2012/08/29

幽霊の2/3

幽霊の2/3 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
売り上げランキング: 105443

■ヘレン・マクロイ 翻訳;駒月雅子
書店の手書きポップで「復刊リクエスト第1位作品、新訳で登場」と書かれており、マクロイの作品はまあまあ当たりが続いているので休暇のつれづれに読んでみた。

精神科医ベイジル・ウィリングもの。
原著は1956年の刊行で、1962年に守屋陽一訳で創元推理文庫に収められたが、その後長く絶版になっており、マニアの間で名のみ語られる幻の名作と化していたそうだ。

なかなか面白かった。
最初のほうで主婦メグが小さい子どもふたり抱えて大忙しの中手紙を書くシーンなんかはコージーぽくて、全体的にはもちろんコージーじゃないのだけれど、どこかのんびりした牧歌的な印象がずっとあったのは気のせいかなあ。登場人物のキャラクターもべつに特段のんびりしてるってわけじゃなく、ミステリーの登場人物としてみんなシリアスなんだけど、めちゃくちゃ悪徳非道なのが出てこない人間くさい、みんなそこらへんにいそうなひとばかりだからかな。大根女優が成功した夫の財産目当てに戻ってくるのとか、三文芝居っぽくてベタベタだし。アル中を克服した、と思っていても苦手な妻が戻ってくるとたちまち飲んじゃう男の意思の弱さももうアメリカのミステリーで何度お目にかかったか、って感じだし。いろんなひとがいろんな言動をするんだけど、結局はちっぽけな保身のため、というのとかね。

タイトルが変わっていて、「なんでミステリに幽霊が出てくるんだろう。しかもそれが3分の2、ってどういう意味だろう」と思っていたが、このお話の中にそういうゲームをするシーンがあって、ああそうかと思った。そして、その後徐々に明らかになっていく真相によって、この印象深いタイトルに含まれた本当の意味もわかっていき、驚きとともに「なんて良く考えられたタイトルなんだ!」と感動するのだった。

この小説の主な登場人物は、売れっ子作家と、その別居中で売れないハリウッド女優の妻と、著作権エージェントとその妻、版元の社長とその妻、批評家2人である。めちゃくちゃ業界小説だ。日本にはエージェントというシステムがないけど、アメリカはそれが普通で、そのへんの仕組みとかがこの小説を読むとけっこうよくわかる。

トリックとか、犯人とか、そんなに以外でも斬新でもないのだろうけど、小説全体の筋とか雰囲気とか登場人物の設定や人間模様とかが面白くて、つまりミステリー以外の要素で十分楽しめたので、そのうえにミステリーとしても一定以上の水準には達していると思われるので、こういう作品が新しく訳され復刊されたのいうのは素直にありがたいと思う。

それにつけても、ベイジルというのはあんまり個性派じゃないね。
「精神科医」としてあるから専門的な知識を駆使して一般人には思いもよらない推理をするのかとか期待しがちだが、そういう作風でもないらしい。現代だとそこを強調するのが流行りなんだけど、昔はそうでもなかったようだ。

2012/08/27

わらの女

わらの女 【新版】 (創元推理文庫)
カトリーヌ・アルレー
東京創元社
売り上げランキング: 217039

■カトリーヌ・アルレー 翻訳;安堂信也
ミステリーの古典的名作として名高く、傑作とされているのは知っていたがまだ読んでいなかった。このあいだ書店に行ったら桜庭一樹の推薦コメントがついた帯がかかって目立つ位置に置いてあったので、いい機会だからと読んでみた。

かなり古い翻訳なので(登場人物の会話とかが古いし地の分もぎこちない)、奥付を確認したら1927年生まれの人が翻訳していて、創元推理文庫の最初の版は1964年。表紙のほうにもどって原著の発行年を見たら1956年。

注意◆結論を先に言うと、わたし個人としては、本書をひとにおすすめしたくはありません。そのうえで、以下はごく個人的な記録のために独断と偏見に満ちた感想を綴りますので、この小説が好きで大事に思われている方はどうぞ読まないでいただきたく存じます。
また、内容にふれ、ネタバレ的なことも書いているのでご了承ください。


まあしかし名作なんだから、スジさえ良ければまあ。と思い直して中盤あたりまでは真面目に読んでいったがそのへんで起こるひとつの出来事、そしてそのあとに続く主人公の受難があまりにも当初の予想どおりの展開で、不愉快で、読んでいて全然サスペンスを感じずしかも面白くなかったのでたまりかねてそこからいったん流し読みで最後までいって、どんでん返しとかあればまた中盤から丁寧に読みかえそう、と思っていたら最後までなんにも改善されず、なんの驚きもない話で、逆にびっくりした。
これのどこが傑作なの。
中盤以降、主人公の女性がじわじわと追い詰められていくさまがサスペンスで、真犯人が徹底して情をみせないのが珍しかったのかな。
しかしミステリーとして意外性がちっとも感じられず、だらだらと長い予定調和の主人公の心理描写とか読まされても不愉快なだけでサスペンスでもなんでもない。
古い話なので昔はびっくりされたのだろう、というのと、あとこういうシチュエーションとかストーリーが好きだというひとには受けるんだろうな、と想像するほかなかった。
ラストの展開がどんでん返しで驚く、らしいのだがミステリーにあまり慣れていない初心者ならともかく、昨今のいろんなタイプの小説を読みなれている読者だったら別にああそういうハナシなのか、というレベルじゃないのか。勧善懲悪になっていないことが意外、って言われてもねぇ。
多くの人が認める名作らしいけれど、残念ながら、わたしは少しも楽しむことが出来なかった。
残念。

2012/08/25

ピエタ

ピエタ
ピエタ
posted with amazlet at 12.08.24
大島真寿美
ポプラ社
売り上げランキング: 26860

■大島真寿美
2012年本屋大賞第3位。
白紙の状態で臨んだ。
ヴィヴァルディ先生が亡くなられた――突然の訃報がもたらす衝撃と哀しみから物語ははじまる。
お話の舞台はイタリアのヴェネツィア、そこにあるピエタと呼ばれる施設。
主人公はそこで管理上重要なポストにあるらしい、エミーリア。そして親友のヴァイオリニスト、アンナ・マリーア。彼女たちは捨て子だった。まだ赤ん坊だったときに捨て子を引き受け育てるための慈善施設であるピエタのスカフェータ(日本でいう赤ちゃんポストのようなもの?)に入れられていたのである。

冒頭部分を読んで、孤児院のかつて孤児だった女性が主人公、と知った時点で瞬間的にばーっと想像したのは、『小公女』のような悲劇だった。つらい境遇に生まれた女の子が、孤児院の教師やいじわるな同級生からいじめられたりしつつも健気に生き抜く……。
だがすぐに、本当にすぐに、どうやらこれはそういう話ではない、ことに気付かされる。まず、穏やかなのだ。主人公たちのまとっている空気や場のそれが。
エミーリアはその賢明さゆえ、アンナ・マリーアは演奏家としての類い希なる才能ゆえに、それぞれピエタの中で堂々とした地位を築いていること、それは幼い頃からずっとそうであったこと、ピエタでは棄てられた子どもたちを大切にし、きちんと育て上げていることなどが非常に明確に伝わってくるのである。
最初、孤児院と判断したが、読み進むうちにピエタはどうやらそれだけでなく、音楽院の色も濃いことがわかった。音楽の素養があると認められた孤児たちは「合奏・合唱の娘たち」として、専門的な教育を受けることが出来、その成果として演奏会で大きな収入を得ることでピエタに益をもたらしていた。司祭であったヴィヴァルディは音楽を教えることでピエタに深く関わっていたひとだった。ヴィヴァルディの音楽はヴェネチアのひとびとに愛されていた。

