2011/08/24

死んでも治らない 大道寺圭の事件簿【再読】

死んでも治らない (光文社文庫)
若竹 七海
光文社
売り上げランキング: 339052

■若竹七海
連作短篇集をあいだに入れた章でぐるうっと取り込んでラストまで読むと実に綺麗なおおきなひとつの環っか(=長篇小説)になっているという美しさはミステリ好きには堪らないと思う。

ひっさびさに読み返したので「面白かった」「主役がけっこうキャラ的に好きだった」という記憶しかなかったのだが、読んでいても全然記憶が甦って来ず、ほぼ初読みのような感じで我ながら記憶力どないなっとんねんという感じだがそれはともかくいや~若竹七海ってほんっと性格悪い人間を毒気たっぷりに書くの上手いよなあ~。
法で裁くレベルでは極悪というほどの犯罪者ではない小悪党レベルが多いのだけれどそれ以前に人間としてもう全然なってないというタイプとか、自己中とか、読んでてすっごいムカつくっていうキャラ。こんなやつが実際にゴロゴロいるとは信じたくないのでここでそのリアリティはあえて追究したくもないが、そうして読者みんなのココロがヒトツになってある人物に対して反感抱くことその極み、みたいなところまで持っていってズサーッと袈裟懸けに斬ってくれるその爽快さ。これぞカタルシス。

という仕組みの小説なのでいったん読み始めたらさくさく読み進まずにはいられない、だってゆっくり読んで途中で置いたら腹立てさせられた状況で保留になっちゃうんだもの、それに短篇としての事件とその解決もあるけれども間に書かれる長篇小説としての通しの謎もあるから気になってしまうしね。

この小説の底のところに流れているのはほんとうに断腸ものの深い悲しみなのだけれどあえてそれはオモテに出さない演出。毒気もたっぷりあるけれど、基本的にコメディタッチで書かれたタイプのいわゆるコージー・ミステリーなのでところどころ小さく笑ってしまうようなくすぐりもあって、面白い。ブラック・コージーが得意な若竹七海らしい良作。

ちなみにわたしが持っているのはノベルス版だが↑画像は文庫版。

2011/08/23

失踪当時の服装は 【再読】

失踪当時の服装は (創元推理文庫 152-1)
ヒラリー・ウォー
東京創元社
売り上げランキング: 323691

■ヒラリー・ウォー 翻訳;山本恭子
たまに新刊書店を覗いているのだがどうにも食指が動かず再読月間が続いている。こないだ買取王子とかいう古本回収業を試してみてブックオフ以下の二束三文の査定で引き取られていったショックが酷すぎたのかも知れぬ。あれ、自分できっちり箱詰めしなくちゃいけないし結構大変だったのに。査定結果が1冊ずつエクセル表でもらえるのはなかなか興味深かったけど。

話がめちゃくちゃ逸れてしまった。
えー、この『失踪当時の服装は』というのはミステリー好きを名乗るなら当然読んでるよね的な超有名作品で、最初にわたしが読んだのもそういう、素養というか基礎知識としてマストであろうという意識があったように思う。単純にタイトルからして秀逸だし、紹介文に惹かれたというのも当然あったのだろうけれど。

ある日突然、キャンパスから忽然と姿をくらませてしまった女子学生。
周りの評判も悪くなく、しっかりしたまじめな娘に一体何が起こったのか、失踪は自発的なものなのか、それとも事件に巻き込まれたのか――。

1950年のアメリカの女子大が舞台の小説で、出版年は1952年、創元推理文庫から邦訳が出たのが1960年だから、たまに「翻訳が古いなー」とか「登場人物の思考がいわゆる"今風"とは違うなー」とかいうのはある。でもフォード署長が事件を捜査していくうちに行方不明の女子大生に親の立場で深く同情して理性的であるべき仕事の中にも人情を出してしまうところとか、親が娘を信じ抜いているところとかは今も昔も関係ない、読んでいてこちらも深く共感するところだ。

