2017/04/30

本の雑誌おじさん三人組が行く!  (別冊本の雑誌18)

本の雑誌おじさん三人組が行く! (別冊本の雑誌18)

本の雑誌社
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■本の雑誌編集部
「本の雑誌」の編集長・浜やんこと浜本茂さん、高野さんや宮田大兄のエッセイでもおなじみの営業・杉江由次さん、編集・キャンドル潤(あだ名です)こと宮里潤さんの三人組が大人の社会見学よろしくいろんなところに行ってボケまくる(?)珍道中レポート企画がついに単行本になった!
あらためて年齢をネットで検索してみるとこんな感じ。

浜やん:1960年(昭和35年)生まれ
杉江さん:1971年(昭和46年)生まれ
宮里さん:1974年(昭和49年)生まれ

本書に出てきたのけど宮里さんは本の雑誌社の前は晶文社にいたそうだ。へーえと思ってネットで検索したら「ほぼ日」の「担当編集者は知っている。」2008年9月12日の記事がまさにその時代のもので……おー!

一番最初の連載は「スタバで注文できないおじさんが企画の力でオシャレカフェに行ってみたぜ」的ヘタレ克服要素が感じられたのだが、こうしてまとめて読んでみるとそこは「本の雑誌社」なのでやっぱり書籍や出版業界に絡んだネタが多いなあ。
企画によって2ページで終わるのもあれば、5,6ページにわたるものもある。バラバラである。さすが自社雑誌の自社生産記事。

初出は「京都のあこがれ書店へ行く」だけは「別冊本の雑誌17本屋の雑誌」で、他は「本の雑誌」2010年11月号~2017年2月号。
震災後の絡みで、本誌執筆でお馴染みのひとの家の書庫・書棚を治しに行ったりする企画があったりする。

「京都のあこがれ書店へ行く」では恵文社一乗寺店、ガケ書房(2015年2月閉店、現在は左京区に移転・ホホホ座として営業中)に行かれている。
いちおう当ブログにも関連記事があるのでリンクをば(ホホホ座はまだ行った事ないんですよね~行きたいとは思ってるんですけどね~)。
恵文社 一乗寺店にいってきました♪2011.2.21の記事
ガケ書房に行ってきました 2014.4.20の記事

目次に⇒感想・メモなどを書き足し。
まえがき(浜本茂)
登場人物紹介 ⇒顔写真入り。「今月本の雑誌に遊びに来た人」と同じノリ。

第一章 家内安全
お洒落カフェに挑戦
⇒第1回。この時点で浜やん50歳、杉江さん39歳、宮里さん36歳。原宿や新宿のブックカフェにお客として行く挑戦(それのどこが挑戦なのか?と思うかも知れないが、彼らにとっては挑戦なのだ)。
またまたカフェに行く
東京タワーを階段で昇る
国会丼に挑む
シモキタの古本酒場に敗れる
新潮社に行く★★★
⇒作家がカンヅメになるための施設「新潮社クラブ」についての取材などもあり、興味津々。あの川端康成も開高健も村上春樹もここで執筆したらしい!
一箱古本市に挑戦 ★★
⇒要するに古本のフリマみたいなものかな? 面白い。
川崎図書館に行く
国土地理院に行く
⇒ゲストは宮田珠己大兄!
シンポ教授邸&石田衣良邸に行く
占いコーナーに行く
ツボちゃんと文壇バーに行く ★
⇒太宰も通った風紋とか。
松風園に行く
⇒高齢者施設の読書状況取材。
新解さんに会いに行く ★
⇒編集長は『舟を編む』を読まないように周囲から止められているんだとか…。
早川書房に行く ★
⇒ハヤカワのレストランとか行ってみたいなー。
NEO編集部に行く
6次元に行く
⇒6次元というブックカフェに行く話。

