2013/10/31

買えない味 【再読】

買えない味 (ちくま文庫)
買えない味 (ちくま文庫)
posted with amazlet at 13.10.30
平松 洋子
筑摩書房
売り上げランキング: 23,271

■平松洋子
感想思いつくまま箇条書き。
・箸置きってコレクション欲をそそられる。平松さんみたいに砂浜で拾った珊瑚のカケラとか木の枝とかでもいいんだなあ。
・白い器は定期的に漂白してしまうが放っておくと味わいが出る?…いや、でもなあ。
・豆皿も蒐集し出すとオソロシイ世界なのね。
・葉っぱを器にしちゃうなんて斬新ざんす。
・テーブルクロスとプレイスマット両方なのかー。うちはプレイスマットだけっす。実家はテーブルクロス。
・野菜の皮は時と場合によるけど確かに滋味があって嫌いじゃない。
・たしかに当たり前に使ってるけど醤油ってそのものが美味しい。
・冷やごはん礼讃。ってそういえば、お弁当のごはんがまさにそうなんだよなあ。本来の味かあ。飯櫃の項でも冷やごはんしみじみしてる。うーんでもわたしは炊きたてが好き。
・パンチングのザル欲しい。
・蒸籠の見た目の美しさで購入実績あったりしマス。
・晒しを料理に使うとは。でもキッチンペーパーのほうが気楽だよなあ。
・平松さんといえば土鍋フェチ。
・麻のクロスが欲しくなってきた。
・片口は平松さんの影響で買った。
・ろうそくが日々の灯りの生活って優雅だなあ。
・エプロンは自分もしないが割烹着は持っている。
・あああルクーゼの鍋(の蓋が重石に)!でも数万円はやっぱおいそれとは!
結論、わたしの台所には平松さんの影響が大きい。そしてこれからも。でも辛いのは苦手なので真似できんのであった。
目次。
朝のお膳立て
箸置き/白いうつわ/取り皿/豆皿/大皿/緑の葉/漆/テーブルクロス/プレイスマット/木のお盆/うつわに花を
買えない味
指/レモン/唐辛子/水/風/野菜の皮とへた/本/熟れる、腐る/醤油/冷やごはん
キレる力を!
注ぎ口/調理スプーン/ザルとボウル/塩壺/トング/まな板/蒸籠/竹の皮/巻き簀/晒し/楊枝/土鍋/鉄瓶/キッチンクロス/片口/保存容器/石/飯櫃
機嫌のよい一日
買い物かご/木の弁当箱/茶筒/ろうそく/手土産/エプロン/うつわの収納/皿洗い/空き箱/土瓶/重し
あとがき 日々に穿つ楔
解説 平松さんはかっこいい(中島京子)
写真 日置武晴

2013/10/29

瞬きよりも速く

瞬(まばた)きよりも速く〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)
レイ ブラッドベリ
早川書房
売り上げランキング: 426,654

■レイ・ブラッドベリ 翻訳:伊藤典夫、村上博基、風間賢二
ちょっと読みたくなる事情があって久しぶりにブラッドベリの新刊を買った。本書は、2007年に早川文庫NVより刊行されたものの新装版で、2012年9月に刊行されたもの。
21篇の短篇集。
前回はNVで、今回はSFという早川文庫の中の区分けが変わったのか……。ちなみにNVというのはNOVELからきているらしく、海外一般小説というくくりらしい。早川にはほかにファンタジーのFTというサブレーベルもあるのだが何故これが一般小説に入れられたのかなあ。

