2012/07/31

なれる!SE 4 ――誰でもできる?プロジェクト管理

なれる!SE 4 誰でもできる?プロジェクト管理 (電撃文庫 な)
夏海 公司
アスキーメディアワークス (2011-05-10)
売り上げランキング: 10156

■夏海公司
【やっほー☆ 今日のお食事会ちょー楽しみにしてるねー♪ 桜坂さんも遅れちゃだめだにょ(^o^) 仕事しすぎは身体に毒だにゃー(>_<)】
……問題。
このぶっとびメールは誰が打ったものでせう?


    ..。.:*・゜(n´∀`)η゚・*:.。.


3巻でけっこーおっきな案件をゲットしたのでその話かと思いきやそれはそれでやりつつの、また新たなお仕事が降りかかってくるのだった。1巻ごとにSEのいろんな種類のお仕事紹介、という体を取っているからまあ当然っちゃー当然の展開なんだけど、いやはや。大変だなあ、あれもこれもそれもって。

今回のテーマはプロジェクト管理。1つのお客さんがなにかする(たとえば今回は本社移転)にあたって、その業務ごとに区分けして、複数の業者に依頼してそれぞれが作業にあたる、そのそれぞれの作業の線引きとかスケジュール調整とかその他諸々を取りまとめていく、……それがプロジェクト管理担当者の仕事、らしい(間違ってるかも、詳しくはこの本を読んでね)。

そーゆーのって課長とか次長とかそのへんの、ある程度仕事経験があって、年齢も重ねてて、人脈とかいろいろそれなりに持ってるひとが適任なんじゃないかなーと思うんだけど、まあSE業界のことは知らないけど、とりあえずそれを最初は違う会社の違うひとが任されてたんだけど、なんの因果か、すったもんだの末に桜坂君がまたやんなきゃだめなことに決まってしまうんである。

いつのまにかバリバリのワーカホリックになっている桜坂であるが、これはなかなかの難問で。だって相手機械じゃなくて人間なんだもんなあ、室見さんもあんまり得意じゃなさそう。

今巻には姪乃浜梢ちゃん出てこない。しかし新キャラ・薬院加奈子というのが登場する(また女の子。SE業界は女性社員率低いはずなんだが)。そしてそして。
なんと橋本課長もどーんと出ておいでになる、しかもけっこー意外な面が暴露されたりして、前巻でもオトコマエな素敵なひとだなあって思ってたけど今巻でちょうファンになったよ!

2012/07/30

三人の名探偵のための事件 【再々読】

三人の名探偵のための事件
レオ ブルース
新樹社
売り上げランキング: 437831

■レオ・ブルース 翻訳;小林晋
本書の原版は1936年に出版されたもので、1998年に邦訳が新樹社から出た本格ミステリ、調べてみたけどいまだに文庫化はしていない様子。
3回目の読書で、細かい流れなどは全部忘れていたので新鮮に読んだ。

今回も暑い休日の良いお供になった。舞台はイギリスのお屋敷、起きたのは密室殺人、まず巡査が呼ばれるが難事件の解決にはやはり名探偵がいなければお話が成立しないのである。

この小説は、本格ミステリをパロった、本格ミステリ。
エルキュール・ポアロ、ピーター・ウィムジイ卿、ブラウン神父という3人の名探偵をパロった3人が登場する。パロると言っても、茶化したり、バカにしたりするのではなくて、それぞれの探偵への深い関心とその著者への敬意が感じ取れるので全然イヤな感じはしない。
また、語り手はワトソン役なのだが、ときどき「素」の顔を出して本格ミステリに対するツッコミを入れた後、我に返ってワトソン役に徹しなければ……というふうになるのもおかしい。

それにしてもじゃあ名探偵の代名詞たる“シャーロック・ホームズ”はどこにいるんだ?という疑問を抱いたりしていたのだが、よく考えるとそれもちゃんと解決していると言えるのだった。成程なあ。
やっぱ夏は本格ミステリだのう。


アクロイド殺害事件 (創元推理文庫)
アガサ クリスティ
東京創元社
売り上げランキング: 94190


ナイン・テイラーズ (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 78435


ブラウン神父の童心 (創元推理文庫)
G・K・チェスタトン
東京創元社
売り上げランキング: 72335


2012/07/29

なれる!SE 3 ――失敗しない?提案活動

なれる!SE3 失敗しない?提案活動 (電撃文庫)
夏海 公司
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 6588

■夏海公司
このシリーズの主人公、桜坂工兵はこの3月に大学を卒業して、翌月4月にスルガシステムという(弱小・DQN)企業に入社したばかりの新人である。
そして、第3巻のお話は、同じ年度の6月の出来事である。
つまり、入社2か月のときの案件なのである。

――くどいくらいに念を押したが、だってそれは、だってこの新人凄すぎるんだものっ!学生時代から同業の会社でずっとアルバイトしてましたっていう姪之浜梢ちゃんみたいなキャラならまだ理解できるが(いや学生時代からバンバン仕事こなしてて正社員より業績上げてた彼女も十分すぎるくらい優秀だが)、実家は和菓子屋、1巻の最初のほうとかほんとにまるっきり白紙でSEとしてどころか、コピー取りひとつもきちんと教えてもらわないといけなかったくらいだったのに。

たった丸2か月でこの成長ぶり(もちろん専門的な知識はまだまだ低いが)。SEとしてもそうだけど、社会人として、会社の戦力として、凄すぎないか、彼・工兵君の能力。
なんでこんな逸材が就活で何十社受けてもどこにも引っかからなかったんだよ!?企業採用担当者の目は節穴か!?