第二章 無病息災
ハンバーグを食べる
⇒神保町に越してからの企画。
シャッツキステに行く
⇒メイドカフェに行く企画。池澤春菜さんも参加。
国書刊行会に行く ★★★
⇒チェニジア料理店でランチというのが都会だなあ…。そして国書刊行会の本は高いと思っていたけどわたしの守備範囲なんてまだまだ序の口だったのデスね……。凄すぎる!
ひとりで入れない古本屋に挑む ★
⇒古本屋におじさんが何で入れないの? って思ったけどそういう雰囲気の店が結構あるらしい。ネット主流なんだろうか。
専門出版社に行く
大森氏の本棚を直す ★
警察博物館に行く
茨城の古本ワンダーランドへ行く
浅草演芸ホールに行く
おじさん刑事三人組、謎を解明
⇒青木まり子現象について。まだやってんのかという気がしないでもないけど…。
サンリオSF文庫エアハント ★★★
神保町のご老公と出版社を行く
ダ・ヴィンチ編集部に行く ★
しまぶっくに弟子入りする ★★★
⇒古本屋しまぶっくさんの仕入れ(なんと、ブックオフのせどりだけを仕入れにしているというから凄い!)の取材。面白い~。
校正の専門会社に行く
花布屋さんと函屋さんに行く
武雄市図書館に行く ★★★
⇒あの蔦屋書店とのコラボで有名な武雄氏図書館の取材。2014年4月時点。最初はかなり話題になってたけど、最近はなんだかあんまりウマく行ってないみたいなニュースがあったような……2014年の春時点ではまだダイジョーブだったようだ。
それと対照的な同県内の図書館、伊万里市図書館の取材もあり、こちらのほうもかなり素敵な、コンセプトとかまるっきり違って面白いなあ~。

第三章 商売繁盛
東京創元社に行く★★
通販生活で本棚を学ぶ ★★
⇒さっきネットで通販生活の本棚を検索したけど種類はほとんど無いのね…。しかも高い!よほどモノがイイのだろうか。ベルメゾンのほうがむしろ種類は豊富。
裁判所に行く
⇒これは北尾トロの本読んだ方が…。
京都のあこがれ書店へ行く ★★★
⇒↑感想は上に書いたので。おじさんは恵文社よりブックキヨスクのほうがホッとするとか、えーそうなんだー。
ブックオフ開店に挑む ★★★
⇒せどりをするひとをセドラーというらしい。っていうかこういう商売のメッカになってるんだね。この前経営状態がキビシーとかニュースで言ってたなあ。kindleを愛用するようになってからあんまり行ってないなー。
学校の図書室に行く
文学フリマに行く ★
⇒同人誌即売会みたいな? エンタメが無くて純文学が多いというのが意外。商売っ気が意外に無いのだね。
末井さんとエリザベスに行く
⇒女装の取材……何故「本の雑誌」が…?
ラカグとかもめブックスに行く★
クワノトレーディングに行く★
⇒カラーブックスはどこに行けば買えるのか。え?どこでも売ってるんじゃないの?恵文社で売ってたよな、と思ったら……。
日下三蔵邸に行く★★★
⇒凄い! これを基準にしたら大抵の蔵書家は「フッ、まだまだだな…」なんじゃないか!?
万歩書店を制覇する ★★
⇒岡山の万歩書店という古本チェーン店の取材。本店が特に凄い。
地方・小出版流通センターの倉庫に行く
北方謙三氏を表彰しに行く
啓文社に行く
⇒広島県福山市にある町の書店(チェーン店)の取材。
ネギシ読書会に行く
⇒貸本屋取材。
リブロ池袋本店に行く ★★
⇒2015年7月20日閉店の一日を取材。本屋さんって凄い。面白い

第四章 心願成就
角川春樹事務所に行く
SF大会に行く
本の学校に行く
⇒結局よくわからなかった。学校というか研修センター的な位置?
ブックカフェのコーヒーを飲み比べる
菊池寛賞贈呈式に行く ★★
⇒おめでとうございます。吉永小百合さんも登場!
「ヤクザと憲法」を観る
与那国島の出版社に行く ★★
⇒文字通り、手作り…すごい。
沖縄の古本屋に行く
本のにおいを調査する ★
⇒本のにおいじゃなくて本に移り香したのがどれくらいで消えるかっていう……ある意味しょーもない企画。本の雑誌らしくて良いんだけど。
暮しの手帖社に行く ★
⇒えっ、いまの編集長ってあの澤田康彦さんなの? 昔本の雑誌社で助っ人してた? 本上まなみさんの夫の? 吉野朔実の漫画に出てくる? えーっ、わーっ、イメージと違う~!! 
福音館書店に行く
ワイズ出版に行く
表彰に行く ★
⇒高野秀行さん『謎の独立国家ソマリランド』が売れて本の雑誌社に貢献したらしい。良い話だ!
山形に行く ★
⇒山形では池上冬樹さん主催の有名な小説講座が開かれているという。その取材。村田沙耶香さんが肉そばを召し上がっているシーンに遭遇して取る行動がそれなのか宮里キャンドル潤よ…!
討ち入りをする
⇒忠臣蔵取材。歴史小説特集に合わせたらしい。
カストリ書房に行く
過去を振り返る
⇒宮里さんはどうされるんでしょうか。
あとがき(杉江由次)★★★
⇒この企画の内情がよくわかって、心情が伝わってきて、まさかこの呑気(そうに見える)取材の裏にこんな切羽詰ったリアルな現実があったとは…。しんみりしました。

