこの話の原題は"Greenshaw's Folly"なんだけど、Follyには「愚か」って意味だけじゃなく「金ばかりかかるばかげた事業[企て、建造物]」っていう意味もあるんだね。「阿房宮」というのは検索すると「秦の始皇帝が建てた大宮殿」と出てくる。これも同じ意味なのかなあ。

ポアロのクリスマス 【再読】

ポアロのクリスマス (クリスティー文庫)
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 1,156
kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:村上啓夫
これも再読なのに覚えていなかった。
それどころか、昔デヴィッド・スーシェが演じていたイギリスのLWTのテレビシリーズ「名探偵ポワロ」をNHKで何話か観てたんだけど、その中にこの話もあって、あるシーンがすんごく印象だったのでそこだけは明確に覚えていて、それがトリックの解明するシーンだというのもわかっているんだけど、でも犯人とか細かい話の流れとかはすぱーんと覚えていなかった。
…わたしのノウミソ、大丈夫なのかな?

まあそれはさておき。
今回再読するにあたって、クリスマス時期に読もうとちょっと置いてあった。
でも実際読んでみたらあんまりクリスマスっぽくなかったというかそういう描写はほぼ無かった。まあ、離散していた家族がクリスマスだからというんで生まれた家に戻ってくるというのはクリスマスならではなんだろうけど(日本のお正月みたいだなあと思う)、ツリーも飾りもパーティも無かった。英国の伝統クリスマス・プディングも出てこなかった。ちょっとがっかり。

最初のほうはそれぞれの家族の描写でちょっと鬱陶しい感じなんだけど、物語がはじまっていくとどんどん面白くなっていく。何よりミステリーとして素晴らしい。ぜんぜん犯人わからなかったーーー! クリスティに見事に騙されたーーー! やっぱりクリスティは凄いね、巧いね。

犯人がわかってから犯人の名前を範囲指定して本文中登場シーンを検索かけてたどってみたけど、「わかってて読む」から「ああそうか、このシーンは裏の意味があったんだな」って納得出来るけど知らずに読んだら別に違和感ないんだもんなあ。

ちょっと翻訳が古いかなーとは思った。若い男女がじゃれているシーンで男が女に「赤ちゃん!」って云うんだけどこれって「baby!」でしょ、原語はたぶん。そりゃーbabyは赤ちゃんだけどここは意訳するもんなんじゃないのかなーみたいなね。途中から話が面白くなったので気にならなくなったけど、最初の方は日本語がどうも読みにくくて少し時間がかかってしまった。
調べてみたらこの翻訳者は明治32年生まれだからまあこんなもんなのかなあ。
それに、そもそもクリスティの話っていうのは昔に書かれたものなんだから(原題:Hercule Poirot's Christmas{アメリカ:Murder for christmas}は、1939年に発表された)、あまり現代ふうの翻訳にしないほうがイイのかもしれない。でもなんか「ここって誤訳?」って思っちゃうような意味がわかりにくい箇所があったんで、どうなのかなあ…。

最後、犯人がわかってからの大団円のくだりがあまりにもみんな良いひとになっていて、ちょっと違和感があったけど、もともと何もなければ彼ら彼女らはそういう常識のある人々だったんだろう、でもこの集まりに対して最初っから神経質になっていて、そこに殺人事件があって疑心暗鬼になっていたんだろう、それにお金も絡んだし。そもそも父親のお金にたかって生きてるみたいなのはどうなんだろうとは思ったけど。ジョージとマグダリーンは特に好かんなあ。被害者のじーさんも好きになれなかった。
なんかもっと、クリスマスっぽい平和なイメージの話が読みたかったなあ…(殺人事件を選んでる時点でわたしが間違っているんだけど)。

2014/12/20

2014年に読んだ本ベストテン 発表

妖怪ウォッチ 05 コマさん

例年より少し早いですが、
2014年に読んだ本ベストテンの記事を公開いたしました。

このページの上のところにある「年間ベストテン」から該当ページでご覧下さいm(_ _)m

コマさんがあまりにも可愛いので関係ないけど貼らせていただきました。

2014/12/19

半七捕物帳 51~57 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
51 大森の鶏 ★★★
新春早々の雪の参詣帰り、半七親分と子分は茶屋で鶏に襲い掛かられる婀娜っぽい女に遭遇する。そこから何か因縁があるのではと調べが始まり…。よくここから事件に結びついたなあ。

52 妖狐伝 ★★★
狐のいたずら?いやそんなわけは無いというわけで調査開始。黒船なども絡み、なかなか面白かった。

53 新カチカチ山 ★★★
昔話のタイトルがついているが内容は読めば読むほど犯人の身勝手さに腹がたつ話。被害者が気の毒すぎる。 

54 唐人飴 ★★★
唐人飴売りの風変わりな様子、羅生門に切られた腕が落ちているという事件、なかなか面白かった。半七親分は芝居好きだけど、昔の人はそういうひとが多かったのかな、テレビもラジオも無い時代だしね。しかし「男女」とは…。

55 かむろ蛇 ★★
この犯人も身勝手で(まあたいていの犯罪者はそうだけど)腹立つなあ。かむろ蛇の祟りにまつわる話。迷信も信じすぎると身を滅ぼすね。お嬢さん頑張れ!

56 河豚太鼓 ★★★
人込みで行方不明になった少年。迷子か、神隠しか、誘拐か? 床下のみかんを遠くから見かけてその字に気が付くとか半七親分はすごいなあ、猫の声で天井見るとかはむしろ普通というかそれまで全然地の文にも書いてないんだもんなあ。この話は昔は種痘に「牛になる」という迷信があったという世間話から入っていくのだが、中断して読んだのでそのことを忘れていた。

57 幽霊の観世物 ★★★
蛇女とかろくろ首とかそういう香具師の見せ物かと思ったら幽霊のそれっていまの遊園地にあるお化け屋敷そのもので、おおっと感動。江戸時代からあったんだねえ。でもこの時代のは人間がお化けになってるのは駄目だったんだ。知られると商売に差し支えるんだと。へえ~。でも文章で読んでるだけでもこのお化け屋敷結構怖そう!しかも一人で行くとかわたしは無理だなあ。お化け屋敷だけでも怖いのに、その中で殺人とかめっちゃ怖すぎる!

この7篇は600を超えるものは無かったので、49,50話がたまたま?長かっただけのようだ。でも500前後だったので最初の頃に比べるとやや長めにはなってきている傾向があるのは確か。なかなかハイレベルだったなあ。
男女のもつれ、事件が起こったらまず身内調べとその関係者を調べる、というのが王道のようだ。で、「たまたま」事件のカギにぶつかるということが最近ちょっと減ってきたけど。
このシリーズに言えることとして「読者への挑戦状」的な意識があんまりないというか、「読者にも推理できるように公平にヒントを書く」という意識はあんまり無さそう。話が盛り上がってきたところで「長くなるからこのへんでまとめましょうね」的な展開もちょこちょこある。種明かしの段階で初めて明かされる事実がわりと珍しくないので、そういうもんだと思って読んでいる。にしても、よくいろんな話を考え付くなあ。レベル全体的に高いし。半七親分のキャラが何より、読んでいけばいくほど素晴らしいだよねー。

2014/12/16

半七捕物帳 49~50 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
49 大阪屋花鳥 ★★★
最初に花鳥というトンデモない悪いのがいた、というところからはじまるからその後の話で結局はそれがどこかで絡んでくるんだろうなと考えつつ読んだけど騙されたほうはまさかと思うよねそりゃあねえ。
いやあえげつない女がいたもんだー。そしてまた男女のもつれかよーすごいバリエーションだなー。お金も絡んでるけどさー。
牢名主という制度はなんで禁止にならなかったんだろう。犯罪の親玉が牢屋で権力持つとか良いワケないのに。案の定、若い軽微な犯罪者が泣きを見ている。おかしいだろう!
『はいからさんが通る』に出てきた牢名主さんは可愛げがあったなあ…。

はいからさんが通る(1) (講談社漫画文庫)
大和 和紀
講談社
売り上げランキング: 83,169

50 正雪の絵馬 ★★★
正雪というのは由井正雪のことで、冒頭、半七老人が歴史小説の愛読者であることが判明する。そこから江戸時代の思い出話になっていく。
この小説で「マニア」なんて言葉に遭遇するとは予想していなかったなあ。江戸時代からマニア、蒐集狂はいたのだ。でも盗んだりするのはいくらなんでもイカンと思うしそういうのを自慢気に見せびらかすとか本人の倫理観ぶっ壊れてるのもあれだけど、見せられたほうも通報とかしないもんなのかねえ。
これにももちろん男女のもつれが絡んでくる。これは事実がそういうもん、ってことなの……かなあ。

なんかこの2つの話はちょっと他のより話の展開が複雑で長い気がするけど気のせいかと思って読後kindleの総ページ数を他と比べてみたら実際に長いのだった。
49話は(kindleの活字の大きさ・行間によって変わるであろう総ページ数は)627。
比較として、01話「お文の魂」が404。10話が434。20話は295(短っ)。30話は407。40話は380。
50話は608とこれも長め。一つ前の48話は408だ。
これ以降は長い話が続くのかなあ?
やはり長いだけ設定とか詳しくなるし、事件の展開もいきなり明治に飛んで解決篇とかならなくて最後までほぼ江戸のやりとりで解決するし、小説に奥行きが出るというか落ち着きがあるという印象。

2014/12/14

旅はときどき奇妙な匂いがする: アジア沈殿旅日記

旅はときどき奇妙な匂いがする: アジア沈殿旅日記 (単行本)
宮田 珠己
筑摩書房
売り上げランキング: 2,900
■宮田珠己
宮田大兄の新刊である。
手軽な近場の書店には無かったので大きい書店に行って買いもとめた。
アマゾンの商品紹介には
サラリーマン人生を棒に振って旅を選んだ男が再びアジアを放浪する。それでも私は旅をしたい。チカラ入りまくりの脱力系旅エッセイ。
と書いてあって、本の帯には「『旅の理不尽』以後、ふたたびアジアへ!」と書いてあって、おおいに期待をたかぶらせられたのだが、結論から云うと、これらの文言から想定したものと実際に読んでの印象はかなり、大きく違うものであった。

というか、いま引用して思ったけど【サラリーマン人生を棒に振って】ってなんなんだよなあ(怒)。【人生を棒に振る】ってどういう意味か知ってんのか。【サラリーマン人生を棒に振る】って【サラリーマン人生】ってそんな後生大事に抱えるようなものか、っていうか少なくとも宮田珠己と云うひとに限って【サラリーマン人生を棒に振る】って表現はすんごい違和感があるよなあ~。宮田大兄はサラリーマン人生もきちんと糧にして、そのうえで「いま」があるんだって愛読者としては感じているぞ!