            (っ´∀`)っ


とかいう小説ドリームへの無粋なツッコミはこのくらいにして。
今回もマジ面白かったっス。

このスルガシステムという会社は社員人数とかバイトがどれくらいいるのかとか派遣どれくらい入れてるのとかそういう情報がまったく書かれていないのだが、雑居ビルに入っている小さな会社だということは何度か出てくる。
んで、そういう、たぶん最低限の人員でできるだけたくさんの仕事をこなしていくことでなんとか回っている、ことは主人公やその周囲の現場の人間が残業代もつかないのにほぼ毎日終電、休日出勤も珍しくない、みたいな状態で勤務していることで容易にうかがえる。

で、このスルガシステムにはどうやら営業部門が無い……らしい。
営業は、なんと代表取締役社長・六本松氏おん自らたったひとりで行っているのだ。んで、いつも無茶な工期の仕事を取ってきては現場から呪われている――という豪傑を絵に書いたような人物らしい。主人公の名前は「桜坂」だがいつも「桜木町」とかいろいろ「桜」しか合ってねぇ!という名前と呼び間違えるというお約束がある。

この社長が是非とも取りたいと思ったある大企業の仕事があったのだが、なんと六本松社長はその企業から出入り禁止を言い渡されており、不可能。でも諦められない。
というわけで、なんのかんのと言いくるめられて新人・桜坂は「提案書」なるものを作り、ほかの大手企業などに入り混じってプレゼンを行わなければならないことになったのだ。

桜坂の上司、室見立華と2巻以降お馴染みになった姪之浜梢がタッグを組んで、読んでいると手に汗握る展開を見せてくれる。大企業の付け上がっている輩に一泡吹かせてやりたいという動機で、でも普通に考えたらとてもじゃないけど勝ち目はないのにどうなるの?とハラハラどきどきでとっても面白い。にしてもマジで桜坂工兵、吸収率ハンパない。めっちゃ仕事体質。うちの部署に欲しい……(本音)。

2012/07/27

なれる!SE ――2週間でわかる?SE入門

なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)
夏海 公司
アスキーメディアワークス
売り上げランキング: 8841

■夏海公司
本職のSEさんにお借りした。仕事の描写などがなかなか正確で良いそうだ。ただしずぶの素人である主人公がいきなり仕事出来ちゃうとかは「ドリーム入ってるように思う」んだそうで。
SEもの(=社会人ネタ)なのになんで表紙がどうみても中学生の美少女……?
最初はほとんど借りる気は無かったのだが暇つぶしに冒頭数ページを見てみたら就職超氷河期の就職活動の様子とかが身にしみて思わず読み込んでしまった。しかも今まで読んだラノベ(といってもほんの数作だけど)の中で一番文体(文章・テンポ・語彙の選び方・言葉遣い等)が波長が合う。読んでて引っかかりとか違和感がほぼ無く、ボケとツッコミが来て欲しいところにちゃんと来るのだ。素晴らしい。

というわけで読んでみた。面白かった。読みやすく、展開が気になることもあって、すらすらどんどこ読めた。
ただ、これだけは言っておく。本書を読んでもSEにはなれない。
って言うまでもないか。じゃあもうひとつ。
「SEになりたいな、だってなんか横文字職業だしかっこいいしー。パソコンはネットとかゲームとかで使い慣れてるしー」くらいの軽いノリでいたひとは本書を読んだらSEになることをいささかなりと躊躇されることだろう。
実際、読了後、わたしは再度リアルSEさんに確かめずにはいられなかった。あのー、これリアリティ有るっておっしゃってましたけどどこまでマジなんスか。朝出社したら社員が床に倒れてるとか実際有るんスか。


       (ノ゚□゚)ノ


「受験」に読み仮名が振ってあったりして、対象年齢は何歳なんだろうか、表紙のどう見ても中学生の美少女(超ロングの明るい髪色、上着なしのキャミ、フレアスカートのミニスカ)はなんと主人公の上司で、挿し絵だけでなく本文でしっかり「どうみても中学生」なんだと明記してある。1巻末まで読んでも実年齢が明かされなかった。しかし見かけはどうあれ立派な社会人であり、しかも仕事の進め方や社内での立ち位置などから鑑みるに入社後1年や2年の新人では無さそう。ということは、どう若く見積もっても20代前半の成人女性なんである。

しかしなんで中学生なんぢゃー。というツッコミは野暮である。要は「萌え」であろう。成人男性が中学生にマジでドギマギしたらそれは変態だが、“中学生に見える成人女性”だったら法律的には何の問題もない。成人女性のくせに同年齢の男性の前で恥じらう様子もなくストッキング脱いじゃうとか、ミニスカでデスクに両足上げて内腿丸見えとかまあ男性が男性向きに書いたわっかりやすーいドリームが読んでいて鼻白まないと言ったら嘘になるがまあこういう需要があるんだなあと思えば……。