先生が亡くなってしばらくして、エミーリアは少女時代に一緒にピエタで音楽を習った貴族の娘、ヴェロニカからひとつの依頼を受ける。いわく、演奏が不得意だった当時の自分だけのためにヴィヴァルディ先生が譜面の簡易版のようなものを書いてくださった。当時の自分は譜面が共有物であるという認識がなかったため、その裏に詩のようなものを書き付けてしまった。いつしかどこかに行ってしまい、最近になって譜面の仕舞ってありそうな場所を探したけれども行方不明だ。どうかそれを内密に探して欲しい、見つけてくれればピエタへの寄付金をうんとはずもう――。
なんだかちょっとミステリチックである。ミステリファンとしては、その書き込みというのに意味深なところがあって、実は貴族である彼女の地位を脅かすような醜聞がひそんでいるのでは、とか勘ぐったりもしたが、これも読んでいればその疑惑は打ち消される。下世話な憶測であった。終盤でその譜面の存在の種明かしが行われるが、これがものすごく美しいエピソードで、己の想像の浅ましさに赤面する思い。

楽譜をめぐる物語のほかにもうひとつ主軸となっているロマンチックな、そして読み進めるにつれてそこにある深い想いが伝わってくる素晴らしい物語がある。それはエミーリアの恋、初恋にして生涯の恋の話だ。
エミーリアは長ずるに従って自分を棄てた親に対する憎しみを募らせ、あるとき、思い切ってピエタを抜け出し、赤ん坊の時自分に着せられていた産着の刺繍を手がかりに母親を探そうとした。それは思いがけない協力者の存在によってかなえられるのだが、ヴェネチアでは冬のカーニバルのあいだひとびとは仮面を着けて町に出るのが慣例で、そのひともずっと仮面を着けたままで、名乗りもしなかったし、こちらから訊ねてみることもしなかったから、とうとうその素性は知れないままであった。
けれど年齢を重ねたいまになっても、ずっとこころにある大切なひととなっており、名前を確認しなかったことをずっと悔やんでいた。
最後までその相手が誰、とはくっきり書かれないのだが、でもあの方で間違いあるまい、ということは判るのであり、その人物について詳細が明らかになるにつれて静かにこころに感動が広がっていく。

そのほか、クラウディアさんという女性の存在感の大きさ、そのユニークさ、彼女にまつわる物語も興味深く、特に終盤、彼女を敬って集まってくるひとびとのエピソードはいろいろな感情がわいた。素晴らしかった。

アントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディ(1678年3月4日-1741年7月28日)。
読了後、これは史実をもとにした物語なのだと知った。ピエタは1346年に孤児や棄て児を養育するために設立された慈善機関であったが、現在は取り壊され、ホテルになっているそうだ。

2012/08/23

とっさの方言

とっさの方言 (ポプラ文庫)
小路幸也 大崎善生
ポプラ社 (2012-08-07)
売り上げランキング: 9913

■篠崎晃一ほか、たくさん
47都道府県の方言にまつわるエッセイを64人の作家その他が綴った企画もの。
その都道府県出身者が「とっさに出た・出る方言」について書いてあるんだろうなと思っていたけれど、実際に読んでみたら「とっさに出た・出る」を真面目に守って書いているひとはむしろまれで、みんなけっこう自分の好き勝手に自分の書きたい方言について書いているらしかった。

関西人なので最初に関西のページを読んでみたけど……大阪は複数あって、その中になんで大阪弁であえてそれを選ぶの?という地味なのもあって……読んでみたら案の定それは面白くなかった。やはり関西たるもの、面白いことを書いていただきたいものだ。そういう意味では、姫野さんの滋賀、千松氏の京都、近藤さんの大阪はなかなか面白かった。坂井さんの和歌山もうまい。

そのあと全国を頭から読んでいったらいやいやみなさん、なかなかどうして笑わせてくれるではないの。関西だけがお笑いではないのだ。いやべつにこの本はお笑いを目指しているわけではないのだけど、でもやっぱね、コンセプトがユーモラスでしょう。

ちなみにわたしは関西生まれの関西育ちで、あいにく関西弁はずーっと喋っているため、「とっさに出た方言」というのは無い、と言いたいところだが、同じ関西でも県によって違うので、「いま何言った?」と聞き返されて初めてそれが方言だと知ったという経験はある。

たとえばお茶の葉などが「とごる」これは「沈殿してる、たまっている」という意味なんだけど、でもニュアンスが微妙に違うように思う。
完全な翻訳が可能なくらいだったら、はじめっから方言にならないんだよなあ。

執筆者(目次の順)
※エリアごとに篠崎晃一によるまとめエッセイあり。
小路幸也、大崎善生、立川談四楼、アーサー・ビナード、北山猛邦、夏石鈴子、穂高明、深町秋生、松村栄子、原宏一、梨屋アリエ、絲山秋子、北村薫、椎名誠、中島たい子、鴻巣友季子、吉田修一、川島誠、辻村深月、壁井ユカコ、前川知大、室井滋、木地雅映子、イッセー尾形、宮下奈都、万城目学、初野晴、大島真寿美、栗田有起、中村航、伊吹有喜、姫野カオルコ、千松信也、浜口倫太郎、伊藤たかみ、西加奈子、近藤史恵、最相葉月、坂井希久子、丁田政二郎、三羽省吾、小手鞠るい、四方田犬彦、西川美和、中島京子、河合二湖、芦原すなお、松浦理英子、柴門ふみ、有川浩、大崎梢、松尾スズキ、大道珠貴、山崎ナオコーラ、塙宣之、垣根涼介、梶尾真治、矢玉四朗、疋田智、鳥飼否宇、池上永一、金原瑞人、青山潤、柳美里

2012/08/22

虹色天気雨

虹色天気雨 (小学館文庫)
大島 真寿美
小学館
売り上げランキング: 46114

■大島真寿美
これはいま自分の中で“大島真寿美読むぜキャンペーン”を絶賛開催中であるからこそ読んだ、というか書店で文庫を手にとって裏のアラスジにざっと目を通したときも「うーんこういう設定のこういうハナシ(中年の女性が主人公で、その友人の夫がどっかいっちゃって、夫婦関係のすったもんだに巻き込まれる系)は守備範囲外なんだよなあ……」といったんは差し戻したりしていたのだが、同著者のを続けて読んでみて、やっぱいちおう可能な限りコンプする価値のある作家さんだと思えたので、読んだ。

読んでみて、まったく予想外、という展開は正直なくて、まあ主人公や友人たちのキャラが少々変わっているのはなかなか面白かったけれども、じゃあこういうひとたちが実際自分の友人知人だったらどうか、というと、いやそもそもこういうタイプのひとたちは周囲にいないなあ、という感じで、だから全然共感も感動も出来ないのであった。
全体的な雰囲気が主人公のスタイルもあって、ねちっこくなくカラッとしているので、それは良かったんだけど。
ずっと、遠くのドラマを「ふーん、どうなるんだろう彼ら彼女らは」という好奇心で見続けている感覚で、だから興味本位の「奈津さんの夫はいったいどうしたんだろう、どこにいるんだろう「!?」というワイドショー的な面白さで引っ張られて最後までどんどこ読んでしまった。

そういえば、「謎」が提示されてその真相を追っていくというハナシの流れはわたしの好きなミステリーと同じだ。そしてこの『虹色天気雨』においてはなんと、謎解きばかりかどんでん返しまで用意されているのである(!)。そこは面白かったね。それが好きな展開かっていうともう全然なんだけど、他人事だから読んでいられるというね。
よくわからないが、女友達と女子会とかやって、恋バナがいちばん燃える、というようなひとに合っている話のように思う。

この小説で好きなのは小学校高学年の美月で、彼女がなかなか良い。

ビターシュガー 虹色天気雨2

ビターシュガー(虹色天気雨2) (小学館文庫)
大島 真寿美
小学館 (2011-10-06)
売り上げランキング: 125976

■大島真寿美
『虹色天気雨』の続篇。
「虹色」が2006年、「ビター」が2010年にそれぞれ単行本化している。
小説の中では、「虹色」の3年後が「ビター」だ。小学生だった美月が中学2年生になっている。中学生にもなったら、もうお母さんのその友達のところに屈託なく遊びに行かないのかと思ったらそうでもなかった。でもやっぱり思春期に突入していろいろ複雑な感情も出てきた模様。