そんでもって、本書を読み進めば一目瞭然なことに、これは断じて「脱力系旅エッセイ」では無いし、『旅の理不尽』とは最初のスタンスからして全然別物なのであった。

最初の章「Ⅰ 台湾」を読んでいるときにあまりにも宮田大兄のテンションが低く、暗いので心配になったくらいだ。鬱、ってよく知らないけど鬱々とした文章である。
「はじめに」で足が原因不明の痛みに襲われそれが慢性的に継続している、そこから脱却するために「仕事」ではなく「休暇旅行」に行かんとする、という意志が表明されているんだけど、んーでも結局その旅について書いてあるのがこの本なわけで、ってことは結果的に仕事になってるわけで、そのへんはどうなんだろう?とも思ったんだけど。
なんか、旅行の本なのに、旅先の描写とかが少なくて、自分の内面にどんどん入り込んでいってるというか、思考描写にガンジガラメになってる感じで、全然リラックスできていない感じだし、大丈夫なんだろうか。
よくわからないので、「Ⅰ」を読み終わったくらいで「おわりに」を先に読んでみた。すると、こう書いてあった。

旅についての本を書いてみたいと、前々から考えていた。旅の本はいくらもあるけれど、旅についての本、つまり、旅先ではなく、旅そのものについて書かれた本…(中略)。 
の中にいるときの日常とは異なる感覚、興奮と不安とときに倦怠が同居し、意識がいつもと違う位相で覚醒しているような旅の時間。私はどうもあの非日常感に惹かれて旅を続けているように思うのだ。だから、それをそのまま描写してみたかった。

……成程。
 つまり「目的通り」なわけね、この書き方で。
納得できたので、Ⅱ以降もそのつもりで読むことができた。
つまり本書は紀行文ではなくて、旅に行って書いてある本だけれども、そのときの見聞録じゃなくて、思考過程録というか、そういう本なのだ。「Ⅰ」はなんだか暗い感じがするんだけど「Ⅱ」以降はましになっていく感じなので、安心した。

宮田大兄の「原風景」について書かれていたり、とにかく「考えたこと」が書かれているので、ファンにはなかなか興味深い作品であると思う。
ただ、ちょっと思ったのが、本書で初めて宮田珠己という作家に触れた読者はどうかなあ――ということで、もしそういう方がいたら「ぜひ他の作品も読んでみてね♪」と明るくサワヤカに薦めておきたい。

Ⅰが台湾でⅡはマレーシア、Ⅲはラダック(インド)と海外なのだけど、Ⅳは熊本で、日本だ。なんか日本が来てちょっと気易い感じだ。そして熊本の阿蘇の話から、夏目漱石『草枕』のモデルとなった地に行った話になって、読みながら「おおおおお」と少し興奮した。『草枕』の愛読者なもんで、宮田大兄も漱石の中ではこれが一番好きとか書かれていて嬉しい。
まあでもそもそも「『草枕』のモデルの場所に行ってみたい」と望んだことはわたしはいままでなかったわけで、それは何故かと云うに、あの世界はあの小説の中にしか有り得ない、「非人情」のフィルターを通して書かれた架空の世界だからである。
今回の宮田大兄の文章を読んでいろいろ興味深くはあったが、やはり、その予測を裏付けられた感が強いというか、このひとはやっぱり男性だから那美さんの美女ぶりが気になるんだなとか、そういう感じだった。

本書は「webちくま」に「アジア沈殿旅行記」として2013年4月から2014年3月まで連載されたものに加筆修正したものだそうだ。
謎の足のピリピリした痛みはいまも原因不明のまま続いているということで、人間の体ってどうなってるんだろうなあという不思議な感じである。エンタメノンフ繋がりの高野(秀行)さんも原因不明の腰痛について書いた本があるけど、あれは最後にはなんだか水泳とかで改善されて良かったな、という終わり方だったんだけど。
宮田大兄はいろいろ真面目に考えすぎるから、しんどくなっちゃう面があるんじゃないかと一読者として思わないでもないが、それが足の痛みと関係あるのかどうかは、わからない。
早く治るといいなあ。

2014/12/12

半七捕物帳 44~48 【再読】

■岡本綺堂
日記じゃないけど昔のメモに半七捕物帳(全6巻)が挙げてあるから既読なことは確かなんだけど、全然内容を覚えていないので実は初読みと同じことである。まー、わたしの場合、きっちり読んで、ブログに感想文書いていて、書棚に実物もあって、という状況でも10年も前のミステリーだったら内容を覚えていないことが珍しくもないので半七もその例なんだろうと思う。それにしても読んでいてもいっこうに思い出さんのはどうなっておるのかと我ながら不信である。
今日読んだ第48話は「ズウフラ怪談」とかいって、このタイトルを目にしたときから「ズウフラ…なんだろう、何語だろう」と気になっていたんだがやはり記憶に無く、本文を読んでもあんまりぴんとこなかった…ズウフラってメガホンみたいな感じ?と思ってググったらなんだかスイスのアルプスホルンみたいな絵がひっかかってきたけどこれなのかなあ。でもこれ通した声と地声はまるっきり響き方が違うからすぐばれるんじゃないの、っていうか遠くにも聞こえるだろうけど近くでも当然聞こえるだろうよ、なのにどこが発信源かわからないとか有り得るの???

44 むらさき鯉 ★★
これまた怪談町のはじまり。途中で種がわかったと思いきやもう少し複雑だった。単なるウソで巻き込まれたひとが可哀想というか、意味がわからんウソだなあ。

45 三つの声 ★★
内容的にはそんなに好きじゃないけど、ミステリ的にはなかなかイイなと思った。声だけで対応するのがやや不自然だなと思っていたらこういう話か。また、奥さんが寝乱れ姿のまま戸口に行くけどふつうは身なり多少整えるんじゃないの、と思ったけどこれもははあ、そういうわけか、と納得。

46 十五夜御用心
これは話の作りも展開もミステリとしてもちょっとひどいなあと思った。雑というか。ちゃんと全部拾ってあるところは偉いと思ったけどね。それにしても「睡り薬」と書いてあるけどそれで死んじゃってるっていうのは「永久に寝ちゃう睡眠薬」ってこと?ぎゃーこわーい。

47 金の蝋燭 ★★★
徳川家の盗難事件から始まり、中に金の延べ棒が仕込んである蝋燭をめぐるミステリー。
なかなか想像力をかきたてられる面白い話だった。お金の問題かと思わせておいてこれも…。

48 ズウフラ怪談 ★★
ズウフラって変な響き。ミステリとしては王道だね。後始末のあれやこれやでちょっとゴタついた感があったけど。殺人そのものについてはいたってシンプル。

それにしても半七捕物帳では男女のもつれが動機の殺人がめちゃくちゃ多いな! あと、大正時代に連載されたので物語の「現在」も大正かと思っていたけど「金の蝋燭」で「明治三十年前後の此の時代に」という記述が出てきてあやや。その後さらに「こんにちと違って、そのころの停電は長かった。」とあるから、つまりそうか、明治時代に江戸時代のことを半七親分が思い出して語った話を大正時代になってわたしが思い出して書いている、という設定なわけ、か。このシリーズの最初の方にちゃんとそういうのがわかる記述があったんだろうけれども読み飛ばしたか意識出来ていなかった…。それにしてもややこしいな。現代は大正で、大正に江戸の岡っ引きが生きているわけにもいかないから明治時代に聴いた話ですよ、ということか…。

半七捕物帳〈4〉 (光文社時代小説文庫)
岡本 綺堂
光文社
売り上げランキング: 95,560

ひとりで飲む。ふたりで食べる は単行本の改題だったorz

ひとりで飲む。ふたりで食べる (講談社+α文庫)
平松 洋子
講談社
売り上げランキング: 10,673

よい香りのする皿
よい香りのする皿
posted with amazlet at 14.12.12
平松 洋子
講談社
売り上げランキング: 451,634
■平松洋子
本書は2008年に講談社から出た単行本『よい香りのする皿』に加筆修正して講談社+α文庫から改題して出たもの。

不親切だー!!アマゾンの商品紹介になんっにも書いていないんだもの!

ネット書店で買ったり、中身を確かめずに買ったらわかんないでしょう。
わたしは今日、リアル書店で見つけて中身をぱらっと開けたら「なんか既視感が…」と思ったので奥付をみたら小さい字で改題版の旨が記してあって「ううう、加筆あるっていうけど…」と一瞬迷ったけどそのまま棚に戻してきました。単行本持ってるんだもの。

平松さんの責任じゃないと思うけど。
平松さんの本ってほんとうに単行本から文庫化する際に全然違う題名になることが多い。

改題メモを集めた記事を更新させていただきました↓この前の記事です。

※平松洋子著作 改題、増補版などのメモ 2014.12更新

ややこしいので自分用のメモを作りました。
以下の書籍は単行本から文庫本になるときに題名だけ変わっていたり、以前出たものの改訂版だったり、出版社がつぶれて他から出ることになったりしています。
「おなじもの買ってもたー!!orz」
とならないための忘備メモです。


●『アジアの美味しい道具たち』晶文社/1996年5月⇒文庫改題『アジアおいしい話』ちくま文庫/2004年8月 ※絶版。電子書籍はあるようです。未読(後日、kindle版で読みました)。

●『台所道具の楽しみ』新潮社(とんぼの本)⇒改訂『決定版 一生ものの台所道具』新潮社(とんぼの本)2009年11月 ※これは読みものではありません。フライパンとか包丁の…料理の基本みたいな本で、決定版のほうを買いましたがわたしとしては得るものはありませんでした。

●『おいしいごはんのためならば』世界文化社/2003年1月⇒文庫改題『おいしい日常』新潮文庫/2007年4月

おいしい日常 (新潮文庫)
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平松 洋子
新潮社
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●『こねて、もんで、食べる日々』地球丸/2005年7月⇒文庫改題『世の中で一番おいしいのはつまみ食いである』文春文庫/2008年8月

世の中で一番おいしいのはつまみ食いである (文春文庫)
平松 洋子
文藝春秋
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『ひとりひとりの味』理論社・よりみちパン!セ28/2007年4月 ⇒2011年10月~イーストプレス版に

●『鰻にでもする?』文藝春秋/2010年8月⇒『買えない味2 はっとする味』ちくま文庫/2013年10月

買えない味2 はっとする味 (ちくま文庫)
平松 洋子
筑摩書房
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●『よい香りのする皿』講談社/2008年7月⇒『ひとりで飲む。ふたりで食べる 講談社+α文庫/2014年11月 加筆修正改題の上、文庫化したもの。

2013.10.20作成
2014.12.12追記

2014/12/10

半七捕物帳 34~43 【再読】

kindle版
■岡村綺堂
34 雷獣と蛇 ★★
昔の人は雷獣というのが落ちてきて暴れる→被害が出る、というのを信じていたそうだ。ほーん、なるほどねえ。電気という概念が一般になったのはいつからなんだろう。
この回は珍しく2本立て。ヘビがうようよ集まって塚みたいになっている図というのは確かに気味が悪いなあ。髪を焼くとヘビが集まるというのは本当なのかな。

35 半七先生 ★
ユーモラスなタイトルだけど、中身は非常に後味が悪い。それは、いい大人がみな自己中心的でそれがために十やそこらの子どもが犠牲になる話だからだ。しかもあっさり夫婦におさまったりしていて、胸糞悪いわ(言葉が汚くなって失礼)。
 
36 冬の金魚 ★★
江戸時代にもこういう風流と云うか半自然の贅沢が流行ったそうで。冬にぬるま湯のなかで生きる金魚というのを結構なお値段で取引するというのだ。お金持ちの道楽よねえ。
それにしてもこの話なんかわかりやすくそうだけど、「半七親分の説明の段になって初めて書かれる事実」っていうのが結構あるよなあこのシリーズって…。それを書かずに謎だけ提示してきたら読者は推理もへったくれもない。まあそういうスタンスで書かれていないんでしょーけども。
 
37 松茸 ★★★
このお話で半七親分の誕生日は十月半ばであることがわかる。毎年息子夫婦と孫2人と知人で赤飯と尾頭付きでお祝いをしているのだと。まあなんて素晴らしい。
それはともかく、江戸時代の「御松茸」をめぐるこの事件は姑さんがお嫁さんを大事にしていて、夫婦仲も睦まじくて、お嫁さんの里から付いてきた女中さんもすごくよく出来た鑑のようなひとで、とっても良い話だった。犯人はとんでもない人間のクズだったが。こんなのに付込まれたら最悪だよなあ、こちらに何の落ち度もないのに!
これもある迷信が絡んでいる。この迷信はわたしも知ってるから現代でも気にするひとは少なくないのかも知れない。