2017/04/23

本屋さんに憩う 第14回

某月某日
隣の市のジュンク堂。

買わなかった本。

あの頃 - 単行本未収録エッセイ集
武田 百合子
中央公論新社
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あ、武田百合子だ。いまはいいかー。

伯爵夫人
伯爵夫人
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蓮實 重彦
新潮社
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サロメ
サロメ
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原田 マハ
文藝春秋
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装丁が格好いいけど、内容はわたしの趣味じゃないだろう。『サロメ』と並んでいてコントラストがきれいだった。

みすず書房旧社屋 (SERIE BIBLIOTHECA)
潮田登久子
幻戯書房
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これはかなり惹かれた~。手に取って中を見たらモノクロ写真がいっぱい。だけどちょっと高いなあ…。


購入したのは以下2点。

津村記久子『まぬけなこよみ』平凡社/2017年4月19日初版第1刷

まぬけなこよみ
まぬけなこよみ
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津村 記久子
平凡社
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『別冊本の雑誌18 本の雑誌おじさん三人組が行く!』本の雑誌社/2017年3月25日初版第1刷

本の雑誌おじさん三人組が行く! (別冊本の雑誌18)

本の雑誌社
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2017/04/18

未来国家ブータン

未来国家ブータン (集英社文庫)
集英社 (2016-07-15)
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kindle版
■高野秀行
本書は2012年3月に集英社から出た単行本に「文庫版あとがき」を追記した2016年6月刊集英社文庫の電子書籍版(解説省略)である。

そんな近著がもうAmazonの「日替わりセール」に上がるのか、とびっくりしつつも有難く拝読した。

著者公式ブログによれば
ふつう、文庫化といえば、単行本に「文庫あとがき」として後日談をちょっと付け加えた程度だが、今回はちとちがう。
んだそうで、詳しいことはそのブログ記事を読んでいただくとして、まあ要するに評判が悪かったので、
今回の文庫化にあたっては、本来単行本につけるべき「あとがき」もしくは「エピローグ」に類する文章を書き加えてこの旅を総括した。
ということだ。

電子書籍版には【電子版特別カラー写真収録】ということで最初に写真がたくさん収められている。

ブータンといわれてすぐ浮かぶのは「国民の幸福度がめっちゃ高い国」で「何年か前に国王夫妻が来日して、若くて美男美女だったからちょっとしたフィーバーになってたなあ」という感じ。

今回は自発的にブータンに行ったのではなく、友人の仕事の依頼を受けて(ノーギャラで?)。いちおう高野さんらしく「雪男」を探すという二次的目的も掲げていたが。
(果たして雪男は発見されたのか!? ――ってそんなもん見つかったら大騒ぎになってるだろうから結果は読むまでもないのだが、まあそれはいつものご愛嬌)。


依頼者はニムラ・ジェネティック・ソリューションズという会社の社長の二村さんという方。
どういう会社かいというと、
新規有用物質探索・発見・開発のための共同研究開発基盤を持つ生物資源探索のリーディングカンパニー】(HPより)。
http://www.ngs-lab.com
高野さんに二村さんが何を期待していたのかは「文庫あとがき」によれば高野さんはまったく理解していないまま、ブータンに行って「しなくてもよい苦労」をしていたらしい…。

まず例によって現地の言葉「ゾンカ語」を習得してからブータン入り。
今回は自分の目的のためじゃないからいろいろ頑張って調査して二村さんに良い報告ができるよう頑張っているところがいつもと違うなあ。
あと、現地ガイド・通訳などを務める相棒のツェンチョ君(国立生物多様性センターの若い研究者)が物凄く有能なのもこういうルポでは珍しいような…。細かい気配りが出来るし、現地の一般の方にもつねに腰を低くして対応しているし、高野さんも大絶賛している。

何故ブータンが「未来国家」なのかというのは一言では難しいが、本書を読めば「なるほど…すごく良い国、王様、システム、考え方だなあ」としみじみ感じるところがいくつもあり、そういう意味では日本は全然駄目である。負けている。見習うべきだが、国家のスケールが違い過ぎるので、そう簡単な話では無い。