とかつい美月の話から話しはじめてしまったけれども、このシリーズの主役は40幾つかの女性・市子であり、前回は彼女が美月を預かるハナシだったから美月いっぱい出てきたけれども、今回はそれほど出てこないのだった。

「虹色」でも守備範囲外だなーという感じだったのが「ビター」はさらに恋愛絡みのごたごたが多いというか、っていうか不惑を過ぎた女性たちがいまだにくっつくの・くっつかないののすったもんだをあっちでもこっちでも繰り広げているのを読んでいると何だか茫然としてしまう。
え? もうそのくらいの年齢になったらもう少しこう……大人の落ち着きというか、人生についての見極めというか、腰が据わっている感じというか、社会的な安定感というか、そういうのがあるもんじゃなかったの? いや、恋愛は何歳になっても出来るというのはわかるんだけど……。まだまだ、こんなに急転直下ありなのー? ひえぇー。
やっぱわたしは、恋愛体質じゃないわ、みんなすごいわ。

「虹色」の解説は北上氏で、「あー、まー、北上おぢは昔からこういう人情ものっぽいのに弱いし女性じゃないから女性の友情にドリームあるから……」と生温かい目で見る感じだったのだが、「ビター」のほうは、本文をやはりアラスジを興味本位で追うだけの読書で読み終えて、全然期待せずに解説を読んでみたらこれがすごくドンピシャで、瀧井朝世という方だったのだが、めっぽう面白かった。
そうそう、そうなんだよね、女で、ある程度の年齢になっている読者には、自分の周りの友人関係とどうしても比較してしまって、あれこれ思わずにはいられないんだよね。どっちが良い悪いの話じゃなくて。合う合わないって絶対にあるし。あとやっぱりこの年代のひとを書いてある、ということでイメージする像とずいぶん中身が違うっていうのもそうだったんだなあ。
内容を読んで判明したのだが、瀧井さんは、web本の雑誌の「作家の読書道」で大島さんのインタビューをしたそのひとらしかった。おー。

2012/08/21

三人姉妹

三人姉妹 (新潮文庫)
三人姉妹 (新潮文庫)
posted with amazlet at 12.08.20
大島 真寿美
新潮社 (2012-02-27)
売り上げランキング: 534874

■大島真寿美
3人姉妹の3番目の女の子視点(一人称)の長篇小説。
姉妹を描いた小説といえば『細雪』とか『若草物語』とか超有名作があって、まあいずれも4人姉妹だが、だいたい三人称で書かれていて、主役とかはあるけどそれぞれの立場から描かれるイメージが強いのだけど、この小説は末っ子中心の話で、彼女からみた2人の姉や母親、その家族と身の周りのひとびとの日常模様をつづった小説。
別に感動とかはしなかったけど、いろんな立場の人間が出てくるのに主観がまだ「定まってない感満載」の若い女の子のそれのみなので、逆にあれこれ想像したりできて、なかなか面白かった。

長女は小金持ちの家に見合い結婚で嫁いでいて小さな息子がいる専業主婦、亜矢。しっかり者。生活には何不自由ないけれど、舅姑小姑が近くにいて、町のひとみんなに「あの家の若奥さん」と知れ渡っている日々にちょっと息が詰まったりしている。
その2歳下(学年は1学年差)の次女・真矢は独身で、なんの仕事かは書かれていないけれどもこれも結構デキるタイプっぽくて、仕事が面白いと感じているようだ。そこそこモテるらしく、私生活も若さを謳歌しているっぽい。
主人公である3女・水絵は上二人とはちょっと年が離れていて、だから末っ子として小さいころから可愛がられて育った(本人に言わせると「玩具のよう」に「ペット」のように扱われた、らしいが……)。大学を卒業したけど、就職したくなかったので、就活もしないで、いまはフリーターをやっている。学生時代から映研にいて、バイト先は映画館で、OGとして部活にも参加している。まだ学生の彼氏がいるが、いまいち「つきあってる」感が無い、というのが現在の悩み。

大島真寿美の小説に「男」というのはあまり書かれなくて、女性が中心に描かれているというのをどっかの評論でナナメに読んだが、この小説でも父親はタイに単身赴任していてずっと出てこないし、そのことに触れられるのも物語の中盤くらいになってようやく、という感じで、正直いてもいなくてもあんまり気にされていない……。
長女の夫、次女に片思いしているバーのマスター、三女の彼氏、というふうに男性も出てくるし、それ絡みですったもんだはあるんだけど、まあ、要は「女視点」で書かれているから、男主体の思考とかは出てこないし、やっぱ女性が強いなー、という印象が残るのは確か。

私自身は姉妹がいないのでそのへんはわからないが、弟2人がいて、3人目とは年が離れているので、長女の感覚というのがやはりわかるので、3女がジタバタしているのがなんだかおかしかったし、「ああお姉ちゃんたちはやっぱ妹を心配してるっていうか、気にかけてしまうんだよなー。可愛いからこそからかったりするんだよなー」って理解できるのに、三女には全然そのへんが伝わってなくて「あーでも下の反応ってこんなもんよねー」ってめっちゃわかる。兄弟なので、親の心子知らず、ほどではないんだけど、でもちょっと近いものがあるんだよね。年が離れてると特に。近いと「同等」なんだけど。

亜矢は夫の妹(いわゆる小姑・雪子)をかなり毛嫌いしてるのに、水絵は実はけっこうカッコいいと思ってるっぽいというか、クールで大人に書かれていた(けど、雪子さん、そこまで考えてるならその町出て行って自立しようとかはしないのかなー、そのへんは所詮お嬢様育ちってやつなのかなー、そのへんもっと詳しく訊けばいろいろ言い分が出てきそう、とか思ったけど視点が主人公なのでそういうツッコミは無いのだった)。

解説は橋本治で、ユニークな視点で、かなり面白かった。これは「書く人」じゃないと書けない解説だよなあ。そういう読み方もあるか~、って。

2012/08/20

ウはウミウシのウ ――シュノーケル偏愛旅行記

ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)
宮田 珠己
白水社
売り上げランキング: 298296

■宮田珠己
先日、ジュンク堂に行ったら、“もしも明日自分の店が閉まるとしたら、 どうしても今日売っておきたい1冊”フェアというコーナーがあって、壁いっぱいの本が書店員各氏の手書きPOPと共に紹介されていた。うおお、楽しい! 本屋大賞がちょっとメジャーな方向に行きすぎちゃっててまぁそれはそれでいーかもしんないけどどうせ書店員さんというプロが関わるならもっとマニアックなセレクトであって欲しかった気がすると常々思っている身には「キタコレ!」なナイスな企画である。

じっくり見せていただいている中にこれがあった。えっ、うわっ、宮田珠己の本だあ、アマゾンで在庫無かったやつだ~(版元の白水社には在庫僅少とある)。他の同氏エッセイとかで「ウミウシのことしか書いてない変な本らしい」とは知っていて、ウミウシにそんな興味ないからどうかな~と思っていたんだけど、うん、ジュンク堂書店のどなたかは存じませんが「明日店が閉まるとしたらどうしても今日売っておきたい」という心意気や良し!謹んで読ませていただきやしょう!(がしーん!と握りこぶしを固めたい)

本書は2000年2月に小学館から出版された単行本が何故か白水社のuブックスとして2007年3月に出されたものだ。白水のuブックスというと物凄いお堅いラインナップなんだが……正直そこにまさかの宮田本、しかも内容がウミウシって超異色というか違和感なんだが、いやはや素晴らしすぎる。「uブックス版あとがき」にはこうある。
いくら読んでも読者の見識が深まらないこのような本を、格式あるuブックスに収録しようなどと、見境いのない勇気をふるっていただいた白水社和久田氏には大変感謝している。
おおおお、わたしも宮田大兄のファンの末席をけがさしていただいているひとりとして、和久田氏に感謝の念を送っておきたいぞ。