以下、ネタバレも含む、自分用の忘備メモ的感想。
未読の方は注意されたし。

「Uボート・ドクター」
これは正直面白さがよくわからなかった。
「ザハロフ/リヒタースケールⅤ」
震災とかいろいろあってこれを読むとなんともなあ。
「忘れじのサーシャ」
書かれてみれば、おおこれはなんとも夢のある希望のある、何故いままで書かれなかったかという話。
「またこのざまだ」★
映画に詳しいひとにはもっと感動する話かも。でもそうじゃなくても、良い話だと思った。
「電気椅子」
ああ昔からの男と女の。ブラックですな。
「石蹴り遊び」
少年と少女の、誰かさんと誰かさんが麦畑♪
「フィネガン」★★
ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』とは関係あるのかな? このお話の中では「子どもより大きな蜘蛛」の話。ミステリアス・ホラー。
「芝生で泣いてる女」★★
この語り手と芝生で泣いてる女の関係は読んでいると容易に想像がつくのだけれど、いやでも、少女の夢をうまいこと描くブラッドベリらしい話だなあ。
「優雅な殺人者」★★★
コメディチックなミステリー?サスペンス? この夫婦は実は愛し合っていたんだよね?
「瞬きよりも速く」
自分とそっくりな人間がショーの舞台にいて。タイトルがすごく意味深なのだけど内容は女芸人の天才的スリ技のこと。
「究極のドリアン」★★
果物のドリアンじゃなくて、オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』のほうだというのは読めばわかる。ちょっと村上春樹の『1Q84』に出てきた教祖様を思い出したり。
「何事もなし、あるいは、何が犬を殺したのか」★★
愛犬家の一家の話?だよね。昨今のペットはペットじゃなくて「家族」なので人間並みに扱うのが普通になってきている、これを読んでユーモアと悲しみがわかる状態ではあってほしい。
「魔女の扉」★★
これはコワい。時空の歪み。魔女裁判って狂気ですな。
「機械のなかの幽霊」
こういうノリはちょっとついていけない、とりあえず群衆怖すぎ。
「九年目の終わりに」★
どこが9年の区切りとするの、あ、誕生日か。妻を愛してる夫だねえ。
「バッグ」
バッグという踊り(ソシアル)の天才の話…でいいのかな。
「レガートでもう一度」★
小鳥たちが美しいメロディを奏でている、それをSF的にエスカレートさせたドタバタもの。面白い発想だ。
「交歓」★★
こんな図書館司書さんはなんにんいらっしゃることか。男の方が実は死んでるんじゃないかとずーーっと疑って読んでしまった。
「無料の土」★
イヤイヤイヤイヤ、いくら無料だからって墓場の土もらってきて自分の庭に撒きます?
「最後の秘跡」
死後名を成した作家たちへの敬愛が書かせた話らしい。
「失われた街道」★★★
このシチュエーション好きだなあ。旧道をどんどこ行って。でもそこで過去に行くとかそういう不思議がいっさい起こらないのが意外。

「あとがき――――生きるなら走れ」
これを読むと、ブラッドベリ自身が作品解説(?)みたいな「暗喩(メタファー)」解説をしてくれてあり、大変面白い。
全篇通して、すごくよくわかるのもあれば、その反対のもあったが、久しぶりに読んだにしてはすんなり溶け込める話が多く、予想以上に楽しかった。

2013/10/28

ふしぎ盆栽ホンノンボ 【再読】

ふしぎ盆栽ホンノンボ (講談社文庫)
宮田 珠己
講談社 (2011-02-15)
売り上げランキング: 306,490

■宮田珠己
眠る前に少しずつ、ほのぼのほんのんぼー、と再読。
ホンノンボとは、ベトナムとかで盛んな、盆栽の、石の部分が多くて、周りに水が張ってあって、陶器のミニチュアが乗せられている、山のジオラマ?みたいなのを言うらしい。
日本では盆栽が盛んだが、中国では盆景というのがあって、これは盆栽とホンノンボの中間くらいの感じなのかな。でもホンノンボの特徴のひとつとして「間抜け感」というのがけっこう重要ポイントのようで、それは盆栽や盆景には無い要素な気がする。

詳しい感想は初読みのときに書いたのでこのへんで。

2013/10/20

平松洋子の台所 【再読】

平松洋子の台所
平松洋子の台所
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平松 洋子 日置 武晴
ブックマン社
売り上げランキング: 109,879

平松洋子の台所 (新潮文庫)
平松 洋子
新潮社
売り上げランキング: 43,644

■平松洋子
久しぶりに読みかえしてみた。
通勤に文庫を持って行って会社に「置き本」して、家では単行本のほうで読むという、両方持ってるからこそ出来るパラレル(?)な読書方法を取ってみたりして。
――というか、たまたま文庫を会社に「忘れて」きて、うー続き読みたかったのに。っていうかそういえば続き家に単行本あったんだと気付いたというのが真相だったり)。