38 人形使い ★★
夜中に人形がひとりでに動いているのを見た人形つかい。それがきっかけで人形つかい同士で喧嘩になってしまう。事件は思わぬ展開を見せ…。

39 少年少女の死 
タイトルだけで悲しくなるが中身もそのとおりだった。大正の自転車が流行り出したころの雑談(下手な素人がぶつかってくるとか…玄人がいるのかなあ?)から江戸時代の思い出話に移る。
これも2本立て。少女の死は現代でもそのまんま、こういう事件が度々あるよなあ。言語道断。もうひとつの話は子どもが可哀想というのは勿論だけど被害者の父親が愚か者過ぎて腹立つ!理性をうしなっていたんだろうけど母親が憐れ過ぎる。DQNは江戸時代にもいたんだな。
子どもが犠牲になる話はつらい。自転車の話から派生するのは無理があるなあと思った。

40 異人の首 
尊皇攘夷がさかんになっていた時代ならでは、攘夷派を騙った押借りがちょこちょこ出たらしい。冒頭の半七親分の妹さんの花見の相談が可愛らしい。

41 一つ目小僧 ★
怪談風?だけどすぐにそうじゃないとわかる。茶坊主が掛け軸を何回もくるくるするところが面白かったな。こういう事件が成立するということは武家の空き屋敷がけっこうあったってことかな?それにしても鶉一羽が15両って凄いなあ。10両以上の犯罪だと首が飛んだ、って次の話にも出てきた。今でいうと10両ってどのくらいの価値なんだろう…。

42 仮面 ★★★
面白かったけど、これは捕物じゃないよなあ。道具屋が欲をかかなければ何も起こらなかったわけだよね。しかも25両を150両とかどんだけ…。仮面1枚に150両。首が15回飛ぶってことっすね。
 
43 柳原堤の女 ★★
これも怪談風の出だし。いろいろ謂れのある清水山という場所に謎の女が出没するという…。
ミステリーによく出てきて迷信&誤解のある病気ナンバーワンのやつなんだけど、うーんこの話読むとすごい違和感があるなあ。この話は3つの謎が絡むんだけど最後の1つに関してはよくわからないまま。謎を盛り上げるためにいろいろ仕込んだけど収集つかなくなった感が否めないかも。解決篇までは面白かった。

半七親分の妹・お粂さんは常磐津の師匠で、母親と二人暮らしでまだ独身で、このシリーズには時々登場するけどすごく感じのいい人。半七親分の奥さんお仙さんも同じ程度の登場率かな。このひとも良い感じ。奥さんについてはほとんど描写が無いんだよね。半七シリーズは短篇だし、事件の話だけで手一杯になっちゃうのはわかるけど。あと江戸時代の元号で全部出てくるのでちゃんと調べて表にでもしないと時系列がわかんないというのもあるな。このとき親分いくつ?みたいなのは全然わからん。まあ、細かいことは気にせず読んでマス。

2014/12/07

Kindle Voyage 1ヶ月ばかり使ってみてのレビュー

Kindle Voyageを入手して1ヶ月くらい経ちましたので使用感をお伝えしようかと。
ちなみにわたしは電子書籍はこれしか使ったことがありません。
携帯電話はガラケーなのでフリック入力?とかもKindle Voyageが初めてでした(。・ω・)ノおっくれってるー。

①画面表示、読みやすさ
きれい。フォントの種類はゴシック、明朝、筑紫明朝の3つから選べます。
大きさは8段階、行間や余白は3パターンずつあります。
画面の明るさも選べるので、自分が楽だと思うのを適当に選んで読んでいます。
最初の1,2冊は紙の本に比べて7,8割のノメリ込み度くらいで100%じゃないなあと思いましたがすぐに紙の本と比較することを忘れるというか、気にならなくなって自然に普通に読めるようになりました。

②ページめくり
問題ないです。画面の外の黒い部分に縦長いボタンが左右にあり、どっちを押しても「進む」なのに、最初はつい「右を押して進む、左は戻る」という固定概念があり右ばっかり押したりしていましたがこれもすぐに慣れます。また、ボタンを使わず画面をさわってもページはめくれます。
ボタンを押したときの軽い振動は強さを調節できますが、デフォの「中」で慣れたので変えていません。
ちなみに戻るときは黒い部分の点ボタンを押すか、画面をさわるかで出来ます。
途中で「最初に戻る」とか特定のページに戻る、などは画面上部をさわってメニューボタンを表示し「移動」を利用します。

③電子書籍ならではの面白さ「単語検索
読んでいて気になる単語があったらその部分を軽くなぞるようにしてマークすると辞書が開きます。
部分によってはうまく熟語が指定できなかったりして、これは慣れの問題だけじゃなくて画面の精巧さが微妙なせいもあるんじゃないかと思うんですが…。

単語検索した言葉は自動的に「単語帳」に保存されていきます。単語帳を開くとこんな感じ。
フラッシュカードという機能を使うとリアル単語帳のように1語1語がカード状で表示されます。これでお勉強できる仕組み(英語の本とかで単語覚えるのに良さそうですね)。
どの話のどういう文脈の中に出てきた単語かも単語帳でわかります。面白い、便利!
とりあえず気になった単語はマークしときたくなりますね。
単語じゃなくて文節とか文章単位でマークしたい場合は範囲を選ぶと「メモを追加/ハイライト/シェア/その他」を選ぶウィンドウが開きます。メモを追加を選んだ場合は「マイクリップ」にそれが保存されていって後で見ることができます。

④恐ろしい点
わたしはWi-Fiなんですが、つまり家にいながらいつでも本を買えてしまう環境になったのです。それってパソコンでネットで買い物するのと同じでしょ?と思うかも知れませんがkindleはデフォルトの設定がワンクリック購入だったので「購入」ボタンを押すと速攻購入になっているのです。便利だけどいまだにちょっとドキドキします。
しかも購入と同時にその本が即、読める状態になっている!
これ、想像するよりずっとなんか、魔力というか魅力というか威力がありますっ!
たとえばコミックなんかで続きが気になる!でもいっぺんに読んじゃったらもったいない!というときに「ボタンさえ押せばすぐに続きが読めますぜダンナ、ふへへへへ」という誘惑を断ち切るのはけっこう自制心が要るのです。

というわけで結論。
「ボヤージュ、恐ろしい子…!」

2014/12/05

半七捕物帳 28~33 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
28 雪達磨 ★★
冒頭で当時の読者からのクレーム?に対する反論が述べられているのが面白い。半七が縄張り外で活躍するのはおかしくないかというのだね。
大雪が降って雪だるまが江戸中にたくさん作られた。そのひとつが溶けた中から男の死体が出てきて…。
南京玉って飴玉かと思ったらガラスか陶器のビーズのこと、それが事件の謎をとく鍵になる。
このシリーズは難しい言葉では書かれていないんだけど、いまは日常つかわないような言葉がけっこう出てくるので、文庫とかだと脚注があるのかな。電子書籍版だとその場でとりあえず検索してるけど、この辞書そんなに親切じゃないのが玉にキズ。あと、画面の具合でうまく単語をマーク出来ないことがたまにあるのでそれがちょっと残念。

29 熊の死骸 ★★
「ぼんくら」という言葉がこの話でもつかわれる。江戸の大火事の様子が恐ろしかった。そこへさらに獰猛な熊が加わって大変である。いったいどういう話になるのかと思ったら最終的にはこれもお金と男女の縺れのミックス。まあ事件の原因の二大要素だもんね。そこからよくここまでバラエティー豊かに話を作るなあ。

30 あま酒売 ★
江戸時代ならではだなあ、半七さんや同心の旦那まで「切支丹」で頷き合ってて驚愕。そして最終的な甘酒売りの老女の「たたり」の正体も現代では有り得ない解決でみんなが納得しているのがなんともはや。

31 張子の虎 ★★
悪人を捕まえるのを助けて一躍有名になった遊女が何者かに殺された。その枕元には張り子の虎が…。
タイトルになっているくらいの「張り子の虎」なのに、このイキサツは後であわてて取ってつけたみたいでちょっと残念だなあ。この種のハッタリでツカミ→あとでつじつま合わせというパターンが少なからずあるような気が。まあストーリー展開そのものや謎解きの過程はなかなか良かった(それにしても犯人がしゃべるのを陰でこっそり聞いて御用、のパターンもけっこうあるよね。そんな都合よく隠れつつ内緒話が聞けるものかなあ)。

32 海坊主 ★★
潮の満ち引きや颶風が来るのをいち早く予言した謎の奇怪なナリをした男。それがどうして半七親分の事件になるのかなあと疑問に思いつつ読んでいったけど最後まで読んでも何故予言出来たかは結局不明なままだし、何故あの話から半七親分が事件とか犯罪のにおいをかぎつけたのかもよくわからなかった。変な話だから面白かったけどね。ふつうのひとびとが岡っ引きに協力的なのが意外だけど江戸時代はそんなものだったのかしらん。

33 旅絵師 ★★★
隠密の話。思うところある様子の娘の言動と旅絵師の心情がなかなか面白かった。現代と変わらないなあこういうのは。隠密についての話というのもイイ。父親の依頼のエピソードも時代ならではだなあ。短篇だけど、深みがあった。

2014/12/03

半七捕物帳 17~27 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
17 三河万歳 ★ 鬼っ子を抱えた若い男が死んでいて。
鬼っ子をたよりに手がかりを探す中で猫を無くしたのがいてそれに引っかかるくだりがよく呑み込めなかった。竜頭蛇尾気味。

18 槍突き ★ 槍突きの通り魔か?猫が娘に化けた? 娘の正体が小気味良かった。

19 お照の父 ★ 河童が飛び込んできて殺した? 犯人うんぬんより河童のくだりが面白かったなあ。「向島で河童と蛇の捕物の話」をするという約束をしたのは10話「広重と河獺」の〆んところデスね。

20 向島の寮 ★★ 法外な高給で奉公の長期契約。蔵の中の謎。謎めいたふうにしたかったんだろうけどヘビはどこ行ったのかなあ。このシリーズはホームズの影響を感じるけどこれもなんとなくそんな雰囲気がした。

21 蝶合戦 ★★★ 尼さんが首を切り落とされ殺害。猟奇的殺人。「何故犯人はそうしたか」ミステリーの王道だね。問題提起から解決までなかなか面白かったが後半はほとんどまとめ語りというのにはずっこけた。長さが決められていて仕方ないんだろうけどもさ…なんとかならないのかねえ。この種の「はしょり」はこのシリーズいままでも何度かあったけど、この話は群を抜いてひどかった。

22 筆屋の娘 ★★★ 筆をなめて売ると評判の美人姉妹の姉が毒で死に…。この犯人バカ過ぎる。

23 鬼娘 ★ 喉を喰い千切られ殺される事件が連続して起こる。半七親分がカッコいいところを見せる。

24 小女郎狐 ★★★ 松葉でいぶされて若者7人の内5人が殺された。狐のたたりか。
宮部みゆきがこのシリーズの愛読者というのは有名だけど江戸の同心を主人公にしたのが『ぼんくら』シリーズ。で、この話に「ぼんくら」に傍点つきが出てきたので思わずニヤリ。

25 狐と僧 ★★★ 住職が行方不明となり住職の格好をして死んでいる狐が発見された。住職は狐だった!?これも面白い事件。こういうのを理詰めで解いてくれるのが嬉しい。

26 女行者 ★★ 実は京の公家の娘だという評判の美人行者の正体は…。単なる詐欺か、尊皇攘夷派が絡んでいるか手探りという幕末ならではの役人たちの神経質になっている様子が興味深し。関係ないけどこの話に「木挽町」@吉田篤弘が出てきてこれもニヤリ。