いま引用した「いくら読んでも読者の見識が深まらない」というのは、もちろん著者の謙遜ではあって、読んでなーんにもタメにならないかどうかっていうのは読み手の意識の問題だからあれなんだが、まあ正直この本は「読んで自分の見識を深めよう」というスタンスで読むタイプの本でないというのはそのとおりかなと思う。

面白い文章を読みたい! 浮世のわずらわしさを気楽な読書でちょっと息抜きしたい! そんな貴方にこそ本書をオススメしたい。あ、あと海の生き物好きさんが読まれるとにこにこしちゃうだろう。

ウミウシとか変なカタチの海の生き物が好きで、じっくり観察したいという著者が世界のあちこちの海でシュノーケリングし、そこで見たことをご自身のイラスト付きで書いてある、ただし難しいことや勉強になることはいっさい抜きで、というのがこの本だ。1998年くらいはサンゴ礁があちこちで温暖化によって死滅している時期で、そのことへの憂いと警告というのが本書に出てくる唯一の(?)真面目な面だ。あとは愉しく笑って読まれたい。

海の世界ではダイビングのほうがシュノーケルより多いらしくて、出掛けるたびにダイビングを薦められたりなんだりするらしいが、宮田大兄にいわせればダイビングは「めんどくさい」んだそうだ。でもその主張がなかなか理解してもらえないんだそうだ。

それにしてもネットでウミウシの画像を検索していろいろじっと見てみたが軟体系がいまいち苦手なわたしにはちょっと……。海の中で生きているのを見るとまた違うのかもしれないけどうーん。
海の中の生きているイカはちょっと見てみたいと思ったけど。

※追記。2014年7月、幻冬舎文庫から増補版が出た模様。



2012/08/17

戦友の恋

戦友の恋 (角川文庫)
戦友の恋 (角川文庫)
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大島 真寿美
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-01-25)
売り上げランキング: 86005

■大島真寿美
6つのお話から成る、連作短篇集。
『読むのが怖い!Z』でこの作品を北上・大森両氏が絶賛されていて、著者に興味を持って、先日『ふじこさん』を読んでみたらすこぶる感動したので、先の書評で誉められていた作品そのもの(本書)も読んでみた。
正直言って、このタイトルは恋愛小説を守備範囲外とするわたしの購買意欲を1ミリもそそらない。「女の友情」小説だというのも、実際に女の身で、書かれている年齢からそう遠くないことがうすうすわかるから、あえてわざわざフィクションで「理想の女の友情」みたいなのを読みたいともあんまり、思わない。書店で平積みしてあってもスルーするだろう。わたしが本書を読んでみようかと思ったのは、主人公が漫画の原作者で、彼女とその担当編集者の友情を描いた小説だということを『!Z』で知ったからだ。そんな変わった設定のお話はまだ読んだことがないから興味を持ったのだ。

この小説は、タイトルからそのまま筋を想定できるような「親友の恋愛」を描いた小説ではない。
北上氏は「女の友情」を描いた傑作だ、とくだんの書評でも本書の解説でも書かれており、わたしもそれを踏まえて読んだが、そして確かに「女の友情」が強く深く静かに流れている小説ではあったが、しかし、ぼんやりと想像していた内容と実際読んでみてのそれが全然違うテイストで、「なんだこれ!」って感じでものすごく面白かった。

まず、主人公・佐紀(=あかね)のキャラクターが変わっている。変人とかいうほどじゃないけれども、なんだかよくわからない。明らかに自分の思考回路とは違う、でも読んでいると「ふーん、なるほどね」と付いていける。クラスにいたらなんだかあの子気になるな、友達になりたいなと思うだろう、そんな感じだ。
一方の玖美子さん、これはなんだか学級委員長とか生徒会にいそうな、積極的なキャラで、わりとよく見かけるタイプだが、彼女はもう故人なのである。――この設定が、実に、絶妙。

もし、玖美子さんがいまも生きていて、佐紀と一緒に仕事しつつ友達もやっている状況だったら、その友情をいかに綿密に書こうと、この小説とはまったく違うお話になっていただろう。亡くなった友人について悲劇的に書いたりお涙頂戴的に書くということは一切無く、わりとクールに淡々とした筆致で描いてあるのだが、でもだからこそ、人生のポイントで時折ふっと出てくる「戦友」の存在感の大きさは静かに説得力を持って読み手に迫ってきた。主人公の悲しみとか戸惑いとかそういうくくりでは表現できない気持ちが、心情が、じわじわと浸み込んでくるのだ。

あと、佐紀と玖美子さんの友情を描くのに、直接このふたりを描くだけでなく、その周囲の人間模様をも過去・現在、織物のように時間軸をずらして書き込んでいくことで、見えてくるものとか、本人が自覚していなかった想いを浮き上がらせるとか、そういうのがすごく上手い。

解説では北上氏が内容を「完璧だ」などと誉めるだけにとどまらず、装丁、装画、造本、書名、帯の惹句に至るまで素晴らしいと大絶賛されており、そしてこれは単行本についてのもので、わたしは文庫で読んだので造本などは確認しようがないのであるが、装画は探せるので見てみたら同じ画家による、違うイラストだった。解説でここまで誉められつつも同じ絵に甘んじないところに好感が持てた。むかし、星(新一)さんが真鍋(博)さんにだったと思うけれど、単行本と文庫本にはそれぞれ似つかわしい装丁、装画があるということを指摘されたというようなエッセイを書かれていたのを覚えており、昨今の単行本の装画をそのまま文庫でも流用するパターンにはちょっとがっかりさせられていたからだ。

なお、解説によればこの小説に脇役で出てきたキャラクターのほうが主役を張っている『ほどけるとける』という本も出ているらしい。ぜひ読もうと思う。

2012/08/15

ふじこさん

ふじこさん (講談社文庫)
ふじこさん (講談社文庫)
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大島 真寿美
講談社 (2012-02-15)
売り上げランキング: 374796

■大島真寿美
読むのが怖い!Z』には169作品が採り上げられているが、その中でこのひとが最も興味をそそられた。どこかで見た覚えのあるお名前だと思ってググってみたら『ピエタ』を書いたひと! あーそうかぁ。2012年同著でで第9回本屋大賞第3位ということで、実は書店で一度ならず手に取ってみて冒頭数行ナナメに読んでみては(まったく知らない作家さんだしなあ……)と最後まで読めるか自信がわかず、差し戻していたんだけど……そうかあ、このひとって北上さんが認めてずっと追っかけて読んでる作家さんのひとりだったんだ。
北上次郎印、といえばけっこうな信頼感である。ただ、今までの経験からわたしの個人的な趣味と100%合うかといえばそうでもなく、だから「まずは、文庫で様子見しよう」と書店で文庫裏のアラスジや冒頭数行読んでみた感じから選んでみたわけだが。

大正解!特に「ふじこさん」(2007年6月、講談社/書き下ろし)!
めちゃめちゃ良かった。相性どんぴしゃ!ってゆーか上手いなああ(感動)。
ラスト1行に、目頭が熱くなって、びっくりした。
面白いとは感じていたが、自分がそこまでこころを動かされて読んでいるとは自覚していなかったのだ。
なんだこれ。と思って残り2篇も読んだ。それから「ふじこさん」をもう一度ぱらぱらと拾い読みした。
――やっぱり、良い。

小学校6年生の少女・リサが主人公で、だから児童文学っぽくもあるんだけど、でもそういうスタンスじゃないっぽい(後で「WEB本の雑誌」作家の読書道を見たらやっぱりそういう趣旨のことが書かれてあったので成る程と思った)。

あーこのくらいの年齢のときってこういうふうな思考回路してたような気がするわ~。としみじみ懐かしく思う表現がそこここに見受けられて、驚愕してしまった。リサの視点から描かれる両親・母方の祖父母・そして藤子さんの言動からは、小学生の思惑を超えた大人のドロドロも透けて見えるのだけれど、大人の視点で書いていないからこそ余計な枝葉が無くて本質がクリアになっている。この父親のダメさ加減はほんとにリアリティがあって、解説にも書かれていたけど、何処にでもいそうな、社会的にはそれでまかり通ってるけど身近な人間にはほんと歯痒いタイプで、それを幼気な娘を演じつつクールに切って捨てているリサちゃんは大変だなあ、と思う。

