2006/09/10

門 (新潮文庫)
■夏目漱石
く、暗い。
『それから』と同じ人物ではないけれど、「友人の妻を奪って一緒になった」という設定は同じ、夫婦の小説である。
今も昔もある現象だと思うけど、明治時代に生きる彼らはそれによって友・親・親類から見放され、大学は去らざるを得ず、まったく社会的な立場を失ってしまったのだった。今も己の過去を知られることをものすごく恐れて罪悪感を背負って暮らしている。知られたら引越しなければと考えている。夫婦の仲はむつまじいようだが、三度流産・死産した妻は子どもがないことに苦しんでいる。
読んでいると自然に眉間にシワが寄るというか、「好きあって、何もかも棄ててでも、」ということで結婚した夫婦なのに――こんなふうなの?って思わずにはいられないというか。ま、何度も書いてるように明治だからだろうけど。
あと、主人公が非常に淡白な性格なのに驚いた。例えば実の弟が学校に行くお金がなくなって退学の危機に陥って相談にきているのに普段の仕事で疲れているとか何とか言って親身になってやらない。彼らの父親は亡くなっており、叔父も財政的に苦しくなり、弟はいろいろ肩身の狭い思いをしている。それなのに、肝心の兄である主人公は、弟が若いから結論を急ぎすぎているとか考えてひたすらマイペースなのだ。急いだって仕方ないというのもわかるけど、でもそこに兄らしい思いやりが見当たらない。えっ、こんなもんなの?と眉を顰めてしまう。
普通に読んでいると弟がせかせかしててお酒飲んだりしてワガママ、みたいなふうに書いてあるんだけど、冷静に考えたら違うでしょう。そりゃ弟にも我慢が足らない点があるけど、保護者として足らない点があるのは兄でしょう。
なんだかなあ。『それから』も『門』も主人公に賛同できかねるなあ(苦笑)。