単行本と文庫本の違い、それはねー、日置さんの写真がすべてカラーなこと、少しだけ写真の掲載数が多いこと、もちろん単行本のほうがね。
紙が真っ白じゃなくてやわらかい素材でほのかにあたたかいから、写真もぽわん、と和んで見える。
文庫の写真は、カラーの部分もあるけれどほとんどはモノクロ。
モノクロ写真もそれはそれで悪かないんだけど、やっぱりカラーはきれいだしインパクトが強い。両方同時に読み進んでいって、そう感じた。

それにしてもやっぱり「平松洋子の台所」読んでると物欲がシゲキされるなあ! 鍋とか、お皿とか食器類、台所雑貨的なものが欲しくてうずうずしてしまう、ここ数日忙しくて帰りに店に寄る気力がないからいいけど(いいのか?)。土鍋……1種類は持ってるとりあえず、でもうーん、こういうの欲しいなー石釜1個でいいからあるとオモシロそうだよなあ使いこなせないかな難しそうかなー。とか、ついつい思考がさまよっているのに気付いて「はっ!いまヲレはなにをっ」状態。あぶないあぶない。

平松さんは他の作品でも思ったけど、アジア好きねー。食器とかお鍋とか買うためにその国の市場とか駈けずり回っていらっしゃる印象。まあ、その土地の料理を美味しく作るのにはその土地のお鍋使わなくちゃ味が出せないというその理屈はよくわかるんだけど。でもここ数年ニュースとかでイロイロ出てきたからどうなのかな、安全性とか?って不安がどうしても先に立っちゃって、食器とか鍋とかはやっぱ日本製選んでるんだけど。まあ、どこの国で作っているか、じゃなくて、店単位とか職人単位とかで判断するものなのかもしれないけどね。

買えない味2 はっとする味

買えない味2 はっとする味 (ちくま文庫)
平松 洋子
筑摩書房
売り上げランキング: 48,737

鰻にでもする?
鰻にでもする?
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平松 洋子
筑摩書房
売り上げランキング: 569,468

■平松洋子
本書は2010年8月に筑摩書房から出た『鰻にでもする?』を文庫化するにあたり改題されたもの。
まあ、2010年も鰻は減ってたかもしれないけれど2013年の夏なんてもう、鰻が希少で高くて高くて……。なんとなく、そのままのタイトルで文庫化はいかがなものか、ってなったんでしょうね。
平松さんの書籍タイトルってでも、結構単行本を文庫にする際に改題になっているのがあるのだ。

さて中身の感想。今回もいろんな「味わい」があって、面白かった。
もくじを写しながら振り返ってみたい。⇒感想コメント。

はっとする味
 パセリ ――「つけ合わせ」以上の美学  
     ⇒パセリはもう食べなくなって久しいなぁ。特に外食では絶対無理。
 魚の骨 ――ゼラチン質をまとう
     ⇒鯛とかはやっぱ、骨も出汁取ったりしなくちゃもったいないよね。
 ドライフルーツ ――失って得るものがある
 タジン ――砂漠の国の知恵のたまもの
     ⇒去年景品でもらったけど使いこなせてないというか小さすぎた。でも野菜美味しくなるのは本当。
 骨つき ――肉でも皮でも筋でもなく
 ミント ――たちまち気分転換
     ⇒ミント食べるのは苦手なのでミントライスとか絶対無理。
 スムージー ――初夏になると恋しくなる
     ⇒関西人はミックスジュースは大好きやで。
 卵 ――みょうに不可解
 胡椒 ――香辛料界の帝王
    ⇒それは平松さんが辛い物がお好きだからです。わたしラーメンに胡椒かけません。
 油揚げ ――贔屓が過ぎるでしょうか
    ⇒こないだ堺さんも油揚げのこと書いてらしたなあ。わたしも炊いたのより焼いたほうが好き。
 餅 ――せっせと世話を焼く

