2011/09/25

コンビネーション

コンビネーション (ソノラマ文庫)
谷山 由紀
朝日ソノラマ
売り上げランキング: 1110436

■谷山由紀
ラノベをこよなく愛する読書家ウェンディ様(仮名)から借りた絶版本。
少女漫画みたいな表紙で(イラストは「まる伝次郎」さんだそうだ。よくわからないので検索したらコナン君の青山さんとちょっと関係ある?のかな)、むかしのコバルトとかそういう、少女小説系。1995年に出た作品で、高校野球の話かと思ったらなんとプロ野球の話なのだった。1つのチームをめぐる、いろんな立場のひとがいろんな視点から語る。オムニバス短篇集。

正直第1話「ジンクス」の語り手・岡野のしゃべりかたが気持ち悪くて性格も悪くて鳥肌モンで、どえらいもん借りてしまった~というか借り物じゃなかったらここで読むのやめて壁に投げてるよ~って感じだったのだが頑張って読んだ。そしたら第2話から語り手が変わっていて、文体も全然問題無くなって、普通に読めるようになった。それどころか文章が気に触らなくなってしまったら純粋にこの(ほぼ)野球人間ばっかり出てくるお話たちはどれもけっこー面白いのだった。

努力家・名倉(全篇通じての主人公的存在)が良いんだよなあ。まあ、欠点らしき欠点がいっさい無い、っていうのが「そんなデキた若い男がいるもんか~っ」というツッコミをいれずにはいられないところなのだがでもだってこれ、少女小説だもんね、ドリーム書いてなんぼの商売だもんね。最後の話は乙女が主人公の甘酸っぱさがあくまでライトにソフトに、そして女の子の立場がすごく上手く書かれててなるほどこれが出てくるのが少年向けと違うとこだよなぁと妙に納得したり。

2011/09/20

死亡フラグが立ちました! 凶器は…バナナの皮!?殺人事件

死亡フラグが立ちました! (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 5-1)
七尾 与史
宝島社 (2010-07-06)
売り上げランキング: 21181

■七尾与史
あんまりややこしいことを考えたくなくてこのタイトルからしてどーみても「バカミス」っぽい本書を借りた。全然まったく期待していなかったのが良かったのか、漫画のような設定も、トンデモ系の展開も、予想外に面白く楽しんで読めた。

というか、本屋さんで本書が目の端に引っかかったことはあったのだけどこれって小説と認識してなかったっていうか。全国のみなさんの体験談を寄せた読み物的な内容だと思っていたのだ(『死ぬかと思った』という作品があってそれと混同していたみたいである)。

本書はけっこう登場人物が多くて、最初のほうはそれぞれがバラバラのシチュエーションで出てくるので休み休み読んでいるとなんだかちょっと混乱する。というわけで中盤からはイッキに結末まで読み通した。それぞれの章・人物の連鎖もわかってくるし、ミステリーとしてのサスペンスも盛り上がってくるし、途中でやめる気にならなかった、うーん、ぶっとびもここまで徹底すると逆に素直に読めるわ。なにげに説得力(?)もあるし。

「死神」という殺し屋がいる。そのターゲットになると、24時間以内にどう見ても偶然の事故によって殺される。――そういう都市伝説みたいな噂があって、だけど編集長から死神の尻尾を掴んで記事にできなければクビだと言い渡された売れないライター・陣内。そんなのいるわけねーよ、と彼は思っていたのだが調べていくと……。

いろんな職業、立ち居地のキャラクターが出てきて、それぞれがわりと個性的なのも面白い。

なかなかユニークなこのミステリー、でもミステリーとして最も大事なラストのシメがアマゾンなんかざっくり眺めた感じだと評判が悪いみたい。わたしはあれはあれで悪くないと思ったけどな。っていうかきっちり書くにはかなりの力量と大技が必要でしょう、だって普通の展開だったら面白くないし。普通の展開で後味悪いの書かれた日にはどーしよーもないから、だったらあれでまぁ妥当だったかな、とか。

解説は大森望。本作品は第8回「このミス」大賞最終候補作品にして著者デビュー作だそうだ。

2011/09/15

インドなんて二度と行くか!ボケ!! ――…でもまた行きたいかも


■さくら剛
借りた本。気楽に読めそうかなと思って、そして実際この内容はマジメに読むようなスタンスで書かれていなくて、なんていうかブログとかネットで流し読みするような感覚に近いのであった。

著者は軽めの引きこもりだそうだがその彼がインドに行って「うぎゃー信じらんねー」連発の日々をすごし、それを非常にライトでふざけた文体でものしたのがこの作品、のようだ。
なにか、現代の流行語を拾わずにはいられなく、細かいギャグも挟まずにはいられなく、笑わせるためならしょーもない駄洒落だって連発することにやぶさかではない……という書き手の思いが彼がふざければふざけるほど伝わってくるので逆に泣けてくる。いや別に泣きはせんが「頑張ってるなあ」と思ってしまう。読んでてたまに吹き出したりして。