「未来国家」というと瞬時に「空中をスマートな高架高速道路が交差し、洗練された高い建物が並び、整然とした機能化した街並み」が浮かんでしまうのは幼いころに見た「未来図」の影響だと思う。そもそも「未来」ってそういう機械的な発展だけを云うんじゃないよな、まあインフラとか整備されているのは便利だし住みよい暮しには違いないけど…、などと自分の頭の凝り固まったところを揉まれる気がした。

本書を読んでブータンに行きたいとかは思わなかったけど、そもそも高野さんの本を読んでそこに行きたいと思ったことはいっぺんもなくてむしろ「無理!」と思うんだけど、「良い国だ」というのはよくわかった。

ただし、ブータンの田舎に住んでいる人は他の(高野さんが行くような辺境の)田舎の人と対して変わらず、取材などに怯えて何も喋ってくれないなど閉鎖的な感じで、あまりいい感じでは無い。ブータンの良い所、他とは違うところはむしろブータンの都会やインテリと呼ばれるひとたちがその国や王様を心から敬愛しているというところで、凄いなあと思った。これは決して独裁国家の国民のそれではない。


【目次】
はじめに
第1章 ブータン雪男白書
(政府の公式プロジェクトで雪男調査/雪男を捕まえた話/小人国への入口/桃源郷は偏在する/占い師が未来を決める/偽JICAの教え/高山病で死にそうになる/雪男に間違えられた老人/生物多様性の聖地)
第2章 謎の動物チュレイ
(天国にいちばん近い村/謎の動物チュレイ/ブータンの富山県人/TK調査は辛いよ/仏教とチュレイ/ブータン人に教えることなし)
第3章 ラムジャム淵の謎
(遠野は生きている/ラムジャム淵の謎/梟は悪い知らせをよこす/ダライ・ラマの夢)
第4章 ブータン最奥秘境の罠
(雪男のための保護区/幽霊を怖がってはいけない/雪男に連れ去られた公務員/幸福になる義務/神隠し/水戸黄門になった国王/祈祷を受ける/ブロクパ神話は現実である)
第5章 幸福大国に隠された秘密
(未来国家への道/「自由」に苦しまないブータン人/仏教フィーバー/願わくはこれを語りて平地人を旋律せしめよ)
文庫あとがき

2017/04/16

旧グッゲンハイム邸物語  未来に生きる建築と、小さな町の豊かな暮らし

■森本アリ
この本は最初地元(塩屋ではない)の書店で見かけて表紙から受ける印象と、帯に書いてある【神戸の西にある小さな街「塩屋」。海沿いにある築100年超の洋館、「旧グッゲンハイム」邸。建築の再生と、まちづくりの物語。】というアオリ文と、さらに【木皿泉さん推薦!】の文字に引き寄せられた(裏表紙にあたる帯の部分にコメント文もある)。
でも、別に「塩屋」に縁があるというわけでもなく、著者の名前も知らなかったし、そもそもこれはエッセイというよりはもっと実録的な、町づくりと古い洋館の保護活動を書いた専門書ですごく硬い本なんじゃないか、素人のわたしが読んでも難しかったりつまらなかったりするのでは、という危惧もあって、すぐには買わなかった。
次に梅田の紀伊国屋で探したら専門書が並んでいる「建築」のコーナーに置かれていて、ふだん「文学」「エッセイ」のコーナーにしか行かないのでますます「うーむ、これは」とは思ったが、そのときは既に買うことをほぼ決めていた。だって気になるんだもん。
というわけで最初に見た地元書店に仁義をきってそこで購入。

最後まで読んでの感想だが、全然難しくなかった! 専門書でもなかった! 予想したよりずっと、面白かった!

「塩屋」は聞いたことはあるけど行ったことは無いし、場所も「三宮より西」という見当はつくけど正確な場所はわからない。
グーグルマップで検索したらJRでいうと須磨の次の駅。山陽本線の駅もある。
住所でいうと、兵庫県神戸市垂水区塩屋町。
あ、「ジェームス山」って聞いたことある、塩屋にあったのか。
「大江千里の歌に<塩屋>ってあったなー」
良い歌だけどあらためて歌詞を確認したけどこれ、別に「塩屋」じゃなくても成立する歌だし…街の描写とか無いので。本書にも大江千里は出てきません(当たり前)。

塩屋
塩屋
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アリさんの文章を読んで、塩屋に散歩に行ってみたくなった。
塩屋は坂が多くて、道が狭くて、車が通れない道が多いらしい。傘を差した人が行き交えないとか。あんまりそういう場所に行ったことが無いのでどんなのか行ってみたい。
もちろん古い洋館も大好きだし(しかしこれは個人宅だからイベントとかで借りるとかじゃなければ見学は出来ないのかな、とググったら第3木曜日に見学会が行われているらしい……平日かー平日はなー。あ、土日のコンサートとかに行けばいいってことか…)。