決して派手な展開もどんでん返しも無いし、地道な実際的な警察の捜査の様子が日を追って描かれるこの小説はともすればどんどん斬新なトリックやキャラクターで盛り上げられる昨今のミステリーを読みなれた読者には退屈ととらえられるかも知れない。そもそも警察小説というのは名探偵が活躍する小説とは違うのだ。ちなみに本作には探偵も登場するが、彼みたいなのがリアルなんだろうなと思う。この小説には説得力がある。地に足がついたミステリー。

2011/08/21

五匹の赤い鰊 【再々読】

五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)
ドロシー・L・セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 181573

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
スコットランドの田舎。のどかな美しい風景の村で嫌われ者が死体で見つかった。最初は足を滑らせて崖から落ちた事故死かと思われたがピーター卿が”ある物”が見つからないのでこれは殺人だと言う……。
容疑者は6人。誰が嘘をついているのか?
地元警察と協力してこつこつと裏をとっていくピーター卿。
ミステリーとして王道な感じで、しかも舞台やキャラクターが愉快な感じで、面白かった。

2011/08/16

殺人は広告する 【再々読】

殺人は広告する (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 224841

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
本書でいきなり主役を張るデス・ブリードンとは何者か?
というのは読んでいればすぐにわかってくるのだけれどいちおうここでは伏せておきたい。
ちなみにスペルはDeath Bredonだそうで――この名前は実際「アリ」なんだろーか。うーむ。
ついでにいうとピーター卿のフル・ネームも本文中で出てくる。

セイヤーズは当時の女性としてはまだ珍しかったらしい大卒で、コピーライターとしてバリバリに働くキャリア・ウーマンだったのだけれど、この小説の舞台は広告代理店で、その経験がものすごく活かされている。当時の広告業界の日常業務や社内の雰囲気などが実にこと細かに描かれていて、その活写が素晴らしい。
ピーター卿モノとしてはけっこう変わっていて、コスプレみたいな愉しみ(ちょっと違うけど)もあるし、事件も現代風だし。メインの殺人はともかくその動機というか原因となった犯罪っていうのがそのまま現代でも使えそうなネタなのだ。

なお、バンターさまの大ファンとしては非常に残念極まることに、本書には彼はほぼ登場しない。
またこの当時のピーター卿はある特定の女性に求愛している期間にあたるのだが、彼女に対するほのめかしがあるのは実に1箇所のみである。

解説にセイヤーズの広告会社勤務時代の出来事などがけっこう詳しく書いてあり、読むとそのまま最近の話として通用することに驚く、ってまあ、いまさらだけどね。
この小説が出版されたのは1933年。つまり昭和8年。満/州/事/変が起こったのが1931年。まあそんな感じの時代。イギリスではこんな女性がいたんだなあ……。
そういう意味で興味深い存在だったのはミートヤードさん。著者とちょっと重なってるところとかあるのかな。
あ、そうそう、ジンジャー・ジョーはとっても可愛くて賢くって良かったなあ。出てくるとにこにこして和んじゃった。
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◆ピーター卿シリーズリスト
《長篇》
誰の死体?/Whose Body? 1923
雲なす証言/Clouds of Witness 1926
不自然な死/Unnatural Death 1927
ベローナ・クラブの不愉快な事件/The Unpleasantness at the Bellona Club 1928
毒を食らわば/Strong Poison 1930
五匹の赤い鰊/The Five Red Herrings 1931
死体をどうぞ/Have His Carcase 1932
殺人は広告する/Murder Must Advertise 1933
ナイン・テイラーズ/The Nine Tailors 1934
学寮祭の夜/Gaudy Night 1935
忙しい蜜月旅行/Busman's Honeymoon 1936
《短篇集》
ピーター卿の事件簿(日本オリジナル版)
顔のない男・ピーター卿の事件簿Ⅱ(日本オリジナル版)