それにこの上司というのが真剣に優秀なSEで、性格も男前なのが痛快。今巻では明らかにされなかったがトラウマかなにか複雑な事情を抱えているみたいで、人付き合いとかそういう面は苦手らしいのだが総じて好感の持てる人物である。クライアントの担当者が彼女の見た目だけで判断し(そのときは社会人らしいスーツ姿だったのに)、「こんなのに任せられるか」とかねちねちゴネるシーンなんかは大変だなあと共感した。ここまであからさまなのはむしろ少ないだろうけど、似たような経験を持つ社会人女性ってたくさんいると思う。

主人公はいきなりとんでもない仕事環境に放り込まれたのが憐れだが、失敗続きで自信を失ったり呆然としたり怒ったりしつつもきちんとまともに取り組んでいく、でも決して真面目一色でも仕事人間でもなく「どこにでもいそうな普通の若い青年」なところがイイ。

これから社会人になるひと、新人さんはもちろん、その先輩や上司的な立場の人間にもいろいろ勉強になることがあると思う。あと、なんかアドレナリン出るというか、モチベーション上がることが翌日出勤してわかった。働けるってしあわせだ。

なれる!SE 2 ――基礎から学ぶ?運用構築

なれる!SE 2 基礎から学ぶ?運用構築 (電撃文庫 な 12-7)
夏海 公司
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 25702

■夏海公司
くっ……やられた、これめっちゃハマる、面白い。結果的に1日で2冊読んじゃった(まあ300ページくらいの短さだから)。現在6巻まで出ているらしいが、1巻の発売日が2010年6月で2巻が同年10月ってオイっ、すごいなラノベの刊行間隔!コミックスレベルじゃん!早っ! 

1巻でSEとしてDQN企業に入社して目を白黒させて右も左もわからんかった主人公・桜坂工兵なんだけど、2巻ではそれからそんなに経ってないにも関わらず1巻の経験を踏まえて確実に落ち着いてきている。まあ、SEとしての知識は当然のことながらまだまだ浅いのだが勤め人としてのふるまいとかが板についてきている感じで、なかなか安心して読むことが出来た。前巻は主人公の精神状態とかが余裕なさすぎて読む側もハラハラ、だったんだけどね。なんのかんのでこのシリーズでこの主人公は「持ってる」タイプらしいぞと見えてきたというのもあるが……。

それにしても新人の入社歓迎飲み会の幹事が新人自身、ってすごいなあ。しかもこの主人公、お酒強かったんだな。一定量超えると人格変わるんだな。でもカモメさんとやった賭けは危なすぎでちょっと笑えなかった。だってあれ、ふつう死んでるよ、急性アルコール中毒とか余裕でなっちゃうよ。若い読者が多いであろうこういう作品でああいう飲み方を良しとするふうに描くのはどうなのかなとちょっと懸念せんでもないが、まーこれは余計な心配かな。

さて今巻では「運用構築」を基礎から学ぶことになる。
「運用」と聞いたらまず連想するのは「資産運用?利回りがどうとか?」なんだけど、この業界においてのそれは違うんだそうで、主人公とその上司・室見立華が所属するのがSE(システムエンジニア)部で、ここで作ったのを実用運用してトラブル対処とかするのがOS(オペレーションサービス)部、ってこと、らしい、と思う(あんま自信はない)。そこの部署の姪乃浜梢というのが2巻表紙を飾っているセミロングヘアの可愛らしい女の子なんだが彼女がどうやらクセモノみたいで!?

とりあえず本書を読んでると日本語なんだけど意味不明な個所がいっぱい出てくる。全部専門用語。なんとなーく「凄いことしてるんだろうな」とか雰囲気だけで推測して読んでいる。そういう読み方で小説としては全然オッケーに読める。

それにしても同じ会社の中で部署間対立とかって大企業ならまだしもこんな零細企業っぽいとこでなんて不毛な……。主人公は自分の考え方が甘いとか反省してたけど、いやいや、やっぱ社会人だし同じ会社なんだからチームワークとか協力とかって絶対大事だと思うよ。目先の損得勘定にとらわれるあまり会社として満足な対応が出来ないとか全然ダメだもん。ってかあんなメールの応酬やってる暇あるんだったら帰って寝ろよオマエら。と苦笑してしまった。
こんな女同士の感情剥き出しのバトルをなんのかんので丸く収めちゃった新人ってどんだけスキル高いねん。びっくりするわ。っていうか今まで上司どもはなにをやっていたんだ?