27 化け銀杏 ★★ この事件の冒頭は「ひええ、酷い!」とこちらの心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。それにしてもある意味狐と狸の騙し合いみたいなところあるね。最後らへんのお殿様の思い切りの良さには「や、やっぱ育ちが違うわ、庶民では考えられんわ」と驚愕。にしてもお寺の人間に悪いのがけっこーふつうにいるっていうのは何だかイヤだなあ。

ここまで読んできて現時点の雑感。
①とりあえず「ツカミ」が大事みたいで面白そうなネタが出てくるが、最後まで面白いのもあればしゅるるるとしぼんでいくのもある感じ。でも総じて一定のレベルは保たれており、素晴らしい。
②ネタによったら前後篇に分けたりしてじっくり書いてくれてもいいのに「一話完結読み切り」シバリがあったんだろうなあ、惜しい。
③半七親分恰好良すぎ。惚れるわ。時々自腹を切ってるけど、大丈夫なのかなあ。
④現代の感覚だと犯人が超簡単に死刑になるのが厳しいなあというか。死刑のなかにもランクがあって、厳しいのは市中引き回しの上…っていうやつか。ある事件で犬を生き埋めにして処刑というのがあったが、これは現代の感覚からすればまったく有り得ない、犬に刑罰は無いよねえ。飼い主が罰されるだけで充分かと思うんだけど、むしろ犬のほうが残酷な殺され方してるところがなんとも…。

2014/11/30

半七捕物帳 07~16 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
こうして読んでみるといろいろな話があって、面白い、よく出来ているよなあ。
江戸時代の様子がすごく良い。江戸風俗が自然な感じでまるで江戸時代に書かれたみたいに錯覚するけどこのて読みやすい文章は大正ならでは、なのだ。
たまに単語を電子書籍の気軽さで辞書検索(触ればいいんだけど、うまくその単語をマーク出来ない場合は何度かチャレンジ)したりして。便利だねえ。

それにしてもみんな割と素直というか、半七親分に「御用だから、嘘ついちゃいけねえぜ」と云われるとけっこう正直に白状するんだよね。なにか後ろ暗いところがあるひとは最初っから顔色に出ていたり、問われたことに答えず黙っているパターンも多い。だからそういうひとが出てきたら「ああこのひとは何か知ってるんだな、怪しいんだな」とわかりやすい。

捕まえたり黙っておいたりの裁量が半七親分個人の責任で為されることも少なくなく、凄いなあと思う。半七親分が出てきたら安心、という気持ちになって読んでいる。頼もしい。

07 奥女中 ★★ 身分の高いひとは勝手だなあとちょっと釈然としない気もする。
08 帯取りの池 ★★ 出だしの謎は良いんだけど。半七シリーズにはこういう「偶然」が多いよなあ。
09 春の雪解 ★ この犯人は悪党だな……。
10 広重と河獺 ★ 江戸時代はこういう「世話をする、される」俗にいう「囲い者」がどのくらいいたんだろう。よく出てくるから珍しくもなかったんだろうね。
11 朝顔屋敷 ★★ 結末が出てからの顛末がなかなかいろいろ考えさせられる。人間、悪いことしちゃ駄目だね…。
12 猫騒動 ★ 結局、この息子はどう思っていたんだろう。現代の感覚だとそこを突き詰めると面白そうなんだけど。
13 弁天娘 ★ 大山鳴動してなんとやら、という気がしないでもないというかそこをもう少し追及した欲しかった気もする。これも彼女視点で書くと面白いだろうなあ。
14 山祝いの夜 ★ 小悪党と悪党の話だなあ。
15 鷹のゆくえ ★★ それでも鷹を飼いたいのがいるんだ……とびっくりした。
16 津の国屋 ★★★ これは怪談チックででもちゃんと理詰めの解決で、面白かった。

2014/11/27

半七捕物帳 01~06話 【再読】

kindle版
■岡本綺堂
電子書籍の0円本。無料なのだ。
青空文庫からデータを持ってきているからだが、パソコンで青空文庫を見るのと違い、フォーマット、字体、行間などすべてkindle仕様で読めるため、すごく読みやすい。

半七捕物帳シリーズは二十代の初めくらいの頃に宮部みゆきの時代物にハマった流れで光文社文庫で読んだんだったと思うが既に手元に無いので今回kindle版で久しぶりに読んでみた。昔の話なのに全然難しくなく読みやすかった記憶の通り。

半七捕物帳〈1〉 (光文社時代小説文庫)
岡本 綺堂
光文社
売り上げランキング: 23,404

ウィキペディアによれば【近代日本における時代小説・探偵小説草創期の傑作である。1917年(大正6年)に博文館の雑誌「文芸倶楽部」で連載が始まり、大正年間は同誌を中心に、中断を経て1934年(昭和9年)から1937年(昭和12年)までは講談社の雑誌「講談倶楽部」を中心に、短編68作が発表された。】とのこと。
しかし、いま読んでも全然古くないね、というか、江戸時代が舞台なので昔風で当たり前というか。読みやすい。人情、人の心の動きとかいまと変わらない感じでわかりやすいんだよね。

今日は6篇を読んだ。すべて短篇で、一話完結ですっきりした形で終わるので小気味良い。ついつい次から次へと読んでしまう。
探偵物、ミステリーとしてはそんなにひねりも無く途中で見当が付いてしまうものが多いが、舞台が江戸でその風俗とか雰囲気とかが時代物、市井もの好きにはしみじみと良い。同心、岡っ引き、手下などの役割・仕組みなどもわかりやすくおさらい出来るし。

著者の岡本綺堂は明治5年生まれ。

一、「お文の魂」★★ この犯人のような身分のひとが悪いことするというのは『アクロイド』みたい、っていう意識じゃ甘いんだろうけど。
二、「石燈籠」★ この犯人とトリックはわかりやすかった。
三、「勘平の死」★ なんという手前勝手な男だろう!
四、「湯屋の二階」 半七親分が冷や汗をかく回。
五、「お化け師匠」★ なんという偶然の連鎖(やや皮肉)。
六、「半鐘の怪」 このトリックは西洋の探偵小説で有名なのがアリマスね。気づくまでは怪奇譚かと思った。

青空文庫・岡本綺堂のページへリンクを貼っておこう。

2014/11/26

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 【再読】

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-06-05)
売り上げランキング: 16,236
kindle版
■椎名誠
単行本は1981(昭和56)年4月本の雑誌社刊。絶版。
山藤章二の装画で、ソフトカバーだったがずっしりと物理的に重たかったことを覚えている(椎名誠にハマっていた時期に購入し結構長く持っていたのだが、住宅事情から泣く泣く手放した)。

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵
椎名 誠
本の雑誌社
売り上げランキング: 974,850

2000年4月に角川文庫から文庫版が出たらしいがこれも既に絶版。
今回電子書籍でキャンペーン中だったので100円で入手出来た。
『国分寺のオババ』とか『ひるめしのもんだい』と比較すると中身が濃厚で面白く、読みでがあった。
椎名さんは1944年生まれなので、本書は36、7歳頃に書かれたものか。
随分「トンガっているなあ」と思う箇所も結構ある。雑誌をほんとによく読まれている。熱心だ。
中身が昭和56年以前に書かれているわけだから書かれている内容が古いのは当然だが、むしろ「ああ今から30年以上前はそんな感じだったんだ」とか、「この雑誌、いまもあるぞ」とか「ちょっと前まではあったんだけどなあ」とか面白いのだ。
「書棚に飾る為の全集が売れている」とか、今ではもう無いんじゃないかなあ。ほるぷ出版てそうだったのか。
「日立RAP-161型」というのはエアコンのことである。
「メメクラゲの秘密」というのは有名な「××クラゲ」が誤植?というか誤解?で「メメ」になった件。
椎名さんは新刊書店で雑誌とか立ち読みするのを是としているけど、立ち読みは中身を確認する程度はともかく、それを楽しみに書店に行くとかはわたしはいかんと思う。本を書く立場のヒトがこんなこと言ってるんだなあ。
でも全体としてずっと本、活字、その他出版関係などの話ばかりなので(後半違う媒体に同じようなことを書いているのが重複するみたいになっている部分もあるが)関心が薄れないのだ。

本書の構成は以下のようになっている。
「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」…ルポ風の創作小説。本書の総ページ数からすると16%くらいの分量。「めぐろこおじ」という活字中毒者(本書では違う言い方がされているが)が出てくるのでなんだか微妙に実在モデルっぽくて面白い。味噌蔵がある家とかそこに住む女の人とかモデルいるのかなあ。
連続性視覚刺激過多抑制欠乏症の男/午後十時三十分の笛吹きケットル/脳裏をかすめる呪いの藁人形/妙子と義男の愛憎赤裸々紙吹雪/夕陽にふるえる柿の木枇杷の木/詭計策略薄暗の逃走/地獄の味噌蔵

「活字とインキの大サーカス」…本にまつわるエッセイ。本書の32%くらい。
ほるぷ出版の本はかなしい/書店はとてもエライのだ/インチキベストセラー/うなだれし荒野のベストセラー/文藝春秋10月号四六四頁単独完全読破/サンリオ出版「恐怖の報酬」のウンコ的本づくりに文句をつける!/茗が谷書店の親父大決断!/銀行ロビーになぜアサヒ芸能はないのか/いま問題なのは電車のなかでどう読むか―なのだ/腰巻など脱がせてしまえ! 

「すべての問題を前向きに善処したいのだ」…本にまつわるエッセイ。本書の11%くらい。
駅前エロ雑誌群/オソロシ文学賞/日立RAP-一六一型/武蔵小金井の古本屋/東南アジアの純ブンガク/つげ義春の「ねじ式」に出てくるメメクラゲの秘密/朝日新聞の読み方/山松ゆうきちのギャンブルまんがには、人生があるのだ!/雑誌の特集/埼玉県の本屋さん/お熱38度6分でも読める本というのは、これはもう感動的<面白本>なのだ!/茗荷谷のキオスク/マトモ週刊誌のまんがが面白くないねえ/見てしまったのだ、ついに!/だれか原稿用紙のお話を書いてくれえ/ヨコ文字ペーパーバック/銀座の本屋さん/「のたり松太郎」の田中クンに最優秀助演賞をおくろう/こんなもんでよかんべイズム―がつくった講談社の中年ポパイ『HOT DOG PRESS』/もう見ることができないマボロシの名作雑誌/雑誌のイノチ/中野の古本屋/「しのび姫」が大好きだ

「本ばかり読んでいる人生は△である」…エッセイ風評論。本書の20%くらい。
文庫本をテストする/読み方の研究/『フジ三太郎』は新聞マンガ界の恥だ!/ブタ的編集人たちが作る金色のブタ的婦人雑誌/ゴキブリ雑誌を踏みつぶせ!