2011/08/13

ナイン・テイラーズ 【再々読】

ナイン・テイラーズ (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 105692

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
ピーター卿とバンターがフェン(イギリス東部の沼沢地方)の雪深い小村に迷い込み、そこで思わぬ交流をすることになった。地域に流感が蔓延していたため、欠員が出来てしまった転座鳴鐘を助けるため、御前おん自ら鐘綱を握ることになったのだ。
そんなことがあってやがてやってきた春、教区ではちょっとしたミステリーが「掘り返された」。なんと、教会の墓地の中にいつのまにか見知らぬ男の死体が埋葬されていたのだ、それもどう考えても殺された遺体が。
混乱を極めた中、善良な教区長は冬に訪れて縁ができたピーター卿がシャーロック・ホームズばりの名探偵だということを知り、捜査を依頼する……。

鐘のこととか、けっこう「冗長だなー」と思うところなきにしもあらずのこの話だけれど、今回読んで村の中の人間模様とか、教区長夫妻はじめ、人柄が良くて読んでいると「良いなあ」と思える登場人物が多いことにほんわかさせられた。ま、犯罪を扱った小説なのでそればっかりではいられないのだけれど、でも、基本的にゆったりしていられる。
こんなおっとりした村、おっとりしたひとびとが多い中でも殺人とかが起こっちゃうのはやっぱどこかで不自然な力とか金品が投じられるからで。
この小説で誰が可哀想ってヒラリー・ソープがダントツで、誰が憎たらしいかってもうこれは断然、ウィルブラハム夫人だったりするのはそれだからなのだ。殺人犯も泥棒も悪いしいけないし好かないけれど、この夫人さえもうちょっと常識的で注意深くあれば、あるいはその事件後の言動がもう少し思いやりがあったならば、と天を仰ぎたくなってしまう。これは理性的ではないかも知れないのだが感情としてはそうだ。セイヤーズの書き方も読者の感想をそういう方向に導いているとしか思えないし。

ミステリーを読んでいるとほんと、殺人の動機なんて大きく分ければせいぜい2つに絞られるのに気付く。要はお金か、恋愛問題だ。そして実際のニュースを見ていてもそれはあんまり変わらないように思える。100年まえのミステリーも、100年後の現実も。
やっぱお金はこわい。

2011/08/11

不自然な死 【再々読】

不自然な死 (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 193587

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
途中までは真面目に読んでいたがあまりにも犯人が身勝手で残虐でなんにんも殺していくので腹が立ってしかたなかった。3回目の読書ということもあり、終盤ナナメ読み。だって読んでて不愉快なんだもの。
この小説では中盤くらいからもう小説上で犯人は誰か8割がた見当がつけられていて、だけど証拠とかがつかめないしそのあいだにもまた犠牲者が出ちゃう、みたいな。
ミステリーとしてはかなり面白い部類の作品であることは確か。初読みだったらスリリングでもあるだろう。

ベローナ・クラブの不愉快な事件 【再々読】

ベローナ・クラブの不愉快な事件 (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 236817

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
こちらはタイトルに「不愉快」とあるけれど前の「不自然な死」よりずーっと楽しく、というと語弊があるな、――えっと、抵抗なく、読めた。
イギリスのクラブというと紳士たちのたまり場みたいなものらしいが、そこで衆人の中であるご老体がいつのまにか亡くなっていた。呼ばれた医師は持病による死とし、なにごともなく葬られた。だがその後、老人の死の時間が何時何分だったかによって遺産の配分が変わるという事態にあることが判明し、例によって御前さまが調査にのりだす。静かだった沼はかきたてられたことによって思わぬ展開を見せ――。

時代とか、戦争がもたらしたひとびとの精神への影響だとかそういうのも読みがいがあった。展開も面白いし。全体にユーモアが静かに流れているのが良い。
それにしてもセイヤーズの書く女性たちはとても1928年とは思えないほど進歩的だなあ。そしてみんな個性的というか偏っているというかこれが一般的とはとても思えない性質のひとが多い。男性はそうでもないのにね。