ここまで細々書き写してきて疲れました(オイ)。以下、もくじの写しはハイフン以下は省略いたします。感想コメントがある場合は[ ]内に。

鰻にもでもする?
 鰻 酒[日本酒呑めたら世界が広がるよなあー。わたしは無理です] 旅 菓子折り おすそわけ マスター[なんで人間が] ホットケーキ[平松さん家のホットケーキは大きさカタチ以前に黄色いなあ。卵たっぷりなのかな] 甘いもの[写真にある本が気になります] 鼻 氷[わたしの贅沢は……好きな食材1種類だけを満腹食べること、かな?] カップ酒[またお酒!てかカップ酒て!淑女が呑むもの?もっといいお酒呑みなさいよとわたしだって言いたくなるよ] 残りもの[残るときと残すときと。夏場は注意が要りますがね] 献立[スーパーの特売に左右されがち] 

なくてはだめなのだ、もう
 精米 たわし 輪ゴム かまぼこ板[ミニサイズのまな板になる、成程!いいなそれ真似させてもらいマス!] トースト[トースターじゃダメなのか……] だしパック うちわ 串[串のまま食べると突き刺さりそうな気がして。先端恐怖症とまではいかないんだけど。はずしてから食べてちゃダメでしょうか] 焙烙 おろし金[ぎゃーおろし金で手を擦っちゃうとか痛そうぅ~平松さんでもそんな失敗をなさるのか] ワックスペーパー[薬局に売ってるのかな?文化が無かったので。これは真似したいと思います] 中華包丁[おろし金で手を擦るひとが、大丈夫なのかと一瞬だけ思った] アルミホイル[たしかに便利ですな] 中華鍋[これも便利。でかい鍋代わりになるし]

日常のすきま
 小鉢 ガラス ビニール袋[これは文章の出だしとどうつながってるのかやや不明] 強火弱火[強火か弱火でやっちゃうなあ。中火が使いこなせない] 急須 うつわのふた お重 冷蔵庫[この写真のどこがスカスカ?] ごみ 新聞紙 食器の数

日常の贅沢について
解説 勝手に弟子入り!? 室井滋

庭にくる鳥 (みすずライブラリー)
朝永 振一郎
みすず書房
売り上げランキング: 475,554


2013/10/15

有頂天家族

有頂天家族 (幻冬舎文庫)
森見 登美彦
幻冬舎 (2010-08-05)
売り上げランキング: 1,027

■森見登美彦
これは京都が舞台になっているというのは著者の他作品と同じだけれども、語り手(主人公=三男)が狸なのである。というか、登場するキャラクターの八割がたが狸であって、残りは天狗とか半天狗の人間とか半分ケモノみたいな人間なのである。
7章にわたる4百ページ越えの長篇だが、大筋は京都に棲む狸一家の内輪の中の権力争いであって、それをドタバタ・ファンタジー・コメディ風に書いてある。
暇つぶしに読むにはまあ悪くなくて、呑気な感じで読んでいけて、別に最後にもどうということはなくて、大団円になるだろうという予想を裏切らない。
表紙のイラストにもあるようにテレビアニメ化されたようだ。

狸が主人公なのだけれど、だいたいは人間に化けて暮らしていて、しかし書かれる彼らの生活はふつうの人間にはあり得ない、まず経済活動をしていない。学生でも無い。よくわからない。だって狸だからな。
つまりいつもの「モリミーの京大腐れ学生ライフ」な世界とは違う。
だけど森に棲む自然動物の狸の生活を書いてあるわけでもない。
つまりこれはとりあえず「狸」ということにしてある「ファンタジーな架空の、想像上の生き物」が主人公である、といったほうが正しいのかも知れない。
だって狸って人間に化けて暮らしていないからな!
京都の町中にこんなふうに棲んでる狸なんていないもんな!(ああさっきから阿呆みたいになっている)