「雑誌についてとにかくいろんなことを言いたい」…各雑誌批評。本書の20%くらい。
其の一
 ぴあ/平凡パンチ/PHP/ビックリハウス/宝島/ポパイ/ウィークエンドスーパー/プロレス/写楽/遊/選抜面白雑誌オーダー・フィナーレ編
 其の二
 はじめに①/はじめに②/月刊フルハウス/暮しの手帖/週刊読売/PHP/家庭画報/幼稚園/小説現代その他/クロワッサン/季刊読書手帖/PLAYBOY/写楽/岳人/銀花/ブルータス/芸術生活/壮快/BOMB/微笑/発売日について/びわの実学校/月刊就職ジャーナル/食食食/家の光/スタジオ・ボイス/ビッグトゥモロー
「あとがき」なのだ/文庫本のためのあとがき

表題作になっているし、「もだえ苦しむ…味噌蔵」は強烈な印象だったのでこれがメインと思っていたがその記憶は間違っていたのだなあ。
本書の初出は「本の雑誌」が中心だが、「噂の真相」や他媒体に書かれたものも収録されている。
電子版には例のごとくホームページから目黒さんと椎名さんの対談記事転載。
また、電子書籍あとがきも有り。

2014/11/22

あたたかい水の出るところ

あたたかい水の出るところ (光文社文庫)
木地 雅映子
光文社 (2014-11-12)
売り上げランキング: 58,019
■木地雅映子
きじ・かえこさん。
このひとのことを知ったのは『和菓子のアンソロジー』で、それが良かったので他の話も読みたいと思っていた。単行本を見て「あれ、このタイトルどこかで昔見掛けてホラー小説と思いこんでいたような気が…」。温泉で「ガール・ミーツ・ボーイ」とか書いてあるし、うーん別に守備範囲じゃなさそうだけど木地さんの本で読めそうなのってこれくらいなんだよねと保留にしていたら先日タイミングよく文庫化してくれたので「ラッキー」とばかり購入(読み終わってから見たらこれ電子書籍でも同時期に出てたらしい)。

それにしてもこんな話だったとは!
帯とか裏のアラスジに書いてある文言から想像するのとはちょっと違いすぎやしないか!? いやまあ確かにそういう要素もおおいにあるんだけどさ~問題のその原因についてあっさり触れすぎててまさかこんな毒仕込んであるとは……みたいな。

毒親、っていうのか、虐待、でもあると思う、とにかく主人公の柚子の家庭環境がへヴィー過ぎて。
読みはじめはのほほんまったり~とした女子高生のお話で、「まるで川原泉の描く目が線で出来ている女の子みたいだのう~」と呑気に読んでいたのだがそのうちにだんだん家庭の中の家族の異常さがわかってきて、こんなもん途中でやめられますかいな!

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)
川原 泉
白泉社
売り上げランキング: 62,665

両親の仲はもう冷え切っていて、母親も仕事とかで家の中のことはあんまりしてなくて、子どもは柚子が次女で、他に容姿は良いけど遊びまくってる短大生の長女と、小さいころから勉強が出来る中学生の妹がいる。母親は昔からこの勉強が出来る三女だけをかまって、その子をいかにいい大学に入れるか、ということを第一目標にしていて、次女である柚子がマイペースなのを良いことに家事労働でこきつかっている。家事をしてあって当たり前で、してなかったら罵詈雑言の嵐という……。姉も三女も同様に次女におんぶにだっこ。父親は家にほとんどいなくてノータッチ。三女はそうやってお姫様扱いで育ったから我儘ほうだいで性格が歪んでしまって、しかも進学してから周囲は出来る子ばかりになってプレッシャーからおかしくなって引きこもりみたいになり、家庭内で暴力をふるうこともしばしば……

読んでいくうちに、柚子は自己防衛の手段としてああいう性格になり、ああいう生き方をせざるを得ないんだな、ということがだんだんわかってくるのである。
柚子は高校を出たら就職し、自立することでなんとか母親と家族から離れようと考えていたがその考えさえも母親の「家事をする人間がいなくなると困る」という身勝手な理由から反対される。それも表向きは「若い女の子が一人暮らしなんて危ないでしょう」というおためごかしによって。しかも「家に給料を入れて妹の進学費用の助けをすべき」とか言うんだからもう開いた口が塞がらない。

柚子、逃げて!

もはや途中から祈るような気持ちで読んでいった。
ので、終盤にかけての展開がどんだけドリーム入っていようが、「そんな都合の良い白馬の王子様が的展開あるかいな」と頭のどっかでツッコミ入ろうが、基本、オールオッケー!

倒れた先の先生や、お風呂屋さんでお馴染みになったご近所の御婦人たち、いろんなひとが助けてくれる環境でほんっとーに良かった。柚子を迎えに行く根性があって養っていく甲斐性のある、しかも恋愛感情もばっちりの素敵なオノコが表れて本当にめでたいと思った。

この話は本当にお風呂とか温泉の描写が気持ちよさそうで、温泉とかサウナとかへの憧憬と称賛にあふれていて、そういう全体に漂うあったかい「お湯」が、そしてそれを愛する柚子や周囲のひとびとのふんわりした人情がなければ、とてもじゃないけど小説として読んでいられないと思う、ほんとよくまあこんな危ういものを書いたなあ、と衝撃だ。あと、ちょっとSFとかファンタジー入っている箇所もあって、幽体離脱とかこんなふうに扱っちゃう!?ってびっくりしたり。

本書は恋愛小説としても読めるみたいだけど、毒母・毒家族の緻密な書き込みに比べるとどこもその、あまりにもキラキラふってわいた好条件の男子すぎてなんだかそのへんはのめり込めなかった。まあそれは読み手によって分かれる、かな。
あのお母さんや妹が己の間違いに気付くときは来るのか疑問だけど、お願いだから柚子にこれ以上迷惑かけないでもらいたいもんだね!

HNK-FMでラジオドラマ化するらしいけど……どこまで忠実に再現するんだろう。こんなの夜中に聴いたら眠れなくなりそうだよー。

さらば国分寺書店のオババ 【再読】

さらば国分寺書店のオババ 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-05-29)
売り上げランキング: 1,508
kindle版
■椎名誠
本書は昭和54(1979)年11月情報センター出版局から刊行された後、平成5(1993)年3月三五館から新版として刊行された。
その電子書籍版。
新潮文庫版で既読だったのだがもはや手元になく、これとこの前に上げた『ひるめしのもんだい』はキンドルで100円だったので「安!」と気軽に買い直した(後で知ったがキャンペーン価格だったらしい)。
『ひるめし』はごく普通の椎名節だったが、デビュー作の本書はかなり文体がぶっ飛んでいるというかシロート抜けしていない感じがびしばし残っているというか、クセがある感じだ。でもあとがきとかで書いてあるけど「昭和軽薄体」も「スーパーエッセイ」も周囲が付けたんじゃなくて椎名さん本人が考えた謳い文句なんだそう。そして「スーパー」は「超」の意味じゃなくて「スーパーマーケットみたいにいろんなものが」という意味で付けたのを周囲が良いように誤解?して「超」だと思っちゃった、んだって。うーん、まあ、「スーパー」は文脈で明らかに「店」的な位置にないと普通は「超」だと解釈するよね。

で、中身はどういうのかというと国分寺書店という古本屋さんのことやその店主である「オババ」さんのことはあんまり書いていなくて、全編通して著者が強く訴えて(?)いるのは「公務員をはじめとする制服を着た職業のひとびと」に対する不平不満、反抗なのであった。横柄で偉そうで腹だたしいんだそうだ。最初にやり玉に挙がるのは国鉄職員で、その他警察官とかにも吠えている。
正直ほとんど共感するところはない。まあ分からないでもないけどそんなにトンガらなくても……という感じだ。

面白いのは巻末に載っている目黒さんとの対談だがこれはホームページ「椎名誠 旅する文学館」からの転載なので、そちらで読むことが出来る。椎名さんがどういう過程でサラリーマンから作家になっていったとかそのへんのいきさつが書かれている。

本書の沢野さんの挿し絵はいつもの落書き調とは違う感じだ。筆とかで書いてる感じ。

ひるめしのもんだい 【再読?】

ひるめしのもんだい 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
クリーク・アンド・リバー社 (2014-03-28)
売り上げランキング: 823
kindle
■椎名誠
本書は初出「週刊文春」1990年1月4日号~12月13日号、1992年7月単行本の電子書籍版である。
新宿赤マントシリーズの第1弾を読みたいと思って検索したらこれがヒットした。
「椎名誠 旅する文学館」という著者のホームページがあるが、それと連動企画っていうやつなのかな?

例によって解説は省略されているが、「あとがき」「文庫版のためのあとがき」「対談 椎名誠×目黒考二(ホームページからの転載)」、「電子書籍版あとがき」「椎名誠の人生年表」が付いている。
沢野さんの挿し絵もちゃんと載っている!(だから容量がけっこう大きいよというメッセージがダウンロード時にあったんだね)。

1990年ということで、時代が出ているかなあと思って読んでいったけれどもあんまりわからなかった。
第1回を読めばなんで「赤マント」なのか分かるかなと思って読んだけれども結局わからなかった(書いてなかったよね?)

もっと「初期!」の軽薄体、とか云われた文体なのかと思っていたけれど、書かれたのは1990年で、椎名さんのデビュー作「さらば国分寺書店のオババ」執筆が1977年だから、うーんなるほどなあ、このへんになるともう随分最近のと変わらないというか、まあ椎名節の必殺四字熟語重ね!みたいなのは散見されるけど46歳だもんね…(と、こういうのが「人生年表」ですぐにわかって非常に便利なのである)。

目次はアマゾンでも全部載っているからコピペはやめておこう。
「ひるめしのもんだい」というのは中の1篇からのタイトルで、要は、お昼時になるといつも「昼飯をどこ(の店)で食べようか」と迷ってしまう問題、なのだった。まあ「これが食べたい」と決まっているときなんかは良いけど、なにも食べたいのが浮かばないときとかはわたしもこんな感じになるかな…ふだんはお弁当(雑な作りデス)を作って持って行っているのだけど。椎名さんはお弁当方面も考えたみたいだけど室内で食べるのはどうも性に合わない、とかだったようだ。

それにしても本書を読んでいて気になったのは、飼い犬(けっこうデカい犬種)を散歩時にリードで繋いでいなかったり(自分の周辺から離れないから、と書いてあるけど犬が苦手な人間には怖いんだよー)、社会のルールを守ることに「うるせいうるせい」なんつってけっこう反抗してたりして、「それってどうなの?」と。まあ椎名さんの周辺は「ですよねー」としか言えないんだろうけどさ。1990年はまだしも、2014年には絶対に向かないよなあ。

あ、時代を反映したことあった。この頃はバブルで、ワンレングスが流行ったときなんだね、それで誰もかれもが長い髪をばっさーってやって、機内とかで枝毛切ってる、という描写が何カ所か出てくる。いまもロングヘアのひとはたくさんいるけど、電車とかで枝毛切ってるひとは見ないよね。マナーの向上、っていうかみんなヘアケアしてるから枝毛が減った、というのが大きいのかなー。

なお、本書は初読みと思っていたが自分のパソコン内を検索するとどうやらハルカ昔に既読、なのだそうだった。文春文庫版で。ふーん。

2014/11/20

タコの丸かじり

タコの丸かじり
タコの丸かじり
posted with amazlet at 14.11.20
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 4,682
kindle版
■東海林さだお
本書は「丸かじり」シリーズの記念すべき第1弾で初出は昭和62(1987)年1月~9月「週刊朝日」の連載「あれも食いたい、これも食いたい」を書籍化したもの。
単行本も文庫も絶版。それがkindleを入手することで電子書籍として読むことが可能になった。電子版ということで文字だけかと思っていたら東海林さんの挿し絵?というかヒトコマ漫画というのか?もちゃんと載っているのが嬉しい。まあちょっと小さめだけど。
いまからざっと26,7年前ということで、時事風俗的な違いや東海林さんの言い回しが興味深かった。