大変。
そうだそうだ、子どもって、子どもだってだけで、大変なんだ。
おとなは、そりゃ背負ってるものとかしがらみとか子どもより多くなってるけど、簡単には踏み切れるものではないけれど、でもほんとにホントの最終的には、気に入らなかったらどこへだって行って生きていける。けど、子どもにはそんなチカラは無いし、「世界」もうんと狭い。だから、もう「ダメ」ってなったら、死んじゃうしか逃げ場が無いように思い込んで絶望してしまう。……。

本書には表題作のほか、「夕暮れカメラ」(「小説現代」2005年7月号)「春の手品師」(「文學界」1992年6月号・第74回文學界新人賞受賞・デビュー作)の計3篇が収められている。「春の…」だけ、ちょっと現実と非現実の境界が曖昧というか、ファンタジックな展開があるので、最初読んでいてちょっと戸惑った。

この3篇の主人公は別々の人間だけど、どれも十代の少女で、そしていわゆる“複雑な家庭環境”の真っただなかに、在る。表面上は問題ないようにずっと振る舞っているが、3人とも、生きていくそのことにしあわせを見いだせておらず、その悩みを表出する術を持たず誰とも共有できず、ひとりで抱え込んで苦しんでいる。先の人生に希望が持てない、この先も持てるとは思えない、だから死んでしまいたいと思ったりしている。

そういうのを読んでいると、そんな人生の最初のほうで死んじゃったらもったいない、おとなになれば今よりは視野が広がるし選択肢も増えるし、苦しみもあるが楽しいことだってこれからいくらでもあるはずだよ! と両腕をつかんでガクガク揺さぶりたくなるのだが、そういうメッセージをそんな(我ながら説得力があるとは露ほども思えない)やり方じゃなしに、もっともっと上手に、こころに響くように書いてある、のがこれらの作品だと思う。

2012/08/13

読むのが怖い!Z ――日本一わがままなブックガイド

読むのが怖い!Z―日本一わがままなブックガイド
北上 次郎 大森 望
ロッキングオン
売り上げランキング: 12876

■北上次郎・大森望
不覚。
先月7月に本書は出版されていたらしいのだが、その情報をつい先日まで知らなかった。つれづれなるままにネットサーフィンをしていたらもう1つの対談式書評集の新しいのがやはり久々に出ていることを知り、詳細をチェックして(うーんあんまりそそられないし今回はお見送り、かなぁ)いたらそのレビューの中に本書の出版をほのめかす記述があり、あわてて検索したらヒットしたのだ。ぎゃー。こっちは出てたら速攻買うのに!(ア○ゾンのオススメにちいっっっとも上がってこないんだもん、てゆーか新刊刊行告知マジでしてほしい)。

業界の大御所・もうヲレは読みたいものしか読まんと言い切るスナフキンのような書評家・北上次郎御大(=目黒考二)と新潮の編集者から書評家になったという理知派・おなかのなかはマックロクロスケ・大森望がお互いの言うことはちっとも聞かず(?)、自分のオススメをわあわあ主張しててとっても楽しい「書評漫才」第3弾がついに出た!
ご本人たちは大真面目なので、「漫才」と言われると心外みたいだけど(北上氏の巻末コメント参照)、いやー、真面目だから面白いんだよね。読んでいると自然に笑っちゃう。おふたりのキャラクターは「本の雑誌」とかでひしひしと感じ取っているから、その信頼感と不信感(笑)のバランスとかね。北上氏ががんがん本音で攻めてる一方でそこはそれ、オトナの気配りというかいろいろあって理性的な発言を表面上は貫く大森氏の図とか。お、面白すぎる……。

今回のは2008年春号から2012年春号までの連載分(掲載誌「SIGHT」は季刊)。
対象となった書籍はどーんと全169冊!
前巻までと同様、毎回「編集部選」「北上選」「大森選」を各3冊ずつ、計9冊をそれぞれが読んで評価点を付け、それをもとに対談するという形式(冬号は「ブック・オブ・ザ・イヤー」を選ぶので両人5冊ずつ)。ただ、この評価点はあくまで目安程度に見て、それぞれの書評家がなにを話すかをじっくり読むのが肝要。

わたしの読書傾向が最新話題作を追っかけるのからどんどん外れていっているので、既読作品は正直めちゃくちゃ少なかったが、さすがにすべて売れた作品ばかりなので、著者名やタイトルは知っているものがほとんどで、したがってその書評を読むのは大変に興味深かったし、「次に読みたい本」を探すのにうってつけであった。

未読本のはネタバレしないように書いてくれてあるので、大丈夫。あと、自分で雰囲気的に「白紙で読みたい」と思ったらそのへんはナナメに読んでおくとかの調整をすればよい。

毎回読んで思うけど、本当にプロの書評家さんというのはいろんな本を、きちんと追いかけて読んでらっしゃるなあということ。あと、作家の内情とかも詳しいので実はこれには実体験があって……とかいう情報も書いてあったりして、勉強になった。

表紙は「本の雑誌」でお馴染みの沢野画伯。
「Z」だからって最終回じゃないよねえ? 雑誌ではまだ連載続いてるみたいだし。でも「Z」の次はどうするんだろう?

『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』
『読むのが怖い!―帰ってきた書評漫才 激闘編』

2012/08/12

なれる!SE 7 ――目からうろこの?客先常駐術

なれる! SE7 目からうろこの?客先常駐術 (電撃文庫)
夏海公司
アスキー・メディアワークス (2012-08-10)
売り上げランキング: 27

■夏海公司
今回のテーマは「客先常駐」。
まあ、平たく言ったら派遣社員とか、契約社員みたいなものらしい。
んじゃーまあ、働く場所が違うだけで、やることはいつもと一緒なわけね?
――と思った。この話の主人公、桜坂工兵も新人だから、同じ認識で、むしろ「大企業で働けるって憧れるー」みたいなミーハーなノリさえあった。

実 態 を 知 る までは。


       (ノ`△´)ノ ┫:・'∵:.┻┻:・'.:∵


いやーこれ、どこまでよくあるハナシなんスかねえ~。なんかいつも妙に説得力があって、とても絵空事と思えない細かいディテールの積み重ねで、「うぐおおお」と首を絞めつけられていく感があるこのシリーズなんだけど、今回は作業が大変とか環境が劣悪、とかに加えて人間関係がちょーーー★さいあく♪(せめて可愛く言ってみまシタ)みたいな。

このお話読むとほんっと、ふつうに働けるのって有難い……としみじみ、思うのと同時にSEさんの労働環境ってなんでそんな。と思う。だって「こんなのお話だから面白くするために有り得ないくらいヒドいこと書いてるんざんすよねきっと?」とか思いたいのにアマゾンのレビューとか見てるとそうじゃないっぽいんだもん。「いやあの小説の状況だったらまだマシ」とかいう現場の声とかあるんだもん。

……いやわたしは これは遠いお星さまのもとの物語☆ とか思ってフィクションとして楽しめるんスけど現職SEの方々はこういうの読んでて精神状態大丈夫なんでしょうかねえ。フラッシュバックしちゃうとか、余暇に休息してるはずが脳内お仕事モードに戻っちゃったりなさらないんでしょうかねえ。。。
ていうか普通にひととしてダメすぎるだろ、っていう、いいのかこんなのがまかり通ってて。


   (ー'`ー;)(ー'`ー;)(ー'`ー;)


ところで今回のエピソードに無関係だから出てこないと思っていた知的クールビューティー・橋本課長vが伝聞のカタチとはいえ登場なさったのが望外の喜びvvv
か、カラオケとかなさるんだ~。
しかもレパートリーがあれとかそれとかまさかの原曲キイのあれだとか……
面白すぎ☆っすわ~。
いやーマジで橋本課長が心のオアシス状態。

そして姪乃浜梢。
なんかもう仕事的には素晴らしいけどイチ女性としては完全にイっちゃってるというか電波系というかかんなりヤヴァイんだけど桜坂君放置しててだいじょーぶなのかー???