2012/07/26

赤い館の秘密 【再々読】

赤い館の秘密 (創元推理文庫 (116-1))
A.A.ミルン
東京創元社
売り上げランキング: 23240

■A・A・ミルン 翻訳;大西尹明
3回目だけど、最初に読んだのは2002年、次が2004年で8年ばかり開いたので大方を忘れていたので(毎度のことながら)都合よかった。面白かった、雰囲気が悪くなかった、ということだけ覚えているのだ。

くまのプーさんの著者で知られるミルンが1921年にものした唯一の長篇本格ミステリ。
1921年というと元号でいうと……昭和じゃなくて大正10年だ。
手元にある創元推理文庫の初版が出たのは1959年。昭和34年。その2002年64刷だ。43年間で64刷。というようなことをわざわざ書くのはどうしてかというと解説(中島河太郎)が中でチャンドラーの評論を引いていて、この原書が16年間で13刷を重ねていて「こんな出来事は、他のどんな分野の本でも、数えるほどしかないものだ」と評しているそうだからである。

くまのプーさん はちみつちょうだい
タカラトミー (2012-01-28)
売り上げランキング: 27340


以下、ミステリの内容にふれています。ネタバレすれすれの内容になっているので未読の方は読まないでいただきたく!

щ( ̄∀ ̄)ш つづき↓は未読の方はスルー推奨

今回読んでいて、さすがにちょっと言い回しとか言葉づかいが古いな~というのを感じたのだけど、お話そのものは愉しく読めた。トリックとか犯人とか忘れていたので。隠し通路が出てくるというのは覚えていたんだけど。べヴリーは結局あれほど楽しみにしていた隠し通路探検が出来ないままだったんだなあ。いち読者としても、隠し通路探検はぜひやっていただきたかった。だって内部の描写がほとんど無いんだもの。せっかくのスペシャルな設定をそんなあっさりと……。という気がする。だって全部忘れてたのに隠し通路のことだけ覚えてたくらいなんだよ!
それにしても「よしきた」とかリアルに使うひとっていつくらいまでいたのかなあ。
それとこの訳者の癖かと思うんだけど「そうこなくっちゃ」を「そうこなくってさ」、「いけないなんてもんじゃないよ」を「いけなくってさ」というふうに喋る。「案の定」は「案のじょう」。若い女中が「いいあんばい」とかのたまう。
3回目ということもあってか、そういう重箱の隅が気になってしまったが、まあ、大正に書かれた原作だもの、あんまり現代風に訳されててもおかしいんだけど。
肝心の、チャンドラーにボロクソ言われたというトリックとかについてはほぼ気にならなかった。まあ、ちょっと「へ?」って脱力したけどね。警察の基本捜査やってれば成立しないんだから、そこは隔離された離島とか大雨で陸の孤島状態とかの舞台設定が無きゃ説得力が。と冷静には思うけど、でもいいじゃん、そういうお約束のハナシなんだから。プーさんの著者の父親へのプレゼントというココロあたたまるシチュエーションなんだから。というのが正直な感覚なのであった。
それと解説の中島河太郎は「推理小説とユーモアのとり合せについては、絶対に両立し得ないものと思っているから、クレイグ・ライスやディクスン・カーなどの滑稽を弄したものは珍奇を狙う邪道でしかない。」とか言い腐っていて(失礼)、目を疑って三べんも読み返してしまった。ちなみにじゃあ本作はどうかというと「ミルンのユーモアは彼自身の風格から自然に滲み出たもので、大人の微笑を誘う好読物になっている」んだそうだ。ライスのユーモアがわからん朴念仁のトーヘンボクにユーモア語られてもねえ……。
クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))
A.A.ミルン
岩波書店
売り上げランキング: 13505

2012/07/23

さむけ 【再読】

さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)
ロス・マクドナルド
早川書房
売り上げランキング: 39869

■ロス・マクドナルド 翻訳;小笠原豊樹
ほぼ内容を忘れ去っていたので読んだ。最後まで思い出しもしなかったので、ほぼ初読みみたいなもんだが確かに以前に読んでるんだよなあ(2004年11月の日記)。良いミステリーだった、という記憶だけはあるんだが。
登場人物がわりと多くて、描写がみっしりなので読みでがある。主要登場人物一覧表が最初に載っているのがありがたい。
久しぶりにじっくり読んで、最後まで読んで、やはり巧いこと練られているなあと確認した。
本書の原書は1963年に刊行された。いわゆるハードボイルドものである。主人公は私立探偵のリュウ・アーチャー。
途中で依頼人の気が変わり、解雇されるが事件の謎や人物に既に思い入れが出来てしまっていたアーチャーが捜査を続けるために新たな依頼人を探すその理由が興味深かった。「気概」だけでは物事はやっていけない。探偵するには費用がかかるのである。だからビジネスにしないといくらハードボイルドでもやっていけないのである。そこらへんがちゃんと書いてあるのが面白かったのだ。

事件の始まりは何気ない、平凡なカオをしている。
気弱そうな青年が新婚の妻が行方不明になってしまったと顔を青くしているのだ。
調べていくうちにわりとあっさりとくだんの新妻は見つかる。彼女は夫の元へは帰らないと云う……。

ひとつの殺人事件を追っていくうちに見えてくる過去に処理済みになったはずの事件。これらは関係あるのか?どう絡むのか?