なんだか読んでいて、中途半端に「人間」だったり「狸」だったりして、そのどっちに比重を置いて読んで良いのかわからなくてちょっと気持ちが悪かった。普段人間の形をしていても、動揺したり怖くなったりびっくりしたり気力が衰えたりすると狸に戻ってしまうのだが、「息子」が「母親」を抱っこして雷から守ったりするの、これ、中途半端に人間だったりするから違和感が。主人公の狸が大学生くらいの精神年齢なのにその「工場に働きに行っている」弟の設定年齢がどう読んでも小学生でしかなくて、よくわからない。「小さい弟」と出てきたからそうかと思うんだけどでもじゃあ、「働き」にはいかないでしょう?
まあそういう細かいことはファンタジーだから目を瞑って読むんだけど、繰り返し出てくる父の「狸鍋にされて人間に食われた」設定が生々しいというか、そこに至った事情とかも深刻すぎていまいちふわふわとしていられない。
天狗の色惚けとかもスパイスとしてはいいんだけどずっとしつこく同じことが書いてあって鬱陶しい。せっかく天狗なのにただの世俗にまみれた人間となにが違うんだ。

とりあえずふわふわ「狸」で和んで読むから騙されがちだけど書いてあることは人間に置き換えたらベッタベタのダッラダラの手垢にまみれた家族の勝手なわがままが凝縮された話で、多分読むに堪えないんだろうけど、そこへキャラクター設定や「飛ぶ茶室」「風神雷神扇」などのエンタメ要素をふんだんに盛り込み、ユーモラスな文体で愉しめる小説に仕上げてある、器用な作品と言えよう。

2013/10/13

祝 ノーベル文学賞 アリス・マンロー

アリス・マンロー(Alice Ann Munro 1931年7月10日 - )はカナダ人の作家。短篇小説の名手として知られる。2013年ノーベル文学賞受賞。【ウィキペディアより】

自分が既読の作家がノーベル賞作家になるのはあんまり無いので、ちょっとミーハー心がシゲキされました。
邦訳されてるのは新潮クレストが3冊、もう1冊は中央公論新社だけど絶版?なのかな。

わたしが既読なのは『イラクサ』『林檎の木の下で』の2冊です。

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)
アリス・マンロー
新潮社
売り上げランキング: 52


林檎の木の下で (新潮クレスト・ブックス)
アリス マンロー
新潮社
売り上げランキング: 2,403


小説のように (新潮クレスト・ブックス)
アリス マンロー
新潮社
売り上げランキング: 112


木星の月
木星の月
posted with amazlet at 13.10.12
アリス マンロー Alice Munro 横山 和子
中央公論社
売り上げランキング: 120,689


2013/10/11

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)
森見 登美彦
祥伝社
売り上げランキング: 22,846

■森見登美彦
これは2007年に単行本が上梓された「名作パロディ集」が文庫化したもので、単行本時あとがき、文庫版あとがき、そしてアニメ監督による解説が付いている。
原作は中島敦、芥川龍之介、太宰治、坂口安吾、森鷗外という純文学界に燦然と輝く大文豪、それの別に代表作をというわけではなくて、モリミーが読んで現代版に書いてみたいと思った作品を選んだのだそうで、まあ最初の4つはともかく、鷗外の代表作が「百物語」だという意見はほぼ無いだろうからなあ。

原作に愛を注いで、とかそういう趣旨で書かれていないので、原作熱烈愛読者の中にはひょっとしたらモリミー版を読んで眉を顰めるかたもおられるかもしれないが、まあ、原作は下敷きというかアウトラインというかスパイス程度に、森見登美彦の短篇集を読むというスタンスでのぞむといろんなパターンの話があって文体も工夫されていて面白いなあ、と感心できると思う。
なお、それぞれ独立した話ではあるが、この著者の特徴のひとつに作品世界のキャラクターのリンクというのがあって、本短篇集でも同様のことが為されている。そういう点でちょっと連作短篇集の色合いもある。
口絵?にモリミー応援団であるらしい「まなみ組」の地図があるのも愉しい。
装画は山本祐布子。装丁はchutte。単行本のとき、レトロな感じで良いなあと思っていたので文庫も同じ表紙を採用してくれて嬉しい。
ざくっとレビュー。