インドに行ったら客引きが凄くて、モノ買わせようとする鉄面皮ぶりが凄まじくて、トイレとか衛生関係は目茶苦茶で、日本人の感覚とは合わないことがたっくさんある。
――というのは、別にさくら氏にあらためて教えてもらわずともいままで多くのひとがいろんな場所で書いている。だから本書が目新しいのはそこではなくて……それに対応する著者のキャラクター。
最初はただのヘタレさんなのかと思っていたが予想外にたくましく、インドにいる間にめきめきしぶとくなっていく。リキシャに囲まれて「ちょっと待ってね」とかユダンさせておいていきなりワーッとダッシュで逃げようとするシーンなんか最高に面白かった。

読んでいて、「あーヲレにはインドは無理……」と何度思ったか。っていうかシモの話多すぎだろ。いままで読んだ旅行記の中でいちばんトイレネタが多い。そりゃ重要なことだしそれだけ逼迫感も強かったんだろうけどふつーは「作品化」する時点でフィルターかかるもんなんだと思うんだよね……「それだけを感覚のままリアルに書いていては雪隠の話で終わってしまう」という。そのフィルターなしで書かれた素直な文章がこれだというわけか。

それにしてもインドに行けてる時点で全然引きこもりじゃなくね?

2011/09/10

日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典


■蛇蔵&海野凪子
実はわたしもめちゃ楽しんで読ませていただいてました『日本人の知らない日本語』シリーズ。
「日本語」名コンビさんが次に出してこられた作品は「日本文学」でございました。

近代文学派だったとはいえヲレいちおう国文学科卒業だし凪子先生が「基礎でございます」と紹介されるような本なら当然ホンモノ(は難しいにしても最低現代語訳版程度では)読んでおくべきじゃないのかそれをここで安易に漫画でわかりやすく読んで知ったかぶったーしてしまって良いものなのか!?
とか無駄なストッパー(自己制約)かけてしまって保留にしていたりした、のですが次にまたリアル書店で見掛けてためしに中身パラ見したらうおーこれめっちゃおもしろそーやん。とか思っちゃって気がついたら速攻買ってました。なんてゆるゆるのストッパーなんだ。

実際読んでみてわかったことですがこれは作品の筋とか文学的位置とか鑑賞とかいうよりもそれを書いた著者のキャラクターを現代人の価値観でもわかりやすい視点から紹介することによって親近感を抱かせる、そういうスタンスによって書かれているんですね。「こんなひとが書いたお話ってどんななんだろう?」って。中学とか高校で実際に古典学ぶ前にこういうの読んだら興味持って学べるような気がする……。

本書でとりあげられている人物。
清少納言、紫式部、藤原道長、安倍晴明、源頼光、菅原孝標女、鴨長明、(吉田)兼好、ヤマトタケル

本書は基本漫画ですがそれだけじゃなくて、凪子先生によるあいかわらず性格の良い紹介文も付いてます。
ちなみに菅原孝標女の『更科日記』の現代訳は文学好き女子が書いた日記ということで勝手に親近感持ってわたしも十代のころ読んで面白かったです。大人になってからの日記はそうでもないけど少女時代の回想が「いまも昔も夢見る物語好きは同じねー」という感じ。蛇蔵さんの描く孝標女はイメージどおりだったのでなんか嬉しかったです。




日本人の知らない日本語
蛇蔵&海野凪子
メディアファクトリー
売り上げランキング: 552

日本人の知らない日本語2
蛇蔵 海野凪子
メディアファクトリー (2010-02-19)
売り上げランキング: 805

平松洋子の台所 【単行本】

平松洋子の台所
平松洋子の台所
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平松 洋子 日置 武晴
ブックマン社
売り上げランキング: 245325
■平松洋子
最初に出会った単行本版がどうしても欲しくなってマーケットプレイスでポチりました。
だってブックマン社の本とか持ってないしっ。
単行本だと日置さんの素晴らしい写真も大きいしっ。
感想とかについては文庫版の感想をご覧ください。
とりあえず影響受けまくって我が家の米びつもネットで探しまくってブリキ製でございますv

2011/09/03

雨天炎天 ―ギリシャ・トルコ辺境紀行 【再々読】

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 2137

■村上春樹
本書は2つの旅のエッセイというのか雑感というのか紀行文というのかから成っている。そして手持ちの村上春樹の作品の中でもベスト5に入るくらい好きな本である。特に前半のギリシャ・アトス篇が素晴らしく好みに合っていて、アトスというのは女人禁制なのでいくら憧れても行けない土地なんだけど行きたいというか、とにかく読んでいて心地よいんだね。
なにがそんなに好きなんだろう。
あんまりなんにも事件が起こらなくて、1つの島の数日間の記録で、禁欲的で、グルメからはほど遠い粗食の世界で、ひたすら歩いて歩いて歩いて……。の、世界だからかも知れない。ううむ。
僧たちが作った硬いパンと野菜をもそもそと食べて与えられた寝室で丸くなって眠る……なんかこれって百年くらい前の名作文学の貧乏な主人公みたいな。少なくとも現代社会の「日常」では有り得ない。その独特の、非日常が日常たる世界がまだ世の中にはあるんである、という面白さ。

それに比べると軍隊が権力を握っていて治安とか衛生とか経済とかあんまり良くなくて場合によっては命の危険がしゃれにならない感じであるというトルコ篇はもう全然行きたいという気にはならないがこれもまあ読んでいるだけだと「タフねえ村上さん……」という感じで興味深くはある。