これ以上は、ミステリのことなので触れないでおきたい。ミステリーとしても良い出来だけど、いろんな人間模様とかが丁寧に書き込まれているので普通小説としてもなかなか読ませる逸品だ。

ちなみにわたしが持ってる2003年8月の第22刷版の表紙はこんなの↓

2012/07/19

暗い鏡の中に

暗い鏡の中に (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
売り上げランキング: 55587

■ヘレン・マクロイ 翻訳;駒月雅子
面白かった~!!
帯に「これぞ伝説の最高傑作」とあって、マクロイというのは昔の作家なので(Helen Worrell Clarkson McCloy:1904~1994)、ようやく翻訳がなされたとかそういうことらしい、これは読んどかなきゃ。と期待してかかって、それが裏切られなかった。稀有なことである。素晴らしいことである。

解説によれば、本書の刊行は1950年に発表されたマクロイの11冊目の長篇で、1948年に発表された短篇「鏡もて見るごとく」を長篇化したものだそうだ。日本では1955年に翻訳され、1977年には文庫版も出たが、いずれも長い間絶版になっており、「名のみ知られた傑作」として伝説化していたのだとか。

例によってミステリなので、帯も大きい活字以外は目に入れないようにし、裏や中表紙のアラスジも読まないようにして本編のみに直球で向かっていった。すると本格ミステリと思っていたのに何やらサスペンスというのかホラーというのかゴシック・ミステリというのか、ちょっとサラ・ウォーターズみたいな雰囲気である(同性愛のほうじゃなくて)。
アメリカの、名門女学校が舞台。主人公はそこに勤めはじめたばかりの女性教師・フォスティーナ。彼女は理由も告げられず、校長から突然解雇を言い渡される……。

以下、重大なネタバレは避けたつもりですがある程度は内容をほのめかす記述がどうしても混じってしまいます。未読の方はご注意ください。

↓( ̄∠  ̄ )ノ 白紙で作品に臨みたい方は読んじゃだめ。


読んでるあいだじゅう、「これまさか『○術は××やく』(いちおう伏せておく)みたいなラストじゃあるまいな(だったら壁に投げつけるぞ)」と危ぶんだり、「大丈夫、これはでも本格ミステリなんだから合理的な謎解きがあるはず」と自分に言い聞かせたり、「でもどうやって現実的な解決に結びつくんだろう?あれか?それか?」などと推理したりしてとっても愉快だった。Doppelgängerをこういうふうに料理するとはね。素材そのものの真偽がある意味ミステリーで、ひとによって信じたり信じなかったりいろんな解釈があるわけで、それと小説中の事件との絡みとかがあって。読みようによってはめちゃくちゃホラー。主人公に同調してたらかなり怖いと思う。「これは本格」と信じて読んでいても終盤のあれには「まさか」と驚き、かなりぞっとさせられた。
そんなふうに先が気になってどんどん読むけど枝葉の描写もなかなか情緒豊かで、いろんな人間ドラマとか恋愛とか人間心理とかがあって、だからずっと面白いのだ。主人公や探偵役などメインのキャラクター造形も良いし。
そしてどんなに最初や途中が良くてもラストが駄目だったらそのミステリはポンコツなんだけど、これは最後まで良かったのだ。ブラボー! 謎解きがあっと驚け、言われてみればそうかその手があったかの納得のいくものだったうえに最初から積み上げてきた雰囲気とか空気とかを壊さない、読み手のこころに一抹の不安と戸惑いを残す余韻のあるラスト。
なお、本書は精神科医ウィリング博士ものの1つでもあるそうだがシリーズのほとんどが邦訳されていないんじゃねえ(ためいき)。職業柄、どんな奇妙な現象にも理性的に判断しようとするスタンスは頼もしかったしなによりスマートで素敵だったなあ。

2012/07/17

本の本

本の本  (ちくま文庫)
本の本  (ちくま文庫)
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斎藤 美奈子
筑摩書房
売り上げランキング: 18617

■斎藤美奈子
全肯定は絶対出来ないんだけどなんか「このひと(=わたしとは違う目線)の意見ってどうなんだろー」と気になるというか、うんつまり合わないけど嫌いじゃないんだな。

とっっっても分厚い本が文庫になったけどやっぱ厚いことに変わりなし、ただいちおう片手で持って寝転んで読める。通勤に持ってくのは勘弁な、という感じなのでこないだから家でちょこちょこ読んでる。辞書みたいな厚さ、短い書評がずんと詰まっているので目次で気になったのを読んだり後ろの著者&著名さくいんからたどったり、ぱっと開いたところから読んだりとアトランダムに楽しんでいる。

自分が読んだことある本もまぁいいけど、話題になったからタイトルとかは知ってるけど読んだことはない、というくらいの書評が一番参考になる。
そんな本もあったんかー。ってのもいっぱいある。

800ページ越え、扱った本は約700冊、扱った著者は約650人。
デビュー以来14年間の斎藤女史の集大成がどーん! である。書評好きにはおすすめ。

2012/07/10

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ

真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)
大沼紀子
ポプラ社 (2011-06-03)
売り上げランキング: 2620