コンビニのことを東海林さんが「コンビニエンスストア(以下長すぎるのでコンストと略す)」って書いてたり、回転寿司屋での作法(?)が解説してあったりするのは時代だなあ。
このときから既に「鯨」は遠くなりつつあったんだなとか、おにぎりの具にマヨネーズとかいろいろびっくりされたのがこのへんからなんだなとか、激辛ブームは昔からあったんだなあとか。
東海林さんって変なことにこだわるなあというのが丼というか器の重さで、これは近著でも何回か見かけたがなんと第1弾から出てきたのには驚いた。要は、外食のときとかに見かけで器の重さを無意識に想定して持ち上げるので、瀬戸物のようなプラスチック容器だと勢い余って持ち上げ過ぎてしまう、とかそういうことが書かれているわけなんだが、そうかなあ。別にそんなので困ったこと無いケドなあ。プラだと味気ないなとかそういうのは感じたことあるけど。
あと、「当人」と「体」を分けて別々の扱いにして書いているのが2カ所あった。これは世間的な流行りなのか東海林さんだけなのか不明。

目次。
ナイター・弁当・生ビール/激突!激辛三十倍カレー/究極のネコ缶を食べてみる/「おいしい」ってどんな味?/馬食い団、ひそかに浅草へ/とうもろこしは律儀である/ナゾの季節物、冷やし中華/スイカはガブリ食いに限る/どこへ行ったか「かき氷」/終戦当時の前科を告白する/殿がたはバイキングが苦手/ああ八丈島のタコ丸焼き/プラスチック丼世に氾濫す/本もののうな重に巡り合う/嘆かわしい新おにぎり事情/天下一品丸かじりのすすめ/秘伝「技あり」炒飯のコツ/焼き鳥の串の業績を讃える/うれし懐かし、鯨食べたい/回転寿司なんかこわくない/フライ物の正しい生きかた/もうくさくない「くさい飯」/「ピーナッツのナゾ」を追って/がんばれ、デパート大食堂/勇気をもって厚く切る塩鮭/いい気な「おせち」を叱る/牛丼屋のムードはなぜ暗い/やっぱり試食はむずかしい/にぎり寿司の賢い運営計画/台所の「捨てられない」面々/爽やかに散歩シーズン開幕/油揚げの処世術を見習おう/花見点描「花より段ボール」/伝統を誇る菓子パンを統括/立ち食いそばを「評論」する

解説は沢野(ひとし)さんだったようだけど、kindle版では省かれている。やっぱ解説は別料金が絡むからややこしいのかしらね。

2014/11/19

ハロウィーン・パーティ 【再読】

ハロウィーン・パーティ クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 11,761
■アガサ・クリスティ 翻訳:中村能三
ポアロもの長篇第31作品目。原題:Hallowe'en Party。1969年。
クリスティの分身?とされるアリアドニ・オリヴァが登場する。最初のほうだけだが従僕ジョージも出演する。昔なじみのスペンス元警視も出てくる。

ハロウィーンのパーティで「殺人を見たことがある」と主張した女の子が何者かに殺された。りんごのいっぱい入った桶に頭を突っ込まれて……。

この残忍な殺害方法は衝撃的で忘れようもないのだが、例によって犯人とか動機とかいったことはいっさい覚えていなかったのでポアロさんが種明かしするまで全然わからなかった。再読どころか何回かは読んでいるはずなのになんで忘れてるのかなあ。まあ、おかげでミステリーを愉しめるので有難いんだけど。

この話は庭園萌えなシーンがあって、描写も素晴らしく美しく、うっとり。
また、森の妖精のように可愛らしい少女も出てきて、微笑ましい。

アリアドニ・オリヴァが好きだし、設定も好きなのでこの話はかなりお気に入りだったけど、以前読んだときはまだ庭萌えは無かったと思う。


2014/11/17

エール! (1)

エール! 1 (実業之日本社文庫)
大崎 梢 平山 瑞穂 青井 夏海 小路 幸也 碧野 圭 近藤 史恵
実業之日本社 (2012-10-05)
売り上げランキング: 19,411
■大崎梢・近藤史恵ほか
大崎さんを最近また少し読むようになって、光文社のアンソロジーがなかなか良かったこともあり、このアンソロジーも読んでみたくなった。
実業之日本社文庫。
実業之日本社は知ってるけど、文庫なんかあったんだ。本書を本屋で探そうとして初めて知った。そういう目で本屋さんの棚をずっと見ていくと、あるんだね、小さな書店にも実業之日本車文庫のスペースが。売れっ子東野圭吾の文庫がここからも出ているとわかり、「おお、稼ぎ頭がいて良かったなあ」なんて思っちゃったり。

調べてみたら実業之日本社の創業は1897(明治30)年と古いけど、実業之日本社文庫の創刊は2010年10月5日とごく最近のようだ。

『エール!』は現在3冊めまで出ているアンソロジーで、ホームページの記載によれば
【笑って泣いて元気になれる、お仕事小説アンソロジー第1弾!!(中略)
オール書き下ろし、文庫オリジナル企画。書評家・大矢博子責任編集。】
ということだ。「1」の解説は大矢さんで、それを読むとこのひとが企画したんだなということは読み取れるようにはなっていた。
働く女性のために、眠る前に1つずつ読んで、ちょっとでも元気になってもらえたら、というコンセプトらしい。わたしはそういう「ためて読む」ことは出来ないタイプなので眠る前に4つ読んで、会社の昼休みに残り2つも読んじゃったけど、いくつか読んだ時点で「これはハッピーエンドが約束されているんだな」とわかったので気を張らずに読めたのが良かった。
本書を読んで仕事をやる気になるとか落ち込んだのが癒されるとかそういう効果があるかというと、少なくともわたしには自分と重ならない設定ばかりなので共感とか引き寄せて考えにくいのでそれは無いなという感じだ。

第1弾はこの6作品収録(2012年10月05日発売)。
全員若い女性が主人公、そういえば全員独身で彼氏もいないっぽい。
お話同士でちょっとリンクというか目配せがあるのが面白い。あの話に出てきたあの店がこっちの話にも、とかそういう遊びがある。

以下、内容に触れています。

大崎梢「ウェイク・アップ」★★★★
◎漫画家が主人公。
漫画家さんの実態がわかって面白かった。それにしてもこの少女漫画家いくたさんは画力が相当あるよね、少女漫画家には若い女の子は描けても背景とか小物や年配の人物は「?」というひとも少なくないから、こういう実力があるひとが狭い枠の中に閉じこもらず新たな才能を発揮できそうなラストですごく良かった。いくたさんが描いた作品を読みたいと思った。

平山瑞穂「六畳ひと間のLA」★★★ 
◎通信講座講師が主人公。
初。
28歳の主人公があまりにも危機感無さ過ぎて腹が立った。なんで個人特定できる情報書いちゃうのよ。しかも相手がヤクザ系……。号泣するシーンは同情しつつもあまりにも型どおりの「泣かせ」でちょっと醒め気味。しかし通信教育ってこんな親切なのかなあ。この先生すんごく純粋で偉いなあと思った。

青井夏海「金環日食を見よう」★★
◎プラネタリウム解説員が主人公。
初。
先月地元のプラネタリウムで解説員さんの「星とか大好きマニアぶり」が伝わるお話に感心したばかりだったので、個人的にタイムリーだった。小学校が急に決めるくだりはリアルだったなあ。
館長がステレオタイプすぎてやや興ざめ。

小路幸也「イッツ・ア・スモール・ワールド」★★★
◎ディスプレイデザイナーが主人公。
昔は大きな百貨店相手に仕事をしていたのに経費節減で切られ、いまは小さな客相手にしなければならないと屈折している主人公の心理などがなかなかリアルで興味深かった。元彼に名前呼び捨てされて嫌じゃないのかなーとちょっと気になる、あ、この著者は男性だからかなるほどねー。

碧野圭「わずか四分間の輝き」
◎スポーツ・ライターが主人公
初。この話に出てくるひとは主人公も含めて何故か全員好きになれなかった。フィギュア・スケート好きでその専門的なライターが、仕事のために「スポーツに興味がないひとにでも食いついてもらうために」選手の恋愛暴露を書けと言われる話。まあ普通にありそうだ。だがそれを断った後にああいう展開はそう無いと思う。ドリームだね。

近藤史恵「終わった恋とジェット・ラグ」★★
◎ツアー・コンダクターが主人公
5㎏や10㎏痩せたって、英語を習ってツアコンが出来るレベルになったって、「自分」は駄目なままだという主人公のボヤきから話がはじまり、のっけから共感できなかった。5~10㎏もスリムになったら着られる服がまず違うし、周囲のひとだって「変わったな」って絶対わかるよ! それに英語が喋れるって絶対便利だし尊敬しちゃう。ましてやその両方を同時にやれるなんてすごく努力家で偉いと思う。
なんでこのひとはそんなに自虐的なの?って感じ。読んでいくとつまり昔の彼に二股かけられた挙句あっさり捨てられて、それで自己否定になっちゃったのかな、でもそれをきっかけに頑張って痩せて英語も習得したんだから立派なのに。嫌な客にも気配りを怠らないプロの姿勢が素晴らしいし。この主人公は自分の魅力に早く気付いて欲しいなあ。

2014/11/15

死んで生き返りましたれぽ 【漫画】  [pixivの衝撃作が書籍化]

死んで生き返りましたれぽ
村上 竹尾
双葉社
売り上げランキング: 61
■村上竹尾
pixivを半年前くらいから暇なときに覗くようになったのですが、そこで読んで「これはすごい。実体験だもんなあ」と衝撃を受けた作品が書籍化。
昨日2014年11月14日が発売日。
pixivでは読めないのかなと思ったらまだ読めるようです(無料)。太っ腹……!

内容はタイトルのとおりです。
「なぜ、どうして」に対しての説明がpixivではあんまり描いていなかったんですが病気じゃなくても、働きすぎでちゃんと食べたり寝たりしてなかったら人間て死んじゃうんだなあと、まあ当たり前なのかも知れないけれどもあんまり実感していなかった。
そしてそこから竹尾さんは生き返っていくのです、まさに、文字通り。その経緯が描かれています。

イラストの表現の仕方がすごく独特のセンスで、逆にリアルというか……。
pixivでは書籍化する前は「竹尾」というハンドルネームだったと思うのですがいつのまにか苗字が増えていました。

pixivの中の作品を読むのには登録が必要です。http://www.pixiv.net/
pixivって何?というのはえーと、あんまり詳しくないんですけどわたしは絵師さんの投稿サイトと思ってるんですけど……。いまググりました。SNSの一種で設立は2007年9月10日だそうです。イラストや漫画や動画イラストなどがメイン。ここからプロの漫画家になられた方も少なくないみたいです。わたしは見てるだけで投稿はしません。

卵町

卵町 (ポプラ文庫)
卵町 (ポプラ文庫)
posted with amazlet at 14.11.15
栗田有起
ポプラ社 (2014-02-05)
売り上げランキング: 356,238
■栗田有起
この著者の作品は10年ばかり前に『お縫い子テルミー』と『オテルモル』を読んでけっこうその雰囲気が好きだった。
久しぶりに新作を読む。
本書は「asta*」2012年9月号~2013年10月号に連載されたものに加筆訂正して文庫化したもの(単行本はなくていきなり文庫のパターン)。
「asta*」はポプラ社のPR誌っていうのかな、大きい書店のレジ脇とかに無料でどうぞって置いてあるのを2回ほどもらって目を通したことがある…と思ってググったら「ポプラ社新小説誌」なんだって。年間購読2,000円(送料込み)。この手の冊子って1冊だと無料で配ってたりするんだけど(「図書」とか)年間だとお金かかるんだよね、まあ個人で買ってる人ってすごく少ないと思うけど図書館とかが買うのかなあ。

話が逸れてしまった。
ちなみにこれはkindleじゃなくて紙の本。kindleにはまだ無いし。

主人公の女性サナはつい最近実母を亡くしたばかり。
年齢は出てこないけど「仕事を終えると」と書いてある。独身で、兄と父親がいる。お母さんは高齢ではなくまだ若いのに亡くなってしまったというのはなんとなくわかる。読み進むとサナは高校を出てすぐ就職したと書いてある。まだ三十そこそこか、下手したら二十代かもしれない。
サナは母の最期の頼みに応えるために「卵町」にやってきた。