今話にも新しい女性キャラが登場するのはさすがこういう媒体は萌えが肝心なんだなーと感心しますた。
に、しては表紙の立華ちゃんがいっっっつもおんなじ服装なのは何故!と思うけどね。いろいろお衣裳持ってるんだから着せ替えてあげてよ絵描きさん!

2012/08/11

死の扉

死の扉 (創元推理文庫)
死の扉 (創元推理文庫)
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レオ・ブルース
東京創元社
売り上げランキング: 41990

■レオ・ブルース 翻訳;小林晋
1955年に原書が出て、本邦では1957(昭和32)年に翻訳が清水俊二訳で刊行され、のちに創元推理文庫に収録されたものの早くから絶版状態になって久しかったもの。先日『三人の名探偵のための事件』を再読したが、それを含め、日本ではあまり訳されていないようだ。
「三人の…」はビーフ巡査部長シリーズで、今回読んだ「死の扉」はキャロラス・ディーン・シリーズ。このシリーズは原書では20冊以上出ているようだ。

英国の、ある流行らない小間物屋の店主、エミリー・パーヴィスが深夜何者かに惨殺された。そしてそれを発見した、巡回中だった巡査も犠牲となった。
小さな町で起こった「本物」の殺人事件に、歴史教師・キャロラス・ディーンは素人探偵として犯人探しに乗り出すことになる……。

名探偵役が警官とかじゃないくせにあんまり個性が無くて(ほかの名だたる名探偵に比べれば普通のひと過ぎる)、黒子っぽいところが地味だが、そして事件もわりと地味だが、こつこつと地道にいろんなひとに話を聞いて調べていって……という本格らしい展開は好ましかった。
途中で(ぼかしてるけどやばいかもなので白文字)「うーんこれって全然こっちの可能性について書かれてないけどもしそうだったらちょっとしたどんでん返しだなー。いやでもそれはこの地道な運びからは無いかー」と思ったりしていたら、最終部になってまさにその予想の展開になったのでびっくりした。いやでもバランス的にどうなのかとは思うが……ちょっと弱くないかなあ。

真面目なミステリなのに、随所にユーモラスなシーンがあるのがちょっと意外だった。特に、校長の耳のくだりは内田百閒の「長い」を使った手紙のくだりを思い出させて大変面白かった。このへん、翻訳がすごく自然だけど、原文そのまま訳しただけなのかな。ことわざとか言い回しって国によって違うけど。

この著者は、「三人の…」の中に名探偵のパロディを出したりして相当古典好きだと思ったが、本書でもミステリファンのおじさんが出てきてあれこれ熱く語るシーンがあって、本格好きはニヤリ、とすること請け合い。なにげに軽く、名作のネタバレしてるけどね。当然既読でしょうな、という目くばせなのか。

2012/08/09

ひよこはなぜ道を渡る 【再々読】

ひよこはなぜ道を渡る (創元推理文庫)
エリザベス・フェラーズ
東京創元社
売り上げランキング: 572506

■エリザベス・フェラーズ 翻訳;中村有希
トビー・ダイク&ジョージのシリーズ第5作、3回目なのでさすがに途中で犯人を思い出したけどダイクとジョージのかけあいが面白かったしミステリとしても面白かった。

ふつうの感想は前回書いてしまったので、今回は引用。
探偵がうまくいかず、ちょっと八つ当たりしてるトビーと、ひょうひょうとそれを受け流すジョージというシーン。


 顔をしかめたトビーが家にはいって最初にしたことは、大股で居間に直行して、ラジオのスイッチを切ることだった。
  突然の静寂に目を覚ましたジョージは、ソファの上でもぞもぞ動いて顔をあげた。
 「やあ」ジョージは咽喉の奥から声を出した。「検死審問、よかった?」
 「なんでこんなしょうもないラジオを聴いて時間をつぶしてるんだよ」トビーはスーツケースを乱暴におろすと、詰め寄った。
  ジョージは身を起こすと、ぽっちゃりした手で黄色い髪をかきあげた。背が低く、えくぼのある薔薇色の顔は、まるでゴムでできているようで、おっとりした曖昧な表情はほとんど動かない。
 「わからないけどさ、トビー――ぼくはただ、そういう習慣のある人間のひとりってだけなんじゃないかな」ジョージは答えた。「ぼくらのほうが大多数だと思うけど」
  トビーは椅子をガスストーブに近寄せた。「なんでぼくが頼んだとおりにマロウビー村に来なかったんだよ」
 「言ったとおりの理由でだよ」
  トビーは鼻を鳴らした。
 「お茶をいれてあげようか」ジョージが提案した。「寒そうだね」
 「どうせそれが来なかった本当の理由なんだろ。きみが外で動き回るにゃ、寒すぎるからな」


毎月新聞

毎月新聞 (中公文庫)
毎月新聞 (中公文庫)
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佐藤 雅彦
中央公論新社
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■佐藤雅彦
このひとは、本文を読んでいるとわかるが、NHK「ピタゴラスイッチ」の生みの親的な存在らしい。あと、「おかあさんといっしょ」で歌われ大ヒットした「だんご三兄弟」の作詞家でもあるそうだ。1954年生まれ、現在は東京藝術大学大学院映像研究科教授。

この印象的な表紙、ものすごーーーーく既視感があって(特に見出しの「じゃないですか禁止令」)、既読だったっけなあ?と思ってパソコンの中を調べたけどデータは無かった。実際読んでみると、読んだ覚えもなかった。ので、単行本出版時(2003年)か文庫出版時(2009年)に店頭で表紙を見て強く印象に残っていたのだろう。最初の数ページくらいは、立ち読みしたのかも知れないが、覚えていない。

本書は、「毎日新聞」に月1回、ミニチュアの新聞みたいにして連載されたものに加筆修正が加えられ、書籍化されたものらしい。連載は1998年10月から2002年9月までだ。
古いなと感じるだろうかと思ったらそうでもなかった。というか、「あれってもう10年前のことか……」とか思ってガクゼンとすることが何度もあった。あー年をとるってこういうことっすね(苦笑)。

10年前のエッセイなのに、なんで古く感じないかのもうひとつの理由は著者の頭のやわらかさというか発想のユニークさに拠るところが大きいと思う。なんていうか、けっこう基本的なところ的確に突いてくるなあ、という感じで、そういう真理みたいなのは普遍性があるのか、今でも根本はそのまま通用するなあとかそういう感じで。

端っこに「この月の出来事」で大きなニュースになった出来事が箇条書きされており、なかなか興味深かった。

「じゃないですか」というのは「ほら、私たち学生って、こういうレアものに弱いじゃないですか」と言われた著者が「えっ、弱いじゃないですかって、そんなこと知らないよ……」と戸惑い、その言葉に含まれるいろんな要素に対して憤りや不安が湧きおこってきた、という趣旨の一文なのだが、まあわかるのだが、後半やや押し付け気味というかエスカレートしすぎの感は否めない。というか、わたしはどっちかっていうとごくごく個人的な意見を言っているのにもかかわらず「私たち学生って」となんの根拠があってかしらないが一般化したように、さも自分が学生の代表かのように発言するそのことのほうがうとましいと感じてしまうが……。

まあでもそんな調子で難癖つける偏屈おやじのエッセイというわけではなくて、ちょっと視点を変えてモノゴトを見てみよう、って感じのライトなノリなので、気軽に、楽しく、イッキに読める。

2012/08/07

なみのひとなみのいとなみ

なみのひとなみのいとなみ (幻冬舎文庫)
宮田 珠己
幻冬舎
売り上げランキング: 10908

■宮田珠己
タマキングこと宮田珠己のエッセイといえば紀行文かちょっと風変わりなピンポイントにスポットを当てた趣味本がほとんどなのだが、本書は珍しくそのどちらでもない、日常もの。
朝日新聞出版「一冊の本」2006年4月号~2008年7月号まで掲載されたもの、「産経新聞」夕刊に2006年4月13日~2008年2月28日に掲載されたもの、その他2001年~2008年くらいの間にいろんな媒体に掲載されたもの、に、文庫用の書き下ろしを加えてある。要は、いままでに書かれた他の本に収録されないノンジャンルものをこの際全部まとめちゃおう、という感じ満載である。