■大沼紀子
アマゾンのおすすめでも上がってくるし、書店でもずっと平積みになっている。帯に「めっちゃ売れてる」的なアオリ文句が書いてある。
パン屋さんといえば、イメージは「ほっこり」「あったか」「おいしい」「基本が大切」…てなところだろうか。
みんな“癒される”の好きだからねええ。とかちょっとナナメに見ていた。
少女漫画みたいな表紙イラストだけどこれもラノベなのかな~。真夜中のパン屋さんか、『西洋骨董洋菓子店』は真夜中に開いてるケーキ屋さんだったなあ、ケーキ屋よりパン屋のほうが庶民的で生活感が強いよなあ、とか考えつつ。

あんまり期待せずに気軽に読んでみた。
そしたら、軽い気持ちで入ったのに主人公・希実(のぞみ)の母親は昔っから我が子をきちんと育てもせずに親に預けっぱなしで、それを咎められたら今度は適当な知人に次から次へと預け替え、自身は色に恋にと走るという無責任な人間で、小さいころからそういうふうにほったらかしで育った希実は高校生だけど妙に醒めてるというか、わが身が幸せになることをどっかであきらめているような女の子になっていて、そして学校では中学からずっと結構陰湿ないじめをずっと受け続けていて、高校生になっても執拗にそれは続いているというハナシなのだった。めげる。

んじゃこれであれか、こういうしんどい状況の少女が心のこもった美味しいパンとその店のひととの交流とかなんとかで救われ、癒され、よかったね。――という展開になるのかというと、まあそりゃそういう要素が無いわけでもないのだが、しかしコトはそうは単純では無かったんで、要は希実以外にもいろいろけっこーへヴィーな状態のひとたちが出てくる。なんのかんので、このパン屋のひとと関わり合いになる。

んでここからが絶妙のバランスなんだけど――このパン屋さんのオーナーもパン職人さんもなにがなんでも「助ける」みたいなそういうスタンスじゃないんだよね。美味しいパンを食べてほ~らごらん的なうそ寒いこともしないし。困っている立場のひとに手を差し伸べる、っていう慈善の、救いの姿勢じゃなくて、なんていうか、――対等。
必要以上に踏み込まず、それでいて相手が必要としているときに実に上手い具合に声を出したり、行動したりしている。それは、ひとえに、彼ら自身が「かなしみ」を知っているからに違いなかろうというのが伝わってきて、そして物語の終盤でそのへんのいきさつは語られる。

育児放棄とか、性同一性障害とか、ストーカーとか、親と子の問題とか、いろいろ重たくて難しい問題がいろいろ描かれていて、それがすべて平穏になんにもなかったみたいに解決、とか全然しちゃわないところが良くて、出来るところは出来るしそうじゃないこともいっぱいある、そして第三者がどうにかすることもあるけれど、当事者が動くこと、変わることはやっぱり大きくて、速攻解決はしなくとも、留まっていたぬかるみから足を一歩踏み出すそのことは大事なんだなって思う。

最初から中ごろあたりまでは深刻な状況がいろいろ出てきて読んでいると眉間に皺が寄っていく感じでつらかったんだけど、ずっと読んでいくと少し改善されていく面も出てきて、最後まで読むとなかなかどうして「けっこー良かったんじゃ?」とすこし感動できたのがすごい。なんでかわからんけど素直にされてしまった。途中までは「詰め込みすぎ?」とかちょっと首かしげてたのに。
ソフィアさんがこの話に出てくる中でいちばん素敵。彼女のおかげかもしれない。

それにしてもなんで「真夜中」にしか営業しないのかな?

2012/07/08

自殺の殺人 【再々々読】

自殺の殺人 (創元推理文庫)
エリザベス フェラーズ
東京創元社
売り上げランキング: 553668

■エリザベス・フェラーズ 翻訳;中村有希
シリーズ第2作目から読み始めるがまあ何度も読み返しているから順番なんてもはや気にしなくてもよかろう。
前回読んだのは2009年の8月らしいけど、そのときは、読み始めてすぐにオチを思い出したりしたため流し読みしたらしい。
今回は読み始めてもオチを思い出さなかったので(どないなっとんねん我が脳は)、素直にフェラーズのユーモアのある本格ミステリをのんびり楽しんだ。そりゃあさすがに4回目なので、部分部分覚えていたり、だいたいの展開も読んでいると思い出したりはするんだけど、4回も読んじゃうのはやっぱりトリックがどうとかいう以前にこのシリーズの主要キャラ、トビーとジョージのコンビが好きだからだ。作品の雰囲気が丸っこくて面白いからだ。

一見、二枚目で頭の回転が良く、スマートで社交性もあるトビーが名探偵なんだけど、実は真の実力者は丸っこくて見た目からユーモラスでドジッ子っぽいジョージのほうがもう一段上。でもジョージは決して出しゃばらない。トビーのことをバカにするどころか、大好きなんだな、っていうのがよくわかる。トビーも突飛なことを突然しちゃうジョージに手を焼くこともあるけれど、いい相棒だって思っている。なんなんだろうこの絶妙のバランス。