「卵町」はサナが「住んでいる町からは、電車を乗りついで、三時間あまりで着く」と書いてある。この「三時間」には新幹線は含まれないらしい。何故ならすぐ後に「さほど距離が離れているわけではないのだが、かなり異なる世界に足を踏み入れた気分になる」と書いてあるから。それでどちらかというとメインの路線ではなく、不便なほうへ行く感じなんだろうなと見当がつく。
町は卵のように楕円形をしているそうだ。そして「いたるところに医療施設があり、住民のほとんどが施設の関係者である。」らしい……。

この小説を読みながら、「この物語は、まるで書いたひとが己のこころの傷を、書くことで癒すために書いたようなそんな印象を受けるなあ」と思った。別に事実そのとおりかどうかまでは知らないけれどもイメージの話だ。主人公が母を亡くし、喪失感でなにか茫然自失のままとにかく「卵町」にやってきて、母の依頼を叶えようとする、その「ふわふわした定まらないこころ」ぶりが「元気でエネルギッシュな気持ち」と正反対の感じで、まあそういうときってあるよね……と。

サナは母親と仲が良かったというよりは、どちらかというと距離感を感じていた。兄と父のほうがよほど母と仲が良く、だからこそ兄と父は母の死を受け入れることが難しかった。でもサナも母としっくりいっていなかったと感じていたからこそ、あっけなく逝ってしまった母との関係が宙ぶらりんのままな感じになってしまって、だからしんどいんじゃないかなあ。

「卵町」でサナは何人かのひとと知り合い、そして料理を作ってもらって食べることでだんだん「回復」していく。サナ自身はどうやら料理はあんまりしないタイプのようだ(ブリの切り身とあらをそのまま茹でてスープとして食べようとするのにもびっくりしたが、味付けに「塩コショウ」というので「ええええ」と引いてしまった、それを食べた友人は「なかなかうまい」けど「ブリのあらは下処理しないと」と忠告する。わたし的にはお醤油とかお酒とか大根とか無いのかなと思ってしまった)。

この物語では食べ物がけっこう重要な「癒し要素」として出てくる。アパートメントの女主人が作る料理はどれもすごく美味しそうで、しかもなにかあたたかいパワーがもらえそうな感じだ。彼女が作るスープにはいったい何が入っているのだろう。

読んでいてちょっと作品や表現について荒いというか粗いというか、そういうのは2,3目についたがまあ雰囲気を楽しむべきと流して読んだ(たとえば役所で担当者のきっちりした髪型とネクタイを「目に焼き付けながら」役所をあとにしたりするんだけど、それをしっかり記憶して何か意味があるのかなと思ったらなんにもなかったり。なんで「焼き付ける」必要があったんだろう? あと、サナは庖丁を研ぐのが得意らしいけど、肝心要の研いでいるシーンの描写が一度も出てこなかったのは残念だなあ。刃物を静かに研ぎながらどうこう……っていう具体的な描写があると良かったんだけど、砥ぎ石をサンドペーパーで整えるためにそれを探すシーンとかは書いてあるのにね)。

まあ細かいことは無視して楽しんだほうが良いのは間違いない。

2014/11/14

ナイルに死す 【再読】

ナイルに死す クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 14,245
Kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:加島祥造
原題:Death on the Nile。1937年発表。
ポアロの長篇もの15作目。
エジプトが舞台。ナイル河をめぐる客船の中で起こる殺人事件。
純文学ではないのでエジプトやナイル河の情景描写はあんまり無いけど物売りの子がわらわら寄ってきて大変だというのはよくわかった。エキゾチックな感じはほぼ無かったかな。西洋人ばかりの船だし。

若くて美人で頭も良い、おまけに富豪の娘で大金持ちというリネット・リッジウェイ。彼女の女学校時代の親友が失業した婚約者を雇ってくれと頼みに来て、リネットは快く承諾するが……。
金持ち娘が貧乏な親友から婚約者を奪って略奪婚、というメロドラマみたいな展開が導入部にあって、そこから舞台はエジプトに移る。ミステリーの始まりである。この話は全篇通して人間の恋愛模様がいろいろ枝葉のも含めて絡んできて、なかなかドラマチックだった。
ポアロさんは仕事じゃなくて休暇を楽しんでいたのだが、状況的に探偵稼業に戻らざるを得なくって……実際的に考えるとこれってタダ働きだよねえ。お気の毒だわ。
クリスティお得意の人間の感情の動きが見事にストーリーを組み上げていて、面白かった。登場人物はけっこう多いのだけれども、最初のほうの「訳者からのお願い」通り、ゆっくり読んでキャラの性格を理解するよう努めて読むと混乱も無く入り込めた。主要なのはみなしっかりキャラ立ちしてるからこそだなあ。
★注意★以下はネタバレはしないように気をつけましたが未読の方はスルー推奨です。


あらすじだけで読むとリネットってとんでもない性悪女みたいだけど、実際話として読むとそう悪い印象でも無いのだよね不思議と。契約書をきちんと読んでからしか決してサインしないとかしっかりしている。「甘やかされたぱっぱらぱーの金持ち娘」じゃないところがとっても魅力的。
この話、初めて読むわけじゃないと思うんだけど、ほとんど覚えていなかったので初読みみたいなものだ。ふつうに考えたら「このひとが動機を持ってるし犯人でしょう」と思うひとがいて、直前に『スタイルズ荘』を読んでいたのでまさか同じパターンじゃなかろうなと思ったりしたんだけど、そのひとたちは完璧なアリバイを持っている。やはり同じパターンは無いか、じゃあほかの誰が、と考えながら読んだ。金持ちの令嬢というのは殺される理由がいくつもあるのだ。恐ろしい。
ポアロさんが種明かしするまで犯人はわからなかった。それにしても3人目は本人がもうちょっと危機感を持って静かにしてたら殺されずに済んだものを。
また、この話の本筋以外でロマンスが数組生まれるんだけど、それがまたなかなか好ましくてよかった。

些細だけど気になること…
本文の中に飲み物を「すすった」という表現が出てきて、しかもそのひとはマナーが出来ている設定のひと。西洋人は「すする」のはタブーなはず。翻訳が適切で無いということなんだろうけど気になったなあ。クリスティの他の作品でも見かけたことがあったけど、やはり翻訳が古いからかなあ。
翻訳の加島祥造と云う方は大正12年生まれだそうだが。うーむ。
ちなみにキンドルで便利な点はこういうときに本文検索が出来ること。本書には飲み物を「すすって」いるシーンが4回出てくるんだなとすぐわかる。

2014/11/13

スタイルズ荘の怪事件 【久しぶりの再読】

スタイルズ荘の怪事件 クリスティー文庫
早川書房 (2012-08-01)
売り上げランキング: 2,408
Kindle版
■アガサ・クリスティ 翻訳:矢沢聖子
原題:The Mysterious Affair at Styles。
1920年に発表されたアガサ・クリスティのデビュー作。エルキュール・ポアロシリーズの長篇での第1作にして初登場作品。
レギュラーキャラではワトソン役のヘイスティングズ、ジャップ主任警部も登場する。

第一次世界大戦で負傷したヘイスティングズが友人ジョンに招かれ田舎の屋敷に滞在しているときに起こる事件。
ジョンには父親の再婚相手の義母がいるが、高齢の彼女が突然20歳も年下と再婚したことで家族の中に剣呑な空気が漂っていて…。

クリスティにハマっていた十代後半のときに初読みし、以来折に触れて何度か読み返したポアロ・シリーズ。クリスティファンというか、ポアロさんのファンなのである。
この話はポアロさんとヘイスティングズ大尉が初めて登場するし、話の雰囲気も好き。
住宅事情で文庫本を処分してしまって以来、たぶん十年以上経っている。今回電子書籍で購入し久しぶりの再読となったが、読みはじめるといろいろ思い出して懐かしかった。そして肝心要の真犯人とメイン・トリックについてはすぱっと忘れていたので(おおなんという都合の良い我が脳みそよ!)、ミステリーとしても楽しむことが出来た。

詳しいことはネタバレになっちゃうので書けないが、デビュー作にして既に彼女のお得意の「毒」ネタと「人間感情が縺れ合うドラマ」が確立しているのは素晴らしいと思う。
ヘイスティングズが友人の妻にのぼせ上っているのとか、道義的にどうなのかなあと思うんだけど別に「良いなあ」と思うぶんにはかまわないってことかな。それにしても彼は鳶色の髪の女性に弱いね!
あと、ポアロさんが記憶にあったよりもかなりユーモラスな滑稽な存在として描かれていてちょっと意外だったんだけどこれは本作だけのことかな?跳んだりはねたり忙しい。まあ、「外国人だから変わっている」というスタンスが全篇にあったのは覚えているんだけど。

今回ポアロシリーズを読み返そうとシリーズリストを見直したりしているのだが傑作・有名作はそのトリックおよび犯人があまりにも衝撃的すぎて流石に忘れられないんだよね。犯人とトリック覚えていてなおかつ再読する、っていうのはよっぽどほかに動機がなくちゃ楽しめないでしょう。アクロイド、ABC、ブルートレイン、オリエント急行がそうなんだけど、とりわけABCは子ども向けのジュブナイルで読んじゃったのでちゃんと読みたいんだけどなあ……。
でもそれ以外はざっくりアラスジを読んでも犯人を思い出さないので(!!)大丈夫(違)。しばらく再読を楽しみたい。次は何を読もうかなー。

2014/11/11

アジア おいしい話

アジア おいしい話 ちくま文庫
筑摩書房 (2013-10-04)
売り上げランキング: 35,154
■平松洋子
2004年8月ちくま文庫版。現在絶版。1996年に晶文社から出た単行本『アジアの美味しい道具たち』を改題したもの。
古本で購入するか、kindleの電子版で購入するか(まあ図書館で借りるという手もあるが)。
わたくしはkindle voyage購入記念すべき第1冊めとして本書を選んだ。

読みながらまず思ったことは「写真が欲しい!」だってアジアのいろんな珍しかったり面白かったり使い勝手が良かったりする道具が平松さんの好き好きオーラ全開で紹介されているエッセイ集なのに写真がひとつも無いんだもの。
これは電子版だから割愛されたというのもあるけれど、もともと写真ではなく挿し絵だったうえ(あとがきで判明)、絵の点数自体少なかったらしい(amazonのちくま文庫版へのレビューで判明)。晶文社版は挿し絵どうだったんだろう…。

平松さんの文章は「古い単行本ベースだから、どうかな?絶版になってるってことはあんまりよくないのかしら」と危ぶんでいたのだけれどまったくの杞憂。いろんな国の食文化と密接に関わっている台所道具たちを生き生きと描いてあり、とても面白かった。
また「何故アジアなのか」が文庫版あとがきに書かれていて、それが平松さんファンになって以来関心の的だったので、非常に興味深かった。同じ「ものを食べる」ことなのに、国によってマナーも方法も違ったり、同じところがあったり、そういうのにわくわくするのってとっても大事だ。平松さんは異文化に敬意とたっぷりの好奇心を持って積極的に突き進んでいくとっても食いしん坊さんで、そこが素敵だな。
流石に韓国で犬鍋を食べる機会があったときは大変だったみたいだ。わたしは絶対に食べたくないが、味としてはおいしかったそうだ。まあだからこそそういう文化が続くわけだろうが……でもやっぱりイヤだ。
ココナッツを搾る文化もあるけど若い人は店で買ってくるのが増えてたり、キムチをつくらない韓国家庭が少なくなかったり、石鍋は重いから嫌だという意見があったり、……やっぱり文化って残そうと思わないとどんどん楽なほうに生活は流れていくから、日本とおんなじなんだなあと思った。
なお、解説は酒井順子だけど電子版では割愛されている。600円もするのに削りすぎじゃないか!