山月記
文体と内容がぴったりで、完全にモリミーお得意の世界。自己完結した孤高のモラトリアム大学生書かせたらぴか一だもんね。最初、さぐりさぐりで読んで行って文学パロディかな?とか思っていたら夏目が学生の折の「うっす」という台詞があり、そのあまりにもあまりな原典にはあり得ない、でもモリミーの世界では最適であるキャラクターにぴったりの言い回しにぶっとんだ、と同時にこれらの作品群のスタンスを理解した。
中島敦のテーマ、美文、格調はどこかへ行ってしまって完全にお笑いの方向に驀進している。面白い。でもその中にペーソスがあるのが味わい深い。

藪の中
芥川のは殺人で、これは単なる三角関係だし、随分さわやかに落としてしまったわねえという感じ。まあこれはこれで面白かったけど。最後の一文を読むと、モリミーの解釈では惚れた男の弱み、みたいなことなのかな。夫を殺したのは妻だったと。これを読んで原作を読みかえしたくなって青空文庫で確認したけど、あらためて芥川凄すぎ、壮絶。というか、よく考えると、こんな悲惨な、人間の誰を信じても誰かがウソをついていることになる話を書いたそのひとの精神状態というか人間解釈はなんというかうううむ、苦しかったろうのう。と思う。

走れメロス
驚愕した。太宰には死んでも書けないこの芯からの明るさ。目からウロコ、そうそう「友情」とはむしろこっちのほうが現代学生にはリアルである。そして徹底したこの道化っぷり、阿呆っぷりが見事。
太宰で卒論を書いたファンだからこそ愛をこめてあえて言うけど、太宰は文豪としては凄いけど、人間としてはいろいろ駄目だったからなあ。たぶん、太宰がこのモリミー版メロスを読んだらその天性の明るさと才能に嫉妬しまくるんじゃないかな。

桜の森の満開の下
これは美しい小説だなあ!続けて二回読んじゃった。余韻がある。
女性の書き方がぞわぞわするくらい「有りそう」で、悲しいけど怖い。ううう、巧いなあ~。
原作は女が人間離れして妖鬼っぽかったけど、モリミーのはどこにでもいそうな女だからいろいろ考えちゃう。ふつうの女のひと、なんだよね、どこにでもいそうな。で、男のひともそのへんにいそう。そんなふたりの日常なんだけど、歯車がどんどんずれていき、男の側がどんどん苦しくなっていく、それが少しずつ少しずつ、水が砂を洗うように、真綿で首を絞めるかのように、というのがなんともなあ。

百物語
傍観者というか、主催者に対する視点の向け方とか、最後の解釈が微妙に違うのとか、面白いなあ。たくさん登場人物が出てきて、ほかの作品とかぶるひとがいっぱいいて、そういうのも面白い。鷗外は「太郎」という芸者さんにもかなり関心を示していたけど、これにはそれに対応するひとは出てこないね。「桜の森の」の女のひとは出てくるけど。あと、F君ってなんで伏字なんだろう? 原作には伏字のひといないから、どういう意図があるのかなあ。
モリミーの新釈は面白いので、「寒山拾得」も是非読みたかった。

2013/10/08

四畳半神話大系

四畳半神話大系 (角川文庫)
森見 登美彦
角川書店
売り上げランキング: 3,340

■森見登美彦
というわけで順番をやや意図的に間違えて『四畳半王国見聞録』の後にこちらを読んだわけであるが。
いやー。
びっくりしたね!!
これを先に読んでなきゃとか、作品のリンクがどうのこうのという問題じゃないじゃんっ!
こっちのほうが断然傑作じゃないのっっっ!!!
むしろこれは必読、『見聞録』はまあ、興味があれば読んだら? くらいの出来の違いがあるじゃないか。

ちょっと筒井康隆思い出して、えーと、『ダンシング・ヴァニティ』がやっぱり超絶傑作で、繰り返しの物語だったような。と思って調べたら、本作の単行本刊行が2005年1月書き下ろし、『ヴァニティ』は2008年1月。
おお、モリミーのほうが先だ。
っていうかまあ、テーマとかいろいろ違うのでどっちがどう、ということでも無いんだけどね。
でも畳の部屋がどこまでもどこまでも続いていくのとか、やっぱり筒井氏の「遠い座敷」とかとどっかで繋がってそうな、そういう、ファンタジーの連鎖みたいな連想が動いて、すごく楽しかった。