それにしてもこの事件の被害者は随分身勝手というか自己中というか。犯人が最後にみせた残虐さも恐ろしいが。
ティンギー警部がなにげに良い味出してる。

2012/07/06

凍りのくじら

凍りのくじら (講談社文庫)
辻村 深月
講談社
売り上げランキング: 3877

■辻村深月
2007年に『冷たい校舎の時は止まる』を読んで以来の辻村深月。
辻村深月といえば、大森(望)さんが『凍りのくじら』を読んでその面白さに驚いた的なことを昔書評誌に書かれていて、ずっと本作が気にはなっていたのだが、これは辻村さんの第3作であり、1作目2作目を順に読んでからでないとこれを読んでも面白くないという思い込みが何故かあって、そして2作目にどうもそそられないので結果的にこれにもたどりつかないまま年月だけがいたずらに流れた(大袈裟)。おそらく、当時新進のノベルス作家を複数追っかけて読んでいて、それらの作品はなまじ同時代で執筆順に読めるから、そう読むのが正しいみたいなこだわりが自分の中にあったからだろう。
先日ふらりと入った品揃えの乏しい町の書店でこれが棚にささっていて、あ、と思って手に取った。文庫裏のあらすじに目を走らせる。「藤子・F・不二雄」の文字、目次を開くと「どこでもドア」にはじまる「ドラえもん」の道具の名前――。
これ、ドラえもんが関係してるの!?
読んでみたくてたまらなく、なった。

それにしてもこれほど共感しにくい、どころか現実味の薄い主人公も久々だ。ラノベのキャラのような意味ではない。性格が、内面が、ものっっっすごく細やかに丁寧に書き込まれているくどいほどのモノローグは別に嫌悪も好意も抱かせない、するすると読み込んでいけるのだが、そして頭で理解は出来るのだが、――でも同時に常に考えてしまう、「こんなひとっているの?」。

主人公、芦沢理帆子が成人し、プロの写真家としてある程度成功を収めている時点を導入部とし、そして物語は彼女が高校生だったときに遡る。本編は彼女の高校時代の数ヶ月であり、これは彼女がいかにして「光」を撮るようになったかの「いきさつ」の話なのである。ジャンル分けするなら広い意味で「ミステリー」ではあるんだろうけどそれこそ「すこし・不思議」な「SF」でもある話だし、十代の少女がいろんなひとと会っていろんなことを経験していく「成長もの」でもあるだろう。

彼女は傲慢だ。そしてそれを自覚している。
だだし彼女の本当の傲慢さが100だったとして、彼女自身が彼女を傲慢だと自虐的に冷静に分析している、その値が50か60くらいなのが問題、というか、この年代だとふつうは20か30くらいしか分析出来なくても仕方ないんだけど、そういう意味では彼女は「賢い」。だけどその年齢不相応な「賢さ」がこの物語で描かれる「モンスター」を呼んでしまう、引き寄せてしまう、そして同時に「100」自覚していないことでいろいろややこしい状況にどんどん追い込んで行ってしまうのだ、自分も、モンスターも、周囲のか弱い存在をも。

リアリティという意味ではこの小説に出てくるモンスター=若尾はかなり痛い・ヤバいキャラクターなのだが昨今のめちゃくちゃな事件をニュースで次々に目にしていると本当そこらにいくらでもいるのかもなと暗然としてしまう。男のストーカーは自尊心が原因、というくだりは深く納得。

別所あきらの正体についてはちょっとびっくりしたけど、彼がそういう存在であるということは比較的フェアに書いてくれてあったので、突飛な感じはしなかった。病院であのそつのない松永さんがああいう行動だったところで確信が持てた。

本書には「ドラえもん」の道具や話についてが細かく、丁寧に書かれてあって、まあ全巻読破はしていないが十代のころに借りてそこそこ読み込み、映画の原作本も繰り返し読み、そしてもちろん毎週アニメを観ていた世代なので、懐かしく、楽しかった。そしてこの物語に出てくる「ドラえもん」の、藤子・F・不二雄さんの精神は彼らの人生の根幹にものすごく濃密に絡みついている。
主人公・理帆子が語る「ドラえもん」は面白く、そしていつもどこかものすごく切ない。彼女がいかにその世界を深く理解し、愛しているかがわかる。これは著者の想いでもあるのだろうか。

「もしもボックス」は欲しいけどやっぱり怖い。「タイムマシン」も重大な失敗をして歴史変えちゃったらイヤだからやめとくのがいいだろう。「タケコプター」で空を自由に飛びたい気もするが、下から狙撃されやしないか、途中でバッテリーが切れやしないかと危ぶんでしまう。「どこでもドア」でうっかり「宇宙」に出てしまったらどうなるんだ。
……こんな心配ばかりしてしまう平々凡々たるわたしに、理帆子の若さと傲慢さと賢さはとてもまぶしかった。彼女にしあわせになってほしかった。おかあさんにもっと甘えてもいいのに、とずっと思っていた。おかあさんの編集した写真集を読むくだりは外で読んだので泣いたりするのはぐっと踏みとどまったがかなり揺さぶられた。理性を総動員しなければならなかった。最後のテキオー灯のくだりも巧かったけど巧すぎるのが逆にわたしを泣かせなくて助かった、みたいな。