お徳かどうかはうーん、実際読んでみて、「やっぱり宮田大兄は紀行文が一番面白いなあ」と思ってしまったので、しかもいろんなところに載っているのがたくさん、ではあっても総ページが250ページそこそこなので(要は一文が短い)。

宮田珠己というひとはその風変わりな著作とあまりイメージが結びつかないのだが、1964年に兵庫県で生まれ、大阪大学工学部土木工学科に入り、卒業後はリクルートに勤めていたという、まあお勉強が良くできた優等生で、バブル期にお給料の良い会社に入って10年近く勤めていた、……という経歴をもつひとなのである。
あんまりにも作風と合わないからか、近著からはその経歴が省かれているが、本書の内容にはリクルート時代に配属された仕事が自分のやりたいことや考え方と合わずに悩んだりやる気が出ない様などが結構まじめに書かれていたりして、なんだかずいぶんナイーブである。たいていのひとは「仕事だからしかたない」と割り切って働くんだけど、このひとはそういうことが出来ないタイプだったみたいで、いろいろ苦しかったようだ。

宮田大兄の当時の悩みはわからないでもないけれど、ひとつ言えるのは、バブルのときに就職した世代と、就職氷河期にさんざん苦労の末就職した世代とでは、やっぱり根本的に違うなにかがあると思う。

あと、文庫の帯に「おお、神よ、私は、働きたくない。」とか引用してあるのだけれど、このひとの場合の「働きたくない」というのは「自分が納得できないような仕事はしたくない」というだけのことであって、労働そのものを拒否しているわけでは無い。文中にもあったが、リクルート時代だって、自分のしたい仕事の部署に異動出来てからは、ひとが変わったかのように働きまくり、結果的に体を壊したりして、でもずっとこっちのほうが精神的に楽だった、という趣旨の内容が書いてある。サラリーマンを辞めて、旅行とかをたくさん出来ることになったけれども、それだってそのことを文章に書いて、ちゃんと飯のタネにしてるんだから、働き者じゃないふりをしているが、根は真面目なのだ。それは読んでたらわかってくるのだ。

というわけで、真面目なひとなんだけど、レール通りに進むのが性に合わないという性分も持ち合わせていて、なんか、どっかで「どーん」と軌道を外れて飛んでいく、という習性があり、当人は己らしく方向修正しただけのことなのだがそれが周囲にとっては意表を突いてくるのでちょっとあんまり一般的には参考にならない、というところかと思う。

それにしてもフィクションを書こうとしている、という決意だけは数年前から何度か読んだ気がするのだが……果たして実現するのか、どうもあやしくなってきたなあ。

2012/08/05

いろんな気持ちが本当の気持ち 【再読】

いろんな気持ちが本当の気持ち
長嶋 有
筑摩書房
売り上げランキング: 503343

■長嶋有
休日の家読書、ざぶとんを枕に寝転がって読むのに肩がこらない内容のをと思ってセレクト。
手持ちのは単行本だが、すでに文庫版も出ている。

長嶋さんというのは「妄想」が得意な方だなあとしみじみ思った。というかその内容が変わっているというかオタクっぽいというのか、なんというのか。たとえば「弟子」が欲しい、という妄想はまあわかるとしよう。でもその妄想上の弟子に既にポンポン痛い、じゃなかった、ポンポン板井という名前まで考えてあるというのはやっぱり純文学作家ゆえの特性??? ――イヤ違うな、やっぱ長嶋有だから、だろう。

自分は弟子がいたら楽しいかな?と一瞬考えてみて、どうやらそっちより自分が弟子になるシチュエーションのほうが気性に合っているように思えた。イヤ実際弟子になったらめっちゃ大変そうだからなりたいとは思わないけど。――っていうか、なんか長嶋さんのいう「弟子」って少年漫画の世界だよね?なんか妙に熱血というか美化された師弟の道、みたいな雰囲気があって全然「現実」っぽくない。要は自分が漫画の世界にひたってみたい、ってのがホントのところなのかなー。

長嶋さんは漫画好きで、本書でもいくつか具体的な作品について語っておられるが、今回読んでいて「パタリロ!」がちょっと読みたくなった。昔、アニメで見たけど。コミックも文庫で少し読んだけど。全貌はとてもじゃないけど……あれ全部で何巻あるんだろう?っていうかまだ連載続いていたような気が。

巻末に「自己鑑賞と補遺」があるのがこれまた長嶋有らしい。

2012/08/04

野球の国 【再々読】

野球の国 (光文社文庫)
野球の国 (光文社文庫)
posted with amazlet at 12.08.03
奥田 英朗
光文社
売り上げランキング: 185718

■奥田英朗
野球好きの、野球好きによる、野球好きのためのエッセイ。
読むたびに、良いなあ、好きだなあと思う。
マイ・オールタイムベストに入れてもいいくらい。ついでに言うと奥田英朗はこのあと何作も同種の企画エッセイをものしているが、やはり一番面白いのは本書だ。
ストレートの感想は既に何回も書いたので、今回は思いっきり変化球でいこう。

文中に、年齢に絡めての感想などが散見されたので(年齢を重ねることによって飲食店などで「良い扱い」を受けるようになったとか、若い頃は服を買うのが苦手だったが今は楽しいとか)、調べてみると本書の単行本は2003年に光文社から出版されていて、著者は1959年(昭和34年)生まれなので、だいたい43~44歳くらいのときに書かれたものらしかった。
もう若くはないけど社会的には立場も収入もそれなりに安定していて、しかも独身。
ある程度の贅沢が出来、時間的な拘束も少ない自由業ならではの内容であるとは言えると思う。羨ましい身分だなとは思うが、ネット上でたまに見掛けるように「良いご身分だな」とは決して思わない。『最悪』(1999)『邪魔』(2001)『イン・ザ・プール』(2002)を書いた“奥田英朗”が書くお気楽エッセイだからこそ、商品として通用するのだ。誰にでも出来る仕事では無いのである。まぁ、いちいち宿泊先が最高級であることや、旅行中の自分のコーディネートを毎回、上着やボトム、靴のブランド名までこまごまと書きこむのはちょっと成金オジサンっぽいなーとは思うけど。CPカンパニーがお気に入りだそうだ。

エッセイ中でしばしば執筆に行き詰まって悩んでいたり、プロットを立てて書けないので毎回次の展開を無から絞り出さねばならない苦しみを書いたりして「なんで作家になったんだろう」的な愚痴みたいなのをこぼしていたり、別の職業に変わろうかなんて「隣の芝生」的なことを冗談ぽく書かれたりしているがこのときはまだあの傑作『サウスバウンド』も『空中ブランコ』(直木賞受賞作)も世に出ていなかったのだなあ、と思うと感慨深い。

2012/08/02

なれる!SE 6 ――楽々実践?サイドビジネス

なれる!SE〈6〉楽々実践?サイドビジネス (電撃文庫)
夏海 公司
アスキーメディアワークス (2012-02-10)
売り上げランキング: 20902

■夏海公司
いままでずっと長篇だったのがこの巻は中篇1つと短篇4つ。最初の話が150ページくらいで、残り150ページくらいを4つのお話で分けてある。

エピソード1 楽々実践?サイドビジネス

学生時代のゼミの飲み会で再会したのをきっかけに、西新伊織ちゃんという(外見は)ソー・キュートな同級生から相談事を受ける工兵。最初は簡単な相談だったのだが伊織ちゃんは更にバイトの話を持ちかけてきてそれはいっけん美味しい話のようだったのだが……?