読後、気になった道具をググってみたけど、ぱっとそれらしき物が出てくるケースはイイけどそうじゃないのも結構……「ピントー」はインドの女優フリーダ・ピントーの情報がズラッと出てくる。「弁当箱 ピントー」にしたらようやくヒット。
「タイ コイ」で検索したらまず鯉が出てくる。「タイ すり鉢 大理石」で検索したら「クロック」が出てくる。まあ一緒のモノということなのかね。呼び方違うだけで。
「ジャティ スパイスボックス」なんて全然ダメで「ジャティの木」でいろいろ見たらどうもジャティって要するにチーク材のことなのかな…。
うわーん、日置さんの写真が欲しかったよう! 

目次
タイ
 ココナッツを搾る(アルミの小ザル)/タイ鍋で、パスタ(両手鍋)/目からウロコが落ちまくる(フライ返し)/田んぼのなかの重箱(ピントー)/タイ米の炊き方指南(クラトゥック・カオ)/サンカンペン村から(竹の盆)/幸せの石の音(クロック)/トンビが鷹を生んだ話(素焼き土鍋)/はさみ打ちの名人芸(竹串)/黒い鉢のなかの功徳(バアツ)
※アジアで覚えた、あの料理1 :裏通りの食堂で食べた味がなつかしくて
干し豚肉の香り焼き/ラープ・イサーン

インドネシア
 椰子の実ひとつ(ココナッツの殻のしゃもじ)/竹で送る風(竹のうちわ)/ジャティにひと目惚れ(スパイスボックス)/日暮れてなお、道遠し(チョベック)
※アジアで覚えた、あの料理2 :おいしくて便利なたれが、いろいろ
 サンバル/ヌク・チャム

韓国・朝鮮
 汁かけごはんのお楽しみ(トゥッペギ)/台所のお守り(チョリ)/キムチの匂い(キムチ用ステンレス容器)/萩の小枝のうえの禁忌(チェバン)/白い酒が揺れる(パガジ)/解放記念日の冷麺(ククストゥル)/「重さ」のハードル(石鍋)/お膳のうえのモンドリアン(ポジャギ)/混ぜて、混ぜて、また混ぜて(チョッカラッとスッカラッ)/女ひとり食べる焼き肉は(飯器)
※アジアで覚えた、あの料理3 :いつのまにか唐辛子のおいしさに、やみつき
 ピビム麺/豚肉と白菜キムチの鍋

インド
 地獄の闇鍋(マサラ・ダヴァ)/小麦粉はしみじみおいしい(タヴァとバトゥーラ)/「食べ方が要求する」食器(ターリー)
※アジアで覚えた、あの料理4 :家のなかいっぱい、スパイスの香り
 じゃがいものサブジ/キーマカレー

ベトナム
 ヌクマムの泉(コイ)/先を急ぐ包丁(せん切り包丁)/「鬼おろし」とモダンデザイン(おろし金)/紙のごはんにぴったり(丸盆)/楊枝を使う恥、使わぬ恥(楊子)/道具の行く末(ココナッツ削り器)/バゲットをサイゴンで(コーヒーフィルター)/恋しやバナナの葉(バナナの葉)/今朝の買い出しは(買いものかご)
※アジアで覚えた、あの料理5 :どこの国でも、お母さんの味が一番だから
 牛肉とパイナップル炒めのっけごはん/カレー風味の焼き鶏
 
中国、台湾
 新宿発、香港経由、銀座着(飯架)/魚に梅干し(魚鍋)/おかずは勝手に(公勺)/ヨーロッパから廻り道(カトラリーボックス)/すっきりいこう(棕櫚のはけ)/麺棒一本、晒しに巻いて(麺棒)/竹筒事件の教訓(竹筒)/雲南の秘具(汽鍋)/フカヒレ料理の助っ人(編竹)/霞の向こう側(火鍋子)/粉をこねる(手)/たったひとつ(アルミのボウル)

おいしさの理由――あとがきにかえて/文庫版あとがき

2014/11/10

kindle voyage ゲッツ!&実際に読んでみた。

Kindle Voyage Wi-Fi
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紙の本大好き装丁萌え人間なのであるが、去年あたりから密かに気にはなっていました、キンドル。
電子版書籍だけにする気はさらさら無いけど、住宅事情や既に読んで処分してしまった本をもう一回読みたくなったときなどに同じ本をまた紙の本で買うのも業腹だし、そういうときに良いんじゃないかな~と。

きちんとキンドル(kindle paperwhite)について調べ出したのが今年の5月くらいで、どうもページ捲りがスムーズかどうかがポイントらしい。ググってみると初夏くらいに2014年版が出るという情報があって、いままでの不具合とかが改善されているということだったので7月くらいから今出るか、それ出るかと気をもんでいた。結局発表があったのは9月中旬くらいだったけど。
しかも改良版はvoyageとか云っていままで1万円くらいだったのが2万円以上するとあって、ぎゃふん! いきなり倍かよ!
paperwhite2014年版も出る、廉価版みたいなのもあるというし、どうしようかなあ…。
迷ったけど「どうせ電子版読書デビューするなら今一番良い条件のをどーんと買って、そんで今後の読書方針を考えたいですたい!」と思ったのでvoyageを注文した。 これが9月22日。

当初は「発送は12月中旬だよん」とかメールが来て「11月始めの発売なのにそんなに混んでるのか~待ち遠しいけどまあ仕方ないか~」と思っていたけど発売日過ぎたらまたメールが来て「早く送れるようになったから送るよん」ということで、ついにvoyageが我が手に!
11月6日に受け取り、Wi-Fi(広告なし)バージョンを選んだのでWi-Fiの設定をして使えるようになりました。充電はじめたら画面に手順が出るのでそれに従って進んでいけばオッケー。
それにしても、アマゾンさんよく分かんなかったっす。ネットの表示では10月くらいに「今買うと11月中にお届け」みたいに書いてあってやきもきさせられたり…。


青空文庫と連動で無料本もたくさんあるようですがまず購入したのは絶版になっていて古本か電子版でしか読めない状況である平松洋子『アジア おいしい話』(ちくま文庫)¥600円也。

まだ操作が不慣れなので不用意に画面にさわってページをめくってしまったり(脇のボタンでめくる仕様なんだけど画面タッチでもめくれるらしい)、戻るつもりで進んでしまったりもあったけど、これは使い手の問題であって、機能自体はとても便利。ページ捲りボタンは紙の本と遜色ないというか、違和感を感じないで済む。
パソコンで青空文庫を読むのと比べると縦書きなのですごく読みやすかった。画面もきれいだし、明るさもフォントの大きさも行間も変えられる。辞書も付いていて難しい言葉が出てくる小説なんか読む場合には便利そうだ。

パソコンで小説を読むと紙で読む7割くらいしかのめり込めない感じがわたし個人はするタイプなのでキンドルはどうかなと危ぶんでいたが感触としては9割読めた感じだ。慣れて行けばもっと良くなるだろう。充電も1回すればかなり持つ感じだし。
ということで思ったより断然良かった、キンドルボヤージュ!

紙の本にしかない魅力は捨てられないのであくまで並行して使い分けしていく所存。だいたい電子化してる書籍の中に自分の好きな作家のがまだ全然少ないし……。

☆kindle1カ月弱使用後のレビューはこちら


2014/11/09

ブックカバーお願いします 補強版

話題になったので手持ちのブックカバーを本棚から引っ張り出してみました。
やっぱりというか、意識して集めていないからちょっとしかありません。
ほとんどの本は全国区の大型書店で買いますし。いちおう、できるだけ自前のマイ・ブックカバー活用するようにもしてますし。
あんまり少ないので良い機会だからとカバー目当てで波屋さんに行ってまいりました。


波屋書房(難波千日前南海通)
猥雑な通りに面しているのに一歩入ればまるで古本屋さんのような渋い空気の書店で番台(?)には白髪交じりの親父さん、その奥に若い店員さん。
近くにジュンク堂難波店があることもあり、専門化を意識してあるっぽい、入ると食関係の本がずらりと左壁一面埋めている。
じっくり選んで結局欲しいものが文庫1冊だけで、悪いなあ――と思いながらレジに差し出したら「はいっ、ありがとうございます!」とこちらの気持ちをいっきに軽くしてくれる実に心のこもった丁寧な挨拶を頂戴し、あまつさえ、「あ、荷物重たかったらこちらに置いてくださいね」などと言われてしまった、本屋さんでお会計の際にそんなの言われたの初めてです!
噂のカバーもきっちりと丁寧にかけてくださり。
なんていうか、ひとつひとつの動作に本への愛情が満ち溢れていました。
帰ってからあらためて調べたら知るひとぞ知る食関係の専門書店だそうです。さもありなん。
そしてカバーの粋なこと!



啓林堂書店(奈良)
十代の頃からずっとお世話になってました。奈良県北部に数店展開してます。駅のそばの便利なところにあって、いずれの店もそこそこ広い売り場面積があってCDとかも売ってて、ほんとに地域の本屋さん、って感じです。



KINTETSU BOOK CENTER(近鉄百貨店内書籍売り場)
地元に展開する百貨店内の書店です。ちなみに服とか買ったときの袋は白地ベースですから本を買ったときだけですねこの色で包装してもらうのって。


BOOK STUDIO(大阪駅フロートコート2F)
この店は最初もっと地の利の良い大阪駅御堂筋口に広いスペースであってレイアウトなどにも凝ったおしゃれで便利な書店だったのですが駅改装でフロートコート(これも駅の施設ではあるらしい)2階に。敷地面積もだいぶ狭くなってしまいました。ここのカバーはシンプルで落ち着いていてかっこ良くて好き。ちなみに同デザインのしおり、5千円以上買うと頂けるカバンもあります。当然頑張ってゲットしました!





ふたば書房(京都・滋賀)
京都に行ったときにふらりと入った書店で2冊買ったら2種類のカバーを掛けてくれました。しかも両方素敵なカバーだったので保存してあるわけです。
わたしが行ったのは京都の地下のショッピングモールの中にあるお店でしたが、絵本売り場ではちょうど”読み聞かせ”をしていて、小さい子どもたちが集まっていて良いなあ、と思いました。



八重洲ブックセンター(東京八重洲)
よく「本の雑誌」なんかにも出てくる有名な書店なので東京に行ったときにここは行っておかないとという感じで寄ったのですがカバーをかけてもらってびっくりしました。プレゼント用の包装をしてもらったのかと思ったらこれがデフォなんですね……!
デパートの包装紙かと見紛う艶やかさだがよく見るとしっかり書店名が書いてあるのでした。

恵文社(京都・一乗寺)
本好きには有名なガーリーな雑貨屋さんを兼ねた書店。
おしゃれな雰囲気の店内はセレクトショップみたいな品揃え。


ユーゴー書店(大阪・阿倍野)
阿倍野の商店街の中にあった個人書店さん。残念ながら2011年12月6日(火)閉店されました。



新潮文庫の夏100キャンペーン用カバー
ずいぶん昔のカバーです。
凸山凹太先生読書日記シリーズ、俳優の永瀬正敏さん。
「青空は、史上最大の読書灯である」というコピーが付いています。


新潮文庫の夏100キャンペーン用カバー
これは最近のYonda?パンダのです。広げてみました。


この記事は2008年9月29日掲載分に2014年11月9日加筆したものです。