『太陽の塔』系の、せっかく京大生なのにそれを棒にふるかのような無為無策の日々で無駄に埋め尽くしているような男子学生が主人公なのだが、彼が3回生になるにあたり、己の大学生活をかえりみて、「どこで俺は間違えたんだろう」と嘆く、それはまあよくあることかもしれないけれど、これが小説であるのはその「選択」と「結果」のパターンが4つ描かれることで、これはワープロというかコピペ機能があればこその作品だと思うが、そのへんについては「解説」に詳しいのでここでは省く。
とにかく、「そのまんま×4」じゃなくて、少しずつズレていくのとか、順序の絶妙の変化とかが巧いんだよね。で、3パターン読んでちょっとマンネリ化というか、油断していたところへあの「パターン4」が来るもんだから、「おおおおお」となるわけで、最後の方はうまい具合にちょっと感動テイストなんか絡めちゃったりなんだりしてね。作為的過ぎて、ちょっとアレだったけどね。

「解説」といえば、「解説」を読んで初めておお、そう言われれば小津ってすっごいスキル高い学生なんだよなあ、と気づいた、主人公視点だとどうしても小津って小悪党で人間性に問題があるぬらりひょん、としか思えないんだよなあ。でも可愛い彼女がいるくらいだし、魅力がわかるひとにはわかる、のかなあ?

それにしてもモリミーは「黒髪の乙女」が好きだね。「茶髪の女学生」は駄目なのかなー。

2013/10/06

ぐっとくる題名 【再読】

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)
ブルボン小林
中央公論新社
売り上げランキング: 22,565

■ブルボン小林
新書向けに書かれているので、実用書としても使えることを目指した「良い題名」とはなにかを探る評論というかエッセイというか。
長嶋さん、じゃなかった、ブルボンさんも言ってるけど掲載が最初はweb、次が「活字倶楽部」という若い女性向けの文芸誌だったということで、だいぶ文体はゆるいから気軽に読める。

再読の感想なので、本書で採り上げられている時点で何かしら優れた題名だということだが、その中でもわたしが特に良いなあ巧いなあすごいなあと思うのを列挙してみよう。
なお、小説のタイトルだけではなく、音楽や漫画、映画のタイトルも紹介されている。
後ろに「索引」があるのも便利。さっそく活用してそこから上げてみる。ちなみに中身も読んだことがあるのには※印をつけておく。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?※
蹴りたい田中※
現実入門※
これからはあるくのだ※
淋しいのはお前だけじゃな
幸せではないが、もういい
11人いる!※
世界音痴※
それから※
タンノイのエジンバラ※
D坂の殺人事件※
図書館の神様※
光ってみえるもの、あれは※
必殺仕事人
百年の誤読※
猛スピードで母は※
夕子ちゃんの近道※

良いタイトルというのは読みたくなるものなのだ。

本書に出てこないけど自分の記憶のなかにあるので印象的なタイトルというと……やりかけて、キリがないことに気づき、断念。
だって面白そうと思ったからこそ買って読んでるんだもんなあ!

蚊がいる

蚊がいる (ダ・ヴィンチブックス)
穂村弘
メディアファクトリー
売り上げランキング: 9,170

■穂村弘
ブックデザインが横尾忠則。
角々カクーッとしたカタチ、赤とコバルトブルーの美しいコントラスト、蚊取り線香のパッケージを意識したとっても美しい個性的な装丁だ。
ほむほむのエッセイ集が出ると知り、ネットでこのデザインを見た瞬間、ああこれはもうぜひ買わねば、という感じだった。電子書籍ではこの満足は味わえない。

初出は以下のとおり。
「L25」2008年4月10日号~2009年8月27日号
「週刊文春」2011年3月10日号~2013年7月4日号
「読売新聞夕刊」2009年6月23日~2010年3月16日
「GINGER L」2010年1月号~2013年10月号
「東京人」2010年3月号