桜坂工兵くん。キミ、可愛い女の子にコロッと騙され過ぎ(ー'`ー;)
てゆーか、あんなに忙しいのに更にサイドビジネスて。バイトて。
なーんでそう簡単に鼻の下のばすのか、その対応はまっっっったくモテない喪男の思考回路で、事実、学生時代はそうだったみたいなんだけど、いまや泣く子も黙るライトノベルの主人公で出てくる女性キャラに総モテ状態じゃないか。さっさとあの中の誰かとちゃんとまともなお付き合いしなさいよっ!あっちにもこっちにも中途半端に良いカオしてるからこんな性悪女に引っかかっちゃうんだよー。

読み終わってもこの伊織というキャラのあまりの酷さにけっこうずっと気分が悪かった……だって制裁は受けたけど絶対悪いと思ってなさそうだもん。謝罪ももちろん無かったし。っていうか工兵君、ゼミ時代の友人のあの電話無かったらきっともっと長く騙され続けてたよね? 気の毒。

エピソード2 今すぐ始める?検証作業

なんかよくわからんけど社長のコネで新しい機械を試しに使って検証して良かったら使ってねv という簡単な話かと思っていたらいきなりまた誰かさんのせいでビジネスの話になっていて!?
男の子ってメカ好きなんだなあ。というお話。

エピソード3 絶対合格?採用面接

SE業界の採用面接ってこんな感じなのかー。一般企業とちょっと質問内容が違うんだなあ。現場担当者面接だからだろうけど。
この話でカモメさんのフルネームがやっとこさ判明する。

エピソード4 心に残る?3分間スピーチ

橋本課長キタ━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━!!!!

やっぱり部下に人望あるんだなあ、橋本さん、さすがですv
それにしても工兵君、何度も言うけどキミ、不特定多数の女の子に無駄に優しすぎ。学生時代ならともかく、社会人の付き合いで、単なる呑み友達に練習そこまで付き合うかー?意味わかんない。
ラノベに詳しいウェンディさんに言ったら「そんなラノベでは当たり前の設定にツッコまれても……」。えー?ラノベの男の子ってもれなくみんな優柔不断なの?( ̄Д ̄;)

エピソード5 完全?禁酒マニュアル

いままでずっと工兵君の一人称だったのが、このお話だけ姪乃浜梢ちゃんの一人称語り。
これが大当たりー!!めっちゃ面白いっ。いやー夏海さんの文体は波長合うってずっと思ってたけど梢ちゃんのこの話は中でもすごーく良かった。面白すぎる~(_≧Д≦)ノ彡☆

梢ちゃんの酒癖はしかし、相当面白いなあ。遠くから見てるぶんには、だけど。記憶飛ぶしそれまでの言動がハジけ過ぎとゆーかなんでそんなベタベタの渾身のギャグを命懸けでやってるんスか、って感じで。
気が付いたら道路の中央分離帯で寝てたとか……危険すぎだろ、しかも若い女の子だから別の意味でも危ないし。ちゃんとタクシー乗せて返してくれる相手と呑まなきゃダメだよこういうひとは……。

2012/08/01

なれる!SE 5 ―― ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア

なれる!SE〈5〉―ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア (電撃文庫)
夏海 公司
アスキー・メディアワークス (2011-09-10)
売り上げランキング: 7317

■夏海公司
第5巻。
読んでる人間には桜坂工兵が仕事にどんどこのめり込んでいくさまが手に取るようにわかって、「あーまあ、新人だし、いろいろ新鮮なんだろうなあ」とか生暖かい目で見ている感じなのだが、どうやら自覚が無かったようである。先輩の藤崎さんとかカモメさんが忠告しているのに「ちょっとだけ、ちょっとだけ」とやってるうちにどんどん帰れなくなっている。
わかるわー。
仕事ってある意味主婦の家事と同じで、やろうと思えばいくらでも出てきたりするんだよね。忙しいときほどどんどこ仕事集まってきたりするし(ー_ー)。だから自分の中できぱっと「もう今日はここまでっ」って帰れるときは帰っちゃわないとだめなんだよね、まあ中途半端なところで帰ってもかえって気になって寝つき悪くなるとかあるんだけど……。
最初に名前をみて「工兵」って働き蜂みたいな字面だなあと思ったものだけど(工員と兵隊の連想から)、名前とキャラが見事に一致している。

今回は桜坂君、初出張の巻。
しかもいきなり福岡→広島→神戸→京都→みたいな。スムーズにいってさえ結構キチキチのスケジュールっぽいのにお約束どおりトラブルの続出で……しかも「え?そんなグダグダな」「無責任な」というレベルの相手のミスによってどんどん無駄な時間が経っていく感じで……しかもこういうの、小説上だけの特別な例じゃないようなのである。けっこうリアルなんだそうである。大変だなあ、としみじみ思った。わたしは「臨機応変」が苦手で、こつこつ積み上げていく地道な仕事とかは得意なんだけど、時間切られて変更ありまくり、とかめっちゃ苦手でドッと疲れる。絶対SEには向いてないな、と実感した。

それにしてもこのシリーズだけなのか、ラノベ全般そうなのか知らないが、巻頭カラーページが数ページいつもあるんだけど、そこで小説の何シーンかがキイとなる一文と共に描かれているわけで、つまり本編読む前から「肝シーン」「売りシーン」のネタバレが毎回ご丁寧に行われているわけなんだけど。
これってどーなの!?

今巻では出張中にも関わらず姪乃浜梢ちゃんとの絡みが何故かあることや、桜坂君の妹が出てくることやその容姿、ついでに室見さんが一緒に実家に行っちゃうことまで最初っから教えられちゃうわけである。いや別にその情報要らんかったけど……ていうか普通に順番に読んで行って「えっ」とか「おお?」とか驚いたほうが嬉しかったと思うんだけど。まあ、事前に知ったからといって大した害はないんだけど。むー。。。

室見立華さんはケンカっ早かったり、方向音痴だったり、人見知りだったりして(前巻の橋本課長のいる飲み屋での様子は正直社会人として有り得ないレベル)、「このひと大丈夫なのかなあ」と危ぶんでいたんだけど、桜坂君の両親に対する態度や口の利き方は別人としか思えないほど立派な社会人のそれで、その描写に「旧家の姫君のよう」とか書かれてあって、超違和感。「凛としている」とかそういう意味なんだろうなあ。うーん。じゃあ普段のあれはなんなんだ。どっちが本当なんだ。ひとにはいろんな面がある、ってそれはわかるけどあまりにも一致しなさすぎだろう。スイッチ入んないと、こういう態度は取れないとか? っていうかふだんひとりで客先行ってるときとかどんな感じなんだろー。

ここまで読んできての通しの感想になるが、ほんと女の子の登場人物多すぎのくせに工兵君と同世代の男性キャラがメインに一人もいないってある意味徹底してるなあ。出てくる女性キャラはみんな工兵君とお近づきになりたそうだし。
いっやー、モッテモテやなあ工兵君。そら仕事できるしな?容姿もイラストで見るかぎり細身の優男やしな?素直な性格でツッコミもちゃんと出来るしお酒も強そうやし頭も良いんだろうなあ。

こんな桜坂工兵に(社会人になってからは時間的に不可能っぽいが)学生時代からの彼女とかがいないとしたらおかしいんだけど、1回も出てきたことが無い。過去の振り返りとしても登場しない。カモメさんにどうやら一番関心があるっぽいのだけれどそれが恋心というよりかは変態は言い過ぎにしてもスケベゴコロとしか思えないものばかりで真剣味に欠ける。そして梢ちゃんの押せ押せアタックに簡単に鼻の下を伸ばすも、彼女の気持ちを真面目に忖度しようという姿勢がいっさい見受けられないのは如何なものか。なに天然・鈍い?あれだけストレートに好意寄せられてたらわからん筈があるかー、ちゃんと対応しろー。

と、ちょっとだけ思ったけど実はあんまり深くは思ってない。
だってこれ男性向けラノベらしいから。主人公総モテとかツッコむだけ無駄らしいから。しかもラノベの対象年齢って中学生とかだから、「可愛い女の子」が完全に「記号」なんだよなあ。
生々しいのは、この世界には不要なのらしい。