むかつく二人

むかつく二人 (幻冬舎文庫)
三谷 幸喜 清水 ミチコ
幻冬舎 (2011-08-04)
売り上げランキング: 2163

■三谷幸喜 &  清水ミチコ
単行本でみかけて「読みたいなー」と思ったけれどちょっと高いなと保留になっていたのが文庫化してくれているのを新聞広告で発見。やったー。とさっそく買ってよみはじめたら電車内では笑いをこらえるのがけっこう大変でひらきなおって顔が笑うくらいは勘弁してもらいつつ読み、昼休みは心おきなく吹き出しつつ読み、帰りの電車内では慣れてきて内心にやにや/表面真顔で読んであっというまに読了。
いやー、面白かった、やっぱふたりともコメディ界の第一人者だもん、最強。

本書はラジオ番組で話されたことにちょっと手を入れて文章化したものらしいけど、解説によればラジオで聴くのと文章で読むのとではかなり印象などに違いがあるらしい。ふーん。よくわからないけれど、活字のほうが圧倒的にマイペースに、そして気になった箇所はいくらでも反芻し、じっくり味わえるという特質があるのに対し、ラジオは流れていくもの、あっと思っても録音してない限り聞き返せないし、そもそも自分の聞きたい速度で話してもらうとか不可能だものね。

三谷さんの似たようなタイトルの著作に『気まずい二人』というのがあるけれど、清水さんとのやりとりはほんっとにテンポが良くて、漫才みたい。丁々発止とはこのこと。何気なく話しているようでいて、だけどコメディアン&コメディエンヌとしての眼差しは真剣で完全にプロの仕事なのがすごいと思う。

2011/08/07

雲なす証言 【再々読】

雲なす証言 (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 167947

■ドロシー・L・セイヤーズ 翻訳;浅羽莢子
ピーター卿の堅物のお兄様がなんと殺人事件の被告人として囚われてしまう、シリーズ第2弾。
お兄様もお難しそうな御方だけれどもその夫人、ヘレン(現デンヴァー公妃)ってなんだかセイヤーズからも好かれてないみたいな感じねえ、描写に全然愛がないんだもの。ピーター卿の妹のメアリ姫もいかにも貴族のお姫様っぽいところがあってその言動とか性格が良いとは決して思えないし。ヘレンのほうがまだつきあいやすいかな? 押さえるところ押さえておけば間違いなさそう(=常識的にふるまえばよい)んだから。メアリはねー、可愛いかもしれないけどちょっと極端かなー。男運の悪さは目も当てられないし。あ、でも最後につかまえたのはとても良い人だったからめでたしめでたし、か。

1926年に書かれた小説だけど、この小説で描かれる恋愛模様はどれもなかなかどうして、ドラマチックで刺激的だと思う、あ、1926年という時代だからこその制約と歴史的影響みたいなのがあるからそうなるのか。
ミステリとしてのメインは実はそうたいした仕掛けではないから(種明かし読んで種明かし以外の周辺事項のほうがよっぽど面白いと思わざるを得なかった)、むしろ枝葉の、人間模様に着目して楽しんでしまう感じの作品。
いやーそれにしてもピーター卿が沼地で危機一髪のシーンはイギリスならではだなあ。バスカヴィル家の犬を連想しちゃった。そしてバンターはこの作品でも素晴らしいのであった。

2011/08/05

誰の死体? 【再々読】

誰の死体? (創元推理文庫)
ドロシー・L. セイヤーズ
東京創元社
売り上げランキング: 188092

■ドロシー・L・セイヤーズ
大っっっ好きなピーター・ウィムジイ卿と従僕マーヴィン・バンターが出てくるこのシリーズは正直読んでいるだけでものすごく萌える。ずっとうきうきるんるん。ミステリーだから、そういう楽しみもあるんだけれど、そしてさすがのセイヤーズだからプロットとかもきっちりしてるんだけど、でも一番はやっぱりキャラクタとその会話の妙、なのよね。おまけにもう覚えているだけでも3回目だし。