短歌についてはほとんど無くて、大衆に相容れない、「生きにくいワタクシ」について書かれてある。まあいつもの穂村さんといえばそうだけど、今回読んでいて以前に思ったことがなくて今回思ったことというと「穂村さんも年齢を重ねて、おじさんになったなあ」ということ、かな。万年青年みたいな不器用さを書いてらっしゃるけど、うーんでもなんのかんの言いながら結局はちゃんと「ふつうのひと」のふりをするスキルを身に着けているからこその、「元総務課長」だったりすると思うから。
ふつうのひとのふりをしていて、女のひとには多分すごくモテて、でも内面がわかってくると「?」が増えていってうまくいかない、ということだったのかな。奥さんは、それが大丈夫なひとだったんだろうね。

共感するというよりは、「へえええ、そういうふうに考えているんだ」というふうに驚きつつ読むことが多かった。誇張もあるような気がするけど。
本書でいちばん「良いなあ」と思ったのは「長友」。
別に穂村さんはなにをしているわけでもないけれど、でもこれをきっちりとらえて見事な手順、技術で最高の形で再現してくれている、それこそがセンスなのだ。
それにしてもこの女の子、イカしてるなあ! ホレるぜ!

巻末の「特別対談 穂村弘×又吉直樹」がかなり面白い。又吉さんと穂村さんの組み合わせってめっちゃ夢のようで、一番最初に読んだ。それにしても足踏まれてそれが言えないとか……わからん。でも、とっさのリアクションに失敗してしまって考えすぎでぐちゃぐちゃになるとかいうのは、個人差はあるんだろうけど、うん、わからんではないなあ。

2013/10/04

四畳半王国見聞録

四畳半王国見聞録 (新潮文庫)
森見 登美彦
新潮社 (2013-06-26)
売り上げランキング: 7,126

■森見登美彦
ちょっと読む順番を間違ってしまったようだ。
これはモリミーの既刊作品とリンク色が濃い作品だそうで、少なくとも『四畳半神話大系』『新釈走れメロス他四篇』は読んでから臨んだほうがいいのだそうで。

……いや、タイトルに「四畳半」って付いてるから先に出てる「四畳半神話大系」の続篇なのかな、とかは思ってたんだけれども。小さい書店でそっちが無かったっていうのと。表紙イラストが「大系」のほうは以前読んで内容が合わなかった『夜は短し恋せよ乙女』と同じ絵師さんなもんで、イヤこの中村佑介さんの絵そのものは大好きなんだけど、なんだか手が伸びにくくて。

まあ、大丈夫だろう、と先にこちらを読んだ。
結論から云うと、「まあまあ大丈夫」ではあった、のだとは思う。
たぶん既刊作品を既読であれば「あああのひと」とかニヤリとしながら読めたんだろうなーとは思うけれども、例えばわたしは「乙女」はあんまり肌が合わなくて、「四畳半」はそれと「太陽の塔」が混ざったような感じだなあと思った、そういう感触というのにはあまり影響がないだろう。

京都大学の大学生を描いた連作短篇集。順番につながってファンタジーというか、世界が大きいところから口の中の親不知の山のなかから広がってそのつぎはカタツムリの触角の先へ、というふうに不思議に展開していくので順番に読んでいくのがよろしかろう。こういう展開のつながりかたは大好きである。

「四畳半王国建国史」「蝸牛の角」「真夏のブリーフ」「大日本凡人會」「四畳半統括委員会」「グッド・バイ」「四畳半王国開国史」の7篇。

それにしても仮にも現役学生を描いた小説なのに勉強絡みのエピソードがほとんどなく、アルバイトネタも脇役でちょっと出てくるくらい、サークル?は変てこなものばかり。異様だ。
京都大学が舞台なので、モリミーの他作品にも登場する叡山電鉄周辺とか、吉田神社とか百万遍とかそのへんのお馴染みの地名がたくさん出てくる。
京都・モリミー・文学散歩とかしたくなってくるなあ。

表紙イラストは古屋兎丸という、漫画家さんのようだ。


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