共感はしにくいし、変なひとが出てくるし、でもものすごく面白くて、ぐいぐい引き寄せられる不思議な世界があって、しかもなんだかこちらの精神状態にけっこうダイレクトに響いてくる巧さがあって、息を詰めるようにして読んだ。どうなるんだこの話、と読まずにはいられなかった。
理帆子が自分はひとりじゃないと気付けて良かった。彼女を包む大きな大きな存在と、周りのひとの優しさを知ることができてよかった。

それにしてもこの物語を読むと、「ドラえもん」を全力で読み返したくなる。困ったな。


大長編ドラえもん (Vol.4) のび太の海底鬼岩城(てんとう虫コミックス)
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2012/07/04

ビブリア古書堂の事件手帖3  ~栞子さんと消えない絆~

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
三上延
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■三上延
ビブリア・シリーズ第3弾。
1,2とまあまあ良かったので、くらいの期待度で読んだのだが3巻目はかなり面白かった!
1,2を読んだときに漠然と感じていた不満=栞子さんがただの萌えキャラっぽくて現実味が薄かったこと、が3巻ではかなり栞子さんが「生きた」人間ぽくなってきて、いろいろ考えてることとか性格の襞とかも書き込まれるようになってきたのがまず良かった。それと、2巻目を読んだときに「栞子さんと母親の関係をもっと詳しく知りたい」と感じた欲求をかなえる方向にかなりウェイトが置かれていたのも大変興味深かった。最初のほうに出てきた古書交換会の話は業界の様子がうかがえて面白かったし。
それにしても文香ちゃん(栞子さんの妹)がこういう役回りになるとはね……!
雑魚キャラ(失礼)と油断していたら、いやはやなかなかどうしてどうして、やるなあ、って感じ。っていうか、智恵子さんの実物に早くご登場願いたい。栞子さんは嫌がるだろうけど、間違っても「善人」じゃなさそうだからあれだけど、でもきっと絶対お話的にボスキャラだもん。

この本を読むと作中で採り上げられたお話を読みたくなるのはいつものことだが、今回もロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』がかなりぐいぐい引き寄せられた。この感想書き終えたらググってみようっと。

本書で採り上げられた作品は以下4点。

1.『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)
2.ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)
3.“タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの”
4.宮澤賢治『春と修羅』(關根書店)

3.は作中でタイトルなどがわからないということで依頼人が来る…というハナシなので、ネタバレになるのであえて目次と同様、書名・著者を伏せた表記としています。

2012/07/02

この声が届く先

この声が届く先 (創元推理文庫)
S・J・ローザン
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■S・J・ローザン 翻訳;直良和美
私立探偵ビル&リディアシリーズ第10弾。
今回の視点はビル。
冒頭のっけから、犯人からビルに電話が入る。いわく、リディアを誘拐した。生きて返して欲しければ、このゲームに乗れ――。
最初は、ビルにも犯人の正体がわからない。犯人が与えたヒント(オレンジのごみ袋に入れられた雑多な物)から場所を特定してそこに赴くと中国系の女性の死体が……!

今回リディアは囚われのお姫さまなのか、そしてそれをビルが白馬の王子よろしく探し出して助けに行くってこと? いつものビル&リディアシリーズだと双方それなりの働きをして助け合っていくんだけど。リディアもたんなる大人しい役には収まらないところが小気味良いんだけど。
どっかでリディアの面目躍如あるかな、と期待していたのだがなんと最後までそれが無かった。うーん。最初のほう、犯人に許されて2,3言葉を交わす何気ない会話を世間話に見せかけて犯人や隠れ家のヒントをほのめかすところなんかは良かったけど。

犯人は完全に狂っているというか思考回路がイカれている犯罪者で、ビルへのそれも完全な逆恨み。無関係のひとの命を、自分の「ゲーム」のためにコマとし、殺そうとする。最後の最後まで卑怯で、道理が通らなくて、我儘放題の残忍な人でなしっぷりをまき散らす。

というわけでいつも楽しみにしているこのシリーズで、読んでいるとテーマが暗かろうと面白いことが多いんだけど、今回ばかりはけっこう不快な読書となってしまった。犯人最初からわかってるからどんなどんでん返しがあるのかなと思ってたけどその種のあっと驚く爽快感も無かったし。

唯一面白かったのはリディアの従弟のライナスとそのガールフレンド、トレラのキャラと活躍ぶりなどが微笑ましく素晴らしかったこと、ライナスの飼い犬ウーフが可愛かったことくらいか(ウーフも大活躍するシーンがあるぞ)。
犯人追跡にツイッターとかフェイスブックとかが絡んでくることはいかにも2010年に書かれた小説っぽい。パソコンや携帯が駆使されるがそれはいずれもライナスやトレラによってで、ビルは交わされる会話をどれだけ理解しているかも不明って、おいおい、そんな年寄じゃないでしょ? 現代を生きる探偵ならそれくらい使いこなせないとおかしいんじゃないの?とちょっと突っ込みたくなった。年配者は機械音痴って、ビルが80歳とかならともかくまだ実社会でバリバリ現役の年代じゃない。