本書は、旧グッゲンハイム邸のことをもっとがっつり書いてあるかと思ったらそれだけじゃなくて、むしろもっと塩屋という町にスポットが当たったほうが嬉しい的なことが何度か書かれていた。
町づくりというのも、「つくる」というか、「昔から塩屋にある良いものを出来るだけずっと長く残して守っていきたい」というスタンスの「つくる」。
そもそも著者が旧グッゲンハイム邸の管理人になった経緯も、他の異人館が開発の波に乗って壊されてしまい、彼の家族がなんとかしたいと声を上げたことがきっかけ(こういうのは市や町が中心となって保存しているのかと思いきや……。北野の異人館とかはどうなんだろう)。
住民のなかには、もっと道を広くして、古いものは壊して、新しい大きなマンションとか駅前ロータリーとかが出来れば良いのに、という人たちもいて、著者はそういう人たちから時には結構ひどいことを言われたりもするようだ。うーむ。

あと、著者の職業がネットとかで見てても「ミュージシャンなの? 家とかに関わるひとなの?」ってよくわからなかったんだけど、DIYとかリノベーションとかそういうことをするのが好きな、ミュージシャンで、旧グッゲンハイム邸の管理人さんで、塩屋の町づくりの中心的なメンバーのひとりということみたい。人脈とか結構凄い。1974年生まれ。二人のお子さんのお父さんでもある。

わたしは不器用だけどDIY好きだし、インターネットでそういうブログとかを読むのも好きなので、本書の前半の古い家やアパートをリノベして住む人が多いという話は大変興味深く読んだ。それにしては、考えてみれば、旧グッゲンハイム邸の修復過程とかの描写が少ない…。もっとそういうのが中心の本かなと思っていたのでそういう意味ではちょっと物足りないけど、邸のほうはプロの方にも手を入れてもらったりしたみたいだ。同じ敷地内に住居用の長屋があって、そっちを著者たちは中心に作業された模様。ちなみにこの冬も一時お休みして邸の修復とか改善とかしてたらしい。日々よくなるように継続中なんだね。

最初に口絵としてカラー写真が何点かあるのが嬉しい。
本書を読んで知ったけど、著者は塩屋をテーマにした町おこしのイベントを今までに2回企画して、写真集を出版済みらしい。
この本を書いたきっかけは、ぴあのひとから依頼されて。このへんも人脈絡みで縁があったようだ。

ご本人は盛んに「自分は受け身」「自分は巻き込まれ型」だと(謙遜もあってか)書かれているんだけれども、読んでいるとあながちそれだけでも無いような……やっぱり何か「あのひとに任せたらなんとかなる」と思わせる魅力をお持ちなのだろう。じゃないとこんなに周りに集まってこないよ。

読むときにカバーを外して読む習慣なので外してまず「おおっ! かわいい! キレイ!」
とても美しいブルーの、塩屋の夜景を描いたイラストが本体を包んでいるのです。素晴らしい。
表紙とカバー・イラストはグレアム・ミックニーさん。
装丁は藤原幸司さん。
「あとがき」によれば共に塩屋に縁のある方らしい。
帯に木皿泉さんが書かれているのも塩屋に仕事場があった時期があったりと著者とのご縁がやはりあって。
この本は「人と人とのつながり」をすごく考えさせられる本でもあった。

そんなこんなで奥付のページを興味深く見ていたらISBNが貼りつけられているのに気付いた。これは修正なのかなあ。それか抜けちゃってて足したのかな?

【目次】
はじめに
第1章 パインズ・シオヤ
失われる建築―旧ジョネス邸のこと/旧グッゲンハイム邸の歴史/家族と自分/震災のあと/旧グッゲンハイム邸、解体の危機
第2章 修復と復興
音無響子さんになれる!/じぶんでつくろう/イベントスペースとしての可能性/支えてくれた音楽家たち
第3章 塩屋というまち
車が通れない町/塩屋百景・百人百景・百年百景/町の文化祭“しおさい”/シオヤ・プロジェクト
第4章 これからの暮らし
真鶴町の「美の基準」と塩屋の「しおや景観ガイドライン」/人間サイズの町で暮らす
対談
島田陽(建築家)×森本アリ/二階堂和美(音楽家/僧侶)×森本アリ
参考文献
あとがき

旧グッゲンハイム邸ホームページ