うふふふふふ、やっぱピーター卿はお素敵だわあ~。バンターには(執事じゃなくて従僕だけど)執事萌えっ!だし。「御前」っていう呼び名も、鉄板の礼儀正しさも、そしてその底知れぬ有能さも、ほんっと惚れ惚れしちゃう。ピーター卿の友人のチャールズ・パーカー警部もなかなかどうして、萌えさせてくれるし。良いなあこういう身分を越えたざっくばらんな友情。それと忘れちゃいけないのがピーター卿のおかあさまの最強ぶりとチャーミングさ。ほんとお可愛らしい。

とりあえず出てくるひとが魅力満載なのに昨今流行のキャラクター小説とかじゃなくてメインはしっかりくっきり本格ミステリだというのがイギリスではセイヤーズがクリスティよりも評価されているという意見もある所以か。

2011/08/03

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 【再々々読】

■村上春樹
超有名な名作なのでいまさらレビューでもあるまいと好き勝手なことを書かせていただく (それはいつもじゃないのかという突っ込みがあるかも知れないが)。

ひさしぶりに再読したけどやっぱよく覚えていた。でもけっこう忘れていたり記憶の改変がおこなわれていたことに気付いてえーっ、と思ったりもした。特にラストの展開をなんとなくで違うように記憶していたのはこれはなんなんだろうな。

最初に読んだときわたしはまだ大学生だった。
ものすごく面白いと思った、なんていうか、設定とか世界の展開とかがめちゃくちゃビシバシ響いてくる感じだったというか。
いまも、たぶん昔も、わたしは村上春樹の主人公の思考世界と深く共感するということは無くて、でも反発するとかでも無くて、君の考え方はすごくよくわかるしまっとうだとも思うんだけど、でもわたしはまったく同じようには考えられないし、行動もできないな、という感じ。読みながら常に「えっ」とか「おお?」とか感じている。だいたい、村上春樹の小説に出てくるみたいな会話を現実にしている人間が周囲にいるものなの? ほぼ初対面の男女があんな直裁な内容話すかな?

何が言いたいかというと村上春樹の小説っていうのはわたしにとっては違和感がいっぱいの作品なんである、にもかかわらずある種のシンパシーは感じるし、なによりも、読んでいてとっても面白い。これってなんなのかな? と今回読みながら思ったので。

ビルに入って動いてるのかどうかもわかんないエレベータで運ばれた先のタンスの奥に深い深い地下道に通じるルートがあってそこにはやみくろとかがうごめいていて音が消せたりするマッド・サイエンティストがいて、とかなんなのこの面白さはっ。しかももうひとつの「世界の終り」には黄金の一角獣がいて壁の中で世界が完結していて主人公は夢読みとして図書館に出かけていって一角獣の古い頭蓋骨から夢を読むっていうんだぜぇ。
――くっはあ~! なんてなんてツボ刺激しまくりの世界なんだぁあああ。


それにしても村上さんの雑文読んでるとすっごく自然にしみこんでくるし違和感ないんだけどな。なんで小説だとこうなんだろうな。やっぱ根本的なスタンスが違うからか。世代が違うからか。男女の違いか。
うーむ。
今回読んでみていろいろまた感じるところがあったけれど、特に強く感じたのは「このときは村上春樹はまだ若かったんだな」ということと、「この話を最初に読んだときのわたしはすっごく若くて、いまはそうじゃないんだなあ」ということだった。

ちなみにわたしの記憶の中では主人公と影は南のたまりに一緒に飛び込んで濁流に呑まれ、そのあと現実世界にもどってきて地下鉄の構内に出てくるのだ。いろいろ間違っているうえに時系列も混ざっている。なんでこう改変したのかな、こうあってほしかったのかな。

わたしが持っている平成初期の新潮文庫版は↑のものだけど、いまはこんな↓装丁になってるそうだ。文字が大きくなっているそうだ。この装丁もなかなか良いなあ。